2005/08/08

第40号

「経済好転の兆しが出た」というのはマスコミ流の話で、日本経済の基本的な構造転換が走り出したとの意味である。とはいっても、雨傘にたとえてみれば、傘をさして骨を開いたが、まだ布が張られていない状態である。転換の主導は民間であって、政府は後追いであった。経済構造転換を定着させる法律改正は、この2~3年に目白押しではあるが、これから成立させようとするものばかりである。商法、司法制度、労働契約法制、紛争調整制度が、現実に走り出せば、日本国じゅうに一挙に構造転換が浸透する。8日の国会解散は世界中にニュースが流れたが、為替レート・株価とも下落はしないほどに経済転換に影響は出るすべもなかった。
…この間、半導体は韓国に負け、ソフト開発も米国系に負けた。この分野は再起不能だ。現在日本のIT産業も、質量ともにインド、中国、韓国の後ろである。次はユビキタスだ! と当該業界は意気込むが、もうすこし熟慮してみればどうだろうか。単純な人海戦術と精神論では勝てるわけがない。グローバリズムに対抗してナショナリズム(靖国)を持ち出しても敗北は目に見えている。世界での日本商品の強さは日本文化・教育による価値観・安全な開発風土にあるのであって、目先の利回り資本の発想ではないのだ。
…そこで労働力問題がここにきて重要になってきた。新しい経済構造にあわせた労働力を如何に養成するか。また2007年から団塊の世代が定年を迎えるが、この団塊の労働力を活用しなければ日本経済が後退する。労使関係は平穏なのだが人材の無気力を生じさせてしまって有能な労働力の活用ができていない。事業も大規模に行えば労働力の管理費用で経費倒れになる。まるで現状をたとえれば「笛吹けど踊らず」と嘆いているようなものだ。
…したがって、転換した後の経済構造に応じた経済活動を促進する個別企業内制度を、創造して、定着させることが決定打になる。基本戦略は、「高付加価値商品と高水準サービス提供」ではあるが、それを支えるための、PCや携帯を駆使したIT高度情報組織運営を立案して一挙に定着させることが第一番である。売り上げを上げさえすれば、銀行が融資をしてくれるとの時代は終わりを告げた。今や個別企業においては、出血サービスはやせ衰えるだけであり、値引き切り込み販売をしたところで個別企業の資産蓄積に至らない。過去の経験からの小手先販売をむやみに行えば致命傷となる。提供する商品にノウハウと情報を付加した場合には、その料金を払ってくれるクライアントと取引をすれば、円滑に経済発展する。
…雇用は個々人ごとの労働契約を重視するようになる。賃金体系のイメージが様変わりする。職能資格や成果主義では収まりがつかない。労働関係トラブル対策費用を固定賃金の3?5%予算組みする賃金制度が必要となる。ボトムアップを基本とした人事管理の進み具合で収益性、生産性、労働意欲、効率、この経営管理の重点四分野が様変わりをする(北欧やイタリア経済の例をヒント)。所詮、今まではトップダウン式であった。
…経済構造転換に伴い、汚職や談合摘発に警察庁、検察庁ともに活発な動きをしている。昔であれば、談合首謀者は事業の立役者であった。戦前の一般競争入札時代の暴力団横行からすれば、指名競争入札→談合は平和の訪れであった。それが今や経済構造転換によって悪人となった。構造転換の道を走るに百数十年の歴史しか持たない未熟な運転手ひし形◇◇◇は自動車の脱輪に続いて、販売のフライングも摘発された。酒類販売免許申請中に酒類販売で摘発。たしかに昔なら、多くの許認可は申請中状態であれば摘発されることがなかった。たしかにひし形家はお代官様から優先的に情報だけはもらっていたが、(今も優先のようだが)情報もインターネットに載るものだから皆が知るのが早い。ひし形家のご隠居たちは、昔のことを持ち出して運転手に無責任なハッパをかける。「それをな~んとかするのが君~の仕事~じゃないの?」」。すると、若輩運転手は、自殺行為あるいはフライングに走るというところだ。でも、昔のようにひし形家は、将来死ぬまでの面倒は見てくれなくなった。
…あくまでも経済学の目的とは誰もが得となり誰もが豊かになることである。誰かが得をし、誰かが損をするのは経済学とは言わない。転換した経済構造に合致する個別企業の方針で努力をすれば実ることになるが、転換が見えない努力は実ることがない。


ある医者の話。
アスベストと中皮腫について解説。
アスベストとは石綿(せきめん)とも呼ばれ天然の繊維状の鉱物。主成分は珪酸(けいさん)マグネシウム。ふつうの粉塵と違い繊維状なので、吸入した場合、肺の中に石綿繊維が刺さり排出されず、長い年月を経て発癌すると考えられる。
肺、心臓、肝臓、胃腸などの臓器は、胸膜、心膜、腹膜で覆われている。その膜の表面に中皮がある。中皮腫とはこの中皮から発生した腫瘍。胸膜中皮腫の発症には石綿の吸入が関係していることが多いと言われている。
【注意・免責事項】一般向けに理解しやすくするために、厳密な医学用語は使用せず、医学的には表現が異なることがある。詳しくは呼吸器科などの医師に相談のこと。


社会保険労務士制度の将来に、大きな変化の兆し。社会保険労務士が国家資格ということは、資格学校の宣伝で知ってはいても、身近に付き合っている人はかなり少ない。社会の需要はかなり少ない。それほどに必要性が少ないのである。そこで、厚生労働省は、特定社会保険労務士の法律制度を成立(6月10日)させて、個別企業内も対象とした労働トラブル調整の専門家としての役割を持たせることとした。平成19年からの施行ではあるが、一般社会保険労務士は、労働トラブル対策業務から事実上閉め出されることになる。
とりわけ、社会保険労務士は保険等の手続きが仕事と思われがちであったが、この保険の部分が、官公庁行政手続きのオンライン化によって一挙に様変わりするため、社会保険労務士の人海戦術で労働社会保険制度を維持する必要性がなくなったためである。ただし、60歳代の事業主には60歳代の社会保険労務士は実態上必要であるので、その部分においては制度を維持する。(この部分は10年ほど前から、労働省は社会保険労務士や税理士を高齢者対策と位置付けている)。
厚生労働省は、社会保険労務士が、一層の能力を向上して、労働トラブル調整の専門家として、紛争調整委員会、労働委員会などの「行政裁判所」(行政裁判所とは公正取引委員会のようなもの)での活躍を期待する作戦に転じた。社会保険労務士の業界団体は「期待を裏切られた時の反発も大きいでしょう」と法律改正担当者に将来を宣告されたが、意味するところは、これから労働トラブル解決分野で、事業主や労働者の役に立たないのであれば、現在60代の社会保険労務士が廃業する10年が15年後には、社会保険労務士制度をなくしてしまおうとの意味を含んでいる。昔々「計理士」という国家制度が存在し幅を利かしていたが、今では聞いたこともない資格となっているから、それは十分ありうるのだ。(末路は、選抜された計理士だけが公認会計士に吸収されたとのこと)。
これも、経済構造転換による制度変更のひとつである。今から社会保険労務士になろうとする人は、「あっせん代理人」まで目指さなければ、資格取得の意味はなくなった