2011/06/07

第110号

<コンテンツ>
世の中に蔓延するニヒリズムと無気力
いよいよ日銀もイノベーションを呼びかけ
必要な人材、衣食住の商品変遷、業態も変化、働く意識
だとしても、イノベーションが軌道に乗るまでは
混乱のときにこそ、目に見える経営の「型」が大切
この夏の節電対策と就業規則上の扱い
1935年、アメリカのイノベーションには…
人事管理者の「素質育成」勉強会(8月開始)お知らせ


§世の中に蔓延するニヒリズムと無気力
震災・津波・原発対策、この夏の電力対策、第二次補正予算をいつ組むのか、こういった話題を新聞TVのマスコミが、つまみ食いのように面白おかしく、とりわけ読者拡大や視聴率向上を第一念頭において報道するものだから、加えて内閣不信任案提出から否決までの異常な報道合戦は、ニヒリズムと無気力を振りまいたことは確かだ。今や、国民生活に直結する社会経済の話題や、個別企業の経営にプラス材料となるような報道とまでは元から期待しないまでも、新聞TVのマスコミは物事の本質を報道・追及する姿勢に立っているとは思えない。
震災・津波の一大復興事業を誰が手中に収めるかは焦点である。
仮設住宅建設の遅れは、誰かが資材を買い溜めしているからとの情報だ。
8月初旬にも、アメリカ国債がデフォルト(債務不履行)する可能性が強まっている。
財務官僚はマスコミがそうした事実関係を報道しないようにすることで、第二次補正予算や内閣不信任案提出の背景を知られないように躍起になっているとの情報もある。
ドル(米連銀)が破綻すれば、日銀が連銀と無理心中させられて、日本は震災復興予算や原発事故保障費用とは比べものにならない巨額の損失を負うことになる。リーマンショックのときでさえ郵政民営化が遅れていたおかげで、日本の損失が軽くなったとも言われている、にも関わらずだ。
原油産出国の政情不安によるエネルギー見通しも、ほとんど報道されることもなく7月の電力値上げも実施される。
こういった真相に立ち向かわない新聞TVのマスコミに振り回されて、個別企業にとっては、経営者への心理的不安を助長、労働者のニヒリズムと無気力を蔓延させることとなり、大いに迷惑なことなのである。


§いよいよ日銀もイノベーションを呼びかけ
日本銀行といえば、金融政策でもって不況を乗り越える政策イメージが強いのであるが、5月25日、ここにきて日銀総裁はイノベーションを呼びかけた。もちろん、このイノベーションはグローバル展開のもとに国内経済、大手から中小零細企業に至るまで、民間や官庁そして公共事業を問わず「刷新」を呼びかけたのである。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/ko110525a.htm/
日本ではイノベーションを、技術革新と誤って翻訳された時代が長かったので、生産技術の革新と思っている経営者は多い。経済学関係者のイノベーションといえば、シューペンターという学者が提唱したものである。すなわち、ケインズ経済学での金融政策では、どうしても日本経済は難局を乗り越えられないとの判断を示すにいたったのだ。地震・津波・原発の3.11以来、金融政策で日本経済を立て直そうとする発言がめっきり減ったのも然りである。
イノベーションのポイントは5つの刷新(新商品)なのである。
1.新しい財貨、新しいものの発見(例:再生可能エネルギー)
2.新しい生産方式の導入(例:地域発電、地産地消)
3.新しい市場の開拓(例:グローバル、ICT流通市場)
4.新しい原材料、半製品の発見(例:断熱材、超伝導、新家電)
5.新しい経営組織(社内外にわたる)の実行(例:小規模自立経営)
である。カッコ内に示したものは、国内経済の柱となり得る話題の一例に過ぎない。とりわけ、再生可能エネルギーへの転換は緊急課題となっており、この成否が日本経済の将来を決めると言っても過言ではない。
OECDから、日本を世界経済から孤立させるぞ!と直に圧力をかけられた(4月20日事務総長来日)官僚と官僚の下請け達は、それまでとは一変して、「面従腹背」の政策転換、3.11以来の隠蔽方策も軌道修正、掛け声だけはイノベーションに向かっているのだ。


§必要な人材、衣食住の商品変遷、業態も変化、働く意識
だとすると、話が一挙に飛ぶのだが、個別企業で必要な人材は、ただ単に能力が高い労働者ではなく、こういった新しい時代(社会需要)に具体的に貢献出来る労働者に、個別企業の人材確保が変わって行くのが自然なのである。すなわち、人材の評価も能力主義から社会需要貢献主義へと変化をするというわけだ。
産業革命以来、主要エネルギーが石炭から石油に変化して、石炭を基本としていた経済構造から、戦後は石油を基本とした経済構造や幾多の商品に変化してきたが、今後は多様なエネルギーとエネルギー効率上昇によって、大きく経済構造が変化し商品構成も変化、すなわち衣料、食品、住居に至るまで商品変遷して行くのであるから、これに対応する個別企業の役割が大切になってくるわけだ。レンタル型住居の増加。国内での工業製品は売り上げ不振、生活文化商品や感性に訴える商品しか売れなくなるとの見通しだ。
経済構造による業態も変化をして来る。小規模自立産業=ブランド=の割合が増える。大型店舗などは終焉に向かい、商店街は散策型に変化せざるを得ないとも言われる。
そこに働く人たちの意識も、提供する商品に最も適した思索(思い)が濃厚となり、官僚公務員のような均等発想の集団では経営は出来なくなる。すなわち、サービスを行う人材もブランド性なのだ。


§だとしても、イノベーションが軌道に乗るまでは
この間のツナギ(繋ぎ)としての個別企業の対策が必要だ。
それが、このメルマガ前号でも述べた、恐慌の中を企業が残るための守り
 A.在庫編成、負債圧縮、肝心なのは現金を守る具体策
 B.設備削減、アウトソーシングで長期コスト削減
 C.社会整合性のある業務改善や低価格イメージ
すなわち、財務基盤強化、事業基盤強化、売り上げ基盤強化を行うことなのである。
マクロ経済は、少々時間がかかってでも再生可能エネルギー転換による経済構造変化と新商品構成をグローバル展開(直接・間接を問わず)することは間違いない。ところが、圧倒的多くの個別企業が、この間のツナギ(繋ぎ)の移行期間に消滅する可能性が大きいのである。
それはひとえに、個別企業の経営陣の多くが、時代が読めずに、社内で過去を引き継がせ、右往左往による社内混乱、未来方向性のないリストラによる秩序崩壊などを繰り返しているからである。リーマンショック、震災・津波・原発といた節目以降の動きを見ても、政府・官僚に頼っては、個別企業の見通しが立たないことがはっきりしているにも関わらずだ。
個別企業の経営幹部は、「競争力のある企業が、若い労働力を集め、新商品・新市場に進出して行くこと」を経営発展の基礎ベースと見ていない場合が多い。競争力のない企業は、残念ながら早く整理した方が得策である。
また、若者の現代的モチベーションである
 ア.仕事そのものが楽しいこと
 イ.仕事の達成感がある(それなりの計画性)
 ウ.プライベートが充実している
にしても、この間のツナギ(繋ぎ)としての個別企業の対策を行わずに、若者に対する気弱な姿勢と勘違いしている経営幹部が見受けられる。特に、未来方向性のないリストラと相まってしまえば、社内秩序は崩壊=若者からすれば会社の将来を疑惑視=拝金主義と労働紛争が付きまとうのがオチである。


§混乱のときにこそ、目に見える型が大切
個別企業が現在の恐慌を乗り切り、イノベーションを進めるには、現代的には経営の「型」が必要である。昔であれば、理念や精神を学べば、数少ない指導者がこれを具体化し多人数を動かすことができた。しかし現代は、とりわけ日本では、そういった旧来方法で労働者管理(コントロール)することは出来ないのである。
残念ながら、多くの現代的人間は、体得した知識を型でしか表現出来ない。また、型の変更でしか学習することが出来ないでいる。これはコンピューター理論を発見したN・ウィナーの説である。これにより現在のコンピューターが工業化され、飛躍的に社会の効率は高まったが、多くの人間は、いわゆる「型」によっての思考・思索(思い)しか出来得ないまで、型に振り回されているのが現実ではあるが。
したがって、現時点の転機を迎えるにあたっては、
筆者の長年にわたる研究体験からも見えてきたが、
1.経営方針書を簡単に示して、個別企業の内外労働者の将来を導くこと。むやみに目標管理や計画書を労働者に提出させても、空回りをするばかりである。
2.就業規則、労働契約書、社員雇用契約書などで、より具体的に人の動きをコントロールすること。社員雇用契約書の中に職務内容を具体的(プラン、プロジェクト、スケジュール等)に盛り込む必要がある。
3.創業時の社是社訓は通用しないから、個別企業の理念を型にすること。
といった対策である。
加えて、先ほど述べたように、個別企業の提供する商品に最も適した思索(思い)が濃厚となってこそ、服務(サービス)を行う人材のブランド化が進み、よって社会に適応する個別企業が形成するわけであるから、ややもすると社員などの均等化・均一化を支えるような就業規則は、一刻も早く改正する必要があるのだ。総務・人事担当者としては、少なくとも論議の議題にあげて、経済構造変化に合わせた意識改革を手掛ける必要がある。
日本全体の経済政策が、これだけほったらかしにして、後手に回り、日を追って日本の世界ランクが下がりつつある状態であるから、貴方の個別企業だけでもいち早く浮かび上がるしかないのだ。
日本国の官僚たちは、見ての通り地震・津波・原発に対しも「見捨てた政策」なのだから。


§この夏の節電対策と就業規則上の扱い
もちろん、総務・人事担当者は、これをチャンスに次期時代の経済構造や商品構成(高付加価値商品&高水準サービス)を視野に入れた具体的な労働者管理(コントロール)の型を盛り込むことが重要である、もう従来や現行に戻ることもないから。
◎休日の変更は、
土日→木金、土日→月火といったパターンが多いようである。が、実際は変更日の十分な検討が必要である。就業規則などの規定で、1ヵ月間の変形労働制などを定めているのであれば、いわゆるシフト表でもって休日の変更をするだけで良い。変形労働を定めていない場合、あるいは就業規則本体を変更しないのであれば、夏場数ヵ月間の休日振替を行うしかない。振替えが出来なければ休日出勤、代休を与えても割増賃金の支払い義務があるから、早期あらかじめに振替えることである。
◎時差出勤は、
これも、変形労働制を定めておれば、シフト表でもって始業時刻と終業時刻を変更することで可能である。就業規則で固定的に始業終業時刻を定めている場合は、就業規則の変更と監督署への届出が必要となる。就業規則の変更をする場合は、従業員代表の意見を書面でもって聞いて置く必要があり、単なる会社からの発表だけでは法律的効果が生まれない。すなわち、新しい始業時刻に遅刻をしたとしても、遅刻として扱うことは出来ず、賃金カットも不可能となる。
これからの経済構造や生活スタイルのことを考えれば、時差出勤や休日の変更については、1ヵ月間若しくは3ヵ月以上の変形労働制を導入することが理にかなったこととなる。
◎クールビズは、
これを一段と奨励促進するために、クールビズ奨励金を支給して、社内のクールビズに対するブレーキをはずそうとする場合、全員に支給する場合は賃金規定の変更が必要である。積極的にクールビズを行った者に対してだけ奨励金を支給する場合は、クールビズ奨励の個別的労働契約として扱うことが出来るから、賃金規定の変更は必要ない。
◎行き過ぎのクールビズ
が心配な場合は、就業規則の服務規定その他で詳細に決めておく必要がある。既に服装等について概略を定めている場合には、その具体的基準を示す方法もある。いずれにしても最低限の基準としての定めを設定するのであるから、就業規則と見なされるから監督署の届出が必要となる。内容は、個別企業の業種柄、当事者の職業によってクールビズの限度範囲が定められることとなる。クールビズがセクハラとなる場合は、職場の不快感や業務支障のケース、セクハラ被害に遭遇することが予見される業務指示のケース(極端クールビズなのに痴漢多発地帯へ出張指示など)の二通りがあり、いずれも管理者責任を問われる。
◎エアコン温度や風量
安全衛生法上の温度、湿度、換気その他の基準はあるものの、個人差に左右される程度の環境については、法令上の定めは無い。室温が上昇したために仕事の成果が阻害され、労働条件が影響を受けたとされる訴訟などは滅多に無い。むしろパワハラによって室温や風量あるいは煙が問題になったことは従来からも存在はしている。
クールビズといえども、未来方向性を示し将来を実感できる制度がキーなのだ。


§1935年、アメリカのイノベーションには…
その一例として、「フェデラル・ワン」という政策があった。これは、非建設事業のひとつとして、大規模な芸術家救済プログラムを実施したものだ。有名なオーソン・ウエルズ、バート・ランカスターなどは、このときに芸術家として雇用救済された人材なのだ。1935年の第二次ニューディールにおいて実施された人的投資=仕事を与え対価として給与を支払う形式であった。その中のひとつに、「フェデラル・ワン」と呼ばれる芸術家雇用政策が行われた。具体的には美術、音楽、演劇、作家、歴史的記録調査の各プログラムを実施、約4万人の芸術家を雇用した。これにより、ハリウッドをはじめアメリカの芸術文化産業が新たに開花、戦後世界市場に広まることとなったのである。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/001/010602.htm
過去、日本政府内でも検討されていたようであるが、今こそこれを促進すべきである。芸術文化はプロパガンダではないから、人に生きる勇気と感動を与える。無駄の多い雇用調整助成金や基金訓練の予算を多少振り向けるだけで済む。アニメ、漫画、フィギア(スペインで流行)、かわいい(今やフランス語に)ファッションといった文化商品が世界で流行しているが、これにプラス日本人の「技」(こつこつ仕事や習い事は日本独特とのこと)が加わり洗練されれば、グローバルな芸術文化産業に発展するのである。
官僚には、間違いなくこういった事は考えられない、日本はどうなるのか。


人事管理者の「素質育成」勉強会(8月開始)お知らせ
本年度の実施日程 新時代・新経済環境に応じ得る人事施策の創造力や立案能力を養成プログラムに基づいて、人事管理者としての素質育成をはかります。民間では実施不可能な事業を、大阪府の「働く環境整備推進事業」として実現しました。
http://osakafu-hataraku.org/contents/personal/education.html