2003/10/07

第18号

 労働基準法、解雇の条項が、大きく変わります。
 来年1月1日から施行です。

 (解雇) 労働基準法 第18条の2
  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認
  められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 最低限、解雇理由を就業規則に具体的に定めておかないと、「客観的
 に合理的な理由」と主張しても、法律上まったく認められません。従
 来判例から考えると、抽象的表現は手抜かりを招きますから具体的普@現が必要です。「服務規程」では作成方式の期待効果と「社会通念上
 相当であると認められない場合」とが重複矛盾する、いわゆる企業社
 会概念との矛盾を抱えかねませんので不十分となります。要は裁判を
 起こされたとき記載が無ければ、即決敗訴、執行されるということで
 す。今回の法律文は従来の事業所内自治とか企業社会論理を否定する
 内容になっていますから念のため。
 労働基準監督署の中には「労働基準法による解雇の手続を満たしてい
 ても、その解雇の有効または無効の判断は、最終的には裁判所の判断
 によることになることに注意する必要があります。」と、ことさら、
 経営側にとって聞くだけなら心地よいことを話している監督官も居ま
 す。ところが、男女雇用機会均等法のときでも、基準法の過去の施行
 例でも、判断の法律がなかったので、裁判官の中には判断を下さなか
 った者が居たし、あるいは監督官で判断を避けていた者も居たが、こ
 のような逃げが出来なくなった、という効果が今回の改正で生じるの
 です。監督官が判断を示し、その上で突っ込まれたときに「最終的に
 は裁判所が判断する」と監督官個人の責任逃れをするだけの話、と見
 ておいてください。今回の改正は労働側の勝利。経営側に好い顔をし
 ても浮いた話に惑わされません。監督官は司法警察員、捜査もすれば
 書類送検もするのです。
 それと運用実務の話。労基法にいう「解雇」とは、期間中に会社が一
 方的に雇用契約(労働契約)を破棄することです。合意したり本人の
 同意を得たものは解雇といいません。期間中といっても雇用契約が4
 年目に突入すれば定年まで雇用したと裁判所の判例で扱われます。な
 お、勧奨退職、希望退職、自己都合退職などは本人の同意が存在する
 ので解雇にはなりません。退職はただ単に会社を辞めることです。た
 だし、雇用保険の失業給付が3ヶ月間の支給停止となるかどうかは雇
 用保険法の主旨から決定していますから解雇外だからといって同一に
 は扱われません。
 就業規則の、客観的に合理的な理由とするための具体的例を、本メル
 マガの巻末に掲載!!!
 これで、本屋さんで買う必要はありません。無料でどうぞ。「おまけ」
 です。

 年金問題での現場の実態・実情を、このメルマガ、8月号に書きまし
 た。
 年金改革なんかどうでもいいさ!と口にする官僚たちの「理想」を示
 唆した記事を9月号に。
 真意を汲み取っていただいて、マスコミから流れる的外れなStoryに
 もてあそばれないよう、冷静になりましょう。

 個人の労働組合への個人加盟が急増。解雇や条件変更トラブルで。事
 件が拡大して経営側が不当労働行為で訴えられると、どんなに安い弁
 護士でも300万円の費用は必要。火に油を注がないよう注意しましょ
 う。経営の味方の顔をした労務屋とか示談屋には気をつけましょう。
 労務紛争解決機構など経験と教育と国家資格のある安全なところに任
 せましょう。

 景気回復?は経済数値のマジック。前時代の経済指標で今の経済は測
 定できません。まるで明治時代になってから、江戸時代の米の石高・
 大阪商人・両替商の経済指標数値を持ち出して的外れの話題をするよ
 うなもの。ポイントは、一番目に中小企業の海外輸出量、二番目に個
 人消費回復なのです。ヒントは、ITを駆使したマッサージチェアー、
 IT分析で開発された健康食品とかは海外国内に通用する商品になりそ
 うなところに。ターゲットは日本人と当初から限定してイタリアと北
 欧の商品が売れているが、海外進出など思ってもいない中小企業の初
 めての海外進出のヒントがありそうである。経済対策とは商品・販売
 に地に足をつけたことを言うのです。