2010/02/09

第94号

<コンテンツ>
グローバル経済と言われ出してからの日本経済は、
個別企業戦略に関連した成長方針
政府の営業開拓力が不可欠な商品
「金融」というものが現れて550年ほど
さて、これで個別企業の歩み方は決まり、
 ・【リストラクチャリング】
 ・【新規事業の「仕込み人」の確保】
個別企業の経営管理、特に総務人事部門は

グローバル経済と言われ出してからの日本経済は、
80年代は消費と設備投資(投資は金融資本へ、外注化の時代へ)、
90年代は政府需要喚起(バブル崩壊で民間資金弱体化)、
2000年代は外需と設備投資(製造業、パート労働者までが、労働者派遣に)、
2010年代は、外需の落ち込みと消費低迷、
といった経緯を、おおまかにはたどっている。
近時、外需の落ち込みが反転していると報道されているが、未だ1番底にあることには変わりない。今から、外需がさらに落ち込む可能性も出ており、いつ何時に2番底に転落するかもわからない。そこに、政府の需要拡大政策いかんでは、2番底も抜けてしまうのだ。アメリカ経済が回復とのニュースだが、G7は復活せずG20の役割が広がりを見せていることは、回復の可能性が遠のいている証である。
エピソードではあるが、トヨタ自動車の国内のプリウスは3月の販売が好調予定のはずであった。ところが、マスコミ報道とは裏腹に、1月早々販売に陰りが生まれ、もとより不足人員(正社員のサービス残業)で製造していた工場が、今度は社員の人員がダブつくといったところであった。そこに、今回の世界的なトヨタ自動車のリコール事件である。


個別企業戦略に関連した成長方針
の具体的動きが民間から、曖昧模糊とした「新経済成長戦略」をしり目に、生まれつつある。それらは、すべてが、海外投資ではなく、国内での現物製造なのである。これ以上の経費削減では、持ちこたえられるはずもないのである。
☆彡 食品製造は、
地方であっても成長している。単位工場当たりの規模は数10人等と小さいが、それなりの利益幅がある。意外と地方経済にとっては、雇用吸収が見込める安定的な産業である。産直有機野菜、各地の名産品、地酒地ビール、特産魚介類、そしてその加工食品こそが有望である。ここに、市場動向の監視システムICTが事業運用に組み込まれれば、農産物加工品の需要(内需・アジア向け)は、利益率を確保しながらの飛躍成長となるのである。徳島県上勝町の葉っぱ(いろどり)とか、イタリア現地の安価なチーズ産業などは、その例である。一昨日も、下郷農協、馬路村農協がTV(サンプロ)で紹介された。一説には、こういった成長の先には食糧自給率も50%クリア、70%も夢ではないとのことだ。今までは、米づくり中心?の農業、市場動向を無視して農産品を生産、不採算を農協金融(国の財政信用)でごまかし、消費者は貧素な食生活を強いられできた。
☆彡 高齢化に伴う医療介護産業は、
アンチエイジングに向かう。老人養護や障害者介護といった「社会保障の金銭処理?」の着想からでは、財政が持つわけがない。健康サプリメントに留まらず、メタボ予防スポーツジム、ビタミン投与医療、超低原材料健康茶その他である。アンチエイジング指向の化粧品類も含まれるイメージである。これが、高齢化社会での、70歳を目標にした高技能労働力の可能性を開くということにもなる。またこれが、安全と健康が保証されることにより、中国人向けの消費財となって、需要拡大に役立つのである。今でも中国からの観光客が、健康サプリ、消化薬その他を背負って帰国している。(日本の都市部の量販店では、2月は旧正月だから販売が伸びている)。
☆彡 「高付加価値製品&高水準サービス」の商品提供は、G20各国にも有望である。日本国内製造の商品は、日本の文化経済に支えられ、アジアや東欧その他への、現物出荷商品として有望なのである。いわゆる、大田区周辺、川崎周辺、東大阪周辺の町工場集積地は、部品点数の多い量産品の加工組み立て産業(今までは自動車産業)を支える地場産地(地場産地としては、イタリアのアパレルや装飾品も同様)、此処での最先端企業は、その優位性を発揮して、(国のYS-11生産中止の失策から30年の遅れを抱えながらも)、航空機産業へと向かおうとしている。人工衛星がPRとなっている。
☆彡 アフリカ大陸向け、この市場は、
未だ商品流通による文化経済が発展途上であり、Made in Japan の良さを理解し、価値を認めて、購入するには至っていない様である。資本主義や自由主義の基盤である個人主義自体が未開であり、自我というもの自体が形成途中なのである。中国の[超個人主義]とかインドの[超自己主義]といったようなものではないのだ。中国のアフリカ進出の方針も、高付加価値商品の量産が困難な中国事情と相まって、それなりに整合するのだが。
☆彡 そこに、トヨタ自動車のプリウス:リコール、
確かに、三菱自動車よりも対応は早く、やる気のない役員を押しのけて、豊田社長が先陣を切っている。この事件処理で、Made in Japan の信頼は上向きもすれば:下向きもするといった微妙な状況である。


政府の営業開拓力が不可欠な商品
太陽光パネル、風力発電、地熱発電などの環境エネルギー産業は運用システムパッケージ商品でもある。
新幹線技術も無事故、商品としての運用システムパッケージ商品である。
電気自動車産業であっても、インフラを伴う運用システムパッケージ商品である。
東南アジアの軟弱地盤(日本も軟弱地盤)の土木工事も運用システムパッケージ商品とすることで安価な商品となる。
日本国内の社会構造を支えるインフラは、ICTと結合させることにより、何もかもが運用システムパッケージ商品となるのである。
この、運用システムパッケージ商品は、どうしても政府の営業開拓力が必要なのである。個別企業では無理があり、総合商社とか多国籍企業でも、障害が多すぎるのである。日本のグローバル展開の、「地に着けた足」は、一体どうなっているのか?


「金融」というものが現れて550年ほど
(今が、その450年ぶりの激震幅の金融不安なのだが)、
イギリス、アメリカ、オーストラリアを
軸とするアングロ・サクソン・トライアングルは、エシュロンという諜報国家機関を運用して経済活動を行っている。日本企業の海外進出を、CIAを先頭に情報戦で妨げている。国家的資源争いでは、イギリスに勝てる国はない。
スウェーデンは、
高度精密小型武器の製造販売で、社会福祉事業の財源を得ているが、これを突破口に、独自の経済経営理論にもとづいての、経済情報と独自の商品販売網を確立しているのだ。フィンランドは徹底した教育改革で有能な人材宝庫を作り、デンマークは製造技能ノウハウを積み上げ、輸出立国(食品や軽工業)となっている。北欧諸国は、人口規模が数百万人と小さいが、経済活動ダントツである。ヨーロッパで独占的地位を占めるノキアなどは、その一端と見ておく必要があるのだ。
イタリアは、
千数百年の交易の歴史がある。イタリア経済は、国家なんかどうでも良いと考えており、数百年以上にわたって地方産業を基軸としている。戦後の鉄のカーテン時代でも、ソヴィエトにキーボード技術を提供し、中国文化大革命の際には、ココムの取引禁止国際協定にも関わらず、ビニール製造品の輸出(シルクロード密輸)を行うなど、日本では予想もつかない交易ルートと、(イタリアの産業は家内工業中心で、企業と言えるものは数社しかない)独特の経済経営管理の理論を持っている。
日本の歴史、千数百年をみると、
草の道(現在のシベリア鉄道)、シルクロード(日明貿易・朝鮮半島経由)、東南アジア沿岸の3本が、財貨産品の主なルートである。江戸期の鎖国、世界大戦、日米同盟などの大きなうねりの中で江戸時代以前の交易ルートは、事実上途絶えた。この交易ルート復活の是非を含め、グローバルな海外進出網と、その経営管理理論が、真剣に問われることとなるのだ。3本の財貨産品ルートの集積地が日本であり、現代日本の文化経済として、日本の生産システム、労働力システム、消費傾向システムなどの面にわたって、この3本財貨ルートは、未だに影響を残しているのだ。(身近な、商売の方法、食品の好き嫌い、日常の世界観、先祖の民族などの地域差も)。
日本のグローバル経済政策展開の、「地に着けた足」は、100年に一度の経済危機、450年に一度の金融不安の中で、一体どう判断すれば良いのか?…である。


さて、これで個別企業の歩み方は決まり、
第一課題:直近をにらんでの、リストラクチャリング
第二課題:新規事業の「仕込み人」の確保
この二つの課題が基本となる。
目先の売り上げ確保に邁進していては、数年後に破たんが来るのは目に見えている。事業終息の軟着陸の道を…といった選択の余地など、今や残ってはいない。これ以上の経費削減では本業がやっていけなくなった。今のうちに無借金、資産売却、地金でも買って、運を天に任せて極貧生活…余命を生きながらえることも、ままならない。
ただでさえ、ICT機器への投資効率が悪い実態である。こちらが良くても、相手の乗りが悪ければ、低いレベルのICTに収斂してしまう。現在のICT技術レベルでは、無理やりメールやグループウェアを導入すると、収益・生産・効率・労働意欲レベルを落としてしまうから、個別企業が関わる文化経済に適合した電子ネットワークを越える設備投資も危険である。

【リストラクチャリング】
の最重要ポイントは人件費である。今まで経費削減でつないで来たとしても、これ以上は削減する経費もなくなっている。
昭和61年に開発された業務請負とは、今でいうところの、OEMとかEMSといったものであるが、平成9年の職安法規制緩和により、業務請負は偽装請負の代名詞となった。ここから順次、費用のかかる技術技能開発の教育育成をサボりにさぼって、安いからとかペイするからとして、資材部門の非熟練労働力(労働者派遣)の安価仕入れを容認した。そのため、この10年余はなおさら生産技術や生産技能の空洞化を招いてしまったのだ。金融資本に振り回されて、グローバルに売れる商品づくりに、日本は遅れをとった。いまだに、ほんの一部の経済学者(竹中系統?)は、偽装請負(製造業労働者派遣)をなくすと、国内工場が海外へ逃げると主張する。だけれども、適法な業務請負すらが、そもそもアウトソーシングとは全く関係のない代物なのである。
そこで、国内とグローバルの需要に応えるには、短時間労働力による技術技能の発揮による、高付加価値製品&高水準サービスの商品提供に切り替える必要があるのだ。数年後の経済社会を予測すれば、個別企業の事業に対して、忠誠心を持ったパートタイマー、この人たちの人員を確保することで、リストラクチャリングの成功・失敗が決まる。極端ではあるが、社員は管理職だけで十分である。最近流行している、個別企業にもたれかかりたい正社員が、ますます安定と保障のみを追求する同類の新卒新入社員を採用して、個別企業を構成して行くのであれば、運営機能分野で、事業目的からますます離れる実態が生じるだけである。
将棋やお絵描きのように、組織形態ばかりを考えていても、その原動力となる運営機能が強くなければ組織も稼働しないのである。事業目的と社員の人生目的の整合性(最近はディーセントワークという新語)が図れなければ、安定正社員思考の生真面目な性格の子は「うつ病(脳内物質セロトニン不足?)」に罹り、安定正社員思考の頭の回転の速い子は「統合失調症(脳内物質ドーパミン過多?)」に罹る、こういった現象は、まったく自然なことなのである。
今も昔も、短時間労働者や非正規社員の仕事への忠誠心が、社員よりも高いとする事例は山のように存在する。要は、短時間労働者などの「待遇を改善して主力戦力にすれば良い!」のだ。1970年代までの高度経済成長時期に、かの日本の家電産業の社員の忠誠心を国際比較した研究があったが、確か日本は意外にも十数位、当時のユーゴスラビアよりも下に位置していた。それぐらいに、仕事への忠誠心は、実は日本は低かったのである。
そして、リストラクチャリングの後の、運営機能ルールも旧来とは切り替わる。
1.自己顕示欲は捨てさせ、にじみ出る権威を持たせること
2.隙間に配慮する気構え、親切が隙間の入り口になる
3.仕事の動作自体が、軽快でスマートなこと
4.仕事や生活での、時間・時刻を厳守すること
5.物事には、念には、念を入れ、失敗や失念のリスク回避
6.ICT革命では、法則性や技術を身につける(技能をみがくことではない)
7.物事の受付・入り口や、作業の案内をよくすること
8.それぞれの段階での、受付体制がしっかりしていること
9.次の段階への移行や引継手続きを簡単にすること
10.どの人も、突っ張らないで、リラックスして仕事をする工夫
11.何事も明るく振る舞うこと、それが出来る措置を図ること
12.人に対して、(信用ではなく)心からの信頼感をもつ工夫をすること
といったところで、こういったことが現象として現われるようにする。工夫と、実現される組織と運営が経営管理の柱となるようにすることなのだ。TVのビジネス番組、書店のビジネス本のおおよそが、とどのつまりはこういった運用機能ルールのことを紹介しているにすぎないのだ。

【新規事業の「仕込み人」の確保】
ICTによる産業革命が進行している。18世紀の産業革命は、開始から凡そ100年間で一段落した。今のICT産業革命は数10年で一段落するとの観測が強い。一段落の後は、それまでの機能システムに頼っている事業は、少し位は残存するが、極端に利益率が悪くなり、補助や慈善でもない限り、成り立つものではない。その典型は、これから必然的に迎えるところの、例えば現状の医療・介護分野、現状の農業分野、現状対事業所サービス分野の事例である。このICT産業革命の進展を見越して、新規事業の仕込みが必要なのである。要は、市場の変化に合わせて、新商品を開発することである。それは、
シューペンターのいうところの新商品開発
1.新しい財貨、新しい物の発見
2.新しい生産方式の導入
3.新しい市場の開拓
4.新しい原材料、半製品の発見
5.新しい組織(事業内外のネットワーク)の実現
から始めることが定石となる。
ただし、その成功の可否は文化経済の視点である。なぜなら、新商品を、実際に購入する行動の動機は、文化であり、加減乗除の計算・理屈では買わないからである。また、行動経済学とかの、理屈の後づけ二番煎じでは、(条件一致の場合のみだから)法則性が弱く、マーケティングの成功確率が小さすぎる。まして、現場の先駆的な販売促進活動力に、行動経済学が活躍する場面は、販売促進の範疇でしかないからだ。特に、需要地域における、その地域での「規格競争」が求められるから、(よく似た商品を複数競合会社が販売すれば共倒れとなる)、なおさらである。他山の石ではあるが例えば、中国はグーグルを締め出し、twitter を禁止することによって、ICTはしばらく停止=中国イントラネットを形成しようとしており、これはG20での規格競争からの脱落を意味する。
規格競争を展開するには、類似関連商品を取り扱う事業者の間で、アライアンス(alliance=同盟関係)を進める必要がある。(ANAスターアライアンスなどのイメージ)ブランド戦略からアライアンスへの進化であり、リアルタイムの連係行動である。連携関係(究極はM&A)なるものではない。難しく学術的にいえば、外部性の縦横ネット=規格競争での陣地取りとなるのである。先ほどのリストラクチャリングに関わる、能力の高い短時間労働者による業務遂行の必要性も、こういった市場の変化からも要請されているのである。
アライアンスは、M&Aによる大型企業形成とは全く逆の形をとる。いわゆる、ONLY-ONE 企業などが同盟や協調をとるということである。それぞれが自律的個別企業であり、相互に特性を生かし、需要地域の市場を押さえることで、各々の個別企業の目的を達成しようとするものである。だから、必然的に産業や業種の枠を超えて進むことになる。サントリーとキリンの経営統合は流れ、それは、サントリーはアライアンスを求めたが、キリンは吸収型M&A(企業合併は、法的には必ず吸収会社と被吸収会社に区別され、対等合併などはあり得ない)を求めていたところ、この市場変化の認識のズレが統合解消(もとより無理?)に至ったと分析するのが筆者の診るところである。
アライアンスによる規格競争、この水準での新規事業の「仕込み人」の確保が大切なのである。その役割を経営者が果たすのか、総務部門の貴方が果たすのか、それとも誰か雇うのか…。
さて、その「新規事業:仕込み人」の人材の素質は、比喩的には、今まで失敗し続けている若者の中から、
1.いつも問題意識がある
2.市場テストや実験をよくする
3.統計的なものの考え方(話を数字を使って表現)
4.他人の話が理解出来る
5.その事業の仕事が大好きである
6.楽天的で、取り越し苦労がない
といったところがチェックポイントである。「新規事業:仕込み人」には、
ア.思いつめて考えさせる癖をつけること
イ.人の話を聞ききに行く癖をつけること
ウ.何事もまず書いてみる癖をつけること
だからこそ、今の瞬間は、中堅・中小企業こそ、ここに資金投資をして、「仕込み人」を確保する必要があるのだ。経営者自らを含め、総務部門担当者自らも含め、「新規事業:仕込み人」を、探し出し、育成し、冷静にチェックし、確実に確保するために…。


個別企業の経営管理、特に総務人事部門は、
4月1日からの労働基準法改正(時間外60時間以上の割増賃金率増加など)、改正育児休業法、雇用保険法改正、労働者派遣法改正、その他に、振り回されることになってはいけない。日本の経済社会と貴方の個別企業の立ち位置、次に将来を考え、ここで思い切った方針をとることが必要である。
ハツカネズミの如く仕事をしていないか?
賽の河原の石積み仕事になっていないか?
欧米:グローバル風にいえばバベルの塔になっていないか?
と真剣に見つめ直す必要がある。
今こそ、将来の事業基盤を見つめ、事業基軸を組み立てて行くことが大切で、そのための総務人事部門が必要とされているのだ。
ちなみに、私ども株式会社総務部も、
リストラクチャリング応援のために、「パート賃金計算センター」を
新規事業の「仕込み人」の確保の資金ために、「グリーンシート促進事業」を
私どもの職種や職業や常識の範囲を打ち破って、この4月からの開始に向けての準備を進めている。