2005/03/08

第35号

 緊急対策。(手抜かりがあっても、今からでも間に合う)
 個人情報保護法などの対策は3月末まで。情報漏えいの90%以上が人
 間の手で行われている現実。プライバシーマークなどの取得の主要な
 対策は人的安全管理措置であるが、教育・訓練よりもすぐに着手でき
 るのが「従事者とのデータの非公開契約の締結(誓約書)」である。
 これは本法第20条に基づく安全管理措置の主要対策となる。個人情報
 規則(就業規則の一部)を定めたとしても社員その他にも守らせる担
 保措置が無ければ会社の責任は免れない。その誓約書の書式は次のU
 RLから無料でダウンロードできる。
 民法709条の不法行為に基づく損害賠償の訴訟が起こされても、この誓
 約書を回収保管しておれば相当の部分が対応できる。また、個人情報
 とは別物の会社の機密情報への対策、コンピューターシステム関連の
 防止方法にも触れている。委託業者の従事者、派遣スタッフ、パート、
 アルバイトの人たちからも誓約書を回収することも、とても重要であ
 る。4月1日に、手抜かりがでそうな事業所では、この誓約書の回収
 を済ませることで、情報漏えい事故防止と事故発生の際の損害賠償対
 策に、とりあえず間に合わせることができる。なお、5000人までのデ
 ータしか取り扱っていない企業であっても、損害賠償は対象とされる
 ので注意が必要だ。完璧を目指すよりも、当座の防止と担保措置が重
 要だ。
 http://www.soumubu.jp/download/template/template2/sonota/shuhi.html

 中国経済体制の根幹を発見する情報が入ってきた。
 マスコミに流れない、現地直通の中国社会を熟知したルートを通って
 のインテリジェンスである。
 中国各地では労働問題に起因する暴動が数多く発生している。最近マ
 スコミで流れている土地を失った農民の暴動とは別物だ。これを公安
 局(警察のようなもの)が武力鎮圧しているとのこと。ただ、制圧し
 ても再び暴動が発生するとのことである。中国の武力鎮圧はライフル
 で撃ち殺すのが通例で、先日の上海人質事件で写っていた「武警(武
 装警察)」が実行部隊だ。首謀者は後日逮捕されれば、銃殺、獄死、
 事故死となることは専門家の中では常識である。
 この背景の情報の端的なものは、中国の国営企業で安定的な地位をも
 っているはずの労働者が構成する「中国総工会(労働者団体ではある
 が労働組合とは言い難いもの)」においても構成人数が1億2000万人
 から8600万人へと約30%も激減するなどの大規模なリストラが行われ
 ていること。中国企業の多くは大学卒業者を不要としており「無業者」
 という失業手当も収入も何もないエリートが激増していること。中国
 でのこのような激変は、それまで最低生活程度は保障され、自力で将
 来を切り開くことを禁止され、中国共産党とか共産主義青年団(共青)
 の組織の中で口だけが達者であっただけで……、現在、これらの人た
 ちにとっては夢にも思わなかった地獄よりも怖い生活不安なのである。
 人の命が軽く、自殺は多く、いまだに「図頼(とらい)」も現存する
 中国社会であるから、混乱は日本の比ではないのだ。
 したがって、中国経済は、日本経済が目指す「高付加価値製品と高水
 準サービス」を真似することすらできない経済体制と社会文化である
 ことが判明した。中国には、日本のお金持ちと比較にならない大富豪
 が約4000万人存在するとのことである。改革開放経済以前の純粋な社
 会主義経済?の時代においても貧富の差は激しく、大富豪は日本のお
 金持ちよりも勝っていた。なので、メイドインジャパンが、今でも中
 国ではよく売れるのである。ところが不安は、武力権力機関である中
 国人民解放軍は独立自営集団であり、社会経済不安に乗じる「龍門
 (暴力団に似たもの)」も大きな力をもっている。約13億の極度に貧
 乏な人たちが、「どこへ行って何をするやら」の、ここが危険要因な
 のである。

 時代は変わり、労働組合との対決はほとんどなくなった。トラブルと
 いえば、ほとんど個別紛争である。社内トラブルが生じれば、社員の
 意欲は低下し、良い仕事も良い商品開発もできなくなる。ちょっとし
 た行き違いでトラブルとなった場合でも、退職や感情的になる前に、
 紛争調整委員会などにあっせんを申し立て、社員の納得のもとで調整
 (あっせん)を図ることも、新しい時代の人事管理の姿である。これ
 を国家が後押しする時代になった。
 労働紛争に関する裁判機能が相当麻痺している状態を改善するために、
 あっせん制度が設けられている。あっせんは訴訟とは違って、対決す
 るのではなく調整する制度であるから、経営者と労働者の多くに好感
 を持たれている。弁護士では法廷における対決が主要な柱となってい
 ることから、あっせんは苦手である。そこは「あっせん代理人」が依
 頼人の利益を守りながら、紛争調整委員会などでの代理をしてくれる
 わけだ。職場で対立している関係だから、あっせんの仲立ちやうまく
 は対立関係?だから、あっせんの仲立ちや代弁を上手くしてくれなく
 てはならない。これに関する法律(社会保険労務士法)の改正が、こ
 のほど閣議決定された。
 紛争調整委員会の場でのあっせんであれば、弁護士とまったく同様の
 業務が行なえるようになるので、依頼人はとても助かるようになった。
 政府も、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に資するため」として、
 あっせん制度の活用を充実させようとしているのである。企業を代理
 し紛争調整委員会との橋渡しとなる重要な担い手が「あっせん代理人」
 なのである。

 人材派遣業会社の最大手、スタッフサービスは全国に営業拠点を持ち、
 クライアントやユーザーの心理を突くようなテレビコマーシャルで有
 名である。この企業が長時間労働とサービス残業賃金不払いで、相次
 いで家宅捜索を受けている。この会社は派遣法ができた昭和63年には
 京都と大阪で売り上げが数億円の弱小企業であった。派遣法や男女雇
 用機会均等法により数年のうちに順調適正に事業を伸ばしていった。
 ところが、近年は銀行からの借入金返済のため売り上げ至上主義にな
 っていた。大手派遣会社は、こういう体質のところが多い。このS社
 事件をきっかけにした重要な問題がある。派遣業界は「好況・成長」
 しているとしながらも、内実は「借金と残業代不払い」であることが
 表に出てきたことである。厚生労働省の許可事業であるからこそ、あ
 ってはならない事件なのである。S社のごとく多額の借金をしながら
 毎日五時間半の残業代を払わずに、これをアテにしているようであれ
 ば事業経営ではない。ニュービジネスでも何でもない。人材派遣業界
 が、このように不払いとダンピングでもって成長しているのであれば、
 そもそも一般企業の派遣スタッフ需要がどの程度存在するのかが疑問
 になってくるのである。厚生労働省の派遣業政策は見直さざるを得な
 い。
 また、現代の社会・経済・時代の大きな変わり目において、機能主義
 経済に転換しようとしている日本経済社会に反し、経営が毎日銀行借
 金と売り上げに振り回され、旧態依然として、ましてコンプライアン
 スの感覚が一貫してなく、事業経営の幹部を蓄積育成することもなか
 ったことは、このスタッフサービスだけの問題ではないのである。何
 時の社会でも、「経済犯」に対しては国家や社会の目は厳しいのであ
 る。堤コクドが大きな事件になるのもそのためである。