2004/06/08

第26号

メイド・イン・ジャパン、商品の売れる基準は、「高付加価値製品と
 高水準サービス提供」の相まったものである。国内市場で認められれ
 ば、世界市場でも認められることになるのである。DVD、液晶テレ
 ビ、デジタルカメラも、この基準である。中国特需で輸出される商品
 もこの基準である。新技術開発一辺倒では成り立たない。世界に肩を
 並べる家電メーカーは、サンヨー、シャープ、キヤノン、ローム、で
 あり、昔から名前を聞く家電メーカーは入っていない。大手企業も中
 小企業も、メイド・イン・ジャパンで未来を切り開くには、個別企業
 の持っている技術や技能をもう一度棚卸ししてみる必要がある。
 今や、この棚卸しが、総務部門や人事部門の重要な仕事の柱となって
 いる。その意味ではつい先日まで使われていた評価基準などは、時代
 の目的にかなっていないので、根本的なところからの修正を必要とさ
 れている。場合によって旧来のものは使わずに、個別企業ごとの棚卸
 しを想定して、自社開発した方が現実には大いに役立つ。
 NHKで「冬のソナタ」という韓国の番組を流している。みなさんも
 見ての通り音声や画像が何か不具合を感じる。これは俳優の手抜きで
 はなくて、音響や映像の技術が、驚くほど未熟だからである。口元と
 セリフが合わないとか、常にエコーがかかっているようなものは、日
 本のプロだったら、絶対に製作することはない。「高付加価値製品と
 高水準サービス提供」とは、例をあげるとこういう事なのである。
 一方、中国特需の内で、新日鉄のバーター目的の合弁、トヨタの自動
 車ローン販売は、「腹に一物、背中に荷物」の観が否めない。中国の
 開放経済以来、よく似た戦略で、多くの海外資本が辛酸を舐めてきた。
 乗せられ浮かれ泣いた日本企業も同じ事をしていた。現代中国の深層
 文化と実態経済を把握してないが故に選択した幼稚な経済進出方針で
 ある。中国は現金取引、代金回収の担保が無いのである。ここでも
 「高付加価値製品と高水準サービス提供」の戦略に尽きる。中国がダ
 メでもアフリカや東欧には市場がある。
 ところが、このようなポイントは分かっていても、なかなか改革でき
 ないのが現実である。と、ここまでは素人の話だが、プロの専門家か
 らすれば、改革にブレーキをかけている原因は次のものである。経済
 的な背景としては「利回り資本」なるものに頼っていること。職場
 (社内)問題としては事実上の「拝金型賃金体系」と拝金主義で物事
 のお茶を濁してしまう横槍横車で判断が歪むところに原因がある。詳
 しくは別の機会にお話しするが、決して日本の教育制度の問題ではな
 い。個別企業においての今日までの総務部門や人事部門の政策的欠陥
 を根本的発想から変えることがホームランとなる。

 景気回復とテレビやマスコミで一斉に宣伝されている。回復している
 のは、自動車産業とデジタル家電ぐらいのもので、それ以外は、「う
 まくいけばこれから何とかなるかな??」程度のものである。三菱の
 リコールは、技術とはまったく無縁で、単なる会社の不道徳な経営方
 針だっただけである。一部には「自動車産業全部がそうだ」と企業の
 不道徳性と技術改善方法を故意に混同させる屁理屈まで持ち出してい
 る。スリーダイアモンドといっても明治維新以降の新参者なので、や
 はり、深いところの理念は未熟である。このような不道徳性がメイド・
 イン・ジャパンのブランドを傷つけるのである。日本のIT部門は今
 年中に韓国に追いぬかれることは間違いなさそうだ。液晶テレビとい
 っても外国企業との技術争奪戦で3年後には負けるかもしれない。ま
 だまだテレビやマスコミの「景気回復」の宣伝に浮かれる状況とは言
 えないのである。

 来年の2005年3月末までに、不良債権を半分にしてしまうという金融
 政策は、数値目標だけは達成しそうだ。竹中担当大臣も地方銀行の不
 良債権については、「数値目標にこだわらない」として、余裕を見せ
 ると同時に地銀各個撃破も辞さない構えである。いわゆるサービサー
 の効果(債権回収会社)も不良債権「棒引き」に一役買っているよう
 だ。ところが、世間一般でほとんど話題にされていない重要な危険事
 項がある。それは国債の大量発行だ。日本銀行と市中銀行と財務省の
 三者で、融通手形を回し合い、をしていることと同様のことを行って
 いる。ハイパーインフレ論が受けなかったので、今度は「融通国債」
 論というところか? テレビで「身近になった国債」などと宣伝を行
 っているが見るたびに恐怖を感じてしまう。来年3月末までの経済指
 標の注目点は金利と国債の価格である。設備投資や物価水準あるいは
 失業率はとりあえず見ておくだけで十分である。個別企業の経営管理
 のポイントは、参議院選挙でもなければ、年金問題でもない。今は自
 社の技術と技能の棚卸しである。

 年金問題は何回も取り上げたのでもうメルマガに書くことがなくなっ
 た。これからの注目点は社会保険庁や社会保険事務所がダブルスタン
 ダード(裏と表の二重の運用基準)をどのように取り扱うかの部分だ。
 今のところは、「こうすれば儲かる社会保険事務所の営業」のパロデ
 ィ(メルマガ03年9月7日17号)に、だんだん似てくるようだ。
 健康保険や年金の手続きを扱う社会保険事務所では、職員などの増員
 をする予定は一切なく、現在でもサービス残業が行われているケース
 があるところへ、今回の改正で業務量が一層増加する、との信頼でき
 る消息筋の話!

 今年の3月1日から労働力需給政策が大きく変化した。労働者派遣法
 などの大幅改正である。申請書の書き方がちょっと変わったとか、法
 律が実情に軌道修正されたとかの認識はとても甘い。請負業のチェッ
 クリスト、派遣労働者のチェックリストなど、次々とパンフレットや
 WEBが流されている。
 この状況の中、人材派遣大手といわれているスタッフサービスは、い
 わゆる「やり玉」に挙げられている様である。5月24日大阪での過労
 自殺に引きつづく賃金不払いでの3箇所の家宅捜索。6月5日派遣先
 富士通での派遣法違反と行政指導の報道。このスタッフサービス(テ
 クノサービス)は昭和61年の派遣法施行から、業務請負での先駆的役
 割、業務確認(面接ではない)、コスト計算での派遣料金明瞭化、複
 合業務(一般業務ではない)の派遣、雇用保険の全面適用でのスタッ
 フ確保、社会保険の適切加入などを業界に先駆けて実施し、派遣業に
 対する風当たりのキツイ中、「市場の良識」の支持を得て急成長を遂
 げた派遣会社であった。反面、パソナやパソナソフトバンクは、労働
 省の政策はどこ吹く風として、札束を握りしめ、札束でスタッフのほ
 っぺたをたたくような行為を行うなどの体質から、当時、いわゆる
 「やり玉」にあげられていた。あえてそれをしり目にし、逆手に取っ
 て成長したのが、このスタッフサービスであった。
 ところが、政府の政策がこの春に転換しても、転換することは数年前
 から情報が流れていたにもかかわらず、スタッフサービスは経営方針
 を切り替えられなかったようである。背景に持っている体質から、暫
 くの間はスタッフサービスが「話題を提供」してくれそうである。今
 回のいわゆる「やり玉」での問題分析において「労働政策の転換では
 仕方ないのか」と分かったような悟りを開くのは間違いで、トラブル
 のきっかけは、単なる「おごる平家は久しからず」なのである。