2009/06/08

第86号

<コンテンツ>
新自由主義と言われる時代に、乗りに乗った社長
世界中が大不況でも、衣食住関連は強い!
今、切実となっている労働力(商品)はどうなる?
経営者も労働者も借金苦から逃れる!未然防止!
労働契約方の解説(おしなべて間違いやすい事柄の解説)


新自由主義と言われる時代に、乗りに乗った社長
何をもって新自由主義というのか定かではないにしろ、こういった経営者たちは、「今に景気は回復する!」と力説する人生観しかないのだ。昨年7月に世界的な金融収縮情報が流れ、秋に向けて次々と収縮が実行されていったにもかかわらず、リーマンショックが出るまで「動きのとれなかった経営者」なのであった。経済が落ち込むことが見えなかった経営者というよりは、経済は右肩上がり以外は存在しないといった人生観に凝り固まっているのである。
身近な例でいえば、元大手銀行員を経理部長などに据え置き、社長より高い給料を出し、「銀行融資と銀行返済、そのために売上高拡大とリストラの繰り返し、銀行との付き合いを止めれば、会社はつぶれるぞ!」としか言うことがなく、権限と恫喝を繰り返している頑固者と同じような者である。経営者の相談相手と言われる税理士にも、「銀行の言う通りしないと、大変なことになる。取引できなくなる!」と銀行の方ばかり向き、「税金は払っておかないと大変なことになる。税務署に突かれて潰される!」が口癖の人物、経営者の方を向いてくれていないのだ。時節柄の例えでは、「景気対策で真水が来るから、少しは潤うみたい!」といった巷の話と同じであり、実のところは政府の官僚と官僚OBで食い散らしてしまうだけ、バブル崩壊以降は民間に潤いが回って来た例もないのだ。
個別企業は一丸となり、個人は性根を据えて「豊かさと安定」を考えなければならない。巷のニュースや心地良い情報ばかりを追っかけているばかりでは、「自ら望んで他人の餌食になって行く道のりを歩んでいるかもしれない。


世界中が大不況でも、衣食住関連は強い!
詐欺やインチキ商法も横行しているが、知恵を出して今までとは全く違う新しい商品の考え方、新しい価値観を開拓している個別企業は強い。最近、マスコミでも紹介される衣料や外食に関する「激安」といった商品がそれだ。衣料はおしなべて旧来の非効率な作業、すなわちマーケティング、デザイン、素材、縫製の常識を革新して商品を提供しているようだ。そのためには、旧態依然とした業界のシガラミから(国外生産などで)脱却する方法もとっている。外食は、食材調理に力を入れるのではなく、ある程度加工した食材の販売に焦点を絞り、店舗に投資せず立地重視で展開しているようだ。いずれも、バブル時代に乗りに乗った業界人から、「業界の常識ではない!」と否定された非科学的圧力で潰されていたところの考え方と顧客の価値観が、今や(常識脱出!)花盛りになろうとしているのだ。明治の産業革命の時もそうであったし、昭和大恐慌の時もそうであったが、こういった知恵が経済回復を進めるのである。昭和大恐慌の時は、それまでの不景気が昭和4年にパニック、昭和12年には民需を回復させたから、現代の経営環境を工夫すれば速いのであり、現代の経済構造からすれば、それぞれの個別企業ごとに回復するのは明らかだ。
「福祉、介護、医療の分野で内需拡大!」と、
これをうたい文句とするストリーは選挙目当て、世論誘導であり、それだけでは将来経済に誤解を生ずる。
高付加価値製品や高水準サービスを提供すれば、日本の商品は世界貿易に通用する。もうすぐアメリカは輸入国から輸出立国に転換するが、その時日本が、全く違う新しい商品の考え方&新しい価値観を開拓して高付加価値製品や高水準サービスを提供していれば、アメリカと肩を並べていることは目に見える。資本力、多国籍海外投資、こんなもので日本が勝てるわけがない。豊かさを犠牲にしてまで勝ちたくないのが日本の文化だ。


今、切実となっている労働力(商品)はどうなる?
サラリーマン、正社員、非正規社員その他、何をどう言おうとも労働力を商品として、民間個別企業は受け入れるしかない。労働者はその代金(賃金)で生活しなければならない。代表取締役の肩書があっても、自分の意思にかかわらず働かなければならない人も、労働力を商品として他社から報酬を得るしかないのだ。
個別企業からすると、雇っている人の、「能力とか使い道」の使用価値が重要となる時代になった。銀行から融資が転がってきて、専門的能力は程々に、頭数をそろえて事業を運営すれば資金が回転した時代は過ぎ去った。その意味で450年ぶりの金融危機を肌身に感じるのである。

片や、専門的能力を持ちながら、又その芽を持ちながら、活躍できるステージに立っていない人材が巷には溢れて出てきていることも確かなのである。人材を金銭価値ばかりで判断したものだから、要するに、判断要素の大半が年齢、職歴、通勤などを賃金額に置き換えていたので、「能力とか使い道」の客観的合理的判断はなおざりにされていたのである。日雇い派遣とか製造業派遣に至っては、能力・経歴を消し去って、完璧、「頭数と利ザヤ」の世界観で運営されていた。受け入れ側の必要性から面接→採用決定→解雇指示に手を染めて、職業安定法違反の労働者供給の片棒を担がされる犯罪者の立場に立たされた者も発生した。労働組合も昔ながらの金銭に固執するばかり、産業別とか職種別というよりも会計別労働組合(金銭を取りやすいところに矛先を向ける組織形態)の様相を持つに至っている。

人材派遣の方式では、こういった労働力の需給を解決することはできない時代だ。日雇い派遣とか製造業派遣は、ミスマッチをますます拡大させた。それどころか、ニーズが無くなったばかりでなく、この分野の派遣業を事業として行えば資本滞留が甚だしい業態になっている。既に多くの派遣会社がその前に倒産・夜逃げをしている。
「能力とか使い道」を重視すれば、労働者からしても職業紹介が今のニーズに適合している。
もちろん、旧来の職業紹介のイメージではない。「箱物:パソコン検索施設」ハローワークのイメージでもない。週に2日程度だけ働きたい主婦層も数多い。労働力提供はそこそこにして、社会参加や社会貢献が主な目的な人物も存在する。一つの会社にフルタイムで働く煩わしさを避けたい労働者もいる。もちろん、正社員希望者の数が多いのではあるが、職業能力向上が「高付加価値製品や高水準サービスの提供」に不可欠であることを、個別企業と労働者に徹底訓練することも重要である。これも、今までとは全く違う新しい商品の考え方、新しい価値観なのである。この方法、既に職業安定法の法律では整備されているから、新規事業としての実効あるのみなのだ。有能な人材が腐ってしまわないうちに、活躍するステージが無いことから転落して再起不能にならないうちに、個別企業が「能力とか使い道」のある人物を確保できるように、社会的事業を民間・個別企業が行うことは、日本経済を立て直す具体的な手段でもあるのだ。


経営者も労働者も借金苦から逃れる!未然防止!
注意! 帳簿に振り回されてはいけない。
時に、会計帳簿は見つめているうちに虚構を生み出す装置だ。時価会計、原価会計いずれも、所詮は経営・経済の社会科学とは縁遠い代物、時の政策が都合で立案したものだ。公認会計士の制度も、「帳簿や会計制度が悪いから、1929年の恐慌が起こった!」とする、いまや非科学極まりない理屈(現下の金融危機到来が証拠)がまかり通り、当時占領下の日本、アメリカGHQの肝いりで導入した虚構なのだ。
金融機関の今は序の口、これから絶大な資金回収と資産整理が行われる。金融庁も「正当な範囲」だとしてこれを後押ししている。ただし、この「正当な範囲」とは、自由平等を目的とした社会共同体の秩序が壊されない限りという意味であって、金融機関の支店長や銀行員の口から出まかせ話ではない。その基本になるのは、平たくいえば、
「健康的で文化的な生活」を捨ててまで、借金返済をする必要はないという原則。
生活保護水準の最低限度まで生活を落とす必要もないのだ。
そのコンプライアンスで、金融機関も裁判所も認めざるを得ない具体策をまとめてみた。
さて、このいくつかは、株式会社総務部でアドバイス済の手法である。

■個別企業でチェックしてみましょう■
・新規事業融資、リストラ資金名目で、今のうち融資を借りておく。
・銀行が、小出しに金利引き上げを言ってきたら、初動でハッキリ断る。
・すべてカード決済はやめる。余計な出費がなくなる。
・信販やリースの返済は大幅カット。「持って帰ってくれ!」といえば良い。
・どうせ割れない手形なら、手形支払をやめて「支払証書」に変更。
・売掛金を入金する口座は、借入の無い銀行口座に変える。
・今のうち、会社所在地、住所地から遠くの銀行口座に預金を異動する。
・ゆうちょ銀行、信用金庫、信用組合の預金差押対策は複雑専門手法が必要。
・公共料金などの引き落とし専用口座の余分な預金はすべて出す。
・定期預金を外し、普通預金を引き出すのに、理屈や正当性はいらない。
・遅延損害金を払わない。実は元金返済充当にあてている場合も。
・住宅ローンでさえ、注意!金利を引き上げて来る時代である。
・銀行に担保を渡せば、返済残額は年度末には貸出帳簿から削除される。
・銀行と協議を続け、担保物件を任意売却して融資額ゼロにする方法がある。
・「粉飾決算」芸当を逆手にとって、銀行は融資回収に襲いかかる。

■こうやって、保証人は身を守る!■
 (保証人になったことを忘れている人も多い。)
・銀行から、この3年~5年以内に保証人の意思確認があったか思い出す。
・保証人宛に全額返済の内容証明が来てもあわてない。返信しない。
・今のうち、会社所在地、住所地から遠くの銀行口座に預金を移動する。
・素人では、ゆうちょ銀行、信用金庫、信用組合の差し押さえに対抗できない。
・無担保のマイホームは妻に贈与。結婚20年以上なら評価額2千万円までは相続税なし。
・妻が保証人の場合は、子供にマイホームの十分の一程度を生前贈与して競売不能にしておく。
・マイホームに住宅ローンが設定されていれば、差し押さえられても競売にはならない。
・ローンのないマイホームは、友人との間で登記をして抵当権を設定する。
・何れにしろ保証人の最大防御は、「話さない、払わない、行かない。」

■虎視眈々(こしたんたん)と、■
あなたが次々に対策を打っておけば、不測の融資返済が襲いかかってきても、あなたの家庭と個別企業を守ることができる。事実、昭和大恐慌のケース(そのまま応用出来ないが)では、事業失敗だけでなく、保証人になって田畑の財産を失ったケースが多かったことも事実だ。
同じ方法で、この際有能な社員を借金苦から守ることも、総務人事部門の重要な仕事だ。



労働契約方の解説(おしなべて間違いやすい事柄の解説)
労働契約の成立は分かりやすいが、変更となると実務上、順番を間違えてしまう場合が多い。これを整理すると次のようになる。
1.使用されて労働+賃金を支払うことの2要件で労働契約は成立する。
   (二つの要件がそろわなければ、契約は成立しない)
2.合理的労働条件の就業規則周知で労働条件成立。
   (合理的とは道理のあることが、概ねの意味)
3.労使が合意すれば、労働条件を変更することができる。
4.合意できなければ、合理的なものに限り就業規則変更で可能。
5.労使が個々に特約労働条件を結んでいれば、最優先する。
6.個々の特約や就業規則よりも、労組との労働協約が優先する。
7.安全配慮、出向、懲戒、解雇は、何よりも労働契約法の条文が優先する。
したがって、本人との合意が取れたならば、
安全配慮、出向、懲戒、解雇の条文→労働協約→本人との特約→就業規則
の順序で、変更手続のチェックをすることとなる。
ところが、合意がとれない場合は、
就業規則(賃金規定、退職金規定、その他別規定)の変更をすることとなる。
この場合に、従業員代表選出、不利益変更7要件などを満たしていなければ無効とされる。
出先で労働提供を行うような業種では詳細な労働条件、すなわち勤務地、賃金額、週労働時間などを個別労働契約の締結に(就業規則で)委ねている場合が一般的であるが、そういう方法をとっている場合は、労働契約変更の合意を本人から取るしかないことになる。
事務手続き優先の発想とか、現場を知らない専門家?の類は、すぐさま不利益変更7要件とか就業規則条文語句を、あれこれ取り沙汰する。これに対し、実務専門家や真の法律家は、労働契約法や労働基準法の基本趣旨と条文の両方を踏まえることで本質を見抜いた運用を、本質的なところからアプローチするのである。
業務遂行、労働者統制、人間関係、法令関係、紛争の可能性などを総合的に判断できるようになるのは、「本質からアプローチと工学的分析の訓練」、これを日常的に積み重ねているからなのである。