2004/10/05

第30号

 来年3月末の不良債権処理計画期限まで、六ヵ月を切った。金融庁は
 地方銀行や信用金庫に手を付けてきたので、その面から中堅中小企業
 のリストラや企業再編が本格的になってきた。事業自体の赤字企業は
 相手にされず、支払い予定額(たとえば退職金債務)や借入金のバラ
 ンス超過にまでチェックが、融資条件に入ってきた。これをキッカケ
 に大手中小を問わず、旧態依然の社会や世間体にあぐらをかいてきた
 個別企業は激烈なリストラか事業廃止を迫られることとなった。
 ここで日本再生に向けての「高付加価値商品」または「高水準サービ
 ス商品」を提供できる事業体制を作り上げるための総務部門の役割は
 きわめて正念場である。営業や製造その他部門の活躍が大切と一般論
 では言われるが、これを現実に各部門の力を発揮させて、足を引っ張
 り合わないよう社内をまとめるのは、総務部門だけが組織的に行なえ
 るのである。

 「退職金が支払えない!」。ほとんどの企業が頭を悩ましている。景
 気の良い時に節税対策だと言われて、退職金規定を作り退職金引当金
 を水増ししたのだからなおさらである。そこへ、金融機関の貸し出し
 条件に、労働債務(とくに退職金規定と支払い資金)の縮小までがチ
 ェック項目に入ってきたから、ここにきて退職金問題に急に火がつい
 た。適格年金などを取り扱う金融機関や生保は「さぁ?。大蔵省が認
 めた?ものだから?大丈夫?なのでは…退職金規定で払うと決めたの
 は、お宅の会社でしょ」と、制度加入の時とは裏腹に200%の逃げの
 姿勢である。「退職金の廃止だ、減額だ」との労働条件不利益変更は
 とても厄介なもので、定年退職(解雇)と重なり、危険は少なくとも、
 法律上の手続きと社員との合意努力がなされていない場合は5年の間
 は訴訟されれば5%の利息付で敗訴する。労働者側の弁護士費用を支
 払えとの判決も珍しくない。秘密のうちに退職金規定を変更しておい
 ても周知した事実がないので、もとより変更は無効となる。社員から
 退職金廃止の同意書を取り付けても全面無効である。労働基準法や判
 例に則っていなければ、紛争調整委員会の「あっせん」を申請しても
 門前払いとなる。退職金を払う一時金がないとのことで、それに見合
 った継続雇用で難局を乗り切る方法があるが、労働意欲を低下させな
 い合意形成が非常に難しいのである。退職金資金が危なくなる2年前
 の対策が必要であるが、今からでも「あっせん代理人」にアドバイス
 を受けるのが良い。あと3年で、団塊の世代の大量の退職者が出るな
 どの2007年問題と言われているが、一件の裁判が個別企業においては
 全員に響き激震を起す。退職金訴訟は部長クラスの退職者に集中して
 いることに注意が必要である

 人事や総務部が、驚き弱ってしまうセクハラ事例。次の事例は、最近、
 紛争調整委員会の「あっせん」に持ち込まれたケース。あっせん代理
 人が付くことで裁判よりも気軽に持ち込まれるのだが、自分の会社で
 こんなことをする社員がいるかと思えば、今までのセクハラ対策は、
 いったい何だったのかと落胆してしまう。そこには、悪質セクハラの
 加害者の多くが高学歴であり有名大手企業などの安定した地位の男性
 であるとの特徴がある。「まさか、あの人に限って」の人物なのであ
 る。
 ・寄ってたかって触り放題の乱チキパーティーを強要し、それを右斜
  め前で見ぬ振りをする上司二人。ソフト開発業。
 ・十数年にわたり職場妻をしつこく迫り、被害者が精神疾患となれば
  自己都合退職を強要。社会福祉法人。
 ・50歳過ぎたおばさんにお恵みをと、みんなの前で1円玉を投げつけ
  る親会社の出向社員。
 ・派遣先の上司に仕事で呼びつけられ、車に軟禁、ラブホ未遂、水を
  飲ませずケーキを詰め込み、駅にポイされて、会社の誰もが知らん
  振り。
 ・セクハラ相談したところ、警察への通報や損害賠償請求は致しませ
  んとの確認書を書くように強要した人事部。大手派遣会社。
 ・セクハラ被害者を無視、加害者男性を昇格させる、会計事務所の所
  長。
 ・普段はエロいやみ、飲めば女の服をはぐ、「そういうキャラなおま
  えが悪いんよ」とうそぶく、フィギア系の強面店長。外食チェーン。
 加害者の責任はもちろんである。人事・総務部門が本当に困ってしま
 うのは、セクハラ発生後に現地の管理責任が果たされていないことだ。
 よって、問題はこじれ、憎悪が募り、自殺未遂が生じ、そのすべてが
 会社の責任になることである。現地の下部組織で中間管理者も含めて
 事件が隠されているため、あっせん開始通知が来た人事総務部門では
 寝耳に水なのである。表面的セクハラ対策だけでは高学歴者のセクハ
 ラは地下に潜ってしまいがちなのである。

 black-humor???
 「こうすれば儲かる!社会保険事務所の営業???」
 ・標準報酬月額の全国平均より給与の高い企業単位では強制適用と法
  律を振りかざして保険に入れる。
 ・平均より給与の低い事業所は、難癖をつけて社会保険に入れない。
  …出費が多くなるから。
 ・保険料が未納になるようなら、数十人以下の事業所は、さっさと社
  会保険をやめさせる。
 ・倒産会社などでの保険料が回収できない遡及加入手続きは、担当社
  保職員の出世にひびかせて遡及加入を阻止。
 ・脅しに弱い大手企業の子会社を重点に、「パート加入」で保険料を
  かき集める。
 ・回収に手間の掛かる企業とか調査に時間の掛かる事業所はこの際、
  手を付けない。
 ・これらを10年ほど続け、社会保険は高給与優良企業ばかりにする。
 ・安月給劣悪企業は保険給付が持ち出しになるので被保険者と事業所
  を国民健康保険と国民年金に移してしまえば空前の利益金が出る。
  そのような法律改正をするだけだ。
 ・年金受給者への資金が無くなれば支給額をカットするだけのことで
  ある。??えっ?そんな!「政府のやることか?」と国民に抗議さ
  れたら、社会保険を民営化して官僚も職員も丸ごと天下るだけ???
 (と倫理観のない営業方針の話。一応パロディのツモリ…2003/9/9当
 メルマガを再掲載)
 もとより昭和36年の現行年金制度創設のときから給付と保険料バラン
 スは「合う分けがない」のだから法律改正などどこ吹く風で、社会保
 険事務所の現場で文句さえ出なければ良いと、官僚は考えているのだ。
 民間に対する現場での合言葉は「保険ですから採算が…」の二枚舌。
 よって、年金改正が今月から実施されても、個別企業の社会保険に関
 する総務部門の方針をめぐる背景や状況はそのままである。来年は健
 康保険の改正である。

 『私ども、株式会社総務部は、新時代を切り開く事業を総務部門から
 支えます。』