2003/05/06

第13号

 SARSのアジア経済とアメリカ経済への影響が注目され始めた。確
 かにショックではある。が、昨年のアジア経済戦争に負けた日本が中
 国経済の上位に返り咲くことはないのである。視察や観光案内にない
 現地の都市街中を知る事情通からすれば、この衛生インフラと労働調
 達環境は当初から織り込み済みのことで、その上の経済戦争敗戦認識
 なのである。当の中国経済リーダー本人たちは、病気で少し人間が減
 れば社会全般の矛盾・問題が解決して更なる経済成長ができると思っ
 ている始末である。この現実のポイントを知る日本の中国投資顧問会
 社が存在しないことも残念な話である。

 前代未聞の、労働行政。労働行政は、はっきり変わったといえる。
 雇用保険法が改正され5月1日から施行された。法案が国会に提出さ
 れて後、いつ成立し施行されるかによって、リストラの時期や解雇通
 告日を決めようと思っていた方が多かった。当初の予想は5月1日な
 のでそのまま念のために4月中に退職者を出した事業所は良かった。
 ところが、多くは社内事情や気の緩み、あるいは安定所付近からの10
 月1日説に振り回された。統一地方選挙状況で成立が左右されたとの
 ウワサもある。4月15日付帯決議つきで衆議院で成立。25日午前10時
 半ごろ参議院で成立。25日の夕方から「新制度パンフレット」が安定
 所で配布されている。厚生労働省WEBもミスを抱えながらもページ
 のトップに載せる。改正とWEBを知らせるメールがJIL労働情報
 が25日16時33分作成され即刻官民に一斉配信。土日をはさんで28日ほ
 ぼ全事業所に「新制度パンフレット」が到達。こんな一連の流れであ
 った。びっくりするのは、この段取り?良さ、参議院通過前からパン
 フを作成完備し後は配布だけと準備していたキップ?の良さ。IT化
 が進みイメージはますます変化するだろう。
  http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/04/tp0425-1.html

 個別労使紛争の斡旋をする紛争調整委員会の役割には、実際活用され
 てみると、目覚しいものがある。実例を挙げると仮払金を20数万円持
 ったまま退社して一切の連絡を絶って、その家族も取り合ってくれな
 い挙句、駄目もとの「あっせん」に応じて話し合いの窓口が出来たケ
 ース。退職金大幅減額問題で、入れ代わり立ち代り何人もが朝から夕
 刻まで幾度も、社長に面談に来ては堂々巡りの話し合いで仕事どころ
 ではなかった事態が、代理人をたて「あっせん申請」に入り、紛争調
 整委員会の事情聴取が事業所内で始まるや否や、業務は正常になった
 ケース。などなど。
 相手方を追いやってしまっては話合入口のきっかけすら出来ない。訴
 訟では相手が構えてしまい打開が計れない。ここを紛争調整委員会で
 道を開き、けっこう円満に解決できる手助けになっている。日本に無
 かった制度なので予想できなかったとは言え効果はおおきい。紛争調
 整委員会に引き出されて、悪行の居直り、仕事不履行の言い訳まです
 る社員はさすがに居ない。本人の不真面目やアイマイな態度で困る事
 案にも効果的である。
 ところで、司法制度改革推進本部は、平成16年設置をめざす労働調停
 制度の大枠を明らかにした。労働関係紛争を扱う新たな処理機関と位
 置づけ、最高裁判所が任命する専門調停委員が紛争解決に当たるとの
 こと。調停成立の見込みがない場合は、委員の意見などに基づき調停
 に代わる決定を積極的に行う考えらしい。やはり裁判所なので、斡旋
 とは異なり労使対決が前提となっている。弁護士としても「対決して
 戦い」その後「矢尽き刀折れ」調停に持ち込まないと仕事として成立
 しない。果たして「対決」が経営者や労働者の社会ニーズに存在する
 のでしょうか?切った張ったの対決姿勢は産業や生活を豊かにするだ
 ろうか。

 厚生年金へのパート加入?今の流れからすると、社会保険事務所は数
 年のうちに徹底させるようである。バラバラに流れ出る情報ではパー
 トへの適応はまだまだ先とか実態は未加入で逃げれそうに思いがちで
 ある。ところが、整理してみるとこうなる。15年前パートの社会保険
 加入を拒否する社会保険事務所は多かった。理由は保険料収支バラン
 スが合わなかったからとか。いま厚生年金資金は現在無いに等しい?
 とも…穴が開いてる?とも…年金資金運用悪用?。本年10月からは社
 会保険料と雇用保険料を電子申請によって一括支払してくれる政府に
 とって「ありがたい」事業所がいっぱい出てくるので集金の手間がそ
 う掛からない。週20時間働くパートは雇用保険に加入している。厚生
 年金も同じ加入基準で300万人の被保険者増だ。収入要件を考えると、
 パート時給相場=103万円÷30時間÷48週間だ。65万円÷20時間÷48週
 間=677円は大都市圏の最低賃金を超える。65万以上の年収パート加入
 とすると被保険者400万人増。2007年からの団塊の世代への膨大な資金
 支出には遠く及ばずとも年金資金の大穴埋めには積極的理由はなくて
 も魅力的財源なので「妥当」との審議報告が出そうである。パートの
 人件費総額も今から計算しておいたほうが良い。保険料追徴は2年分
 全額事業主負担になるので要注意。

 4月からの経済の落ち込みは激しい。経済統計を待つまでもなく肌で
 感じる。日本の産業を支えるあの部品メーカーもこの機械メーカーも、
 海外の代替が出来ないものを製造しているところも、ても資金繰りで
 ショートしそうである。さらに、アジア圏での経済戦争で中国とイン
 ドに負けたとの自覚で以て、日本にしか出来ない製品やサービスをや
 っている企業が資金金融不安なのである。約4兆円の個人消費消滅シ
 ョックによる6月以降の更なる落ち込みは給料の遅配までも随所で生
 み出すであろう。「月給日に給料がもらえてうれしい」との「喜び」
 の声を数十年ぶりに聞くことになるかもしれない。給与遅配の前に退
 職されると、退職金ショート+差押えのWで=民事再生を掛けるどこ
 ろではない。
 経済落ち込みや無秩序状態に対して労働関係法令の改正は遅く、まし
 て裁判所判例はほぼ昔のままである。さらに専門家でも間違いやすい
 ほど「時代についていけない企業」への負担急増や足かせの法改正が
 目白押しである。年金基金の脱退・解散とか、生保の説明責任を欠い
 た適格年金、これの廃止?だけでは焼け石に水だ。日本では、この70
 年間昭和恐慌以後は、問題を先送りすることで本当に儲かった。日本
 人の経営哲学や人生哲学はここから来ているのだが。差し当たり3年
 は政府に頼らず、自前で安心安全経済圏を相互に構築するのが良策だ。
 ITが無かったので同様とはいえないが江戸時代の信用創造方法は極
 端な教訓ではなさそうだ。現時点は、日本だけの製品・技能・技術を
 残すには当該企業が必要である。大切な企業で「社員の不満を解決し
 退職金を不支給」かつ「士気を落とさず」数年後経済回復兆しの見え
 たとき打って出る「準備を合法的」にする秘策の実行。ジェネラリス
 ト志向者の「そんな秘策信じられない」との質問への答えはこうだ。
 …人に言えない仕事内容ではなく、言われるがままの素人仕事でも無
 い。むやみに実行しないが条件がそろえば「つまずく前に腹をくくる
 事態が来ただけ」と専門家は自信を持っている。