2009/09/08

第89号

<コンテンツ>
昨年の8月、世界金融危機前夜から
政権交代を選択した社会(共同体)の意識
政権交代によって国家予算も
新型インフルエンザ対策にも変化が出る?
債権回収事件の取り下げ、チラホラ?

来年4月1日から、労働基準法が改正施行
  賃金割増率の引き上げ:中小企業として猶予の対象
  60時間のカウント対象には
  労働基準法の原理原則から改正を理解すると
  労働基準法の原理原則で、労働時間帯の把握をすれば
  平成22年4月1日施行とは
  有休の時間単位取得:労使協定の締結が
  そもそも年次有給休暇付与の対象は
  遅刻や早退の代わりに、時間有休?!
  有休管理の事務処理は


昨年の8月、世界金融危機前夜から
先見性のある個別企業は警戒体制に入っていた。その時日本は、内閣総理大臣突然辞任の二人目が出たところであった。トヨタやキヤノンなどの有名どころは、金融危機を間近に控えてもボーッ?としていたのか、生産増加・売り逃げ?を狙っていたのか、実際のところは不明だが、…その後、経済恐慌の波を真正面から受けてしまった。
昨年の9月9日号メルマガで、筆者は冒頭、「社会共同体のあり方も、『法手続主義』(何事も正当な手続を必要とする法概念)を超えての変化が、この秋から巷にあふれることは間違いない」と書いていた。とはいっても、筆者も、「ところが誰しも、どういった具体的事象となって現れるのかを確証出来るシミュレーションを持ち得ないのである」としていた。それが歴史的事実は、オバマ大統領当選から始まる新自由主義の否定となり、日本での政権交代につながったのである。個別企業にとっては、それまでの経営環境適応不全を起こしそうな閉塞状況、口を開けば規制緩和という神頼み的抽象論、そして経済恐慌の引き金が引かれたのである。
経済構造は、この1年で、「ご破算」がかけられたのだ。今年1~3月の約3割の生産後退に続いて、4~6月は株価操作とか、必死で経済数値を回復させ表面的景気底打ちを演出したものの、実のところは正社員の大量解雇が発生し続け、6月・7月と戦後最悪の失業率を記録更新したのである。豊かさを含めた実体経済は、失業率で判断した方が分かりやすい。その失業率は、7月が5.7%だが、雇用調整助成金支給者約240万人を加えると、換算失業率は9.5%と、世界最高水準となっているのだ。


政権交代を選択した社会(共同体)の意識
は、こういった閉塞感を打ち破る方法として、旧来の、「大人の対応」を採らなかったのである。
「生き残るため」とか、「他に道がない」とか、「正義」をかざすとか、「リーダーに依存」するといった思考方法を選ばなかったのである。だから、こういった思考方法にどっぷりつかった政党は、激減若しくは現状維持にとどまった。「結論先にありき」といった説得姿勢自体が嫌われたのである。社会共同体の意識は、自己決定の第一歩を選んだのだ。
すなわち、民主党には整合性のある政策がないにもかかわらず、政権を「チーム民主党」に委託する思考方法、「物事を一度ご破算にして再度チームで組み立てる考え方」に賛同を寄せたのだ。これは、1980年代から生まれてきている、『法手続主義のパラダイム』の思考方法そのものでもある。この社会共同体の意識は、個別企業の労働者の意識変化をもたらす。法律や政府の政策変転は、マスコミなどを通じて社会に影響を与え、国民の意識に変化を与えるからである。
経営管理も変転する。従来からの経営管理に関する主流の定説といえば、「仕事や予算は上(出どころは金融資本)から与えられて、それを消化するための予算管理や目標管理が行われていた」ものである。だから、売上高が多ければ成果とされ、銀行への借入利息さえ払えば利益率など大して気にしなかった姿勢である。ところがこれからは、従来の主流の定説がマイナーになり、箱もの作り、設備投資をし、ハードさえそろえれば事業経営が成り立つとの姿勢は否定される。旧来の定説が100に一つでも残っていれば、事業は危険だという結論になるのである。おそらく、意識は時代とともに一挙に変化するであろう。
具体的な方向性は、「高付加価値製品&高水準サービス」の商品提供、これを世界に向けて行うことが時代の流れであり、経営環境の追い風である。要するに、ICT活用による産業革命が進展、これが時代の経営環境である。Made in Japan の商品、工業品、製品素材、消費財、農業産品、文化商品などを日本から世界各地の富裕層に直送することである。
社会共同体との関わりは法手続主義のパラダイムでクリアされ、ケイパビリティ(経済学者セン)の社会経済学説とも衝突することはない経営思考が必要である。
中国やインドでは、それなりの良い商品を見つけて買い付け輸入といった商業的なことはあり得るかもしれないが、資本投下をしてまで大事業をなし遂げようとするには、経営環境は逆風であるということなのだ。中国は今までもそうだが、上海万博後は、「経済侵略者」とレッテル(現在まで、内心の反日意識)を貼られて、国有化・財産没収されるのが落ちである。インドも階級差別がありすぎて機械制大工業にブレーキが掛かり続けている。安い自動車とかでは、日本では文化経済の側面から、欲しくはなくなる。


政権交代によって国家予算も
選挙公約どおりに組み換えられようとしている。マスコミ報道によると、財務省は4兆円ほどの予算の執行停止をした。補正予算も見直しに入った。一旦財務省が交付した金銭の回収についても検討しているとのことだ。各省庁から、予算の執行停止も出始めた。
国の予算をたてる場合、その実務的なスケジュールは、前年8月いっぱいまでに財務省が、各省庁からの来年度予算の意見をヒアリングすることになっている。そのため、各省庁は6月いっぱいまでに、来年度予算の枠組みを検討し終わらなければならない。したがって、個別企業(業界団体も含め)が、法律改正や予算措置を求めるのであれば、6月頭までに、各省担当主管課までに届くようにしなければならないのである。個別企業からの政府予算アプローチは、ほぼ馴染みがないであろうが、取締法規や助成金に関わることであっても、すべて予算に関係しているから、年間の内でも、この時期が大切なのである。100円でも予算がつかなければ、政府機関としては一切手をつけないことになっている。変形労働、事業場外みなし労働、男女平等その他であれば、数年がかりの予算要求となったが、タイミングがよければ1回だけで済ませることも出来る。
政府機関の、こういった運営状況に、今回は政権交代が入って来たわけであるから、大変といえば大変である。ところが、「物事を一度ご破算にして再度チームで組み立てる考え方」といった方式で進むであろうから、個別企業にとっては、改めて関係省庁に提案してみる価値が出ているのである。もちろん、業界通の国会議員の先生に頼む事など何もない。個別企業からは、チーム民主党に対して政策提言を出すことになる。政府機関の意見公募も、個別企業には効果が高い。(筆者の経験:特定社会保険労務士の、労働紛争あっせん代理人業務の人材派遣をストップ。業界団体が黙認の中、本省通達前に主管課と電話&パブリックコメントで論述)
http://www.meti.go.jp/feedback/index.html
http://www.mhlw.go.jp/public/index.html


新型インフルエンザ対策にも変化が出る?
5日の土曜朝、読売テレビの番組で、民主党のS議員は、新型インフルエンザ対策変更の可能性を示唆した。発病後のタミフルや予防のワクチンばかりでなく、「コンビニ診療」などの充実を提言していた。すでに新型インフルエンザは蔓延しており、蔓延を前提として対策が必要である。余談ではあるが、年金問題が取りざたされた当初、厚生労働省の官僚は、コンピューターシステムさえできれば解決すると言い逃れ、結果はコンピュータープログラムが不発に終わった、といった話を筆者は思い起こした。
いまだに、夏風邪、お腹風邪などと奇妙な病名をつける医師が出る始末である。風邪なら38℃も熱は出ない、鼻と喉に細菌による顕著な炎症が現れるが、同様の炎症はインフルエンザでは現われず、咳のでないケースも多い。風邪の抗生物質を飲んでも、解熱もされず頭痛も激しいばかりで、症状に全く効果がない。
新型インフルエンザは、空気中にウイルスが漂っている状態で、目の粘膜、鼻腔の粘膜に付着して、10分で感染する。なので、マスクだけではなく、ゴーグルで目を覆う必要もあるのだ。基礎疾患者は人混みでは眼鏡だ。手洗いは効果的であるが、意外に忘れやすいのが頭髪衣服に付着したウイルスを吹き払わないで家庭内や職場内に持ち込んでいること。今回の豚インフルエンザウイルスと、東南アジアの鳥インフルエンザウイルスでは、感染と症状が違う。そして潜伏期間については未だよく分からないようだ。
この春の流行で、もう免疫を持つ人は、「例年の予防ワクチンを受けた後、ウイルスがはいりこんだときのような、まぶた先端の痛さ、鼻の奥と喉の間付近の乾燥したような違和感を幾度も感じる。とくに人混みに行ったときは必ず」と言っている。また、子供は初日の夜38℃前後の発熱し、親は38℃までの発熱が1日とか鼻の奥と喉の間付近の乾燥とか極度の疲労感を覚えた、といった家庭は筆者の周辺だけでも10人以上に及ぶ。発熱は38℃までで1晩程度、あとは微熱といった事例も多い。発熱したからといって、すぐに新型インフルエンザが検出されるわけでもなく、2日目の熱が下がった頃に検査をしても仕方がない。熱が下がった頃にはタミフル(副作用が激しい)も不要である。加えて、体内に新型インフルエンザウイルスの抗体を作るためには、発熱した際に解熱剤や鎮痛剤を服用していては、抗体が出来ることがないのである。すなわち、すでに14万人どころではない多くの人が罹患し、抗体をもっていると見てもよいのだ。
(詳細情報は、このメールの巻末に総務部メルマガ号外(5月18日号)を掲載した)。
蔓延を前提とした対策であれば、例えば新聞全面広告、
熱が出た時には、とくに子供は徹底して頭を冷やすこと、
水分と糖分(0.3%食塩水+砂糖類)を補給して体力維持すること、
などの初動治療であるとか、予防についても、
職場や自宅に入る前に頭髪をとかす、衣服を叩く風で飛ばす等、ゴーグル着用、
の手立てを紹介するなど、効果的と思われる方向を何でも紹介することである。マスクとタミフルとワクチンばかりの話に終わらないようにすることである。
数千年の昔から、天災が起こっても政策が安定しておれば潰れる国はないと言われている。


債権回収事件の取り下げ、チラホラ?
が、この数週間前から目立っている。そのほとんどは、訴額が合計140万円以下の簡易裁判所扱いの、クレジットの返済不能となった債権回収事件である。一つの事件について債権者と債務者双方にインタビュー出来ないので、正確な分析は分からないが、およその推測をすると…。
債権者が訴訟をするまで債務者は返済を行っていない。そこで、債権者は訴訟を提起する。だが、債務者はすぐに払うことが出来ないので、「月額1000~2000円の返済を」と返答して和解を求める。裁判所ではこの手の事件が急増している中、判決文まで作成し手間をかけることが出来ない事情から、なんとか債権者側に和解を求める。すると、債権者からすれば、いくら自社の社員を代理人として裁判所に出頭させ弁護士費用を浮かせているとしても、債権額の回収速度と照らし合わせれば、裁判手続準備、当日の日当その他経費を考えると、膨大な赤字が出ることになるのだ。だとすると、赤字になってまで、債権回収するわけにはいかないことから、訴訟の取り下げに至るという役割である。
債権者が債権回収に赤字を見込めば、債権回収会社に債権を、1件当たり1000円で売ることになる。だとしても、債権回収会社にしたところで、振出から裁判手続準備、当日の日当その他経費が必要となるわけだ。訴訟提起する前に、債務者に幾度も電話するとか、何通も督促書を発送するとかの作業が省略出来るわけでもない。
自由平等のための社会共同体であるから、個人の生活や命を引き換えには債権回収出来ないから、生活破壊寸前の債務者を、事実上保護していることになっている現象だ。いわゆる新自由主義の反省に立って、「回収出来ない相手に金を貸す者の方が馬鹿」であることが、明確になっている。ここでも社会共同体の意識に変化をもたらす。
残るは、暴力団金融に対して、どういった対策を講じるかである。司法書士事務所の一部に、暴力団金融の債務は、見て見ぬ振りをして放置、通常債務は解決しても、暴力団債務が膨れ上がっているといった事件が、司法書士の倫理問題として浮かび上がっている。こうなれば、刑事事件の領域である。


来年4月1日から、労働基準法が改正施行
される。そこで、業務や作業の進め方、人件費の計算を、来年度に向けて進めるにあたって、巷の一般解説では不十分なポイントを、実務で消化出来るための解説をする。そのまえに労働基準法の各種休日の定義を押さえることが不可欠である。法定休日は週1回の割りで与えなければならない。
休日は、労働契約の期間中に発生するものでしかない。
法定休日に働かせた場合、代休を与えることが出来る。が、35%の割増分は必要。
振替休日は、あらかじめ法定休日を所定労働日と入れ替えること。
代替(だいがえ)休日は、法定休日外の日の時間外60時間超過分を帳消しに出来る休日である。
有休日の所定労働時間に働けば、有休不消化に過ぎない。

賃金割増率の引き上げ:中小企業として猶予の対象
となる企業は、事業所や事業場単位ではなく、会社全体の規模で判断される。個別企業の主な事業活動の業種(日本産業分類)によって異なる。主な事業活動とは売上金額を指すものではなく、会社定款などに示される一定の設備や人員を配置して行っている事業である。企業単位の判断のための図表が出回っているが、通常8個の枠が示され、企業全体としてそのどれかに該当すれば中小企業として猶予の適用がされるのである。資本金がオーバーしても、常用使用人数が未満となっておれば猶予適用である。「雇用」なのか「使用」なのかの区別は、雇用契約書の有無などではなく、実態として労働契約が結ばれて使用する人数が問題になるといった意味である。したがって、常時使用する労働者とは、1日の労働時間や週の労働時間にかかわらず、常時使用(臨時の労働契約を除く者)のすべての人数、すなわちパート、アルバイト、嘱託、一匹狼、インディペンデントなどの労働時間や名称の如何を問わず、臨時と明示して使用する者以外の総人数である。
例えばサービス業であれば、常時使用する労働者が100人を超えていても、資本金が5000万円以下であれば猶予適用となる。小売業、サービス業、卸売業以外の業種は、資本金にかかわらず300人以下であれば、猶予適用となる。
なお、労働契約とは、使用されて労働し、労働に対して賃金を支払うとの2つの要件を労働者と使用者の意思が合致していること(労働契約法第6条)である。

60時間のカウント対象には、
法定休日労働と週40時間以内の労働が除外される。ただし、あらかじめ法定休日と週40時間以内の所定労働時間が、各日ごとに定められていなければならない。すなわち、毎日、毎週のタイムスケジュールであれば、所定労働時間帯が網掛け表示出来るようにしておかなければならないのだ。これが、最低基準を定めた労働基準法の規定であり、この最低基準を上回る部分について個別企業の労使間手続を経て、初めて自治決定が出来るのである。
法定休日や「所定休日」の区別が論議される原因は、労働基準法の理解で、最初のボタンをかけ間違えているからである。というのは、経済団体とか勉強不足の専門家が、1980年代に休日増加の対策として、年間休日の発想を持ち込み、年間休日104日(=週休2日×52週/年)といった具合に、法定休日と「所定労働時間帯の無い日」を混同させてしまったことによる。法定休日は、毎週1日の割合で、あらかじめ指定しておかなければならない。この指定がない場合は、賃金締切日から遡って毎週1日の割合の日数が法定休日(通常は連続した4日)として扱われる。したがって、その4日程度が所定労働の曜日であっても、8時間を超えても超えなくても、その日に働けば35%以上増しで計算することになる。法定休日は「60時間カウント対象」ではないから、50%になることはない。この場合の休日とは、午前零時から午後24時を指し、前日から働いておれば、午前零時をもって35%以上増しの労働時間帯に切り替わる。
1日の所定労働時間を8時間未満と定めていれば、1日8時間を超えた時点から「60時間カウント対象」時間帯となる。時間外労働(残業又は早出)は、1日の所定労働時間帯の始業時刻と終業時刻のタイムスケジュール網掛け時間帯からはみ出た部分を指し、翌日の始業時刻に到達すれば、時間外労働帯から所定労働時間帯に戻る。1日の始業(早出もあり得る)から翌日の始業時刻まで、休憩を挟みながらも、労働時間帯を1労働日と言い、機械的に午後24時で当日労働分と翌日労働分に区別することは出来ない。
また、土曜日とかの所定労働時間帯の無い日であれば、週の労働時間が40時間を超えた時点から「60時間カウント対象」時間帯となる。なお、1週間とは、何らの定めもなければ、日曜日から始まり、土曜日に終了、翌週の日曜日午前零時になればリセットされる。

労働基準法の原理原則から改正を理解すると
1週間のタイムスケジュールを升目のグラフで表示し、
第1番目に法定休日の日を決定し、
次に所定労働時間帯に網をかけ、
時間外労働を記入していき、
このうち、週40時間を超えた部分(就業規則にシフトの定めがなければ1日8時間)に対して割増賃金を払うことになる。この割増賃金支払い対象の時間が60時間を超えれば、割増が50%以上になるというのが、今回の改正である。
(こういった原理であるから、加減乗除のプログラムソフトでは、コンピューターによるカバーが出来ないのである。もちろん、ソフト開発者に原理原則が分からないから、ソフト開発が出来るはずもない。せいぜい、加減乗除のプログラムに、ほんの一部を組み込む程度でしかないのだ。年次有給休暇の管理手続きが、300人以下であれば、紙ベース作業の方が速いのはこのためである。特に時間有休ともなればパソコン処理の方が時間を要する。ビジュアル処理出来るパソコンは、まだまだ開発に時間がかかるのだ)。
いっそのことではあるが、休日労働=法定休日に限定、所定労働時間帯以外は、その全部を時間外労働といった具合に、就業規則を改めてしまえば、労働基準法の原理原則に即した発想が個別企業内に定着する。

労働基準法の原理原則で、労働時間帯の把握をすれば
2ヵ月以内の半日単位の代替(だいがえ)休日付与、
代替(だいがえ)休日関連の労使協定での取り決め事項、
年次有給休暇の時間付与と処理手続き作業、
所定労働時間帯の無い日の時間外労働割増、
といった課題は、至極合理的に簡便に理解することが出来るのだ。
最初にボタンの掛け違いをしているから、いくら勉強しても無駄となり、努力の末の労働基準法違反を招くのである。1千数百年にわたって研究された太陽暦、1週間が日曜休日から出発するとし、19世紀の機械大工業(事業場に出勤し、集団が分業し、市場動向で作業内容が変遷するところに特徴)とともに開発、日本でも戦前から工場法によって研究され、その研究成果が労働基準法に引き継がれた。
こういった歴史の経緯と合理性を無視して、「何とかしよう!」とするから、素人には失敗が付きまとうのだ。
労働基準監督官の中には、24時間サービス業やセキュリティー産業などの24時間交替勤務、連日夜勤、三交替変形勤務となると、意味不明な解釈をする者も存在する。が、だからといってその人の言うことを聞くわけにいかない。民間企業の専門部門職は安心するわけにはいかない。社会主義や官僚主導の国ではないはずであるから、自由平等の社会共同体であるからには、民間の能力と知恵が官公庁より上回っている必要があるのだ。

平成22年4月1日施行とは、
先に述べた「60時間カウント対象」時間帯の労働が、4月1日から賃金締切日(例えば4月20日)の間に60時間を超えてしまえば、超えた時点から50%以上の割増賃金を付けなければならない。一部の解説に、4月1日を経過して後の賃金締切日から、60時間のカウントをすれば良いとの間違った解釈が見受けられる。ところが、正確にいえば、4月1日から最初の賃金締切日、次に4月1日を経た最初の起算日から賃金締切り日まで、といった具合になるのだ。ソフト開発業をはじめ長時間労働の個別企業で、時間外が毎月100時間を超えているとすれば、4月1日から賃金締切日だけで時間外60時間を超えている。可能性が強いのである。

有休の時間単位取得:労使協定の締結が
時間単位取得には必要である。その理由は、本来の年次有給休暇の趣旨と異なる目的が含まれることから、事業場単位の協定を結ばせることとしたのである。事業場単位とは、原則は労働者が働いている地理的場所ごととの意味であって、一つの事業所が単位事業場と見なされるには、指揮命令が事業所単位で1本化されていることが要件である。
年次有給休暇の立法趣旨とは、病気やリフレッシュ外の私的用事ではなく、労働者がリフレッシュするための心身健康状態における休暇であって、そのためには連続した数日単位の取得が望ましいとするものである。この立法趣旨を変更するわけにはいかない中で、便宜を図ろうとする制度なのである。
よって、年間5日分までとか、1時間単位で分単位は切り上げ、就業規則記載義務などの煩わしさで規制をかけているのである。

そもそも年次有給休暇付与の対象は
1週間の枠組みしたタイムスケジュールの中の、所定労働時間帯として網掛けされた部分の労働を免除して、出勤したものとみなす時間帯である。単に1日8時間分の賃金を支払うといったものではない。1日単位の取得は、午前零時から開始し午後24時に終了する。仮に、タイムスケジュールの所定労働時間帯の枠外に働いたとすれば、もとより時間外労働時間帯となる。有給休暇を取得したにもかかわらず、労働した場合は、有給休暇の取り消しとなるとなるのであって、その日の所定労働時間を満たさずに出退勤した場合は、賃金カットをする必要があるのだ。有給休暇の日に就労したからといって、休日出勤の割増賃金を請求するのは、不当利得の請求である。

遅刻や早退の代わりに、時間有休?!
を使用するケースが増えて来ると思われる。これは、病欠の代わりに有休を事後申請するのと同じである。有休は、原則始業時刻までに申請があれば、時季変更権を使わない限り有休取得回避が出来ない。事後に申請があって、時間有休を認めるかどうかは個別企業側の権利放棄であるから、それに伴うリスクの一切は、個別企業が負わなければならない。有休は、理由を聞くことなどによって、事実上取得に制限をかけることが出来ないから、時間有休の事後承認は、個別企業自らが秩序を崩すことになりかねない。ある意味、いっそのこと始業時刻をフレックスにしてしまった方が、労働規律や秩序維持に資するのである。もちろん、時間有休の計画付与は出来ないことになっている。
育児や介護、単身赴任のために時間有休を勧奨することはさしつかえない。が、慎重な労使協定手続きを進める必要がある。冬タイム(時間有休を1~2月に集中・毎朝10時出社)。ひどくなれば、サボタイム(嫌な仕事の時間帯に時間有休)も発生する。有休に理由は不要であり、余人に替えがたい業務とは簡単にいえないことから、時季変更権も行使するのは難しいのだ。

有休管理の事務処理は
先ほども述べたが、紙ベース作業の方が速いのだが、肝心の有休取得の管理となれば、今でもそのほとんどが管理不能状態である。やっているといっても、有休取得結果の単なる事後集計程度である。労働者に、「仕事に差し支えないように回りと協議して取得」してもらう程度の対策しか取れないのだ。大手企業では有給休暇を取得すれば出世に差し障ると揶揄されるのはこのためである。そこに、時間有休が入り込み、仕事や同僚(行為があるのを上司が知らないケースがほとんど)の負担など無視して、サイボウズなどで取得するともなれば、確かに混乱を招くのである。そのためにパソコン処理を何とか出来ないかとソフト開発しようとするのだが、やはり労働基準法の原理原則があるから、紙ベース作業と集計作業で行うしかないのである。ビジュアル処理出来るパソコンソフト開発のメドが立たないから、せいぜい有休専門部門作業、アウトソーシング、片手間作業といった対策程度であり、ややもすれば、そこまでして有休管理する必要があるのか?といったジレンマに陥ってしまうのだ。するとまたもや、日頃の労務管理だ!などと曖昧な思考でごまかされ、仕事に差し支えないように回りと協議して取得してもらう程度の対策となってしまうのだ。だが、仕事に差し支えるような有休取得を繰り返しても、これは解雇理由には出来ないのである。
ところで、時代は経済危機の真っ最中、20~30代の若者の意識動向からすれば、こんなジレンマに付き合わずに済む方法を、個別企業ごとに考えるしかないのだ。
(若者意識を反映した事例のURL)
http://www.woopie.jp/video/watch/1aa0d66baad00f1e?kw=foomoo&page=1