2010/06/08

第98号

<コンテンツ>
労働者派遣法改正は
「昔の夢よ、もう一度」と時代を読めない派遣会社
厚生労働省は「適正な請負化?」一辺倒
新しい時代の、有能労働力確保手段
例えば、「イケア」はスウェーデン系
日本でも、有能な労働力確保のために
労働力展開の情報収集や情報加工
梅雨を迎え、ちょっと一言


労働者派遣法改正は
総理大臣辞任の政変で6月2日の衆議院委員会強行採決予定がSTOP、今国会での成立を断念したとの情報が流れている。相反する論理を無理矢理合体させた感のある現法案だから成立が難しいとの憶測、社民党の協力がなければ成立しないとの憶測、そのあたりは政局である。個別企業にとっての目前の課題は、現実日本の労働力需給システムの変更で、派遣法改正内容や改正時期は重要ではない。
その注目すべき動きは、今年の5月26日だ。厚生労働省の官僚たちは、民間企業の手足をもぎ取りに入った。
実際の厚生労働省の路線変更は、
一昨年のリーマンショック後の、オバマ大統領当選の知らせを機に、一挙に派遣業界の規制に踏み切ったことからだ。それは、「新自由主義」の本家本元の経済方針が転換するとみたからだ。今年3月からは、一般労働者派遣業の許可要件を引き上げ、安易な新規参入を規制している。
本年3月から4月に掛けて厚生労働省は、
違法派遣の適正化集中指導監督を実施し、5月26日に結果を発表した。指導監督を行った891件のうちの約25%の227件に派遣法違反があるとしている。この集中指導監督は、外見の契約上は専門26業務と記載しつつも、実態は違法な労働者派遣の一掃に向けて実施したのだ。大手派遣会社をはじめ、専門26業務の労働者派遣の実績のある派遣元及び派遣先を訪問して指導監督した。現在の派遣元事業所(本年3月末速報値=一般労働者派遣事業所16,698事業所、特定労働者派遣事業所3,664事業所)の数からすれば、狙い撃ちと威力的立入検査であることには間違いない。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006n5o.html

さらに続けて厚生労働省は、派遣労働者数等の速報値
(平成21年4月1日から平成22年3月末日まで)を、同じ5月26日に発表した。例年の派遣事業報告時期よりも前倒しで中間発表、特に昨年6月1日の派遣労働者就労基準日の数字を示し、製造派遣:58.9%減、専門26業務:37.7%減、その他派遣:41.6%減=全体で46.3%減との数値を示した。総理大臣辞任の政変さえなければ、労働者派遣法改正の国会審議直前の統計数値公表にも使われていたであろう速報値である。だが、厚生労働省は独自に、これを指導監督の追い風に、これからも使おうとしているようだ。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000006njt.html

加えて厚生労働省は、「専門26業務に関する疑義応答集」を
5月28日には、集中指導監督の成果を踏まえ、専門26業務として取り扱われる業務の内容・範囲に関して判断具体例を示した。これにより、データ入力、書類整理、庶務系事務作業、接客応対、マンション管理人などの業務が、専門26業務から排除されることとなり、この影響は大きい。これからは派遣先が、この業務のパートタイマーを直接雇え(時節柄、個別企業は社員を雇えない)、という指導なのである。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai05.pdf


「昔の夢よ、もう一度」と時代を読めない派遣会社
は数多く存在する。利回り優先の金融資本を、銀行はもちろんのこと誰もが金融資本投資を利用した時代にあって、派遣先は予算管理や目標管理の名のもとに事業資金を回転させ、利回りを追求した時代だった。バブル崩壊以降は人件費抑制時代であったから、人件費を抑制し、外注費勘定となる労働者派遣を、すべての派遣先が一斉に受け入れたのである。外注費勘定の的を射た受注活動を行って派遣会社は急成長した。銀行も派遣会社に融資を行ない、派遣会社の売上金至上主義と不採算延命策を繰り広げたのである。この無茶が、日本の労働力需給システムの破壊と法令違反を招いた(貧すれば鈍する:そのもの)。
こういった時代背景が理解出来ない
派遣会社の営業幹部たちは、いまだに、「昔の夢よ、もう一度」とばかりに、「もうすぐ派遣会社の冬の時代は終わる?」と信じて、現在も強気の体育会系営業方針を貫こうとしている。最近は、単なる筋肉的営業トークでは見向きもされないので、「請負適正化のコンサル」であるとか、日雇い派遣の代わりに「日々紹介事業」と称するなど、良くて脱法行為、実は違法行為を派遣先に指南して、営業・受注拡大を復活させようとしている。「法違反がバレれば、それまでのことさ」といった具合であり、彼らは経済や法律の知識など持ち合わせていない。あたかも合法的指南を標榜する、元有能営業マン、偽装社会保険労務士(資格があるから贋物ではない)が全国的に湧き出してきている。むしろ彼らは、その道の「労働力需給システムの専門家」に至る経路に立ちはだかって、詐欺的営業を繰り広げているのである。その甘い誘い文句とは、「一挙に労働者派遣の需要が無くなるわけがないのだから…」である。まるでこれは、霊感商法に通じるところの営業手法だ。
ほぼすべての独立系派遣会社は、
確かに現在、資金繰りに四苦八苦である。6年前の平成16年の派遣法改正で、派遣会社の支店設立が、許可制から届出制に変更されたことで、独立系派遣会社の支店設立のための先行投資が無駄となってしまい、この時期から赤字転落に陥ったのだ。加えて、同時期からの製造業派遣の解禁で、タケノコのように派遣会社が乱立、ダンピングを繰り広げた。(厚生労働省の不適格業者の排除方針でもあった)。
無理をしてでも派遣の売上額を取ってと
派遣元は銀行融資を打ち切られないために緊急事態を迎えているのである。職業紹介の売上であれば、一件当たり賃金額の10数%である。こんな派遣業売上の10分の1程度では、銀行融資の打ち切りは必至なのである。それは今や社長の生活基盤や家族を抱えて、必至どころか死活問題となっている。派遣会社の多くが、事業経営に安易に参入した人たちも多いから、債務償却手法や事業再生の知識が無いのである。現在、全国で約16,000もの一般派遣事業所、これでは業者が多すぎて過当競争だ。その派遣元経営者は自殺予備軍かもしれないのだ。


厚生労働省は「適正な請負化?」一辺倒
を掲げ、指導監督をしているが、これでは「官制派遣切リ」と言われても仕方がない。
派遣業界は延命策の理屈づくりに東奔西走、完全な受身の守りに入っている。
一昨年までの派遣労働市場のピークは、再び来ることは無い。
グローバル経済と日本経済(高付加価値製品&高水準サービスでの経済再構築)を見据えた労働力需給システムであるからには、
1.業務請負(ポスト契約と事業者のKnow-How)への切り替え、
2.職業紹介事業への切り替え、
3.派遣会社の事業再生(顧客と労働者ネットワークの資源活用)
この三項目セット一体での、新しい有能な労働力の供給手段への切り替えの、ここにこそ、市場変化した後の社会的な事業としての役割があるのだ。
厚生労働省官僚の
頭脳明晰者の「なぞなぞ示唆?」では、派遣元事業者には意味不明、労組幹部は夢にも考えつかない。昭和23年の職安法施行規則第4条の大改正(請負と労働者供給の区分)によって、工場敷地内で事業を請け負う「構内下請」の業態が可能となったが、労働省官僚には想定外の出来事であった。昭和61年の大臣告示は、「業務請負」を公に認めたもの、労働省官僚はビルメンテナンス業の業態に限り、業務請負を想定していた。


新しい時代の、有能労働力確保手段
を作るには、過去の分析をしながらも、個別企業は過去にとらわれないドラスティックな手段が必要なのである。最近、日本料理の業界で流行し始めている、「守・破・離」と同じである。伝統を守り、伝統を破り、伝統から離れること、すなわちドラスティックである。お馴染みの例は「iPad」(ありふれた部品と技術で、PCと携帯の折衷機能を追求)である。
有能な人材に、大いに能力を発揮してもらって、
高付加価値製品&高水準サービスでの商品提供で日本本土の経済を立て直そうというのが、今の日本の経済戦略である。今や、この経済戦略が共通認識となり、新自由主義経済主義は海外に逃走、従来の低賃金+温情心的労務管理は国内で通用しなくなった。
そこで、米粒に満たない少数の高級エリート優先指向から、有能人材集団の育成指向に、労働力確保を求める例として、北欧型経営管理(世界三大経営管理とは、アメリカ、北欧、イタリア)が注目されているのである。


例えば、「イケア」はスウェーデン系
の家具小売りチェーン(25ヵ国店舗展開)である。ここでの労務管理のポイントは、NHK-TVでも紹介されたが、少し補強して説明すると
1.社内で敬語は使わない
2.社長の机がない
3.午前と午後のコーヒーブレイク(FIKA:フィーカ)
   (専用コーナーで、コーヒー&パン・チーズ)
の3ポイントを実行しているところにあるという。
携帯電話大手のノキア
(もともとは、国内林業の会社)この会社の事業を生み出したフィンランドの教育(フィンランド:メソッド)の特徴は、義務教育9年間の間に、教師が「どうして?その答えになるの?」との質問を浴びせかけ、児童達もお互いに「どうして?(ミクシ?=フィンランド語)」と次々質問する方法である。この方法で、児童の論理性と意思疎通能力を向上させる。加えて、日本の解説書では伝えられていないポイントがある。それは数人単位のグループ教育を徹底し、エリート教育をしないことだ。その理由は、「解る児童が、解らない児童に教えれば、それはエリート教育に勝る」と、エリートと一般人の意思疎通障壁を児童の頃から解消することで、高水準能力のチームワーク体制を大人になって築くことができる方式だ。この基礎教育方式は、林業と造船業しかなかったフィンランドが、産業構造不況から脱却して生き残る道を歩むために、欧米の教育手法を研究して新開発したものであった。そのために就任した文部大臣は当時35歳であった。
スウェーデンは人口約930万人、フィンランドは約530万人、いずれもヴァイキング精神を引き継ぐ地方ではあるが、それにもまして旧ソビエトの政権圧力や計画経済圏(革命直後、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーはソ連領内)から、名実共に脱却する必要に迫られていた。ノルウェーも一歩遅れて教育改革の真っ最中で、水産資源や北海油田資源の宝庫である。北欧型経営から導き出される、有能な労働力確保のKnow-Howのポイントである。


日本でも、有能な労働力確保のために、
改正育児休業法をこの6月30日から施行する。3歳未満の子を養育する労働者には、原則6時間勤務制度の導入を義務づけたが、趣旨は子育て中の有能な労働者の定着である。介護休業も、親の介護のための離職を防止したい趣旨である。保育所の増設も、子育てによる離職を防止するためである。すなわち、職業能力蓄積の中断防止とか、中途半端な能力者の対策を施し、男女問わず有能な労働力の確保・安定を図ろうという訳である。
今の個別企業に散在する、「成り行き管理」
のもとでの「間に合わせ程度の労働力」では、提供するはずの新規商品が供給出来ない。それに留まらず、その事業計画は頓挫してしまうばかりか、個別企業の設立理念まで否定されてしまうのである。過去、日本的労務管理と言われた時代でさえ、新入社員から40歳程度までの男性への教育スケジュールだけが、大手企業に限ってのみ存在した。40歳を超えれば、何れの企業も無為無策、これを称して自己啓発と名付けていたのだ。女性労働力に至っては、職業教育どころか、社会教育すら施されずにいた人たちも多いことから、今やパートタイマー職場の業務改善の足を引っ張る事態(例示=お局、カルト、小姑など)も引き起こしているのだ。
ましてこの10年ほどは、職業教育を中途で停止してしまった派遣労働者を大量に発生させたのである、特に意思疎通能力低下に起因する職業能力の向上停止として。個別企業の人材採用能力も、派遣業者への安易な依存で落ちてしまった。
これから始まる、
「新しい事業のためには、新しい労働力を展開する人事システム」
が必要となる。
1.その主力の労働力は、短時間労働力であることに間違いはない。
2.旧態依然の社会を築いた人たちの論理構成と、30代のそれは明らかに違う。
3.進学率50%の大学教育も、この15年間に、「学ぶ場」は否定され、「学習の場」に変質。
4.長時間働く労働力を求めても、その絶対量が確保出来ない。
5.市場変化のスピードに、まともに合わせて長時間働かせると、燃えつき:すり切れてしまい、「退職か精神疾患の2択」が待っているのだ。


労働力展開の情報収集や情報加工
は、個別企業でどの程度行われているのであろうか。まして、パートタイマー(時間給者)とか契約社員(1コマ~1期限給の者)ともなれば、販売上の説明トークはともかくとして、「間に合わせ程度」の労働力(能力者)としてしか、把握されていないのが現状である。
先にも述べたように、時代を先取りして、有能な短時間労働力(パートタイマーなど)を展開できるかどうかが、新しい時代の事業展開の基礎となる。社員としての身分を必要とするのは、マネジメント職やその候補者としての人材に限られる。グローバル経済において成長するには、こういった人事制度は不可欠なのである。
そこには、
労働力の展開を日常的に情報収集するシステムを必要とする。
今日までの日本では、社員としての人事管理、または、「間に合わせ程度」の労働力を基本に考えて来たので、こういった意味での情報収集や情報加工は、今でも未熟な段階である。
★最も基本的な労働力展開の情報である賃金計算は、「給与計算」と称する、PCソフトによる「どんぶり勘定」と言っても過言ではない。
★時間外割増賃金の計算機能を持たない、給与PCパッケージソフトのテレビ宣伝(日曜朝)が、に繰り返されているのが、日本の実状である。
★労働基準法の労働時間集計法すら知る由もないと、無秩序な賃金計算を行ない、このため従業員の不信が募るばかり、不満のはけ口としての予期せぬ賃金不払い事件も招いている。
★POSシステム、カード読み込み、指紋認証などの出退勤記録システムを導入すれば、必ずといっていいほど、空残業、架空人物、だらだら仕事の頻発、これに気付かない。
★気付いた時点でも、経営トップを先頭に素人がゆえに、「それは仕方がない」と無秩序・無法者に対して、売上のためには諦めるしかないと我慢(錯覚)しているのだ。
=最も重要な労働力展開の情報収集は、
出退勤記録の生データからの収集である。機械化しても限界がある。ここへ踏み込むには専門技能者の手作業によるデータ収集しか、現在のところ方法がない。機械とか素人集計では、生きた情報収集が出来ず、もちろん情報加工にまでは至らない。
=もっとも現状は、
機械化でも可能かつ(商品供給の要である)就労者の勤続年数平均、年代把握、平均年齢、通勤圏把握すらも情報加工されていないのだ。地元密着型事業に不可欠な地元のパートタイマー活用と言われて、既に数10年と久しいが、旧態依然の集計作業(これが給与計算の実態)に明け暮れている。
まして、パートタイマーその人のOJT記録、キャリア形成、卓越技能、特技の調査、地元影響力などの情報収集すらなされていない。情報加工して、これを業務に活かす手立てなど、全くもって取り組みようもない粗末さである。
パート賃金計算、これからは、
集計作業とともに情報収集と情報加工を合わせ持つことが重要である。
 = 新しい労働力展開には、新しい人事システム =
要するに、「iPadの開発」に象徴されるような、頭の良さによるイノベーションである。そのソフト開発も、エクセル程度のプログラムで十分である。
他社より一歩先んじておれば、東アジア経済圏?でも、立派に通用するのだ。


梅雨を迎え、ちょっと一言
やはり今年は異常気象であることを実感。昨年の今頃は、豚インフルエンザの対策に各企業とも追われていた。幸いにも病状は重篤ではないケースが多かった。今年は、これから夏に掛けて、1日の気温の上がり下がりが激しく、突然強い通り雨が多発するとのことである。既に、この4月から、湿度の変化による、室内でのカビの発生が取り沙汰されているようだ。もちろん、温暖化と湿度変化に対応する木製品建材(間伐材等)の活用や、施設の間取り工夫(風通し)は、昔の日本式家屋以上に工夫が必要となる。除湿剤、除湿機、換気扇では間に合わない。
室内のカビ菌は、鼻炎から始まり副鼻腔炎を起こす。体力が弱いと、そのまま肺炎となる(のどの炎症はなく、突然、気管支の痛み)。通常の風邪であれば、鼻炎→咽頭炎症→喉頭炎症→気管支炎症をたどるケースがほとんど。
貴方の企業では、この春から→湿度の変化→室内のカビ多発→鼻炎の発生、この現象に心当たりはないだろうか? その場合、予防的に個別企業として対策を打つ必要がある。カビ菌は高濃度エチルアルコールで色まで除去することができる。臭い物質(におい・かおり環境協会)なら水溶性だから、飛散防止のためには壁、机、ロッカー等の水拭きが最も効果的だ。空中浮遊のカビ菌対策(細菌やウィルスも)は、二酸化塩素ガスの空気中保存技術により殺菌することができる。どうも日本独自の世界特許技術らしい。
http://www.seirogan.co.jp/products/eisei/mechanism/patent.html
ところで、宮崎県の口蹄疫は、農林水産省の対応の遅れではなく、官僚のずさんな検疫処理によるものとの疑惑が出ている。昨年の厚生労働省の豚インフルエンザの対策には、はるかに劣る事件と学者の間では揶揄されている情報も入っている。奈良県:高松塚古墳の文部官僚不祥事による、カビ菌の壁画付着事件と同程度かもしれないのだ。
日本の医療制度は、豚インフルエンザも然り、厚生労働省が動くまでは、ほとんどの医師は組織的対応をしない特徴がある。豚インフルエンザを風邪と診断した医者がいた。だから、個別企業も家庭も、自前で防衛する必要があるのだ。日本政府の場合、疾病管理予防センターや自衛隊緊急配備されるわけでもない。東アジアの社会の特徴からすれば、自ら命を守らない限り、単なる犠牲者として葬られる。
この春から、煽っている訳ではないが、ここは大阪の中心、当社を取り巻く鼻炎多発状況は、確かに変なのである。

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