2004/02/10

第22号

 サービス残業の摘発が次々と行われている。是正勧告で賃金不払いを
 支給させただけでなく、近年になく、次々と書類送検をおこなってい
 る。刑事訴追をするのでいわゆる見せしめ的な傾向があるが、近年に
 なってこのような連続して摘発はなかったものだ。さらに、マスコミ
 でにぎやかに報道されていることを受けて、内部告発が相次いでいる。
 サービス残業に関する労働基準監督署の着眼点はこのようなものが考
 えられる。(フィクション作品にあらず)
 まず最初に通報とか申告があった場合に、7つのパターンでもって、
 サービス残業の方法を想定する。
 (1)自己申告規制型(自己申告させつつも、陰に陽に圧力)
 (2)上限設定型(一定時間以上は切り捨て)
 (3)定額型(一定時間以上は支給せず)
 (4)下限設定型(定めた時間に達しない場合は切り捨て)
 (5)振替休日消化型(時間外分は休日にと言うが未消化)
 (6)年俸制組み込み型(年俸制で時間外込みと説明)
 (7)法不適合型(管理職範囲を拡げている場合)
 次に、監督官は手間のかからない方法で資料の収集を行う。通報者か
 らのコピーを集めたり、申告者の事例を充分検討したりする。この段
 階で、あまりにも具体性が弱い場合には「労働条件の調査について」
 と称して、事業主の呼出し行う。そこでもって全体的な資料の収集を
 行うのである。いくつかの具体的な証拠が確保できた場合には「臨検
 (りんけん)」と、俗にわれる立ち入り調査を行う。その場で証拠集
 めをする。タイムカードや賃金台帳のコピーなどを提出させる。労働
 基準法違反でもって調査をすることから、申告した者に限らず幅広い
 範囲で証拠集めをする。さまざまな証拠を示し、監督官は管理責任者
 に問い詰める。サービス残業があったかどうかをその場で返答させよ
 うとする。ここまでくると、ほとんどの人は「持ち堪える」ことは出
 来ない。「天下の○○電器」と強気な管理職の例ほど、直面すると、
 非常に弱かったり、事前に分かっていると、その日に欠勤をしてしま
 うと見た方が通例だ(要するに、単なる内弁慶)。あいまいな返答や
 説明を続けていると、深夜の臨検で現場を押さえたり、社内パソコン
 の電源記録、メールの送信記録、ビルの最終退出者記録などを用いて、
 「悪質な対応に対して」は徹底して調査または捜査を行ってくる。セ
 キュリティシステムの万全な職場ほど証拠はすぐあがる。その後も否
 認を続けたり、サービス残業の賃金支払いを拒否し続けると、検察庁
 の書類送検は免れない。残業時間の記録操作とか証拠隠滅をはかった
 りすると逮捕は免れない(労働基準監督署に身柄を拘束される)。賃
 金不払いがその事業所だけで一億円(ひと月に按分すると420万円ほど)
 を超えていると、ほぼ逮捕となる。

 日本には独特のモノづくりの方法がある。日本における「開発風土」
 といってもよい。日本の高学歴、日本での仕事の進め方、職人的技煤@の蓄積の仕方とその職人の生活保障、日本国内での高品質に対する仕
 事の評価、高品質商品の購入動機など。これらが重なり合って生まれ
 ている風土ではないかと思われる。
 世界に向けて、今売れている商品はこのようなものである。昨年来
 「高付加価値と高い質のサービス」と言われてきたものである。この
 ような開発風土はヨーロッパの北の地方と日本にしか見当たらない開
 発気質のようである。問題はこれを支えるための仕事を遂行すること
 である。そのような部品供給だったり、そのようなコンピューターメ@フト開発だったり、ITネットワークだったり、対事業所サービスだ
 ったりなのである。日本で行われている一般消費者向けサービスは外
 国でも通用する。国内で試して、次に標準化をして、人材を育成し、
 その成功事例をもとに多国籍展開をすることは、中堅・中小企業でも
 充分可能なことである。日本経済はいよいよ民間の知恵と自力で再生
 をし始めたようだ。70年前の昭和大恐慌のときは、回復を取り戻した
 途端に政府がいわゆる「ぜいたく禁止令」を出して成長を止めてしま
 った。今の政府の経済政策は止めることはなさそうだが、育成も大き
 なブレーキをかけているのが実態だ。
 そこへ、今まで、属人的といわれてきたKNOW?HOWの蓄積方法
 が科学的に解明されエクセルなどで整理分類されるようになったので、
 KNOW?HOW開発も日本の有効な得意資源となり、個別企業の大
 きな武器となるだろう。

 年金改革の問題はテレビ、マスコミで話題が集中している。今さら話
 しても仕方のないようなことは、ワイドショーに任せるとして…。パ
 ートタイマーの年金加入問題の先送りは官僚としては痛かったようで
 ある。官僚はまさか経営者団体が理論だけで、そこまで反論するとは
 思わなかったようだ。厚生官僚はマスコミ報道のニュースソースに本
 質的な話は流さなかった。政府審議会の委員も年金問題に素人な者に
 限った。これで何とかホオカムリし続けようと事実事務次官は自信を
 持っていたようだ。ところが、経営者団体には本当に本質を見抜かれ
 てしまったようだ。労働団体はそのへん厳しく見抜くことは出来なか
 った。
 しかしながら、「保険料と給付のバランス」の理屈をこねて、被保険
 者がキツネにつままれているうちは、まだまだタカをくくるつもりの
 様子だ。5年先送りになれば給付が減るだけという案ばかり。18.0%
 になったとしても70歳以上の給付を削るだけの考え方も同じ発想パタ
 ーン。官僚としては4百数十兆円の使いこみを、責任追及されるまで
 は、保険料と給付のバランスと言っておけば、なんにも考える必要が
 ないのである。女性の年金、もお茶を濁したようなお粗末な話。「離
 婚をしたとき妻に年金がない」とまことしやかに説明されているが、
 西独で30年ほど前に同じような制度を実施してからというもの夫は離
 婚されないように、家庭サービスを励むようになったことから離婚が
 減少していったとの事例がある。これにしても厚生労働省の議論は枝
 葉の問題ばかりで的を射ていない。厚生年金基金は年金制度と一体の
 制度である。まるで別もののように宣伝し取り扱われているがそうで
 はない。給付カットや解散が続出しているが、そもそも厚生年金基金
 の設立を促してきたのも、今の事態を充分予想出来得る厚生官僚であ
 った。

 65歳までの継続雇用義務化。今通常国会に高年齢者雇用安定法改正案
 を提出。65歳までの継続雇用を企業に義務付ける高年齢者雇用対策報
 告をまとめた。継続雇用の年齢を2006年から段階的に引上げ、2013年
 までに65歳定年などを完全実施する計画。3?5年は暫定措置として
 就業規則での選抜方式でも可能な道も考えた。2007年から団塊の世代
 の定年ラッシュが始まる。全雇用者数の9.3%に当たる500万人が2010
 年までに60歳になる。このままでは年金にしろ個人消費にしろ納めた
 り生産する側から給付を受け消費するだけに変わるのである。経済を
 ストック(蓄積)と考えている人にとっては、背筋の凍りつく話であ
 る。(ベビーブームとは1947年生まれが約267万人、1948年が約268万
 人、1949年は約269万人。ちなみに、2002年の出生数は115万5千人)。

 「派遣」と「請負」の区分が極めて不明確になっているとの調査が、
 今ごろになって発表された。業務請負を利用する企業の3割が請負社
 員の勤怠管理を自社で行っているとのこと(愛知県経営者協会の「非
 正規社員雇用管理調査」)。これは特に小規模企業では顕著。ユーザ
 ー企業が、業務請負社員に対し、業務命令を出している割合も全体で
 4割、小規模企業では8割を超えるとのこと。3月からの都道府県労
 働局の取り締まりの大きな利用資料となりそうだ