2005/12/06

第44号

古今東西、太古の昔から、天災、疫病、飢饉などで、「国」が潰れたことはない。社会の対応力の無さや社会秩序の崩壊によって、国がつぶれてしまった…これが歴史学の定説である。


鳥インフルエンザは、H5N1型の人体感染となれば、日本経済に相当大きな影響力を与えるのは間違いない。38度の発熱と肺炎症状が特徴であるが、通常のインフルエンザとは異なり、肺炎症状が出たときは50%の死亡率である。予防措置は、人ごみを避ける、過労を避ける、粘膜からの侵入阻止(マスク、手洗い、目鼻洗い、うがい)に限られるので、感染の危険は非常に高い。タミフルは、中国産八角を原料に作るか、化学合成によるしかないのだが、数量が少なすぎるから、一般人に回るかどうか分からない。感染すれば指定病院に行くしかない。個別企業や個人に防衛が任されているのが現状である。
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/


耐震強度設計偽装事件。まず、一戸建て住宅建設の町場とビル・マンションの野丁場とでは状況が違うのだが。設計図面通りに工事をしないこと、すなわち、鉄筋の量を抜く、セメント配合率を減らす、見えないところの柱を抜くなどと、施工業者が手抜きをするのは昔から存在した。大がかりに柱の本数を減らす場合は、施工業者が「責任?」を持って構造計算を行い安全性を確保した。阪神大震災で多くの建物が倒壊したのは安全率を下げたことによる。いままでの建設業界の手抜き工事の問題点は、ここまでである。
ところが、今回の事件はそうではない。発注業者、施工業者、設計事務所、構造計算事務所のすべての関係者が団子になって、「安全性を無視した設計と施工」をしたところにある。まさに、「想定外」である。「設計通りに作った、検査通り作った」と無罪を主張するが、そもそも良識ある建設業者であれば危険な建物は作らない。比喩的にいえば、(不正)設計書の通りに工事を完了したから、建設業の業界常識と異なる事件なのである。一皮むけば、単なる「まやかし」である。犯罪者集団は建築士が建築基準法に違反するだけで、刑事責任が問われないように仕組んだつもりである。会社法人を倒産(施工業者は早々倒産)させて民事上も損害賠償の責任を負わなくてもよいように逃げられると思っている。法律の専門家ではないから、素人ながらに「犯罪者」にはならない、「うまくすり抜けられる」と、犯罪者集団は錯覚しているようである。
マヤカシや詭弁が横行したとしても、設計事務所の所長が行方不明になり、死体が発見されたとの話を聞いて、「自殺に見せかけて、口封じをされたか」と判定する部分の、その場面に現に建設業界の常識・良識が生きているのである。
だから、マヤカシの部分をはっきりさせれば、住民の生存基本権の救済範囲や国家の援助範囲がおのずと定まるのである。ヒューザーと立場を異にするとしても、事件発覚早々からマヤカシを放置して「国家の援助を!」と叫ぶ政治家の裏には、疑惑があると言われても仕方がない。


景気回復、カネ余り現象と報道される中で、消費経済の伸び悩み、商品開発の停滞、文化的経済の後退が進んでいる。銀行には調達利率の低い資金が貯まるも貸し出しが伸びていない。投資の行き先は、快楽追求商品もしくは問題解決商品の極端な二方向商品へと、限られて向けられているから、経済が豊かにならない。まだまだ投資は、高付加価値製品や高水準サービス商品には回っていない。
インターネットやネットビジネスに陰りが見えてきているが、このビジネスは流通・効率部門業種であるから、肝心の「大量・安定・豊かな商品の流通」が存在していない中での陰りは当然なのだ。事業活躍の場を求めてスポーツ界やマスコミ界に進出しても、肝心なところを見逃しているので、いずれは陰るだけなのだ。ここでは、経済の基本原則に無知なストーリーが、まかり通っている。
ある家電グループPのごとく、消費者からクレームが寄せられても、ごまかすだけ。いったん、「消費者センター」とかPL法による訴訟で詰められると、一転して製品の無料取り換えや他社製品代金弁済まで行う。このような企業姿勢の道具にされているだけではインターネットやネットビジネスの発展はない。片や、昔ミシンメーカーであったプラザーは、徹底して価格を抑えたIT商品を販売するのみならず、不具合が生じたときは宅配便やインターネットをフル活用してケアーをするし、翌朝には代替機を配達し修理を施す。J航が未整備の飛行機を離陸させていることは昔から有名であるが、予約システム、安全運航、身障者ケアーの確実な全日空との哲学の差である。
ここでボケとツッコミの経済漫才。
ボケ:「中国でもインターネットが普及して、経済が、自由で活発になるに違いない」
ツッコミ:「何を馬鹿なこと言ってるんだ。中国の場合、インターネットは国家統制の道具やで!」
ボケ:「なるほど、そうか。中国かぶれの大手企業は、自由経済よりも統制経済なのか」
ツッコミ:「そう、そのうち、地上の楽園!と言い出すかもよ?」


折しも、来年4月1日から、公益通報者保護法と労働審判法が施行される。この二つともが、強行法規であり、強行が良いかどうかは議論のあるところではあるが、「権利を主張する者は保護され、主張しないものは見捨てられる」社会の形成に向かうことには間違いない。過去の日本のような世間体に柱をおく統制社会をやめて、グローバル社会に通用する社会共同体へ移行しようとするのである。したがって、国民生活保護のポイントは基本的人権の優先と拡張に切り替えることとなる。
公益通報を行った労働者の解雇無効(解雇がなかったものとして扱うこと)とか、不利益あつかいの禁止・損害賠償を担保することによって、国民の生命、身体、財産その他利益の保護に関わる法令規定の遵守を図ろうとするのが狙いである。通報の対象となる法律は400余で、もちろん、感染症、建築基準法、労働基準法や社会労働保険に関する法律も含まれている。来年4月1日以前の法令違反も対象とする徹底ぶりである。権利主張促進政策である。
 http://www5.cao.go.jp/seikatsu/koueki/gaiyo/taisho.html


労働審判は審理が3回と、要するに、形骸化した労働裁判の時間短縮版ではあるが、制度的に注意しなければならない点がある。とりわけ、次の3つの課題については、紛争の兆候が出た段階で、「審判制度」それとも「あっせん制度」のいずれかの解決方法選択の専門的判断が必要とされる。いずれにしても、時間的にのんびり構えているわけにはいかなくなるので、労働の現場と各種紛争解決制度に詳しい専門家のアドバイスが結末を決定することになりかねない。アドバイス情報は重々しいものではなく、より初期の段階での、専門家の電話アドバイス程度で十分である。無知とか早とちりは個別企業が紛争解決制度の歯車に押しつぶされる危険をはらんでいる。ちなみに、優秀なあっせん代理人が確保できるのであれば、「審判が提起」される前に、経営側から労働者に「あっせん解決」を呼びかける手段の方が人事管理では有効なのである。
1.従前の裁判であれば、原告と被告が提出した証拠のみが採用されたが、労働審判では刑事事件のごとく職権事実調査が行われる。「まずは裁判所に行ってみて、じっくり検討してから…」との姿勢は、きわめて不利になる。
2.世間知らず?の裁判官が判定するではなく、実情を知る経営側と労働側の審判員が審判を下す。顧問弁護士よりも審判員の方が、事情の理解が早いかもしれない。
3.審判に対する異議申し立てで地方裁判所への訴訟を起したこととなるので、手抜かりは当初から許されない。したがって、経営側弁護士の着手金が安くなるわけではない。


世の中の変化は早い。グローバル基準に適用しようとすれば、徹頭徹尾、社会共同体を定着させなければならない。10年前の日本は「世間体」重視であり、今の社会現象は「アメリカ流社会共同体」の猿真似のようなものである。システムの中に日本の独自性が活かされなければ、アメリカの二番煎じとなるだけである。個別企業においても独自性を生かした社会共同体の導入が必要となる。これに失敗した例が、ここに示した偽装設計、ネット?ビジネス、統制経済(経営)である。ましてや、多国籍展開でもって高付加価値製品や高水準サービス商品の提供でもって、経営を推し進めようとすれば、とりわけ人材確保の面から、この動きを他山の石としなければならない。ちなみに、多国籍展開や経営管理水準の高いスウェーデンは、人口640万人で、北海道より少し大きく、大阪府より小さいのであるから、小さくとも自信は持てる。

2005/11/07

第43号

来年4月からの、62歳までの高年齢者雇用に向けて、労働協約の具体的中身の決め方が議論となっている。「高年齢者雇用セミナー」などで、法律の概要が分かったとして、やってはいけない事の判断はつくが、具体的に実施しても良い事の判断は、セミナーで話してくれないのが常である。これには、厚生労働省は、個別企業の自由ですから…と言わんばかりである。無力無知で何もできない個別企業は「62歳定年」となるので、そこには支援措置(社会進歩やグローバルに対応しない企業の保護ではない)が必要なのだが、自由の女神の光は輝いているだけである。いくら旧厚生省の年金政策失敗のツケを回された対策だからとして乗り気にはならない。だとして、「思想及び良心の自由」の流行語を持ち出したとすれば、それは「不作為」の無責任行政となる。
これに対し経営トップの判断パターンは単純明解で、「定年を62歳に引き上げるか、継続雇用対象者の具体的基準の策定の何れか?」を判断するのである。とりわけ、「高付加価値製品や高水準サービス」の商品提供戦略を持つ個別企業にとっては、労働意欲に関わることなので、社会や他企業の動きも考え、メリハリをつけておく必要があるのだ。したがって、人事・総務部門の創意と工夫が必要なのは、労使協定による個別企業独自の運営基準の内容となる。
・相対的人事評価は無効に等しいと分かっても、今まで絶対的人事評価をしてこなかった。
・「健康な者」とした場合、高血圧・糖尿病対策などしたこともなく、具体的線引きの見通しがつかない。
・業務に必要な人材の判断基準として、資格試験や研修終了を、今から持ちこめるのか。
・高齢者の「意欲と能力」は、労働時間や賃金総額によっても変動するのはどうすれば良いか。
・60歳定年の者は当分出ないが、社員の将来ビジョンとの関連をどうつければよいか。
・労働力需給&人件費総額を、業務請負・派遣あるいは高年齢継続雇用の何れで対応するのか、の評価判断基準は何か。
・労使納得性に沿うような水準を持った「憎まれ役も含むコンサルタント会社」へ依頼するとして、どう探せば良いか。
などなど、個別企業ごとにオーダーメイドが必要なのである。


「中国製品は、果たしてよくなったのか?」、よく話題になるである。ところが、クレームは減ったが、中身はいまだ危険である。外側は完璧に近く、よく見えるが中身は悪い。なので、返品続出。また故障したときはどうしようもない。これらは、身の回りすべての中国製品にいえる。裏表を見ればすぐ分かるような服飾においても同様。「安かろう悪かろう」を超越した不良である。
そもそも、元から粗悪なので、日本から担当者が現地へ飛んで、「注意して注意して」、注意して「外側が普通」に見えるようになっただけなのだ。銀行の話につられて投資をしてしまった個別企業の悲しい宿命でもある。
中国製食品は、子供への障害、生命への不安は拭われてはおらず、安ければ警戒、パックの裏を見て中国製と判れば買わない人は多い。中国製の自動車(江陵汽車の陸風)がドイツ自動車連盟安全基準をまったくクリアできなかったニュースを聞いて、中国製自動車を買うことに罪悪感を覚えるのは社会安定のための倫理観である。
文化の違いといえば一言であるが、それでは問題が解決しない。もう少し突っ込んで見た場合、それは、教育訓練が成り立っていないところに原因があるのだ。中国では、製品を完璧に作りあげるよりも、人間関係が邪魔をするが、教育訓練においても同様なのである。まして反日の「世間体」人間関係である。
さらに、ここに来て人民元の為替レート切り上げ問題。人民元での支払決済の場合には人民元切り上げで目減りするのは日本円。日本製商品の出荷時点代金と集金時点代金の時間差での切り上げは人民元が少なくて済む。反対に中国製品への代金支払いは日本円が多く必要となる。ドル建て決済だとしても、中国の外貨準備高不足は事実上の人民元決済である。ということなので、人民元切り上げ=支払時点での代金値切りを意味するのである。支払い不履行には「この手があったのか!」…。
元来、粗悪品を売りつけても反省することなく、契約通り支払いするものは馬鹿だと思っているのが中国文化なのである。日本人の商業における成功体験は、中国文化ではなく、騎馬民族文化に起源を発するからとはいっても、ひっかかる日本人が多いのには、驚いてしまう。「銭金の悪知恵とマージャンは中国に勝てない」のである。


(仮称)労働契約法の制定をめぐって、キャンペーンや大議論が始まった。経団連、商工会議所、連合、全労連、日本労働弁護団など相次いでいる。労使の議論の的になっているのは、労使委員会、解雇の金銭解決制度、雇用継続型契約変更制度、ホワイトカラー・イグゼンプションである。厚生労働省は、法律の履行について、あっせん制度や労働審判とセットで進めようとしている。よかれと思っての提案に対しても、当の労使は迷惑だと言わんばかりである。裁量労働などは、自民党の国会議員までが現役時代の経験からクレームをつけた。グローバル基準の「権利を主張する者は浮かばれ、黙っていると沈没する」トレンドに乗ってであろう、労働判例法理の法律制定(法定法理)については、労使の異論のないところであるので、労働契約法制を急ぐ意見が強いのであれば、この部分について早期制定すればよいとの意見も出ている。「権利主張社会」の弊害として見落としてはならない、アンフェアトリートメント(不公正な取り扱い)、例えば、退職金や福利厚生の社内規定があっても労働者から請求がなければ無視するとか、故意に就業規則を労働基準法の水準にとどめ、個別労働契約の個別交渉で事業合理性を崩壊させるなどである。これは労使委員ともに取り上げてもよさそうな課題であるにもかかわらず、旧来の固定観念が強いのか、自由平等の社会共同体意識が弱いのか、誰も採り上げていない。


11月を「賃金不払残業解消キャンペーン月間」と定め、厚生労働省は労使の主体的な取り組みを促すためのキャンペーン活動を実施するとしている。また、電話相談も行う予定である。とはいっても、優しく・おとなしく、業界団体に呼びかけるわけではない。過去の実績からすると、今まで蓄積していた情報に基づいて、一挙に摘発する行動に出ることは、当然予想される。最近の賃金不払残業事件に対して、労働局は数十人の捜査員を投入して、広域に摘発することが多い。これにより、戸惑い・あわてる経営者も多いのである。捜査ポイントは、以前メルマガで掲載した通りであるが、そのまま通用するぐらい横柄な人事労務管理を行っている企業もあるのである。合法的人事労務管理も行う企業からすれば、残業不払い企業は、不公正競争業者であり、ダンピング業者であるから、労働局・労働基準監督署での取り締まり強化要望も強くなっている。日本の経済性から、個人消費経済を強めるためには、現時点では賃金の引き上げが必要となることにより、これも摘発の追い風となっている。

2005/10/03

第42号

(仮)労働契約法の立法化が、いよいよ日程に入ってきた。法案(労働契約法)を平成19年の通常国会提出の意向。「紛争が生じた場合に最終的には民事裁判を通して当事者がその権利を実現し紛争を解決することを目的とする。」としているが、今のところ関係者から異論が出ていないところのものは次のものである。それは国会成立の暁に制度化されるとみてよいものである。
1.労働判例(判例法理)を法律(法定法理)とすること。
2.法律の履行のために労働基準監督官の監督行政は行わない。
3.行政関与する場合は紛争調整委員会のあっせん制度など。
4.労使の一方が白黒の判定を望むときは、裁判所で決着する。
としている。すなわち、最低労働条件については監督行政を行ない、それを上回る部分の労働条件でトラブルになった場合は、労使当事者の話し合い解決自体を行政関与でもって応援するシステムにしようというものである。金銭解決解雇制度や継続中条件変更については、国会成立するかどうかは不明。
要するに、10年くらい前までの、「職場内のトラブルは中間管理職が責任をもって紛争解決すること」との概念を、中間管理職削減の折から、「労働行政の公共事業として解決」するとのものに変化をさせるものだ。今や、グローバル・ボーダレスの時代に入り、それまでの紛争とは「武力解決を裁判に置き換える」との理念から、「裁判による判定から調整・合意形成へ」とのADRなどの理念が、一挙に世界的に広まりつつあるからだ。国際経済関係、技術開発関係もその道を歩んでいる。
今日までの日本は、社会共同体の中で、新しい事態に遭遇した時点に新しいルール(義務)を作るとか、対立解消のためのルールを決めておくような社会でなかったこと&そのようなことに対応する適切な教育を受けたことがなかったことから、一般の人ではイメージが難しい。そして、世間体の克服は日本経済の国際化を伴う経済発展の上での重要な社会的課題と言われている。ここまでは、マスコミ発表の中にも書いてある。
ところが、マスコミの気づいていないもうひとつの注目点がある。
請負契約や委託契約であるとして労働基準法上の労働者として扱われなかった者でも、経済的従属性があれば、労働契約法を適用させるとしたことだ。現行は契約名称にかかわらず使用従属関係があれば労働者としている。これも関係者の間で異論はないところなので、成立する見通しだ。この「経済的従属性」は、労働契約法施行とともに期間契約途中の解雇の場合の期間終了日までの損害賠償(現行)を周知徹底させるとしていることと相まって、経済構造に大きな影響を及ぼす。昭和63年に「1日8時間労働制」を「1週間40時間」としたことによって、小売業を皮切りに経済の24時間化が始まったが、これをも上回る経済構造変革かもしれない。
新たに適用される人たちは、次の要件をすべて満たす者として例示している。
1.個人であること。
2.契約に基づき役務を提供していること。
3.当該役務の提供を、本人以外の者が行うことを予定していないこと。
4.役務提供の対償として金銭上の利益を受けていること。
5.収入の大部分を特定者から得、生活している者であること。
注意しなければならないのは、この者たちの就業場所を事業所とか自宅とかを問題にしていないことである。よほどの短時間臨時でない限り、適用となる。情報産業、流通、建設、製造、サービスその他の業種を問わず、とにかく「五つの要件」を満たす者すべてが対象となることである。
要するに、現在の「労働者」イメージが変更されるのだ。したがって、現行の労働関係諸法律が人材派遣業を除き事業所で働くことを前提としていることから、労働契約法制が施行されて以降は法律の改正が相次ぐこととなる。(現行の労働者派遣法では、就業先を派遣先・派遣元・自宅などのいずれでも適用できるように、17年前から制度化しているのである)。そして……
日本経済は「高付加価値製品と、高水準サービス商品」の提供に活路を見いだそうとしているが、この経済活動に資する人事・労務管理が必要とされ、そのための日本文化や社会共同体への変化を歩もうとしている。その先には、たとえば、コンビニの競争相手は流通業者であるが、便利な店に客を呼ぶよりも通販・配達するとか、街の酒屋がコンビニ転業するのではなく宅配便の下請配達をするような、「経済構造の変化に労働力需給も整合」させようとするものである。それは意外にも、国内主力産業を支える周辺の芸術性業種も大切で、国内外での食品加工サービス、すなわち料理店・ファーストフード・スローフードだとか、世界へ向けてのコンテンツ産業なども有望で、そこへの労働力の育成に資することにならなければならない。


ところで、紛争トラブルの直面する種類として、アンフェア・トリートメント(不公正な取り扱い)が多発している。従来は外資系企業で起こっているものとされていたが、日系企業でも増えてきている。就業規則等の規範的部分が最低基準に設定されているなかで、事実上個々の労働契約が主流となることによって、労働条件の決定方式が個別交渉に重きを置かれている場合には、アンフェア・トリートメントが発生しやすくなる。もちろん、最低条件の情報公開をしないことで、最低基準を満たさない事件も含まれる。いくら何でも自由意思と言えども、ある程度の公平な規範的労働条件は経営管理の上からは必要なのである。
外資系に限らず、人材派遣業、業務請負業、IT関連企業に横行?と思えば、中小の製造業でも最近は多いのだ。労働者からすると、「約束が違う」とか「どうして規則を隠すのか!」ということになる。すぐさま、労使間の不信感と敵対心の発生につながる。熱意がある若者に限って寄り付かないのは当たり前のことで、高付加価値製品or高水準サービスの商品提供など、社長が躍起になっても、それは「白昼夢の又夢。」
外資系の企業の人事管理は、規定の退職金を払わなければ人事部の成果にカウントするところもあるくらいだ。とはいえ、日本の人事・労務管理水準から言えば、とにかく日本での20?30人の中小企業なみなのである。優秀だと言っても、やっと中堅企業なみ。外資系企業の人事部は所詮「社内クズ?」あつかい。その原因は、管理する理論も手法もないからだ。これが企業本体の業務遂行の足をヒッパッテいるのは当然のこと。それすら分からないのが外資系Top。生粋の外資系となれば弊社がWEB公開しているような書式集の英語版自体がない。意思の疎通を間で止めている者も多い。


社会保険庁改革の流れはこうだ。公的年金と政管健保の運営分離する新組織を平成20年の秋に設置。政管健保は公法人設立だが財政運営は都道府県単位。関連法案は平成18年の通常国会に提出。政管健保と年金の実施組織の分離に伴うコンピューターシステムの設計開発に最低2年との理由で「公法人の設立時期」が平成20年の秋とのこと。民間個別企業の総務担当者なら、本末転倒の改革(時期設定理由がシステム開発?)であることは一目瞭然。改革目的を度外視しても、組織運営上失敗するのは今から分かる。年金専門家抜きの有識者会議&第一線職員無視の業務計画の抱き合わせと、近年の「厚生省」運営は、そのまま固執する予定。
国民年金事務の社会保険事務所の国民年金課の残酷物語。
「職員全員、早朝出勤、残業居残りでサービス残業、鞄に詰めての風呂敷残業までやっている。おまけに、誰が設計したか分からないコンピュータは動かないし、手でやっていた時代の方がよっぽど早い。次から次へとセンターからプリントアウトされた書類が到着。職業安定所や区役所からも書類がどっと押し寄せる。どうしても緊急なものから処理をするが、それでも日にちが遅れてしまうから、苦情の電話が殺到する。保険料納付期限までに保険料免除通知が発送できない事態も。これを社会保険事務局や東京へとすべて報告するが、返ってくるのは、「コンピューターシステムの中身は分からない」とか、「こちらも鋭意努力している」の一点張り。「本省庁の中にはいい人もいるんです」と自分の心と部下やアルバイトに言い聞かせ、毎日を乗り切る。
さて、年金、健保での物語はいかに?

2005/09/06

第41号

「政策だ!策略だ!」と、衆議院選挙の論戦が激しい。
と言いたいところだが、選挙後の経済見通しの話題はまったくなく、その報道もない。消費税増税の話とかでは個別企業の役には立たない。結論から言えば、郵政改革・消費税率改定などをきっかけに再び不況に突入する。もう少し正確に言えば、中堅中小企業は不況から脱出した「覚え」はなく一貫して急降下じり貧状態であったのだが、大手企業は海外進出と体制整備(本来の意味でのリストラ)を行って(シューペンター理論によると)取扱商品変更と言えるほどの多国籍化を図ったため回復基調に乗り上げることができたのだ。この間、政府は平成恐慌脱出のさしたる対策を打つ訳でもなく、民間個別企業の屋台骨を揺り動かしての自力努力によるものである。
選挙結果にかかわらず、郵政改革により、日本の金融をアメリカ経済の利益のために操作されることとなり、日本政府の経済保護政策弱体化、貿易自由化による産業構造変化、ドルによる為替レート調整によるアメリカの利益操作となることは、間違いのないところなのである。日本はアメリカに食い潰されるが、そのうちアメリカ自身も破綻する前に債務を踏み倒す作戦のようである。これに対するナショナリズム精神論による日本経済保護策は、何の役にも立たない。
消費税率改定その他増税のインパクトは、コンビニのペットボトル125円の値下げなどにみられるようなデフレ基調に、一挙に加速をかけることになるであろうが、その現象の裏に存在する個人消費の激減によって、国内経済が回らなくなるのである。日本のGDPは約500兆円。衣食住に関わると概算できるものは300兆円。この衣食住関連部分の個人消費が激減するのである。極論ではあるが、「ほぼ衣食住は必ず付いて回るから、300兆円のGDPになったとしても、一人当たりの数字にすれば、EUよりも多いから大丈夫だ。」との悲観論まで出る始末だ。
このような経済動向を見越して、勝ち組にたどり着いた多国籍大手企業では、先行組のソニーをはじめとして、自動車もうけ頭のトヨタ、デジタル産業のキヤノンなど、「日本人社長」のこだわりをなく、本社をアメリカに移転させることを検討し始めることにしたのだ。その決定的な理由は円決済での為替差損(アメリカドルは安定)である。多国籍企業にとって日本政府の経済構造政策が役に立たなくなったことによるものだ。法人税が昔に比べ安くなったものの、法人税だけのことに限れば、日本にいる必要性はわずかである。現在、円からドルやユーロへの買い替えが盛んである。
通常の経済不況であるだけで、企業・個人ともに、伸びるか:落ちるかとの「不況は経済格差を生む」法則がある。努力の積み重ねだけで勝ち組参入は無理。大胆な作戦と戦略は不可欠。個別企業内部だけで考えていても無理である。まして、中堅中小企業においては、未だ平成恐慌の真っ最中である。やはりここは、「高付加価値製品と高水準サービス商品」でもって、完成商品(made in Japan)の多国籍展開をすることが肝要であり、その実験場として国内市場が有望というふうに考えることである。この際その体制を、個別企業において作り上げることは、郵政民営化による国際金融経済体制での事業活躍の柱となる。これを促進するための技術教育、開発体制整備、新商品開発文化、その人材と労働力の受皿となる街づくり等の公共事業(厚生労働省、文部科学省、通商産業省)が大切なのである。
経済の変化スピードは速いので、個別企業内で目前のことに集中してばかりいると、突然、社会から見放される。だから、総務部門の役割が重要だ。


国際経済社会の中で日本が孤立の道を歩んでいる。WTOその他の国際経済機関において、日本の提案が通らない。大きな話ならマスコミで、おなじみだが、次は、身近な話からのインテリジェンス。多くの方がご存知のIT部門の工業技術のこと。最近は国際基準に採用されなければ、国内においても商品開発に取り入れることができなくなった。
それを踏まえての話。今から15年前、TRON(トロン)というパソコンOSソフト(ソフト操縦のソフト)が東京大学の日本人によって開発された。漢字の国に当然ぴったりのもの。開発者は無料で世界に配布しようとした。結果から振り返れば、良い意味の理屈だとしても無料であれば皆喜ぶとの世間体を基盤にした独善的判断であった。とりわけ日本人特有の考え方とも言えず、社会共同体経済秩序に寄与しようとの思考もなく、せいぜい技術の「住み分け」論の思考程度の発想であった。早速、アメリカから貿易障壁として訴えられた。日本政府は、アメリカ政府が怖いからアメリカの言いなりになった。それからは、WindowsやMS?DOSの独壇場となったのだが、これらのOSソフトの性能は劣り、日本のTRONが優秀であることは紛れもない事実である。ところが、アメリカにヘリ下ることのないヨーロッパ諸国でさえも、アメリカの「貿易障壁」論に賛成をするのである。アメリカのビルゲイツやアメリカ政府の利権のために「TRONが潰された」と負け犬のように吠えているのは日本だけであった。なぜそうなるのか?
生鮮食料品などの大量消費商品の一つひとつに貼り付けて、使い捨て使用できるICタグ(長さ0.3ミリのチップにアンテナ付)が日立で開発された。1個5円。無線電波ゲートを通過するだけで、瞬時に1個ずつの品質・産地・生産者・消費期限・その他データをパソコンに読みとることができる。開発のきっかけは、ほとんどよく似たタグをアメリカが35円で開発していたのだが、それは貿易摩擦を防ぐためアメリカからWTO協定によるISO(アイソ)へ提案されていたのだが、これより安く性能がいいタグをと日本政府の後押しで日立が(勝ち組思考)開発したのだ。ところが、国際経済秩序を「乱すための行為」だとして、技術論理も無しに、日立のICチップは非難され採用されず、国際経済から追放されてしまった。またもや、日立などは「日本つぶした」とNHK特集の番組でも負け惜しみを言っていた。
ところが、フィンランドの携帯電話会社ノキアは携帯電話のOSをすべて無料公開し、これに搭載できるソフトを一般公募することによって、日本も含め世界中から約3000件の新ソフトが寄せられ、日本をはじめ幾つもの開発商品として売り出されているのだ。日本のTRONも無料公開であったのに、成功と失敗は何によるのであろうか?
よく似た事例はほかにもあるが、これらは決して時節柄ではない。
その答えは、世界経済を動かしているのは、アングロサクソン系やヨーロッパ大陸系なのだが、これらの国が現在に辿り着いた背景には、単なる国際軍事力とか権力を振り回していたことによるものではなく、国際社会においても如何に社会共同体を形成して、その社会共同体秩序維持を加速させる科学技術や新商品が如何に大切で、如何に莫大な経済効果があるのかを熟知しているからなのである。経済学からすれば、正解かつ常識のことである。要するに、自由・平等の経済民主主義なのだ。
あれこれ理由をつけても、社会共同体を形成していない国の経済は停滞し、豊かさや自由平等が少なくなることを熟知しているのである。生まれたときから社会共同体の教育を受けているので、世間体(世間をお騒がせして…の発想)を克服しているのである。日本の文部科学省教育は曲がりなりにも社会共同体秩序(自由平等とか基本的人権による)形成教育ではあるが、大手企業の多くは世間体重視の体制と教育であるから、その様な境遇の技術者には、彼らに技術を拒否される意味すら理解できないのである。感覚的に、国際経済社会の主流の人たちは、前近代的な世間体重視の企業とは肌が合わない。単純な人海戦術やジャパンな精神論の相手などをする気もない。自由平等に基づく経済活動のスタンスもない者は野蛮人と思っている。それは、頭が良くてもダメ、安くてもダメ、便利でもダメで、社会共同体の文化・習慣・教育・価値観に受け入れられなければ売れもしないとの原理原則と成功法則(最近、この分野の研究を文化経済学という)からきたものである。技術水準・価格・利便性は、社会共同体秩序の混乱に利用されると判断されれば、優秀であるほど野蛮人による脅威と映るのである。彼らの中国、日本など東南アジアに対する見解がこれである。
こんなことは、中堅中小企業の事業主であれば、元よりよく分かっていることであるが、日本の工業技術者の多くは、サラリーマンであるがためなのか、世間体思考一辺倒なので、闇雲に安ければよい、闇雲に便利であればよいとして、無料や住み分けならよいとして、社会共同体に受け入れられる製品かどうかを判断することが不可能なようだ。だから、WTOの秩序とか、世界各国の貿易障壁と言われても、日本の(勝ち組思考の)IT技術関係者には「とりあえず理解不能」なのだが、中堅中小企業であっては、国際経済社会の中で事業展開を進めて、社会共同体の原理原則に基づいて事業展開をして、十分に多国籍展開をしているのである。社会共同体を形成し、その社会共同体秩序維持を加速させるベクトルを働かせることによる「高付加価値製品や高水準サービス」の開発作業(例、ベンツの車は強いといっても事故相手車にもケガを負わせないための工夫も欠かさない)を展開すれば、日本の大手企業発の技術も国際経済の中心になることは間違いない。現在のように完成物一辺倒に頼らなくても、技術を商品として売ることも出来るようになるのだ。北欧系中小企業の技術はノキアにとどまらず多国籍展開には強力なものがある。
現に日本の中堅中小企業の技術のいくつかは世界の中心になっている。社会共同体秩序に順応することができた技術者の多くは、日本企業を離れ外国企業で仕事をしている。
WTOの主流を形成する側からすれば、経済社会発展を促す社会共同体なのか、それとも、単なる金銭や当座の勝ち組利益をもとめる前近代的な世間体による発想なのかの選択の問題なのである。「携帯電話でのTRON搭載」とか「日本はユビキタスだ!」と言ってみても、しばらくすれば、WTO体制によって、このままでは彼らの周辺工業技術に押し組まれてしまうのは目に見えている。今や、社会共同体の視点というのは、日本の社会や経済にとって、孤立・沈没であるのか、それとも国際社会での「蓬莱島」の将来であるのかへの、不可欠な課題となっているのである。


国民年金保険料の徴収事務が大混乱をしている。地方においては保険料回収のために、電話や訪問が相次いでいるが、大都市においてはその逆である。個人あて納付関係書類を打ち出しても約一週間後に届くのがザラである。納付期限を過ぎてから到達するのも、今や当たり前。減免措置をPRするも、通常の納付書が到達してから1ヵ月もたってから、減免承認の通知が届いたりもする。減免が認められなかったと思って、良識ある人は工面して支払った人も数多い。社会保険事務所に苦情を言っただけでは、あしらわれているようだ。強気の人や社会保険労務士が詰め寄ると、すぐさま「納付期限から2年2ヵ月の時効期間がありますから、大丈夫です。」と開き直れとの業務指示でも出ているかのようだ。社会保険の行政方針は、ここまで社会通念から外れている。そもそも公的事業や公共事業と言うのは、国民の支持があって成り立つものであるが、今や国民の支持のない国民年金となっているから、「ズタズタの事務とペテンによる運用」と言われてもしかたがない。国民年金は昭和34年の国会可決時点から赤字破たんは分かりきっていた制度(過去のメルマガ参照)なので、国民は不満や文句を言わざるを得ないのであり、もとより協力できる状態にないのだ。

2005/08/08

第40号

「経済好転の兆しが出た」というのはマスコミ流の話で、日本経済の基本的な構造転換が走り出したとの意味である。とはいっても、雨傘にたとえてみれば、傘をさして骨を開いたが、まだ布が張られていない状態である。転換の主導は民間であって、政府は後追いであった。経済構造転換を定着させる法律改正は、この2~3年に目白押しではあるが、これから成立させようとするものばかりである。商法、司法制度、労働契約法制、紛争調整制度が、現実に走り出せば、日本国じゅうに一挙に構造転換が浸透する。8日の国会解散は世界中にニュースが流れたが、為替レート・株価とも下落はしないほどに経済転換に影響は出るすべもなかった。
…この間、半導体は韓国に負け、ソフト開発も米国系に負けた。この分野は再起不能だ。現在日本のIT産業も、質量ともにインド、中国、韓国の後ろである。次はユビキタスだ! と当該業界は意気込むが、もうすこし熟慮してみればどうだろうか。単純な人海戦術と精神論では勝てるわけがない。グローバリズムに対抗してナショナリズム(靖国)を持ち出しても敗北は目に見えている。世界での日本商品の強さは日本文化・教育による価値観・安全な開発風土にあるのであって、目先の利回り資本の発想ではないのだ。
…そこで労働力問題がここにきて重要になってきた。新しい経済構造にあわせた労働力を如何に養成するか。また2007年から団塊の世代が定年を迎えるが、この団塊の労働力を活用しなければ日本経済が後退する。労使関係は平穏なのだが人材の無気力を生じさせてしまって有能な労働力の活用ができていない。事業も大規模に行えば労働力の管理費用で経費倒れになる。まるで現状をたとえれば「笛吹けど踊らず」と嘆いているようなものだ。
…したがって、転換した後の経済構造に応じた経済活動を促進する個別企業内制度を、創造して、定着させることが決定打になる。基本戦略は、「高付加価値商品と高水準サービス提供」ではあるが、それを支えるための、PCや携帯を駆使したIT高度情報組織運営を立案して一挙に定着させることが第一番である。売り上げを上げさえすれば、銀行が融資をしてくれるとの時代は終わりを告げた。今や個別企業においては、出血サービスはやせ衰えるだけであり、値引き切り込み販売をしたところで個別企業の資産蓄積に至らない。過去の経験からの小手先販売をむやみに行えば致命傷となる。提供する商品にノウハウと情報を付加した場合には、その料金を払ってくれるクライアントと取引をすれば、円滑に経済発展する。
…雇用は個々人ごとの労働契約を重視するようになる。賃金体系のイメージが様変わりする。職能資格や成果主義では収まりがつかない。労働関係トラブル対策費用を固定賃金の3?5%予算組みする賃金制度が必要となる。ボトムアップを基本とした人事管理の進み具合で収益性、生産性、労働意欲、効率、この経営管理の重点四分野が様変わりをする(北欧やイタリア経済の例をヒント)。所詮、今まではトップダウン式であった。
…経済構造転換に伴い、汚職や談合摘発に警察庁、検察庁ともに活発な動きをしている。昔であれば、談合首謀者は事業の立役者であった。戦前の一般競争入札時代の暴力団横行からすれば、指名競争入札→談合は平和の訪れであった。それが今や経済構造転換によって悪人となった。構造転換の道を走るに百数十年の歴史しか持たない未熟な運転手ひし形◇◇◇は自動車の脱輪に続いて、販売のフライングも摘発された。酒類販売免許申請中に酒類販売で摘発。たしかに昔なら、多くの許認可は申請中状態であれば摘発されることがなかった。たしかにひし形家はお代官様から優先的に情報だけはもらっていたが、(今も優先のようだが)情報もインターネットに載るものだから皆が知るのが早い。ひし形家のご隠居たちは、昔のことを持ち出して運転手に無責任なハッパをかける。「それをな~んとかするのが君~の仕事~じゃないの?」」。すると、若輩運転手は、自殺行為あるいはフライングに走るというところだ。でも、昔のようにひし形家は、将来死ぬまでの面倒は見てくれなくなった。
…あくまでも経済学の目的とは誰もが得となり誰もが豊かになることである。誰かが得をし、誰かが損をするのは経済学とは言わない。転換した経済構造に合致する個別企業の方針で努力をすれば実ることになるが、転換が見えない努力は実ることがない。


ある医者の話。
アスベストと中皮腫について解説。
アスベストとは石綿(せきめん)とも呼ばれ天然の繊維状の鉱物。主成分は珪酸(けいさん)マグネシウム。ふつうの粉塵と違い繊維状なので、吸入した場合、肺の中に石綿繊維が刺さり排出されず、長い年月を経て発癌すると考えられる。
肺、心臓、肝臓、胃腸などの臓器は、胸膜、心膜、腹膜で覆われている。その膜の表面に中皮がある。中皮腫とはこの中皮から発生した腫瘍。胸膜中皮腫の発症には石綿の吸入が関係していることが多いと言われている。
【注意・免責事項】一般向けに理解しやすくするために、厳密な医学用語は使用せず、医学的には表現が異なることがある。詳しくは呼吸器科などの医師に相談のこと。


社会保険労務士制度の将来に、大きな変化の兆し。社会保険労務士が国家資格ということは、資格学校の宣伝で知ってはいても、身近に付き合っている人はかなり少ない。社会の需要はかなり少ない。それほどに必要性が少ないのである。そこで、厚生労働省は、特定社会保険労務士の法律制度を成立(6月10日)させて、個別企業内も対象とした労働トラブル調整の専門家としての役割を持たせることとした。平成19年からの施行ではあるが、一般社会保険労務士は、労働トラブル対策業務から事実上閉め出されることになる。
とりわけ、社会保険労務士は保険等の手続きが仕事と思われがちであったが、この保険の部分が、官公庁行政手続きのオンライン化によって一挙に様変わりするため、社会保険労務士の人海戦術で労働社会保険制度を維持する必要性がなくなったためである。ただし、60歳代の事業主には60歳代の社会保険労務士は実態上必要であるので、その部分においては制度を維持する。(この部分は10年ほど前から、労働省は社会保険労務士や税理士を高齢者対策と位置付けている)。
厚生労働省は、社会保険労務士が、一層の能力を向上して、労働トラブル調整の専門家として、紛争調整委員会、労働委員会などの「行政裁判所」(行政裁判所とは公正取引委員会のようなもの)での活躍を期待する作戦に転じた。社会保険労務士の業界団体は「期待を裏切られた時の反発も大きいでしょう」と法律改正担当者に将来を宣告されたが、意味するところは、これから労働トラブル解決分野で、事業主や労働者の役に立たないのであれば、現在60代の社会保険労務士が廃業する10年が15年後には、社会保険労務士制度をなくしてしまおうとの意味を含んでいる。昔々「計理士」という国家制度が存在し幅を利かしていたが、今では聞いたこともない資格となっているから、それは十分ありうるのだ。(末路は、選抜された計理士だけが公認会計士に吸収されたとのこと)。
これも、経済構造転換による制度変更のひとつである。今から社会保険労務士になろうとする人は、「あっせん代理人」まで目指さなければ、資格取得の意味はなくなった

2005/07/04

第39号

現在の景気動向は、踊り場といわれているが、完全に平成恐慌脱出するのか、再び転落するのかは、まったく誰にも予測が出来ない。さまざまな統計上の数値は、確かに経済回復を示している様? だが、経済構造が転換したのに旧来の測定方法では判断できない。景気を下支えする個人消費の伸びは未だ低く、豊かさについては回復していないことである。
興味ある話として…。 洋食、洋服、キャベツ、リンゴ、これらは、昭和大恐慌からの脱出期に、新商品として売り出されたものだ。その多くが、大正ロマンの時代に、一般庶民が高嶺の花と夢みていた商品なのである。蓄音機、即席カレー、ヨーヨー、シャンプー、マニキュアセット、喫茶店、三つ又ソケット、六球スーパーラジオ、バイク陸王、模様入りビー玉、洗面器なども然りで、昭和大恐慌を脱出するため個人消費を回復させた商品である。(昭和12年の日中戦争による贅沢禁止令で、多くの商品が規制され、次に経済は多国籍戦時経済へ)。さて、バブル時代に夢みていた商品と言えば、ブランド品、高級福袋、大型乗用車、街中高級マンション、高級老人産業、海外旅行、エスニック、イタメシ、ペット、独身生活、サラ金など。例えば、サラダに使う野菜の種類も増え、レタス、キャベツ、キュウリ、トマトの昔風では魅力がなくなった。これらの新野菜や、日本料理の彩りに使う徳島県上勝町の葉・枝出荷も情報通信技術ならではの新商品である。マーケティングにIT情報通信の裏付けをもって、チーズ、パスタなど農産物を生産している先進はイタリア農業である。経済理論からしても、便利に安く、一般に普及させるには、情報通信での裏付けが切り札となる。北欧の小国が日本へ進出する商品開発のバックにも、やはり、IT情報通信の裏付けがある。
そこで、最近危惧されているのは、「高付加価値製品又は高水準サービス」も支えるIT情報通信人材の育成がうまくいっていないことだ。単なる技術力レベルでは(技術力と商品力は別次元だが)中国、インド、韓国に負けている。高度な人材を育成する体制は大学をはじめとして未整備状態。北欧や豪州で進められているような熟練職人のIT情報通信化再職業訓練の欠落。業務・職務遂行における携帯メールやPC活用の未発達。情報通信産業の者以外のIT情報通信に関する工夫と創意の取り組みの無さ。…IT情報通信を扱うことは、自動車を運転することと本当によく似ているのだが…情報通信事業と自動車運送事業の「働き方」も酷似しているのだが。
…これらをヒントに、個別企業からのIT情報通信活用も一挙に進めることが出来ないものだろうか? …豊かな経済を作り出す、商品を作り出す人事体制はいかに。


平成19年の4月1日から、労使のトラブルに関する社会制度も変更される。マスコミでおなじみの司法改革実施とともに、人事労務管理が様変わりすることは間違いない。
ひとつは、労働裁判は労働審判制度が導入され、単純な内容の事件であっても、1年数カ月かかっていた裁判が、三カ月程度で審判が下されることも可能になった。私は一概にそう思わないが、労働者からの裁判は起こしやすくなるとの見方もある。たとえば、解雇の場合、労働者が訴訟を起こすと、雇用保険は即支給となるが、失業給付期間中に判定が下されるから、労働者が気軽に裁判を起こすことができるというものだ。
もうひとつ、こちらの方が重要。現在、労使のトラブルに関する「あっせん機関」は、紛争調整委員会、労働委員会の二つである。労使トラブル解決能力のない場合、グローバル基準に基づかない解決の場合、経営者側からの解決意向が強い場合などに備えて、あっせん制度を活用し充実させようというもので、この部門への社会保険労務士の大量投入が決まった。あっせん制度は、裁判のように白黒を判定するものではなく、労使双方の意見を聴取して調整を進めようというものである。取り扱いの対象は、業務命令からセクハラ・いじめ、解雇や退職金に至るまでの、あらゆる労働問題である。実質的に「もっぱら調整を行なう労働関係の行政裁判所」をイメージした方が分かりやすい。(ちなみに公正取引委員会も行政裁判所) 裁判とか団体交渉と違って、事業主側から「あっせん申請」をすることも容易であり、不良社員問題から人件費倒産回避まで、すでに多くの実績が上がっており、社内の経営管理手法として次々と活用されている。このことで、国も職場トラブル多発による労働意欲減退に起因する個別企業の経済活力減退に、公共事業としての本格的な手を打ち始めたことになる。
このため、社会保険労務士法の一部を改正する法律(平成17年法律第62号)が、平成17年6月17日公布され、平成19年4月1日からの実施とその準備が始まった。社会保険労務士の資格を事実上仕切り直す。研修・国家試験をもう一度受けさせることで、労務管理や法律の知識と技術・技能を持つ「特定社会保険労務士」に、あっせん代理人資格を認めることとした。不合格の社会保険労務士は、事務の電子化とあいまって、結果的に人事労務管理の世界から排除となるであろう。この「特定社会保険労務士」に特権を与え、企業内でのあっせん・和解手続の、制度的な促進部隊にしようとするわけだ。なので、個別企業の活用の仕方としては、今までならでは、トラブル発生=解雇か裁判かとなり、当事者が面と向かえば感情問題が起こり、あっせん・和解のプロも準備出来ないことから、実態として「話し合い・あっせんが閉ざされていた状態」から、あっせん・和解や融和の道を選択することもできるようになったのである。どうしても弁護士では効率一辺倒となり役不足であったものが、あっせん代理人の特定社会保険労務士を活用し、本人との代理交渉も可能なのである。
なお、社会保険労務士は、来年4月から、公然と労組との争議対策もできるようになったので、有能な社会保険労務士であれば団体交渉に参加してもらえる道も開けてきた。


研修医は「労働者」との初判断が最高裁で「労務の提供がある」と認定された。過労死が認定された関西医大病院の研修医、当時26歳の未払い賃金をめぐって、遺族が「最低賃金の水準を下回っているのは不当」との主張で病院側に差額分の支払いを求めた訴訟である。最高裁第二小法廷は6月3日「研修医は労働基準法上の『労働者』に当たる」との初判断を示した。病院側に約2カ月分の最低賃金との差額約40万円の支払いを命じたものであるが、影響は非常に大きい。遺族である被災者の父親が社会保険労務士であったため、弁護士一般では不可能な、詳細かつ現実に即した論述が可能となり、実態が認定されたとの評価が出ている。「東京都と大阪府は、救急で運ばれると命が危ない」と噂されるほどであるから、労働問題の切り口から医者の世界に実態判断でのメスを入れることが可能になったのではないか。

▽判決文(最高裁判所サイト)
http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/$DefaultView/84186BDA956A209749257015001C4F83?OpenDocument


株式会社総務部では「通信相談情報」の会員を募集しています。
会員は、人事・労務・労働法令、社会労働保険に関して、電話、FAX、メールを組み合わせての相談を月額1万5千円で依頼出来ます。社会が激変する中、法令など制度の変化を知らなかったが故の「無駄と手抜かり」が多く見られます。個別の労働トラブル、セクハラ、いじめ等の紛争も多発。そこで、時代に合わせ「IT」で、全国どこへでも、効率化された専門家の顧問形態をお勧めいたします。弁護士では役不足の労働問題が得意分野です。最新の判例動向などもお知らせします。一方通行の既製品情報提供ではありません。新聞雑誌や無料相談では、「見落としがちな個別企業実情」に合わせた双方向の情報やアドバイスの提供です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

2005/06/07

第38号

 今の中国の状況には、日本経済へのこれからの悪影響を8割が懸念し
 ているという。特に「運輸・倉庫」「卸売」「製造」業界で先行き懸
 念が高まっているとのこと。「大手の先行組は別として、中小企業は
 まさにこれから動こうとしているので、今後は様子を見ながらという
 事になりそう」(被服製造)とか、「中堅企業はストライキなどが直
 接的に影響している。政府の対応を考えるとインフラの整備が整いつ
 つあるベトナムへの転換を早めに考える」(産業用電気機器卸売)と
 いった、他地域への見直しの声も、との報道も聞こえる。2008年オリ
 ンピックに向けて、ますます「保証のない国」となってきた。
 長い歴史の中で、アジア大陸のこの地域一帯(中国領土の大半)は、
 自然を食い散らし、産業を食い散らし、「育成する文化」の無い地域
 である。産業革命が各国で完成しても、この地域一帯では産業育成が
 ままならなかったから、イギリス政府(アヘン戦争)も日本政府(満
 州事変)も「アヘン(麻薬)」を大量に売りつけた。その上で短気に
 なり、思い通りにならないものだから武力で押さえ付けようとした。
 日中戦争のときアヘン中毒者相手の戦闘は勝つのが当たり前。これら
 が誰もが認めるA級戦犯らのことなのである。戦後、中国人民解放軍
 (略奪厳禁・アヘン禁止)が政権を握り、近年の改革開放となったが、
 16年前にはやはり天安門事件、それから今に至り、やはり思い通りに
 ならないといって、唯一日本だけが再び短気になり…、「今度は何を
 するか!」と、単純に焦りイデオロギー(靖国神社?)に走っている
 日本…と見た方が妥当である。
 日本の主義主張、文化、価値観は、中国ではまったく通用しないこと
 を忘れてはならない。中国はすべての財産をいつでも実力で差押えら
 れる体制となっている国…経済活動自由の権利の無いことを忘れては
 ならない。もうひとつ、中国のオリンピックバブルで、日本の経済数
 値が回復しても、日本経済が豊かになったのでもない。
 では、日本経済が豊かになるにはどうすればよいのか? 有力ポイン
 トを3つ挙げると。日本がバブル政策をとったとき、当時、「通貨と
 いう名の道具」を追い求めた人たちは、それに振り回されて、その後
 は、みじめになった…これが教訓である。将来の明るい希望では、日
 本では百万人程度しかいない大金持ちが、中国には4千万人、すなわ
 ち、日本の人口の3分の1に相当する顧客が居るということだ。この
 人たちは Made in JAPAN の高級品がほしいのだ。あの、アニメの「ク
 レヨンしんちゃん」が流行する文化水準であるから、日本の高水準サ
 ービス提供は彼らにとっては信じ難い夢で理想なのだ。

 腕力・体力のない人間でも、ターミネータのような器具を全身につけ
 れば、異様な力を発揮する道具ができた。人間の腕力や脚力を飛躍的
 に向上させるロボットスーツ。重さは20キロだが、それをつけたとし
 ても、さらに40キロまでの重さのものはラクラクと持ち上げることが
 できる。この装置は、人間の脳から出る微量の電気信号を受け止め、
 手足などに伝えるものだが、体の骨格を金属で補強しているために重
 さが軽減されるとの原理のようだ。クレーンがなくても工場で、腕き
 きの熟練高齢者がハイパワー化、建設現場とか悪路での運搬作業にと、
 アニメの世界が現実になる。筑波大学の大学院生で、「若者」が考え
 たところに、将来の夢が開けできた。

 パワーハラスメントの解決が、なぜ重要になるのか? 日本経済オリ
 ジナル戦略である、「高付加価値商品」および「高水準サービス提供」
 を開発するには、創造性や自主性が重要で、仕事の進め方も、問題を
 発見し、解決策を思考・アイデアの交換などを繰り返すことが大切な
 のである。このような基本戦略を持ち、かつ「高度情報化社会」にお
 ける事業活動であるから、パワハラが経済活動阻害要素となるのであ
 る。パワハラが発生する原因が放置されたままの状態では、成果主義
 などの制度は、事実、そのすべてが上滑りしている。それは、JR西
 日本を見れば、よく理解できるのである。ZD、QC、TQC、小集
 団のときもすべてそうであった。

【パワハラとシツケの見分け方。】
 いわゆるパワーハラスメントかどうかの判断については、イジメなの
 かシツケなのかをめぐって、調査や議論を重ねるごとに曖昧になって
 くる傾向がある。現在まで法廷法理はなく判例法理も数少ないためな
 おさらである。そこで判断材料をまとめてみた。先ず、脅迫やセクハ
 ラと同じように被害を受けた者の「被害意識」の存在が重要である。
 それは労働能力の発揮において創造性や自主性が欠落し、人間ではな
 くなり、文句を言う機械に陥るからである。そして、イジメとシツケ
 について、次のような明確な区分をもって分析をする必要がある。
 @いじめ…被害者を現在の存在領域から排除する事を目的として、精
      神的または物理的に圧力を加えて、被害者の人格を否定し、
      結果として物理的排除する行為。
 @しつけ…その人が社会や職場との交わりの中で通常の社会共同生活
      ができるために、個々人の行為や権利行使による、人間関
      係間での相互の摩擦を防ぐために、その人の参加を促すル
      ール(義務等)を、もっぱら社会的制裁(私的制裁は含ま
      ない)を受けるまでに教育訓練する行為。

【パワーハラスメントとは、】
 職務権限を背景にしたものである。経営管理もしくは事業主の統治責
 任事案である。労働者からすれば就労権・労働環境権であり、一方で
 会社からすれば、労働能力損壊行為である。具体的には、上司が部下
 に、できもしない執拗な要求や嫌がらせで精神的に苦痛を与えるとか、
 言葉や態度による精神的圧迫や暴力(物理的力)を振るとか、出来も
 しない目標を掲げさせる事態をも該当し、ノルマを与えて達成しなか
 ったときは徹底的に部下を精神的に追い詰めるなどもそうである。こ
 の場合に、業務はプラン・プロジェクト・スケジュールに基づかない
 特徴がある。
 正常な人間は、人格攻撃を受けると、自分を見失い仕事上もさらに失
 敗が重なるという悪循環に陥るケースが多い。発見するための観察点
 は、被害者に自信喪失・刹那の発想・理由なき反抗の同居している点
 に注意する事である。
 
【いわゆるパワーハラスメントの調査】
 にあたっては、次のような留意点が必要だ。パワハラなどの加害者は、
 主に次の4つの「世間体」に立脚した論理や行動で自らの弁解・保身
 を図り、本質の焦点をごまかそうとする。
  A.「証人が居る。これが証拠だ。文句はあるまい!」の証人証拠
    優先主義。
  B.「私は頑張ります!」とのジャパンな大声決意表明主義。
  C.「辞めさせてもらいます。」などの騒動玉砕(図頼)主義。
  D.「相手にすると手間がかかるので…」との放置穏便主義。
 これらのごまかしによって、事業主も管理職も、周りの従業員が共に
 具体的措置をとろうとすることを躊躇させ、業務上も人間関係上も
 「泣き寝入り」させられてしまうケースが見られる。加害者意識は、
 今や時代が一挙にグローバルになり、社会共同体基準に変わっている
 ことなどに耳を傾ける意思など、まったく無く極めて自己中心的であ
 る。

【経営管理の切り口では、】
 パワハラ発生現場には次のような共通点がある。
 1.朝礼、朝夕の挨拶、報告・連絡・相談…をやっていない。
 2.作業計画を立てる。実際の作業を行う。反省をして改善をする。
   …plan do check をやっていない。
 3.やってみて、言ってみて、やらせてみて、褒めなければ、人は動
   かない。…の育成教育訓練の基本が無い。
 4.成り行き管理(走りながら考える)のため、技能向上、ノウハウ
   蓄積は先細り、悪循環を繰返している。
 該当する監督職に「プラン、ドゥ、チェック」の基準を導入すれば、
 すぐさま悪循環から脱するのであるが、いくら命令しても、いくら指
 導しても、パワハラの加害者はハナからこれを採用しようとしない。
 その原因は職業能力が低い上に保身しか頭に無いからである。

2005/05/10

第37号

 平成18年4月1日から、一挙に60歳定年が62歳となり、段階的に65歳
 まで引き上げられることになっている。60歳定年で自動的に人員削減
 できると思っていた個別企業では、人員整理を抱き合わせで行わなけ
 ればならなくなったので、大きな予定変更である。個別企業の事情を
 一切考慮しないこの法律改正に、どのように対応すれば良いのかと不
 安が高まっている。結論から言えば、法律改正を無視すれば全面適用
 となり、合法的な基準を定めれば相当な「ザル法?」になっているの
 だ。そもそもこの法律目的が、厚生年金の破たんを食い止める年金制
 度の不備(在職老齢年金、支給開始年齢)を補うために無理矢理作ら
 れたものだから、個別企業においては納得性が出てこないのである。
 昭和34年以来の国民皆年金をはじめとした社会保障政策の大失敗に対
 する、「焼け石に水」というところだ。したがって政府の姿勢も「無
 理を言いませんから、できるだけ雇用を!」というニュアンスになっ
 ているのだ。これが対策のキーポイントだ。
 したがって、段階的に到達年齢をスケジュールとしているが、到達年
 齢になったからといって、すべての人を雇用しなければならないとい
 うものではない。ただし、それは合法的な基準を定めればの話である。
 その基準は、健康、能力、服務態度についてであるが、恣意的(好き
 嫌い)選択を排除しているものになっておれば、結果的には対象年齢
 者の40%を雇用しなくてもよいとのニュアンスになっている。またそ
 の際に子会社・関連会社への出向とか労働者派遣も可能である。すな
 わち、基準内容において、客観的な合理的で社会通念上相当であれば
 良いとのことである。そろそろ、対象者の職務経歴や人事評価を整備
 して、基準作りを始める時機になってきた。場合によっては整理解雇
 の抱き合わせも要求されてくるので、頭を悩ます必要が出てきた。
 さて、ここまでは机上の話で、現実的に合法とされるにはどうするか
 である。厚生労働省はそこまでの説明を避けているが、こういうこと
 である。この基準というのは、労働協約もしくは就業規則に該当する
 ものであるから、過半数労働組合があれば労働協約締結作業、それ以
 外は意見聴取をして監督者の届出が必要であり、これらが抜け落ちれ
 ば「裁判では負けますよ!」と言っているのである。それは、例えば
 労働組合のない事業所であれば、従業員代表選挙を行った証拠から始
 まって従業員代表との協議の議事録に至るまでを整備しておく必要が
 あることを意味する。いわゆる整理解雇の四要件を念頭に置いておく
 必要がある。うかつに発表してしまって、社員からの冷たい視線にさ
 らされ、何もできなくなったばかりか、取り返しのつかない不信感を
 買ってしまった事例は数多くある。ましてや時代は変化しており、変
 化を起こした団塊の世代に関わる問題なので、労組の同意を採ってい
 ても、トラブルを訴訟に打って出るばかりでなく、紛争調整委員会の
 あっせんに持ち込むケースも増えているので、甘く考えわけにはいか
 ないのである。
 こうなってくると、それなりに厳しい対応を迫らざるを得ない個別企
 業においては、専門家を導入して幅広く検討し、手抜かりのないよう
 に制度を組む必要がある。どこの個別企業においても初めてのことで
 あり、労働意欲にも大きく関わる問題である。この不透明な時代に、
 わけのわからないままに法律が変わったからといって、少なくとも数
 億円の人件費負債を背負う必要は無いのである。

 ここ数年、日本各地での安全管理不行き届きによる大事故が続いてい
 るが、いよいよ世界に名だたる旧国鉄の安全技術が地に落ちているこ
 とがはっきりしてしまった。またまた、輸出に悪影響が出る。新幹線
 のみならず高付加価値製品に対するジャパンイメージは大きくダウン
 した。
 JR西日本宝塚線の事故は、メカ(装置)の不備が指摘されているが、
 それにも増して今回はそれらを防ぐための業務遂行体制にボロが出て
 いることが判明した。ここまでJRの人事労務管理の水準が後退して
 しまっているとは思わなかった。原因究明の研究キーワードは、「マ
 ル生運動」「国鉄分割」「JR不採用事件」といった所で、「民営化」
 は派生項目である。マスコミの解説でもこれらを触れてはいるが内容
 には立ち入っていない。まず教育訓練については、「やってみて、言
 ってみて、やらせてみて、褒めなければ、人は動かない。」とする近
 代教育訓練の基本すら、「日勤教育?」の実態を聞くや行われていな
 かったことが判明した。この近代教育訓練の基本は戦前、海軍の山本
 五十六が大型艦船を動かし、3つの艦隊を各々実戦配備に資するため
 の教育訓練方法として、アメリカのハーバード大学留学の後、日本で
 初めて導入されたものである。戦後は、TWI訓練として、ほとんど
 の産業でこの教育訓練方法の基本が用いられて、日本の高度経済成長
 を支えたのである。それがJR西日本では、忘れ去られて、前近代的
 教育に後退してしまったようなのだ。
 また、ATS装置より若年運転手の人件費が安かったとでも言いたい
 のだろう。「ひやり・ハット運動」とか「プロジェクトX」はどこへ
 やら。旧国鉄時代の「マル生運動」期間中に、上司に反対すれば「教
 育」送り、一方で職場での賭博と酒の誘惑が氾濫との禁じ手を使って
 しまったものだから、はたして残った社員の士気を高められるのだろ
 うか。JR西日本は当時の政府に翻弄されて、運転士のモラルを低下
 させた人事労務管理が行われていたと言わざるを得ない。売り上げは
 伸びず手を抜く事ばかりの公務員的発想。社長を替えても方針を変え
 ても、部下は顔色を伺うだけで、受け入れる素地もなければボトムア
 ップの要素も根絶やしにしてしまっているのだから、民営化としては
 大失策だった。……他山の石である。
 四菱は社会不適合、こちらは前近代。……お陰で日本経済は世界から
 見捨てられそう????
 事故の激音と砂煙を見て、操業停止をして助けに行ったのは、日本ス
 ピンドルだった。

2005/04/05

第36号

 この春の散在したインテリジェンス。
 お花見や新入社員教育の話題?に是非どうぞ。
 ホリエモンとフジテレビ。テレビから喫茶店、家族会議からデートの
 話題まで大論議されている。ホリエモンの手法は野村証券や大和証券
 などが日常的に行っている手法。ところで、20数年?前だったか、自
 民党が宣伝やマスコミ対策で劣勢に立っているときに、一生懸命力を
 入れて手中に収めたのが「フジ産経グループ」である。当初、ホリエ
 モンで多くの国会議員が大反応したのはここに理由がある。やはりマ
 スコミは当該タブーが怖いのだろう。
 年金問題ついて、議論がかみ合っていない点がある。団塊の世代であ
 る。現在55歳以上の人は、何といっても年金に期待をしている。とこ
 ろが、民間での厚生年金の適用・非適用はいまだに議論になっていな
 い。全国の非正規社員は30%を超えているが、この人たちの多くは厚
 生年金適用となっていない。このアンバランスが問題なのである。
 「パート適用」の狙いは単なる保険料集めであった。短時間労働か常
 用雇用かの論議はあるが、国民の将来を考える上でのバランスを保つ
 には「全員適用」の考えも出て来るのだ。もうひとつ。社会保険料は、
 もとより税金の一形態。厚生年金の会社負担分は一般経済に跳ね返っ
 てくる。こう考えると消費税との関係もわかりやすくなってくるのだ。
 日本航空の事故が相次いでいる。飛行機事故は「交通事故より遥に少
 ない」とは当たり前の話だ。確率は低くとも事故に当たれば死ぬ。経
 営状態が悪化して、「貧すれば鈍する」との見方は当たっていない。
 日本航空に限っては、少なくとも30年ぐらい前から整備不良は言われ
 ており、整備途中の飛行機を離陸させることが日常茶飯事だった時代
 もあった。だから私は、機内サービスが官僚的なこともあり、昔から
 JALには乗らない。
 三菱グループは打たれ強い。大阪の三菱金属・金精錬所後地にマンシ
 ョンを建て、毒物汚染を隠して三菱地所が高値で販売。時代の変わり
 目に三菱がどんな立場に置かれているのかが、「帝王学教育」の無い
 ために分からないのだろう。日本経済で三菱は明治時代の新参者。勢
 い「反省する」との経営手法の持ち合わせがない。
 ローマ教皇のヨハネ・パウロ二世死去の報に関するニュースは、東側
 社会主義圏崩壊に関連したものが世界では多い。日本のマスコミでは
 出にくい情報。教皇の母国ポーランドでは、労組「連帯」の書記長と
 して自由化を推し進めたワレサ元大統領が、同国出身の教皇の存在が、
 東欧革命の実現にはかりしれない影響を与えたとコメント。米国のブ
 ッシュ大統領は、「ポーランドの民主化革命は東欧を席巻し、歴史の
 流れを変えた」と、教皇の歴史的役割を高く評価する声明。

 成果主義が話題に多くなってきているが、労働組合の全労連の呼びか
 けはこうだ。「どんなに会社の言いなりになって働いても、賃金は下
 がり、仕事は変えられる。会社とどう向き合って行けばいいのか。自
 分の将来はどうなるのか。誰もが不安と悩みを持っている。……皆さ
 ん、ともにがんばりましょう(全労連)」。経済評論家の内橋克人氏
 はNHKの日曜討論で、「若者のニート現象は、その人たちが住んで
 いた社会と企業の中で行なわれていることが、あまりも違うところか
 ら生じた」との主旨を話した。NHKの連続ドラマでも社宅に住む主
 婦が、「人生がんばってきたのに、努力してもちっとも実らない!」
 とのセリフがでてくる。これらは、けっこうマイナーな話なので、マ
 スコミでは今まではなかなか取り上げられなかったが、実のところは
 多くの人が思うところである。しかしながら、このような気持ちは何
 も労働者や若者そして主婦に限ったことではない。事業経営者も同じ
 ことを思っているのだが、このようなことを口に出せば、「会社の士
 気が乱れる」ことがよく分っているから、一生懸命沈黙し「社員もそ
 のことを言わないでくれ!」と懇願せざるを得ない心境なのである。
 すると、正社員と言われる人たちに「出る釘は打たれる。真面目さを
 アピールしておいて、職場で話題にならないようにしよう」と思う人
 たちが増えるのは当然のことである。このような「心境と悪循環」を
 「踏まえ事に当たる」ことが、私たち総務・人事部門の専門家として
 のノウハウである。そう、後ろ向きなれば悪循環が始まる。休憩はし
 ても立ち止まったり(評論ばかりで尽力せず)、振り返ったり(過去
 にしがみ付く)してはいけない。経営管理のコツとしては、個別企業
 の内輪で議論を行えば、この悪循環を生むから、先ずは姿勢から始め
 て「市場に打って出る」ことで、初めて社内もまとめあげることが出
 来るのである。このメルマガを読むあなたは、個別企業経営者に建議
 する作戦参謀の中枢なのである。

 早ければ来年の春ごろから労働組合と団体交渉へ、社会保険労務士が
 出席が可能となる。今までは労働争議の介入を禁止されていたので事
 実上出席することができなかった。労働組合問題を抱えている個別企
 業では、この分野のアウトソーシングも出来るようになったのだ。一
 方、時を同じくして、裁判所で労働審判制度が発足する。労働審判制
 度とは裁判官と労使二人の労働審判員のもとに解雇や賃金未払などの
 審判を行う。全国250人ほどの労働側審判員のうち51人の全労連推薦
 の労働審判員が誕生。これまでは政府関係の多くの審議会などに全労
 連系代表は排除されていたことからすると、急激な変化で与える影響
 は大きい。それは、全労連推薦の労働審判員は、日本労働弁護団では
 なく、自由法曹団との関係が強いからだ。
 あっせん制度についても激論が交わされており、さらに充実されるこ
 とには間違いない。個別企業にとっては紛争が発生したときの選択の
 可能性も広がるが、選択を間違えると多大なリスクになる。一挙に社
 会の変化が起こっているので、「ビジョンを持つとともに落ち着いて
 かじ取り」を必要とする。
 なお、紛争に至らずとも社内でトラブルが起こったときの対処につい
 てのホームページを当社で開設しました。発生前の保険のつもりでU
 RLを見てください。
 http://www.soumubu.jp/info/index.html

 個人情報保護法の施行。3月31日までドタバタと応急手当てが行われ
 た。私ども株式会社総務部の「個人情報保護方法方針」は、個人情報
 保護規定と成りうるもので、一方的契約(片務契約)として使用でき
 るので、読者の個別企業で、これを修正して使用することも可能です。
 http://www.soumubu.jp/privacy.html

 「機密および個人情報の収集に関する誓約書」は、個人情報のみなら
 ず、個別企業の機密についても規定しており、とても好評。個人情報
 については注目するものの機密については、機密を特定しなければ法
 的な根拠が出ないことに気がつかない専門家も多いなかで、機密を特
 定させる方法を定めていることがポイント。電子機器やネットワーク
 環境における情報漏えい防止の物理的手段については、多くの専門家?
 は自らの担当分野外として取り上げもしていないのが大半。そして、
 単なる「掛け声と禁止事項」マニュアルの水準を超えて、経営組織の
 動きとして展開できるカラクリが入っているから、浄化作用を持つ。
 大手から数人の輝く企業まで、そのままで使ってもらっています。
 http://www.soumubu.jp/download/template/template2/sonota/shuhi.html

 これら情報保護に関するものを、事業の「姿勢をアピール」して、ク
 ライアントの信頼を得る手段とする個別企業も出て来た。…よく考え
 れば、これが本来的な使い方。個人情報保護法施行や民法709条に対す
 る防御策だけでは本末転倒なのだ。

2005/03/08

第35号

 緊急対策。(手抜かりがあっても、今からでも間に合う)
 個人情報保護法などの対策は3月末まで。情報漏えいの90%以上が人
 間の手で行われている現実。プライバシーマークなどの取得の主要な
 対策は人的安全管理措置であるが、教育・訓練よりもすぐに着手でき
 るのが「従事者とのデータの非公開契約の締結(誓約書)」である。
 これは本法第20条に基づく安全管理措置の主要対策となる。個人情報
 規則(就業規則の一部)を定めたとしても社員その他にも守らせる担
 保措置が無ければ会社の責任は免れない。その誓約書の書式は次のU
 RLから無料でダウンロードできる。
 民法709条の不法行為に基づく損害賠償の訴訟が起こされても、この誓
 約書を回収保管しておれば相当の部分が対応できる。また、個人情報
 とは別物の会社の機密情報への対策、コンピューターシステム関連の
 防止方法にも触れている。委託業者の従事者、派遣スタッフ、パート、
 アルバイトの人たちからも誓約書を回収することも、とても重要であ
 る。4月1日に、手抜かりがでそうな事業所では、この誓約書の回収
 を済ませることで、情報漏えい事故防止と事故発生の際の損害賠償対
 策に、とりあえず間に合わせることができる。なお、5000人までのデ
 ータしか取り扱っていない企業であっても、損害賠償は対象とされる
 ので注意が必要だ。完璧を目指すよりも、当座の防止と担保措置が重
 要だ。
 http://www.soumubu.jp/download/template/template2/sonota/shuhi.html

 中国経済体制の根幹を発見する情報が入ってきた。
 マスコミに流れない、現地直通の中国社会を熟知したルートを通って
 のインテリジェンスである。
 中国各地では労働問題に起因する暴動が数多く発生している。最近マ
 スコミで流れている土地を失った農民の暴動とは別物だ。これを公安
 局(警察のようなもの)が武力鎮圧しているとのこと。ただ、制圧し
 ても再び暴動が発生するとのことである。中国の武力鎮圧はライフル
 で撃ち殺すのが通例で、先日の上海人質事件で写っていた「武警(武
 装警察)」が実行部隊だ。首謀者は後日逮捕されれば、銃殺、獄死、
 事故死となることは専門家の中では常識である。
 この背景の情報の端的なものは、中国の国営企業で安定的な地位をも
 っているはずの労働者が構成する「中国総工会(労働者団体ではある
 が労働組合とは言い難いもの)」においても構成人数が1億2000万人
 から8600万人へと約30%も激減するなどの大規模なリストラが行われ
 ていること。中国企業の多くは大学卒業者を不要としており「無業者」
 という失業手当も収入も何もないエリートが激増していること。中国
 でのこのような激変は、それまで最低生活程度は保障され、自力で将
 来を切り開くことを禁止され、中国共産党とか共産主義青年団(共青)
 の組織の中で口だけが達者であっただけで……、現在、これらの人た
 ちにとっては夢にも思わなかった地獄よりも怖い生活不安なのである。
 人の命が軽く、自殺は多く、いまだに「図頼(とらい)」も現存する
 中国社会であるから、混乱は日本の比ではないのだ。
 したがって、中国経済は、日本経済が目指す「高付加価値製品と高水
 準サービス」を真似することすらできない経済体制と社会文化である
 ことが判明した。中国には、日本のお金持ちと比較にならない大富豪
 が約4000万人存在するとのことである。改革開放経済以前の純粋な社
 会主義経済?の時代においても貧富の差は激しく、大富豪は日本のお
 金持ちよりも勝っていた。なので、メイドインジャパンが、今でも中
 国ではよく売れるのである。ところが不安は、武力権力機関である中
 国人民解放軍は独立自営集団であり、社会経済不安に乗じる「龍門
 (暴力団に似たもの)」も大きな力をもっている。約13億の極度に貧
 乏な人たちが、「どこへ行って何をするやら」の、ここが危険要因な
 のである。

 時代は変わり、労働組合との対決はほとんどなくなった。トラブルと
 いえば、ほとんど個別紛争である。社内トラブルが生じれば、社員の
 意欲は低下し、良い仕事も良い商品開発もできなくなる。ちょっとし
 た行き違いでトラブルとなった場合でも、退職や感情的になる前に、
 紛争調整委員会などにあっせんを申し立て、社員の納得のもとで調整
 (あっせん)を図ることも、新しい時代の人事管理の姿である。これ
 を国家が後押しする時代になった。
 労働紛争に関する裁判機能が相当麻痺している状態を改善するために、
 あっせん制度が設けられている。あっせんは訴訟とは違って、対決す
 るのではなく調整する制度であるから、経営者と労働者の多くに好感
 を持たれている。弁護士では法廷における対決が主要な柱となってい
 ることから、あっせんは苦手である。そこは「あっせん代理人」が依
 頼人の利益を守りながら、紛争調整委員会などでの代理をしてくれる
 わけだ。職場で対立している関係だから、あっせんの仲立ちやうまく
 は対立関係?だから、あっせんの仲立ちや代弁を上手くしてくれなく
 てはならない。これに関する法律(社会保険労務士法)の改正が、こ
 のほど閣議決定された。
 紛争調整委員会の場でのあっせんであれば、弁護士とまったく同様の
 業務が行なえるようになるので、依頼人はとても助かるようになった。
 政府も、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に資するため」として、
 あっせん制度の活用を充実させようとしているのである。企業を代理
 し紛争調整委員会との橋渡しとなる重要な担い手が「あっせん代理人」
 なのである。

 人材派遣業会社の最大手、スタッフサービスは全国に営業拠点を持ち、
 クライアントやユーザーの心理を突くようなテレビコマーシャルで有
 名である。この企業が長時間労働とサービス残業賃金不払いで、相次
 いで家宅捜索を受けている。この会社は派遣法ができた昭和63年には
 京都と大阪で売り上げが数億円の弱小企業であった。派遣法や男女雇
 用機会均等法により数年のうちに順調適正に事業を伸ばしていった。
 ところが、近年は銀行からの借入金返済のため売り上げ至上主義にな
 っていた。大手派遣会社は、こういう体質のところが多い。このS社
 事件をきっかけにした重要な問題がある。派遣業界は「好況・成長」
 しているとしながらも、内実は「借金と残業代不払い」であることが
 表に出てきたことである。厚生労働省の許可事業であるからこそ、あ
 ってはならない事件なのである。S社のごとく多額の借金をしながら
 毎日五時間半の残業代を払わずに、これをアテにしているようであれ
 ば事業経営ではない。ニュービジネスでも何でもない。人材派遣業界
 が、このように不払いとダンピングでもって成長しているのであれば、
 そもそも一般企業の派遣スタッフ需要がどの程度存在するのかが疑問
 になってくるのである。厚生労働省の派遣業政策は見直さざるを得な
 い。
 また、現代の社会・経済・時代の大きな変わり目において、機能主義
 経済に転換しようとしている日本経済社会に反し、経営が毎日銀行借
 金と売り上げに振り回され、旧態依然として、ましてコンプライアン
 スの感覚が一貫してなく、事業経営の幹部を蓄積育成することもなか
 ったことは、このスタッフサービスだけの問題ではないのである。何
 時の社会でも、「経済犯」に対しては国家や社会の目は厳しいのであ
 る。堤コクドが大きな事件になるのもそのためである。

2005/02/08

第34号

 アメリカ大統領の一般教書演説。これによると、世界経済に与える新
 たな政治的軍事的事項はなさそうだ。とのことで、国内国外を問わず
 個別企業の経営戦略に新たな変更を加えることはなさそうだ。しかし
 ながら、北京オリンピックが2008年の後の経済、東アジア経済圏構想
 は、相変わらず心配の種である。高付加価値製品または高水準サービ
 ス商品を確立しておれば、一喜一憂するような基本的な心配は不必要
 だが、アジアか、西欧か、アフリカか、東欧なのか、売り先と売り方
 とニーズに合わせた、切り替えは必要となってくる。これに基づく人
 材や労働力配置は具体的切り札だ。国内だけを相手にしている個別企
 業と言っても、その面での影響は大きく受けるので、昔のように強固
 な精神をもって努力だけしていれば幸せが来るとは限らないのである。
 経済や社会の動きは速い。昨年の秋以降は、10年一昔のスピードでは
 なく、一シーズン5年の変化である。戦略を見間違えて、投資をした
 り体制を組んだ場合には、それができあがった頃には、役立たずとな
 り、「残りは借金ばかりなり」、なのである。こういう話がよく理解
 できない無頓着な銀行マンからの融資には、みんなで気をつけよう。

 出向についてのトラブルが増加してきている。そこで要望もあったこ
 とから、現行の法律や判例的に万全な出向協定(契約)書の例案を作
 ってみた(このメルマガ巻末掲載)。出向とは、今の会社に雇用され
 たままで、出向先にも雇用され指揮命令をうけるというものである。
 出向先との雇用契約が存在する点で労働者派遣とは異なり、事業とす
 れば職業安定法違反で窓口担当者が刑事罰を受ける。移籍出向とか転
 籍出向は要するに解雇である。
 出向は雇用契約内容の中途差し替えとなるので、出向と復帰には本人
 の同意が必要となるのである。同意が取れたかどうか、完全履行され
 るのか、不履行の責任は誰が持つのか、復帰後の条件に大きなポイン
 トがある。協定と表現されるのは、雇用主が二人で出向者一人となる
 ことから慣習として、「協定書」となっているだけのことで、タイト
 ルでもって内容が左右されるものではない。参考にしていただいて、
 ご意見ご感想をお寄せください(ダウンロードのページに、社員労働
 契約書とともに今月掲載)。
 http://www.soumubu.jp/download/template/template2/yobo/shukko.html

 最近の、結構便利なデータベースを紹介します。
 利用されるみなさんの判断でお願いします。
 ほかに良いものがあれば紹介してください。

・税金関係のデータとインテリジェンス
 http://www.tabisland.ne.jp/zeidb/index.htm
・厚生年金基金の脱退や加入インテリジェンス
 http://www.pfa.or.jp/
・高年齢者継続雇用制度(平成17年4月1日)の実施詳細通達
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/dl/tuu1a.pdf
・全国の研修施設便覧(社会生産性本部)
 http://www.kenshu.ne.jp/
・結構、便利に見やすい、労働判例集
 http://www.ne.jp/asahi/morioka/masato/roudou.htm#ka
・労働調査会の最新ニュース(毎週金曜夕方5時更新)
 http://www.chosakai.co.jp/index_news.htm
・労働基準法関係届出書式(様式の各号は便利です)
 http://www.gunmaroudoukyoku.go.jp/youshiki/yousiki01.html
・社会保険労務士さんが見ている新着情報
 http://www.shakaihokenroumushi.jp/
・労働関連の法律 web
 http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/hourei/index.html
・人事・経理・総務フォーム集(随時更新最新版)
 http://www.soumubu.jp/download/index.html
・Microsoft Office テンプレート
 http://office.microsoft.com/ja-jp/templates/default.aspx

 弊社では下の当社サイトへのリンクを歓迎します。企業内WEBももち
 ろんです。特に連絡の必要はありません。自由にどんどんリンクを張
 ってください。どのページにリンクしていただいてもいいのですが、
 トップタイトルなど以外は予告なく内容を改善更新しますので、その
 点あらかじめご了承願います。
 http://www.soumubu.jp/contact/index.html

 個別企業が、グローバルに展開するにあたって、事業所の所在してい
 る都市の、いわゆる「街づくり」が注目されるようになってきている。
 個別企業が多国籍展開をするのは、資本を輸出して展開するも形もあ
 るが、高付加価値や高サービス商品でもって、世界に乗り出す展開の
 形もあるのである。その場合でも「どの都市」かが、結構話題になっ
 ているのである。昔ながらに事業所がどこに所在しているかの関心事
 でどこの都市かが問題なっていたが、最近は事情が少し違っているよ
 うだ。最近の研究成果によると、PR費用を使わずとも有名な企業の
 事業背景には、所在する都市の「街づくり」が大きくかかわっている
 とのことである。北欧各国、イタリア地方などはその典型である。こ
 れらの国から発信している商品を見ていれば確かにそれは納得できる。
 またそれは、以前であれば建築家がやってきて、中心建物建設や道路
 づくり、近頃では河川改修となるのであるが、建築家だけではどうみ
 ても「街づくり」はうまく行かなくなってきた。実は、日本の各行政
 から頼まれた建築設計事務所各社も赤字不採算仕事だからイヤイヤら
 しい。
 これらの高付加価値や高サービス商品の事業を支えるための「街づく
 り」には三つのポイントが共通してあるとのことである。
 第一は、創造的もしくは概念的な仕事に携わる人材とその家族を人的
 資源として蓄積。すなわち、バイヤー、モデリスタ、起業家、マネー
 ジャー、IT技術者、生産技術者、科学者、音楽家、建築家とその家
 族、またこのような人材を育てる教育や文化の人間発達促進機能であ
 る。
 第二に、技術や情報の集積もしくは蓄積。今や個人の創造性に限定せ
 ず、集合的な創造性を促進する機能である。これが大型センター的な
 建物単位ではなく「街ぐるみ・町並みぐるみ・コミュニティーネット
 ワーク化」されているのである。
 第三に、開放的で寛容な文化の受け入れをする背景に、その蓄積の度
 合いが極端に高い。さまざまな価値観の表現または自己決定権を社会
 として支えている。コミュニティーやボランティアを基盤とした情報
 収集技術が充実している。フィンランドのヘルシンキでは福祉国家の
 弊害である意欲の乏しさを改革するためにトップダウンからボトムア
 ップへの意思決定システムを転換したのである。
 NHKでやっている「ご近所の底力」であったり、ニューヨークの犯
 罪撲滅、バーミンガムの地域社会再生の話題はよく聞くところである。
 これとは別に、高付加価値や高サービス商品を提供する個別事業の街
 には、生産や消費経済が文化消費と結び付き、古い建築物や文化遺産
 を再利用することによって犯罪や退廃文化の防波堤としている特徴が
 みられる。そもそも文化とか芸術は「人生に勇気と活力を与える源泉」
 だから人間に大切なのである。「パチンコ産業も文化だ」とか「観光
 産業セックス事業論」などは豊かな経済とは正反対の貧乏現象ではな
 いのだろうか。近世以降にしても、「正直さ」による経済活動は事業
 を豊かにすると確信したからこそ今のように経済発展してきたのであ
 る。世界でネオジャポニスムとかメイドインジャパンが売れるのも、
 知的財産立国やコンテンツ産業が成り立っていくのも、日本の文化や
 芸術性の裏付けがあるからだ。
 高付加価値や高サービス商品を提供する事業の背景や裾野には「街づ
 くり」を考慮していくことも、グローバル展開のポイントかもしれな
 い。
 そんなこともあって、私も大阪市中央区の「わがまち部会」の市民委
 員に選ばれて言いたい放題だ。
 私どものホームページでも、経営方針や経営管理の企画立案に役立つ、
 世界経済に通じる面白事業の紹介を次のURLでもって始めることに
 した。皆さんの協力もお願いします。
 http://www.soumubu.jp/cgi-bin/clip/clip.cgi
 http://www.soumubu.jp/contact/index.html

>民間開放と言うのであれば現実身近なところで、たとえば、雇用保険、
>社会保険、労災保険などの保険手続きである、被保険者の加入脱退や
>給付について、官民双方の無駄・非効率そして個別企業総務部門から
>アウトソーシングするのに「ネック」となっているポイントは、代理
>した書類に「事業主等の記名押印が必要」なことである。…アウトソ
>ーシング会社などの社会保険労務士が行った方が品質・期間・コスト
>は適切である。…現行法令で保険手続きなどのアウトソーシングには
>外部社会保険労務士の国家資格者を必要とするが、その外部資格者の
>もとで事業主等の記名押印を省略するだけで、すぐさま多大な事務が
>効率化されるのである。
 
 と先月のこのメルマガで、書いたばかりであるが、実は厚生労働省で
 は具体的に検討中で、早ければ今年から、「事業主の記名押印省略」
 が実施されそうだ。電子申請との関連もあるようだが、相当前向きに
 動くことになっているようだ。個別企業の間接部門のあり方に影響を
 与えることは間違いない。

2005/01/11

第33号

 新年あけましておめでとうございます。

 この年末年始は、事件と災害のニュースで明け暮れたように思います。
 表現に問題があるかと思いますが、景気の悪い時ほど、事件や災害が
 取り沙汰される。マスコミは、ウケねらいなのか人目を気にしてなの
 か? 好景気であれば災害などは経済発展のバネにすらなってきたの
 が人類の歴史である。ものの本によると、人心不安の大きいときほど、
 「天災や凶悪事件が来るぞー。」と不安をかき立てる人たちが現れ取
 り沙汰されるのとのことである。

 ところで、今年末年始は、私達が本当に知りたい経済動向については、
 はっきりした論評が出て来ない。平成14年年末に日本がアジア経済戦
 争に負けて、これからの日本は、「高付加価値商品生産と高水準サー
 ビス商品」の2本柱であることは、ほぼ日本国中で異論のないところ
 になった。だがそれ以降は、経済動向について、諸説氾濫・正反対の
 意見が出てくる始末で、どの説が本質を突いているのか判断出来ない
 状況にある。
 それは、景気の拡大と後退が同時進行しているからである。景気指標
 と景況感のズレ。産業間で景気回復にズレ。企業規模により大手のプ
 ラス方向と中小のマイナス方向でのズレ。同じ産業でも企業間に、増
 収増益、増収減益、減収増益、減収減益の4タイプにズレ。地域間に
 景気のズレ。地価の格差は地価下落率が地方都市での20%以上の下落
 と三大都市圏とで大きな格差が生まれ、東京銀座五丁目や大阪御堂筋
 では上昇する現象すら現れてきた。資産の格差が急拡大し、若年層の
 無貯金世帯は急増している。旧来の経済指標と経済の動きに関する定
 石がコトゴトく外れているのである。これは旧来の調査方法が全面通
 用しないことを物語っている。
 そもそも、経済構造が急激に変化しているときに於いて、「旧式」の
 経済指標でもって景気動向を語ろうとするところに無理がある。状況
 を数字でもって表現すれば、具体性があり一般的にもよく理解もして
 もらえるが、経済統計や経済指標の前提が崩れているとか尺度が異な
 っているにもかかわらず数字数値を用いれば、それはマヤカシにもな
 りうる。諸説の共通点をあげつらっても安心材料にもならない。江戸
 時代から明治時代の経済制度が大転換したときには石高などの指標は
 すでに無意味であった。昭和大恐慌の立ち直り時期に、科学的管理法
 を製造業や商業に導入をしたのだが、それまでの職人的作業方法との
 指標比較をすることはしなかった。今回のバブル崩壊以降の経済状況
 は、人類の英知である国家の金融や信用維持政策によって、それなり
 に「打撃ショック」は緩和されたので平成恐慌(実は当時昭和恐慌と
 も言わず、長引く不景気と言った)とは多くの人が言わないものの、
 昭和大恐慌をはるかに上回る経済変動である。
 加えて、世界経済において日本がアジア経済戦争に負けてしまったの
 である。この経済戦争敗北とて、人間の数、資源、資金力のどれをと
 ってみても日本が優位なものは何一つないにもかかわらず、「人・物
 ・カネ」の三経営要素のみに関心を絞り込み、ノウハウや、情報の残
 る二つの経営要素を軽視したための誤算でもある。今や時代は組織主
 義から機能主義の転換の真っ最中なのである。19世紀以来のピラミッ
 ド型もしくは類似型の組織に頼った経営管理によって、減益となった
 個別事業が続出しているのである。
 要するに、大きな歴史の変化の中で、混とんとしている状況において
 は、「旧式」の経済指標でもって状況判断をすること自体が、事業経
 営転落への道なのである。現実的なひとつの側面から言えば、「高付
 加価値商品の生産と高水準サービス商品」を提供することによって、
 個別企業が「増益」となり「周辺に豊かさ」を享受できたかどうかを
 「指標や試金石」としていれば間違いはない。日本国全体の経済活動
 の結果である経済指標などは、弁解や責任回避の材料に使えこそすれ、
 今年については経営方針の本質からは度外視しておくほうが正解なの
 である。個別企業は、決して世俗的経済評論家の「いまや経済は踊り
 場?」論のようなマヤカシに振り回されている訳にはいかないのであ
 る。
 また、この1月、2月、3月は、不良債権の最終処理期間である。こ
 れに遭遇してしまったときには、冷静に考えるとして、「味方本隊か
 らはぐれ、敵に取り囲まれてしまった場合」と同じであるから、前方
 に突き進み正面突破する以外に、誰もが生存の道は無いのである。

 いよいよ今年の4月1日から、個人情報保護法が施行される。ところ
 が、話題の割にはどのような対策をとったらよいのかが知られていな
 い。多くの書籍には「個人情報管理体制の整備」とか「就業規則に禁
 止項目を記載する」と書いている程度で、対策としては「ざる」のよ
 うなものである。とくに、個人情報保護法とプライバシー侵害の不法
 行為(民法709条)は別建てであるとの認識が弱く、プライバシー侵害
 の不法行為については、未然防止対策(たとえばこのメルマガ巻末に
 示すような誓約書など)を取っていない個別企業がまだまだ多い。こ
 れでは訴訟となれば、個別企業は「踏んだり蹴ったり」の事態を招く
 ことになる。また、政令上の「個人情報データベースの件数が5,000人
 以内の場合」などに該当しないからといって、プライバシー侵害の不
 法行為は起こらないものと錯覚している人も多い。さらには、個人情
 報と個別企業の機密事項を混同し区別できないでいる人も多い。機密
 事項とは個別企業ごとで具体的に特定しない限り、「業務上知り得た
 機密は漏らしてはならない」などとの曖昧な表現では「機密事項」に
 は該当しない。

 (以下、メールマガジン2004年7月号再録)
 個人情報保護法の全面施行は、平成17年4月1日からである。ところ
 が、情報漏洩対策として、単に「機密と個人情報守秘」とのことで打
 たれている現場の対策だけでは、民間の損害賠償事件には、大きな手
 抜かりを生じる。巷でよく例示・論議されているものは、個人情報保
 護法や情報公開法理からだけの対策(4ポイントなど)ばかりに目が
 向いていて、企業経営に一番大切な損害賠償事件とか基本的人権トラ
 ブルの対策には欠落(瑕疵)がある。所詮、国家または官僚は民間の
 経済活動にとやかく口出しすべきではないのだが、法律に基づく国の
 アドバイスが無いからといって、民間企業では対策を忘れてはいけな
 い。個人情報保護法とプライバシー侵害の不法行為(民法709条)は別
 建てである。
 特に、秘密を取り扱う末端の従事者が、「どれが機密か分からない」、
 あるいは「具体的に個人情報かどうか区別できない」、さらには「情
 報を漏らして良い人と悪い人の区別が分からない」、と主張されてし
 まえば、「知らなかった(法律上は善意となる)」ということで悪意
 が無いことになり、個別企業は末端従事者の責任を問えなくなり、重
 ねて教育をしてこなかった責任も問われることになり、いわば事件が
 起こったときには踏んだり蹴ったりとなるのである。末端従事者に、
 就業規則上の処分が出来ないのはもちろん、「知らなかった(法律上
 は善意となる)」と言われ、民法上の損害賠償も求められない。外注
 や派遣ではさらに複雑になる。法律上の手抜かりで、事業者の過失責
 任ばかりが問われる。
 そこで、決定的ポイントを含めた具体的対策を誓約書の形で作成した。
 このメルマガの巻末に例示掲載。
 誓約書以外の形式でも自由。これを従事者に示すだけでも、法律上の
 効果には、「善意なのか悪意なのか」の大差が出る。ほとんどの「ウ
 ッカリ漏れ」は未然防止できる。ところで、IT関連業務のパスワー
 ド自体は機密事項でパスワードを悪用して個人情報を故意に漏らすこ
 ととなる。医療関係のカルテなどは個人情報かつ病院にとっては機密
 事項であり、病院が守秘項目としてカルテを機密に特定する必要があ
 る。と言う具合である。
 (再録ここまで)

 厚生労働省は、規制改革・民間開放推進会議の第1次答申に対する考
 え方を公表。市場化テスト(官民競争入札制度)と「主要官製市場等
 の改革の推進」などの意見を整理し、徹底して民間開放推進会議の答
 申を批判している。
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1228-4.html
 議論のテクニックにおいて、推進会議はお粗末にも劣勢に立っており、
 厚生労働省は非常に優位である。しかし民間個別企業の立場からする
 と、議論が空中戦になっており、民間開放推進会議の提案は、腑に落
 ちないし、現実味も湧いてこない。
 民間開放と言うのであれば現実身近なところで、たとえば、雇用保険、
 社会保険、労災保険などの保険手続きである、被保険者の加入脱退や
 給付について、官民双方の無駄・非効率そして個別企業総務部門から
 アウトソーシングするのに「ネック」となっているポイントは、代理
 した書類に「事業主等の記名押印が必要」なことである。弁護士や弁
 理士(特許、商標登録、サービスマーク)の業務は代理人の記名押印
 で済ませられる。安定所や社会保険の届出書類は全国共通で作成に個
 別企業の特色は無い。一般社員の問い合わせに対する担当社員の回答
 も(本来は)全国共通。非効率にも、これらの事務作業を個別企業の
 社員が行う必要はない。アウトソーシング会社などの社会保険労務士
 が行った方が品質・期間・コストは適切である。電子申請の普及が進
 まないのは添付書類が多いからだけではない。事業主の電子署名を省
 略し代理人の電子署名のみにすれば良い。現行法令で保険手続きなど
 のアウトソーシングには外部社会保険労務士の国家資格者を必要とす
 るが、その外部資格者のもとで事業主等の記名押印を省略するだけで、
 すぐさま多大な事務が効率化されるのである。この外部社会保険労務
 士活用範囲においての規制改革こそ、即、個別企業に役立つものであ
 り、厚生労働省の「権利義務を具体的に確定するための業務」にも有
 益なのである。特に社会保険関係事務の無駄には効果があると思われ
 る。もちろん、詐欺・横領、瑕疵などへの特別対策と供託をさせるこ
 とにより犯罪や事件での損害金の担保も必要である。これらは法令の
 大した改正もせずに実施できる。EUなどでは個別企業の経理事務を
 行政機関が代行して、個別企業の経営支援を行っている動きさえある。
 これからの小規模事業所の増加が予想されることも考えると、これだ
 けでも個別企業の間接部門の生産性は向上するのである。
 豊かな日本に向けての制度的インフラについて、主義・主張、文化・
 価値観を語っている事態ではない。民間からすれば、官僚組織は「自
 らの保身と権力を増やそうとしているのでは?」と疑っており、公か
 らすれば、民間は「営利目的だから不採算業務の切り捨てによる品質
 低下とか、劣悪不良な業務をするのでは?」との疑いが、互いにある
 様である。「疑い」があるのだから、そこは、この際、具体的な方策
 を考えて、規制改革や経済発展を目指す必要がある。数千年の昔から、
 イデオロギー対立の議論の末に有効な対策が行われた例はないのであ
 る。