2003/04/08

第12号

 サービス残業の摘発!監督行政ノウハウを開示
 東京労働局監督課長実名入りのインタビューを、旧労働省の専門新聞、
 週刊労働ニュース(全国の監督署や安定所に週刊配布)に掲載した。
 監督課長実名入りの記事を載せることは監督指導の教科書を公開配布
 したのと同じで、全国の監督官は手を抜くことは出来なくなる。
 東京労働局監督課長はサービス残業を7つのパターンとしている。
 3億円の時間外手当が遡及された金融機関の大手企業の事例も東京中
 央労基の話として載せている。
 (このメールの末尾に、7つのパターンと複数発覚の調査方法を掲載)
 東京中央労基第三方面主任監督官は「労働時間の把握を本人の裁量に
 委ね、時間外労働の申告が行われていないことをもって、労基法に規
 程する労働時間の把握管理の責務を免れるものではありません」と語
 る。
 この事例のきっかけは一枚の匿名投書。担当監督官は「投書一枚の情
 報提供…臨検端緒として軽んじることはありません」とのこと。監督
 行政の変更にも気づかず「どうせ来ない」と高をくくっていた会社担
 当者がいたにせよ、これは真にお粗末。
 このようにパターン化したり実例を示すことで、経験の浅い監督官の
 調査の実効向上に役立たせようとするもの。また監督官の労働組合
 (全労働)は、行政の手続きを正確にすることで国民の信頼を得ると
 の考えのようで、サービス残業の監督行政では監督署内では労使一丸
 となっているようだ。

 個人と会社の労働問題紛争のあっせん機関(紛争調整委員会)で、プ
 ロの社会保険労務士が代理人となれることになり、会社も労働者も
 「あっせん制度」を本格的に利用できるようになった。労使紛争が訴
 訟や弱み追及を覚悟するばかりでは無くなった。さっそく大阪では使
 用者側から退職金凍結紛争の「あっせん」が十数人の社員対象に申請
 された。労働者側の利用が多いと見られるが使用者側も大いに活用す
 る様だ。事業所内の私的自治に収められていた労使関係は個別個人の
 トラブルについては労使とも社会システムに頼った解決を望む声が広
 がりそうだ。
 ところで、あっせん代理人の養成セミナーも初めて4月12日(土)大
 阪で開催の予定であり、これも盛況である。この代理人グループは電
 子掲示板でノウハウの一部公開までしている。

 就業規則、36協定の「本社一括届出」が、可能に
 2003年2月15日付の通達で、内容が同一であるときは、就業規則と36
 協定を本社のある労働基準監督署へ必要部数(事業所数分と控え用に
 1部)と一覧表を出すことで届出が可能になり、事務の手間が省ける
 ことになった。但し、提出先の監督署が配送サービス代行をしてくれ
 るようなもので法律の「事業所単位」の概念が変更されたわけではな
 いので注意してください。何部も提出するときは、前もって監督署と
 相談したほうが無難でしょう(現場の監督官は不案内のときがある)。
 なお、受付ゴム印は、各事業所の分は一覧表に押印とのことです。日
 経連が旧来から要望していた企業単位届出の主旨は一貫して無視され
 ている。

 年金改革? 401Kの迷走! 社会保障や年金の専門家が政府の中核
 に配置されていない。これは意見の相違ではない。あまりにも基本的
 知識と実 務を知らなさ過ぎるのである。そこへ、大手企業の人事担
 当に圧倒的シェアを持つ戦前からの有名な労務専門R誌で年金と保険
 料シミュレーションの基本的マチガイをした。150万を超える賞与額に
 すると保険料節約になるというマチガイだ。これは保険料の標準(報
 酬月額または賞与)額制の知識が無いのだ。知識が無いと断定出来る
 訳は、標準額制は政省令以前の日本の年金計算の基本的枠組みであり、
 シミュレーション表で8箇所も同様のマチガイを起こし、[注]2で錯
 誤錯覚の解説にまで触れ、とても社会保険労務士の執筆したものとは
 考えられないのである。
 私の言いたい問題はここからである。R誌のマチガイを発見した人が
 少ない。社会保険事務所への問い合わせも少ない。食い違いに気づい
 た人が少ない。このメルマガ前回号の「まさかの話!」に関心を持っ
 ていた方が発見してくれた。日本一の権威を築き上げたR誌先輩記者
 の努力も空しく、R誌の閉鎖的な編集は先週でも「数字のミス」と答
 えている程度の苦情件数なのだろう。大手企業の人事担当は年金に関
 心が無いのか、知識が無いので読めないのか、世間が官僚のウソに振
 り回されるのも納得できる、お粗末な民間の実態である。なので、知
 識のある方、その立場にある方、がんばろう。

 不良債権処理策が昨年10月末から本格的に動き始めた。不良債権の最
 終処理の本格化である。これに伴い、これから景気は大幅に後退し、
 企業倒産リストラ頻発、失業急増となる。日本は、企業と労働者に技
 術力又は技能があるので世界経済に向けての底力はある。だが技術力
 又は技能を取りまとめ組織してきた企業が持ちこたえられない。潰れ
 るのである。政府がこの3年間、景気を落ち込ませるので、技術力又
 は技能の取りまとめを再組織するしかない。今は3年後の恐慌脱出期
 に踊り出れるかどうかが企業戦略の焦点である。