2017/10/10

第186号:経済も社会も重要局面の選択

<コンテンツ>
とんでもない経済成長の日本実態である。
ほぼ着地に向かった北朝鮮の処理
全国的な、売り上げ低迷、人手不足、更に製品不祥事
資本主義の本来的姿による経営管理項目
矛盾とか人間疎外の解決策を初めて示した論文
年功序列型賃金の誕生した瞬間、その記録と立案者。
  A.当時の電力発電元締め会社=日本発送電
  B.日本発送電社長Aは、幾度もGHQに呼び出され、
  C.電力供給をストップする、電力ストライキ
はじめて帝王学を学術出版した大学教授の話【書評】
     【役に立たちそうな幾つかの内容を引用】①~⑧


§とんでもない経済成長の日本実態である。
数字の上ではプラス成長が続いているが、日本の国民総生産GDP500兆円に対し、現在日銀が買い取っている国債の額は500兆円を超してている。政府が日銀から借金しつづけたのである。1万円札の紙幣を財務省が印刷し、日銀が銀行券として発行するのであるが、それを帳簿上行っていたとしても同じことなのである。日本だけが青天井なので、こういった方法を「日本化」と言っている。良い意味ではなく、金融危機を招く危険な警告としてである。そんなテコ入れをしても、この程度の経済回復しかしていないのである。
すなわち一般家庭に例えれば、年収分だけの借金を造り経済成長させているわけだ。個別企業の経営であれば、年間売り上げ3倍の借金があれば、帳簿上は経営破綻と見なされる。そう、国の財政赤字は1000兆円を超えている。それも、さまざまの統計資料には疑惑がある。求人は増え失業率が減ったとはいえ、日本人の総労働時間数は減少しているのである。でも、これだけサービス残業賃金不払いが蔓延していれば、その数字を信用して良いのかもわからない。短時間労働者ばかりが急増していることは確かである。年間所得84万円未満の人数も1000万人を超えたらしい。
高齢者の中には、もう一度、株価値下がりして、そこで買い替えれば利益が稼げると盲信している人は少なくない。だが金融ショックは近づきつつあるのが真実だ。今この瞬間は世界的に株価が値上がりしている。外国為替も円安に自然と向かっている。株価上昇と円安は日本にかかわりのないところで動いている、だからさらに恐いのである。
日本の資産がどんどん海外へ流れる。このままでは外国為替で円安が進み国内資産が減っていく。言っておくが、日本製輸出産品は円安になっても売れていない。東芝、三菱、日本郵政など次々に、原発その他の魑魅魍魎とした契約により、負債を抱え込まされ、大手企業の内部留保が直に海外流出している。筆者はその専門家ではないから把握しきれないが、おそらく目に見えていない形で資産流出しているであろう。最近は大手企業の大株主が外資となっていることもニュースにならない。それだけではない、リストラされた大手企業の技術者は中国や韓国に引き取られて、日本はじめ世界各国向け商品開発の技術を担っている。長年の尽力の末に育てられた人材資本までが、海外流出しているのである。


§ほぼ着地に向かった北朝鮮の処理
国民が軍人を尊敬するのは命を差し出しているからだ。戦争を支持する人は、子や孫を戦場に行かせるつもりで発言することだ。そうでなければ、無責任だ。その上での結末に、口を挟めば。信頼できる情報筋の情報はこうだ。
ロシアの石油で工業発展させ、韓国と共に経済発展、その製品をシルクロードとシベリア鉄道で、ヨーロッパや中東へ。この話は、アメリカを蚊帳の外にして、もう中露韓の間で決着している。日本政府はそれ知っている。南北政府のケソン工業団地も、再開との一報。
アメリカへの威嚇ミサイルは、アメリカむけ排除の策とも見られる。
……意味不明な対決姿勢の妄想に乗って、日本は世界経済に乗り遅れないようにすることが肝要だ。特に、関西経済は、北との密輸や取引が盛んだったのだが、今は我慢している。そういった経済問題は、安倍晋三の選挙地盤の下関周辺でも地元での争いが激しく絶えないとのことのようだ。


§全国的な、売り上げ低迷、人手不足、更に製品不祥事
こういった現象が同時発生するのは、長年にわたって業務改善や事業改革に携わり、その成果でもって生きて来た専門家からすれば、社員や従業員全般に関する労働意欲の著しい低落問題なのである。電通過労死、NHK過労死、日産の車体検査不祥事、神戸製鋼所の部品不祥事といった最近の事象は、形だけの経済成長を牽引している企業での出来事である。これについて、そういったことを認めたくない人物は、「気の緩み(キノユルミ)」と逃げ口上を吐き、それをマスコミが何も考えずに報道する。
筆者の結論めいたことからいえば、
ドラスティックに好循環の引き金を引くには、今の時点では労働基準法である。
いわゆる気の緩みが続出しているのは、「労基法なんて守らなくても、誰かが訴えを起こさない限り、大丈夫」といった現実である。少々の監督官の調査があったとしても、表面を取り繕えば差し支えが出ない現状である。だが、労働基準監督官の立ち入り危険性が遠のけば、業務管理の人的コントロールがズタズタに陥るのは事実だ。すなわち現場の数人の管理者や監督職の手抜きが蔓延して、売り上げ、人手不足、不祥事が蔓延するのである。ことに女性の多い職場では、この人手不足は、採用しても採用しても、お局が初めてをやめさせる。イジメで正社員採用しても数ヵ月以内にやめるのである。すなわち、経営管理の社内統制が取れていないから、経営陣の言うことを聞かずに手抜きが蔓延してしまうのである。とても問題なのは、日本国全体が世相を反映して、手抜きが蔓延していることである。
なので、これを改善改革する引き金は、労働基準法の適切施行だ。
経済政策としての課題は、不毛な労働時間削減で労働意欲と生産性を向上させ、不払い賃金の支給で内需を拡大させ、とにかく、日本が金融ショックに強い体質を造ることである。賃金だけをちょこちょこ上げることではない。
個別企業でも、不毛な残業規制をしてテキパキと働けるよう業務改善を行い、より職務能力の高い人材を抱えることが得策である。金融ショックの瞬間に、金融資産とか借金を抱えていれば被害が大きい。人材を抱え、売り上げをあげ、人手不足を解消し、今よりコジンマリで良いから頑強さを作りあげることである。
それをやり易い社会の形成にも、一肌脱ぐことである。個別企業は規制されるよりも「「無秩序社会」である方が金銭的には裕福になれるから、この半年は重要である。


§資本主義の本来的姿による経営管理項目
経営問題の柱は四つ、収益性、生産性、労働意欲、効率である。
素人は問題点をやたらと数多く羅列すれば、頭の疲れとともに満足感を味わって報告書を造りたがる。そんな無駄な仕事の量的成果が仕事をしている証になると錯覚している。業務改善や事業改革は、どれか一つの部分の引き金を引けば、一挙に好循環が始まる手法でなければならない。
つぎに示す「経営管理項目」を見ても、末端労働者=働き手の労働意欲にかかわっていることは一目瞭然である。経営者が訴える先はもっとも末端のもっとも下積みの労働者である。物理的新技術、飛躍性技術による新工場、AI人工知能機器などを導入するのであれば、人材と働き手は全員、入れ替えた方が良い。けれども、そこでの労働意欲の管理が出来なければ、旧態依然の結果しか生まれない。ここに悪徳な新技術や新機器を売り込むIT企業その他は、そういったことを錯覚するように話を持ち込み、結果は不用品を買わされる始末である。
企業経営は結果である。
この項目の、特に2項目目が、いわゆるコントロール(管理)の出来ていない結果なのだ。(総務部メルマガ7月号で説明)
http://soumubu1.blogspot.jp/2017/06/#182-09

「1」個別企業の、
    ①人的物的な技術力、
    ②優位な取引&貨幣転化の迅速手法、
    ③市場や銀行での信用創造
  を総合的に組織的に運用して資金回転率をあげること。
「2」その動きを形成・展開・まとめ収める、そのイニシアチブと実行力を個別企業内外での安定確保をする。個別企業で恒常的に実行ができるように、商品提供ネットワーク実行力も社内組織も独自で形成し、そのための人材(いわゆる監督職ではなく管理職)を確保定着させること。
「3」事業や資金への天才的投資チャンスの適時適宜性を磨くことに専念すること。及び日常的に個別企業独自の危険要因を探し出しておき、その危険事態(それは内部では分からない、だから外部の専門家)を予防すること。
……もとより、金融機関から投資資金を集め、さらに集めるために株式上場して、労働者の能力全般から「労働力」のみを使って製造とかサービスを実施するのだから、労働者の人格と相容れない心理(専門的には人間疎外という)が生まれるのは当たり前である。


§矛盾とか人間疎外の解決策を初めて示した論文
そして、どんな国でも働くということは「文化には違いない」のであるから、一本調子とか子供じみた「一強」で物事が回る訳がないのである。そういった矛盾とか人間疎外を、歴史的分析も含めて、初めて解決策を示したのが筆者の論文である。9月2日に京都の学術会議で発表して1ヵ月が過ぎた。学術誌に学者用の論文を凝縮させられて書いたから、一見したところ漢字アレルギーが発生して経営者や管理職じゃない人からは、すごい悪評である。読み通していただければ、おかげで、とても好評を得ている。そして不思議にも幸運なことに、この論文の理論を裏付ける証拠を集積し研究した書籍が出版された。「反脆弱性(はんぜいじゃくせい)」(ダイヤモンド社)、これが今月メルマガの書評である。
http://www.soumubu.jp/koyukachi.pdf


§年功序列型賃金の誕生した瞬間、その記録と立案者。
それは、昭和21年、筆者は生れていないけれど
今から話をすることが真実、その上で、この記録を見ていただきたい。
=個別企業の賃金体系や政策影響を考えるとき、
頭の片隅に置いていただければ、流行りの幼稚な賃金論理に惑わされることはない。
https://youtu.be/6Faf2TyFrdM
昭和21年当時GHQは、
対日本の政策の柱は、経済を後退させる方向に進めていた。
電力会社は戦争が終わって、戦争や軍部独裁で各地に左遷されていた経営幹部や技術者が国内に戻ってきていたから、有能な人員も大幅採用して産業発展や生活の向上に向けて、水力発電や火力の発電の技術蓄積と飛躍を考えていた。ところがGHQは日本の経済後退政策であった。日本政府はGHQの100%言いなりであった。
そんな時に考えたのは、今日で言う年功序列型賃金を編みだして、「勤続ではない年功給」を電産型賃金体系に組み入れ、有能な人材を蓄積することを方針とした。当時は、電力関係に約12万人が従事するが、人材の育成が産業や生活への送電技術には欠かせなかった。
https://goo.gl/AVYs7C
これをGHQは阻止しようとした。勤続ではない年功を積むことによって技術能力が高まることを期待する、「勤続ではない年功給」、言い方を変えれば、経験給的なのである。勤続年数や年齢が過ぎれば自動で引き下がる年功給の要素は、本来の年功序列型賃金にはなかった。現行厚労省のような、労働力を云々といった、意味も根拠もよくわからない代物ではない。加えてその当時は教育訓練といえば、職人技徒弟制度の時代であった。戦争で徴用され破壊された労働環境だったから、それを一からやり直すと同時に新技術の導入であった。

A.当時の電力発電元締め会社=日本発送電
私の伯父は本社の賃金課長をしていた。その労働組合が電産労組であり、当時の労働組合法は会社取締役外の、部長以下全員が労働組合員であった。著者の伯父も電産労組の賃金対策委員会委員長であり、電産労組の副委員長にもなった。その時に作り上げたのが、専門家が良くご存知の電産型賃金体系である。表向きは労働組合の責任者として、内実は労使一丸となってGHQに対抗し日本発送電の担当者として、私の伯父が取りまとめた物である。戦前に京都大学経済学を卒業した私の伯父は、賃金体系理論もなく、「職工事情」といた政府の戦前労働調査すら発行禁止にしていた時代であるから、ほぼ全てを基本原理から構築していった。その具体的説明は、次のYouTubeの18分ごろから説明されている。そこに登場しているのが私の伯父である。
https://youtu.be/6Faf2TyFrdM
後にこれを銀行各行が賃金体系で採用、さらに大手企業に次々と広まった。高度経済成長末期の、大阪の国光製鋼が日本で初めて職能給:職能資格制度を導入(考えたのはコンサルタント瀧澤算織で、私の師匠)するまでは、年功序列型賃金と名称を変更して日本で大流行したそれである。その経済性や利便性は、様々な書籍類に書いてある通りで、ここでは省略する。社会政策の第一人者である大河内一男教授が、この電産型賃金を年功序列型賃金との名称に一般化し学問的に理論化した。電産型賃金体系は、賃金のコンサルタントであれば、必ず知っている体系だが、これからの話はネットでは初めて公開する話、私の伯父からじかに聞いた話である。そう、どうして労働組合の作った賃金体系を大手企業がこぞって採用したか、その謎である。

B.日本発送電社長Aは、幾度もGHQに呼び出され、
言うことを聞かなければ戦犯にされかねない状況のなかで、煮え湯を飲まされ続けた。そこで、電産労組が表舞台に出て来たのである。電力政策、産業政策、人材確保の賃金政策を掲げているのは、そういった根拠だったからである。労使一体となって労働組合闘争を行ったのである。かといって電産労組は会社の御用組合では全くなかった。戦闘的労働組合だったという評価もあるが、当時の共産党員が組合役員に選ばれていたのは地方組織の一部だけ、電産労組の中央本部に彼らが顔を出すことは滅多となかったようだ。そして、その電産労組の実質交渉相手は会社ではなく、GHQ、民生局担当のマッカート少将(マッカーサーではない)であった。とはいっても、GHQに電産労組が出向けば銃で脅かされ追い返される。それを乗り越えてのミーティング(もちろん英会話)も非公式なものばかり。危険なときは労組幹部がMPに指名手配され、伯父さんもタオルと歯ブラシだけで東京駅から脱出・逃亡したこともあった。
GHQは、経済後退政策に基づき職務給の賃金体系を維持しようとした。それでもまだ当時は、CCS、MTP、TWIといった管理方式は導入されていない。ほとんどが科学とは無縁な生産管理方式を漫遊していた。確かに海軍の山本五十六はアメリカ:ハーバード大学に学び、大型艦船の操作のために、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば、人は動かじ」を導入したが、海部工廠では導入された記憶がなく、史実に記載されたものは今日JR鷹取工場位であった。テーラーシステムも科学的には骨抜きされた生産方式が散見される程度であった。GHQは、コスト・ブッシュ・インフレーションの原型理論を日本政府に押しつけ、日本政府が、「電産の賃金が上がれば物価高が始まる」とPRしだし電産労組は、当時としてはきわめて綿密に調査した上での賃金理論だったから、JR大阪駅前(当時の経済は大阪が中心)の街頭説明、各地での説明会を開催した。それが先ほどのYouTubeの場面である。今では考えられないことだが、日本発送電、その配電会社(関西配電=関西電力の前身)など社員でもないのに、当時の終戦直後は多くの人が説明を聞いて、電産労組の説明に納得したとのことだ。これが、その後の金融機関や一流大手企業への導入を切り開いたと考えられる。確かに政府の「賃金上昇→物価高」理論は、もとよりアメリカでの理論が幼稚であり、GHQに押しつけられただけで、日本の経済学者はタッチしていないから、当然、国民が納得するわけではない。また失業対策事業も最低賃金制度もなかった時代であるから、「最低賃金理論」と大見得を切って説明したことが確かではあるが。

C.電力供給をストップする、電力ストライキ
これが決定的に、電力政策と人材確保の賃金体系に決着をつけたのであった。
ところが実際は演出、名ばかり停電、もとより狙い目はアメリカ軍施設だ。その電力停止ストライキのタイミングを示したのは、GHQに呼び出されていた日本発送電の社長Aが、GHQからの帰りに電産労組の組合事務所に来て電力スト体制を固めた。固めたという意味は当時も今も同じだが、電力は会社の給電指令所からの指図で工場一つずつ、病院ごと、町の小さな一角ごとに給電を止めるわけである。一斉に給電のOFF・ONをすると電線などの破損や火災を起こしてしまう、古く壊れた設備や古い電線がどこにあるか電力会社ではわからないからだ。福島原発事故後の電力不足とのことで、一定地域が停電になったが、そんな事象は作為でなければあり得ない。会社の通常の正規の指揮命令系統で給電指令所の指図の元電源を落とした。その表向きは電産労組の組合員が電源を切ったように見せかけ宣伝を流していた。数10人がロープを持ってブレーカーを引っ張って落とすウソの写真もばらまいた。数10人ならば誰が本当に力を入れてブレーカーを切ったかが分からないからと電産労組は説明していた。余談だが、1970年当時も戦闘的労働組合?と称する組合員教育の文献には、その写真が掲載されていた。
当時、何度も繰り返される電力ストの演出、十数回目の最後の電力ストは、アメリカ軍施設だけ(それもアメリカ軍病院を外し)給電をしない手順の電力ストであった。電産労組は、日本政府からの攻撃にさらされながらも、GHQに打撃を与え、現在の電力産業の基礎をつくった。そのことをよく知ってか、日本の世論は電産労組とか電力ストを応援したとのことである。日本発送電は、戦前の国策会社系で、今でいう超エリートの会社であった。その後、昭和24年5月16日の国会衆議院での、電力につき「企業の能率的運営並びに労働意欲の昂揚に対して必要な措置を講ずること」との全会一致決議に至ったのである。現代ならば、国会がそのような名指しの決議を行うことは考えられない。そう、結果は物価上昇はなく、電産型賃金を大手各社が導入したのであった。

このYouTube映像は電産労組の作成となっているが、こういったことを念頭において、当時の人がアメリカとどう立ち向かったかを見てほしい。昭和21年からの記録映画、産業物資どころか食糧難の時代に、どうやって長編フィルムを労働組合が入手して作成したのか、その謎は今述べたとおりである。
(ちなみに、伯父の父親、私の祖父は、元駐日大使ライシャワーの友達)。
18:30頃、私の伯父は、電産型賃金をみんなに説明しています。
https://youtu.be/6Faf2TyFrdM


§はじめて帝王学を学術出版した大学教授の話【書評】
現在、ニューヨーク大学の工学部門の教授。
ナシーム・ニコラス・ダレブ 書籍名は『反脆弱性』(ダイヤモンド社)。
著者は金融トレーダーでの実績もあり、自己紹介に「ギリシャ正教の一家に生まれ」として、パリ大学で博士号としている。レバノンのベイルート生まれ、叔父は外務大臣とのこと。ギリシャ正教およびベイルート商習慣は度々登場するが、そういった予備知識を持って読んでみると、とても貴重な資料研究となっている。ベイルートは、彼によると5000年の歴史を持つ商業都市で、街を全面破壊されたのは8回目、現在1975年の全面破壊から再び復興を成し遂げたという。ベイルート周辺は1万2000年にわたって繁栄をしたという人類学的歴史的場所だ。
先ほど、なぜ資料研究と言ったかといえば、この本には結論がないからである。結論を求めないのは、フランスの影響を受けたベイルートの土地柄や更にパリ大学出身といった、米英式とは異なる彼の科学思想だと思われる。出版社は自ら絶賛の推薦をするが、思想:哲学や社会学の理論書には登場する「仮説的論理」を経済・経営・数学の視点でもって、具体的に集計して法則を工学的に導いている。かつ基礎理学や基礎理論のない工学については徹底して批判している。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO20384120V20C17A8MY5000/
とても中身が濃いから、未だ著者も詳細に読み込んではいないが、目前の金融ショックとか、南海トラフ地震が近いとの最新情報の中、この著作の内容紹介はとってもタイムリーと思われる。この本の著者ではないが、「都市は地震や天災で滅んだためしはない。低俗な社会や文化で再建はできない」といった趣旨のことわざもあるからだ。

【役に立たちそうな幾つかの内容を引用】①~⑧
カッコ内は筆者むらおかコメントである。ではどうぞ。

①科学研究者が、「自分のアイデアが現実世界で応用も可能だと思って、自ら実際に日常生活で、そのアイデアを実践しているか?もしそうならその科学者は本物だ」と言っている。そうでない応用可能な学問をやっているとすれば無視するか、注意したほうがい。
(経済経営学では、どこかで見た話を、学術用語らしき言葉をちりばめて書いている、統計数値のみならず過去の有名学者や有名理論をことさら並べている、そういった物が怪しい。日本の大学や大学院では、そんな論文やレポートが学位や卒論では有利と言われている。学問的には、注意し綿密に論証したうえで、「あぁっ、そんなこと知ってる」と言われたものが成功(理解され利用される発明)なのである)。

②現実には、売れない品物のために、マーティング手法が存在している。
(…でも本当は、経験的勘に頼る市場調査を科学的に高速化した物。この人の言うとおり、今の現実はマーティング請負業者が、発注者の意に添うように数値を捏造する。それが大量売上げの源だから)。

③「確率的な理解に築かれたシステム」これは、いわゆる幻想であり崩壊しやすいという学者(この本ではネロ)の言葉を紹介している。また、「自信過剰のパイロットは、いつか飛行機を墜落させる」とのトニーの言葉も紹介。この本の著者は、数字的予測に頼る人が高いリスクを冒し、トラブルを招き、破産崩壊を招くのが目に見えていると言っている。そして、他のページでは「少ないほど豊かだ」と書いている。
(すなわち、90%確率だとしても、「傾向と対策」~AI人工知能でもって過去の傾向を集積し、AI人工知能でもって過去の対策を導き出しても、人類にとって役には立たないと言っている。95%の意見と5%の意見を、同列に扱うことも判断ミスが原因、加えて、物事のプロセスを無視して結果を言いたがることこそ幻想にすぎないのである)。

④デブのトニーという登場人物が出てくる。ほとんど彼は働かないが巨万の富を出た人物として。彼のカモは、オタク、役人、特に銀行家だそうだ。理屈で勝って気持ちの良いという奴がカモ、理屈の勝ち負けを気にしない奴はないと言っている。この本の著者は「カモは自分が正しいことを証明しようとするが、カモでない奴らは金を儲けようとする」とトニーを紹介している。
(…「金持ち怒らず」の日本のことわざ、誰も実証研究していないが、余裕を持っているばかりでなく、聞いた話を聡明に分析する能力があることは確かだ)。

⑤デブのトニーは、あれこれ話す人の脆い(もろい)状況を嗅ぎわけると紹介している。見ただけで判るそうだが、トニーは犬のように近寄って嗅ぐ癖があるらしい。
(…著者には分からないが、脆い人達は、何か臭いのもとを分泌しているのだろうか。この人を避けた方が良い場合に臭いがする。よい匂いの人もいる。恋をすれば匂いを発する。脳科学の分野では、「動物は匂いを間違うと危険だから間違わない」とされている)。

⑥「戦争を支持する者は、少なくとも一人の実子か孫を戦場に送ること」、そうではない人物は信用してはいけないとしている。ローマ時代に建築家は、「自分の建てた建築物や橋の下で、しばらくその下で過ごさなければならない」との倫理があと紹介している。

⑦「リスクを冒して失敗した人は、何もしない人より地位が高かった」と述べ、「学者は、基本的には学術誌に論文は出せても、リスク管理能力は萎えてゆく」と学者の職業的弱さを指摘している。この本の著者は、「みんながそうしているから」とか「ほかのはそうやいる」との主張の仕方が、バカバカしい行動や単純な判断ミスを、個人では起こさないのだが、集団では起こしてしまうと、きっかけと特徴を示している。として、個人に対してはギリシャ正教の聖典の趣旨、「集団に従って悪事をなすことや、集団に迎合するために偽りの証言をすることは罪だ」と紹介している。
(この本の著者は、結論を示していない。だが、倫理問題について、約700ページ中70ページを割いている。←そして彼は、こういう説明の仕方こそが誤魔化しであり、危険だといっているのである)。

⑧結語の章でこの本の著者は、次の趣旨を述べている。
イ)専門化や形骸化のせいで、本物のアイデアを完璧に見落としている。
ロ)全てのものは、変動性において得又は損をする。
ハ)脆さとは変動性や不確実性にもろく、だから損をする。
ニ)肩書目当ての教育や教育者は、無秩序が嫌いである。
ホ)不確実性で得をする代表格が、物理的イノベーションだ。(経済産業省は物理的イノベーションのみをいう、文化や人的組織的関係を含んでいるにも関わらず)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO20384120V20C17A8MY5000/