2004/11/09

第31号

 労働基準法の関係書式の便利なWEBが見つかりました。群馬労働局
 のものです。法定様式は便利です。参考書式は適用できない場合もあ
 りますから、よく検討してからにしてください。今しばらく様子を見
 てから当社のダウンロードページにリンクしたいと思っています。そ
 れまでは、このURLを「お気に入り」にどうぞ。
 http://www.gunmaroudoukyoku.go.jp/youshiki/yousiki01.html

 会社側からの申請が急増している紛争調整委員会への「あっせん制度
 を活用した労使トラブル解決法」の解説論文を私ども株式会社総務部
 の代表村岡利幸が発表しました。日本法令発行のビジネスガイド誌11
 月号。この雑誌のPRの意味も込め「お分け」出来そうですから、ご
 希望の方は気軽に、お申し込みください。
 mail@soumubu.jp

 業務請負と人材派遣、活用する上でどこが違うのか。
 人材派遣とは人材を時間単位でレンタルすること。業務請負は発注し
 た業務の完成を期待して注文すること。これが職業安定法や労働者派
 遣法での区別である。人材派遣を偽装して業務請負している場合があ
 ることから、労働組合からは「請負労働」と暗いイメージを名付けら
 れた。
 ところで、どちらが経済的に有効なのかは、一般的に論じられていな
 い。昭和61年に「業務請負」の形態と名称が開発されたときから、こ
 の重要なノウハウは持っていた。それは、労働力需給は地域ごとに発
 生することが多く、業務請負会社が地域ごとにカバーをすることで、
 製造業者と地元労働者の役に立つとの存在意義である。(大阪で当社
 のメンバーが、このときの企画立案を行った)。すなわち、採用募集
 の経費と手間が不要となり、労働者には解雇や雇用の切れ目の不安が
 無くなるから、業務請負が一挙に地元から支持され急成長と高い利益
 をあげたのである。人材派遣を偽装した場合には募集の無駄なコスト
 がかさむだけでなく労働者の質が低下傾向になる。業務請負で働く労
 働者の形態はフリーターで占められている。からといっても地元に地
 に足が着いているので質は低下しない。たしかに、業務請負で働く人
 材は高熟練技能者とまではいかないが比較的質は高いものである。多
 量のパートタイマー採用の場合には25%ほど増量して雇用しなければ
 ラインを回すことができない実態からすると労働者の質が大切なので
 ある。業務請負は実に「派遣と請負の区分」の当時の労働大臣告示か
 ら生まれたニュービジネスであって、利益の源泉は職業安定所が手を
 つけられない地元企業間の細かい密着の労働力需給システムにあった
 のである。あげくは人材派遣を偽装した業務形態であれば、労働力の
 質が低下しコスト増加傾向を招き、不採算業者ゆえに悪事にも手を染
 めざるを得ないのである。
 この3月の解禁によって製造業の人材派遣が増加したが、それは法律
 違反の危険を回避するために偽装業者が派遣に切り替えたものが大半
 である。人材派遣なので労働者の社会保険加入が必要条件となるが、
 増加する社会保険料を発注会社が負担したケースはほんの一部である。
 派遣法違反の危険がない業務請負の場合、人材派遣と比べて現実に人
 件費コストは安く、それは事実上、社会保険料の労使負担分約22%が
 該当する。社会保険事務所は保険収支の不採算となるフリーター低賃
 金労働者を健康保険や厚生年金に加入させようとしない。業務請負会
 社に対して社会保険事務所の調査はほとんどなく、実施しても「ザル」
 どころではなく「そこの抜けた桶」そのものである。政府の社会保障
 政策の大転換がない限り、この社会保険事務所の取り扱い実態は変わ
 らないから、許されるかどうかは別として、業務請負会社と付き合う
 方が本来の利益システム以上に経済効果が存在するのである。また、
 総務省はパートやフリーターに対する住民税課税を2007年になってか
 ら強化するための地方税法改正の方針を発表したので、所得税と雇用
 保険が関係するだけである。
 結局、急場しのぎやゴマカシの労働力需給管理では、製造業は成り立
 たないのである。

 一部の製造現場では、現場ヒアリングを軽視してまでも、人材派遣や
 業務請負の利用で以って人件費を削減した。それにより「ベテラン労
 働者」を排除してしまった。ために、安全衛生確保に必要な知識や技
 術などのノウハウ(現場力)が組織的に欠落(現場力の低下との指摘)
 し、現場での事故を多発させたとの指摘は、論議すればするほど多く
 の人が認める内容である。どんな仕事においても事故や過失は予想以
 上の損害をもたらすのである。こんな事が分かっていても、「ハゲタ
 カ」ファンドと「ハイエナ」ファンドが関係する個別企業で、このよ
 うな現象がよく見られるのは、単なる気のせいではなさそうだ。

 東京の日本商工会議所の事務所職員に対してのサービス残業が指摘さ
 れた。ご存知の通り、日本商工会議所は厚生労働省の労働政策審議会
 などで政策提言や意見を述べている団体である。監督官は解雇に関す
 る就業規則の変更届や衛生管理者を設置していないことについても指
 摘した。手抜かりではなく姿勢の問題だとして、率先して法律を守ら
 なければならない団体でのサービス残業がゆえに社会の批判も厳しい。
 日本は世界に向けて、高付加価値製品と高水準サービス商品で、経済
 成長を図ろうと政府も財界も機運を盛り上げ、アジア経済戦争に負け
 た分をとり返そうと個別企業で頑張っているさなかの出来事である。
 「地域経済の足を引っ張っている原因は商工会議所だ」と極端な意見
 も出ているさなか、それを裏付ける様な事件である。

 テレビなどで年収300万円時代が来ると話題になっている。確かに、
 正規労働者の年収は減少し続けている。特に若年者は昔に比べて物価
 スライド後の賃金額が極端に少ない構造になってしまった。この6年
 ほどの間に、正規労働者は171万人減り非正規労働者は260万人増えた。
 中小企業に働く人たちの(企業規模29人以下の労働者)は民間労働者
 の46%を占めるが、年収300万円以下が半数を占めている。長期パート
 は年収が150万円前後、契約派遣は年収が200万円前後との報告もある。
 中小企業経営者の所得は年収300万円以下が5割を超えそのうちの60歳
 以上では7割を超えている(03年の「中小企業白書」)。一般の雇用
 統計に出てこない取締役400万人は、そのほとんどが中小企業経営者で、
 正規社員3400万人と比べ約10人に1人が、会社役員という不思議な現
 象となっている。
 失業者の半数は雇用保険の失業手当が切れているとの指摘がある。国
 民年金収入は平均5万円で無年金者も増大。生活保護者は139万人、
 自己破産者24万人、自殺者は3万4千人、ホームレスが2万4千人、
 刑法犯は369万件などと過去になく「貧困化」を現わす数値が高くなっ
 て来ているのである。
 ここまでも個人購買力が低下をしてしまい、経済構造も変わらないの
 で、この傾向が日本経済の打撃となって、この秋を迎えている。
 なげいていても、不満を言っていても仕方がないので、根本的に脱出
 する意味から、日本経済は世界に向けて、高付加価値製品と高水準サ
 ービス商品で進出を計ることが大切だ。地方企業であっても、中小企
 業であっても、これで将来が開けてくる。語学や貿易の知識は必要で
 はない。この道を選んだ者だけが既に享受している豊かさである。い
 つまでも海外ブランドに、日本人の貯金を持っていかれることも無い
 のだ。