2004/08/10

第28号

 「この世の終わりか?異常気象!」と、一昔前なら大騒ぎである。猛
 暑が来て台風・水害、秋がきてトンボが飛び交い、名月を見たかと思
 えば、二度目の夏でまた猛暑。みなさんくれぐれも、からだを、お大
 事に。

 景気が活性化しているときは、天災や猛暑は経済のプラス材料になる。
 昔から、「災難や大飢饉」は、不況の真っただ中に起こった。江戸時
 代は経済抑制政策で不況の連続であった。なので話題になり歴史に残
 った。一時的災難で人々はめげないのである。景気がよければ、災難
 も経済活性の起爆にもしてしまうのである。
 今年の夏は猛烈に暑い。ところが、猛暑の夏の年のような夏物商戦に
 はなっていない。商品の売れ行きが伸び悩んでいる。答えは簡単。個
 人消費の伸び悩みではなくて、個人消費をする余裕がないのである。
 夏のボーナスといっても、大手の三分の一の企業は好調のようだが、
 残り三分の二、そして中小中堅企業では、まだまだ下回っているのが
 実態である。まして、日本の約5400万人ほどの雇用者数のうちで1900
 万人ほどは、契約社員、派遣社員、パート、そして会社役員なのでボ
 ーナスがない。
 いよいよ、来年の「平成17年3月末が不良債権処理」の金融庁の目標
 期限である。
 おりしも、高度経済成長時代の華やかしき頃、あこがれの的であった
 グループ集団が腐敗と崩壊の危機に立っている。有名なところでは、
 社会保険庁・社会保険事務所で加えて運営組織の機能不全と組織求心
 力崩壊も起こしている。「ウソ印乳業」は近代歴史の地位から転落し
 た。「菱モチ」グループは再生不能どころか、改革方針が実行できな
 いほど組織崩壊の状況で、世界市場や技術の真価においても衝撃は甚
 大である。
 こう見てくると、大きな歴史的大転換を認識せざるを得ない。例年と
 か…、通常は…等の尺度はまったく通用しない。
 ブッシュ大統領は4年前にITバブルを意識的に崩壊させた。今また
 IT産業は回復基調のようであるが、アメリカ大統領選挙は歴史的大
 転換にプラスに働くのであろうか。候補者人物よりも選挙支持応援集
 団と政策に分析の焦点がある。平成14年年末の日本のアジア経済戦争
 敗北以来の、日本の「高付加価値商品と高水準サービス」経済戦略上
 の焦点もある。一方、中国経済ブームに、アメリカ大統領選挙がなけ
 れば2008年北京オリンピックまでの限定期間付きで、浮かれていても
 安心である。中国の反日運動は、従来から存在していて、一般日本国
 民が知らなかったことだけのことだから、殺人事件でも中国側から報
 道されない限りは、中国政府の外交問題化は先送りと見てよい。オリ
 ンピック後の抗日運動、それは中国政府の無関心裏で、工場実力占拠、
 技術詐欺流用、代金不払事件などの多発と予想すればよい。

 個別個人ごとの職場トラブル、労働条件や退職トラブル紛争の解決方
 法に、紛争調整委員会の「あっせん」が一挙に知れ渡ってきた。平成
 13年から制度はあったが、知る人ぞ知るで、個別企業での有効活用は
 あっせん代理人制度が出来てから始まった。
 今までなら、労働組合か示談屋が出てくるか、トラブルにならないと
 しても労働意欲の低下を覚悟しなければならなかった。全てが労使対
 決姿勢であったからだ。コミュニティユニオン(合同労組)で解雇な
 どがトラブった場合、パートで100万円、社員で300万円ほどの解決金
 が必要である。地位保全などの裁判を起こされると70万円持って労働
 専門の弁護士事務所に、会社が、駆け込まなければならない。着手金
 が50万円の弁護士は敗訴の覚悟が要る。労働者側弁護士は、東大や京
 大の学生現役司法試験パス組の宝庫であり、情実による10万円着手金
 で後払いはザラである。解雇を撤回して組合員がひとりでも残ると、
 どんな会社でも団体交渉でプロを相手にすることになる。労働組合は
 刑事免責と民事免責をフルに使った行動が出来るので会社には「無視
 の仕様」が無い。労組に、「たいがいの事」をされても警察はじめ、
 監督署、安定所なども結局は(国家の民事不介入で)手を出さないこ
 とになっている。…これが現実。
 では、「あっせん」とは。都道府県労働局に紛争調整委員会が設置さ
 れている。個別企業が労働局長あてに、職場トラブル発生前にあっせ
 ん申請を行い、紛争調整委員会のもとにあっせん委員があっせん作業
 を行うことで、労使の話し合いの場を提供する公的機関である。今ま
 でだと、個別企業では「事前のリスク対策に落ち度があったと」あき
 らめていた労務トラブル事案についても、今では、あっせん申請をす
 ることによって後からでも取り戻すことがでる。一般のコンサルタン
 トと称する人は、「事前のリスク対策」しか口にしないが、「あっせ
 ん制度」ができたおかげで、この分野では「事案が発生してから後で
 も」対処は可能になった。紛争調整委員会は、司法機関のように法律
 判断をつぎつぎに下していく所ではない。行政機関に属するので、こ
 こは労使の個別的当事者間の主張の食い違いを調整していく所である。
 話し合いを促進させることが目的。うやむやにならざるを得なかった
 事案とかリスクについて、紛争調整委員会という公の場でもって、個
 別企業にとっても権利を主張することができることになったわけだか
 ら、労使トラブル処理の内容と方法は大きく広がったわけだ。あっせ
 んの初動対応で労組や示談屋も排除できる。特に個別企業の権利主張
 などは、初めてできるようになったので注目される。
 では、いったいどんな事例が取り扱われているか。人事総務担当者と
 しての入門書が出版された。民間の立場から書いた書籍の類はまだま
 だ少ない中で、「あっせん代理人の仕事と受注開拓のすべて」(村岡
 利幸著、日本法令出版、2800円)である。あっせん代理人のあるべき
 姿を示す専門的教科書ではあるが、個別企業側からの、「あっせん」
 を依頼するノウハウや、「あっせんをどのように活用すれば有効なの
 か」にわたり知る上で、大いに役に立つ本である。
 「あっせん代理」…でGoogle検索などすると書名の紹介が出る。
 日本の賃金問題研究の第一人者の孫田良平先生(中央労働委員会の斡
 旋の調整課長も務めておられた)から、時代の大きな変化の過程で
 「法律も行政解釈もこの変化に追いつけず、賢者の斡旋・調停でしか
 解決できない。事実と解釈を当事者個人は自己の都合で勝手に判断し
 て紛争を泥沼化する。泥沼を清流にする賢人の業務は責任重大だがや
 り甲斐あり、」と「法文よりも事実尊重、理性より徳性による解決が
 期待されます。」と孫田先生の永年にわたる蓄積からの書評をいただ
 いた本である。とりあえず買ってみる価値は大いにある。
 「あっせん」制度は、職場トラブルのみならず、退職金など大型労働
 債務の労務政策での切り札となり、企業存続・好転のきっかけとなっ
 ている。民事再生や「裁判覚悟」強気方針では無理がある。大手中堅
 企業においては、希望退職を募り3年分の年収を退職金に上乗せして
 10年分の人件費を払わなければ7年分お得なんてな単純発想はもう通
 用しない。今流行の「転籍予定出向制度とコスト抑制型ヘッドハンテ
 ィングを組み合わせ」ても、実は数字合わせの焼石に水で、労働意欲
 減退やトラブル事件発生率は高まるばかりである。事業の柱と会社の
 石垣は築くのには何十年もかかる。話題の「菱モチ」グループは、や
 はり明治以後の典型的な「日本国あっての新参者」集団で、有名有煤@学卒者をかき集めの、時代錯誤の身分的人事管理を行ってきた結末で、
 信用で敬遠される集団に陥ったのも歴史の必然かもしれない。とする
 と「あっせん」制度が、今までの制度の枠組みとは異なり人事総務部
 門の仕事概念が変わる勢いで広まっているのも、納得できる。

 景気経済の先行き、社会の先行きが、本当に見えません。今年の8月
 9月は猛暑の中で、じっと我慢しながら状況分析をしましょう。残暑
 お見舞い申しあげます。