2011/02/08

第106号

<コンテンツ>
世界経済が2007年水準に戻るには
おかげで、正社員の年収は増加、
固意地を張って「霞」を食べ続けるのか、
景気低迷にあって、繰り返すが、経済の発展とは
経済事件が表面化しない「経済恐慌」の中で
「お猿」でも、収入が減った途端に


世界経済が2007年水準に戻るには
20年から30年を要すると言われている。それほどに、今回の金融資本経済の破たんは、いわゆる景気の循環の振幅を飛び落ちた事態だったのである。そればかりか、100年に一度の経済危機、450年振りの振幅幅を持った金融危機と言われている。
もちろん、景気は紆余曲折するものであるから個別企業の経営管理は、
若干景気が伸びるときは回復基調のコントロール、
減退するときは低成長のコントロールとの
それぞれでの、素早い切りかえが必要である。
ところが注意しなければならないのは、この紆余曲折は2007年の恐慌(クラッシュ)の激変を、現在必死で、各国政府が緊急緩和政策を行ない、表面上見えなくしているだけのことである。要するに、恐慌ビッグニュース事件が起きないように(=マスコミ報道されないように)、社会がギリギリのところで、表面的に平穏がコントロールされていることを忘れてはならないのだ。それは即政権の後退を招かないように。生活保護は142万世帯、198万人、これはバブル崩壊の後1995年の2倍であって、こちらの方が真実に近い。
労働市場の状況は、_______
失業者数は政府統計で2007年比30%増であり、先進各国に比べて過小統計とさえなっている日本政府発表でも、失業者は三百数十万人、雇用調整助成金対象者は百数十万人の合計四百数十万人が常に失業しているとの事態なのである。これが過小統計と言われる由縁は、この数字に長期失業労働者は含まれず、短期雇用を繰り返す者も、短時間労働者も含まれてはいないからだ。
加えて、職業安定所が失業者に対して、「基金訓練」と称する緊急職業教育対策(失業給付の代わりに10万or12万/月額受給)への誘導を積極的に進めている実態もあるのだ。その基金訓練の内容といえば、どう見ても職業能力向上の代物とはなっておらず、実態は単なる失業対策の生活資金支給事業であり、将来経済に資する投資ではない。さらに、訓練の3ヵ月コースや6ヵ月コースを幾種類もの基金訓練を何度も受講するといった失業滞留を引き起こしてもいる。
とにかく厚生労働官僚の無為無策、上っ面だけを整えてビッグニュース事件(とりわけ労働問題で官僚が恐れるのは自殺事件だ)の回避しか考えていないのである、……これは全省庁の官僚に共通した意識ではあるが。
(昨年度からの各省庁政策立案のための調査は、「先に結論ありき」の調査予算の増額が行われ、その調査結果内容は要注意だ)。


おかげで、正社員の年収は増加、
失業者や不安定労働者の増加を反映して、時間外労働が増加しているのである。
50代の男性正社員の住宅その他のローンの返済に必死な労働者の残業欲望だ。これは世界的に予想された動きである。2007年の恐慌クラッシュ時点で世界的にも予見されていた事態ではあるが、ここでも厚生労働官僚の無為無策であった。加えて、50代男性のその妻が40代後半であるから、ローン返済と家計を支える行動に追いつめられ、必死で就労活動を繰り広げ、挙げ句には需要と供給バランスによる時給相場下落を招きつつあるのである。
これでは新学卒者といった職業能力の身に付いてない若者、社会経験の未熟な若者などが、労働市場からはじきだされるのは当たり前である。世界的にも、今よりも増して若年労働者の失業率が、25%から40%に上昇するのは目に見えている。ただ単に、新卒の就職率(これも進学や非就職者を基礎数から除外)を繰り返していても、個別企業経営や若者の対策は見えてこない。
極めつけは、正社員はどんどん減少、低賃金の非正規労働者(未熟な職業能力)が増加するため、消費が冷え込む事態はもちろんのこと、価値を生み出す能力が正社員も非正規ともに衰えるスパイラル事態を招いているのだ。
あれこれ現状分析をするだけでは仕事ではない。今は将来ビジョンや行動に結びつく情報収集と分析が重要なのだ。
直近の労働力調査によると、1週間に60時間以上働く労働者、すなわち月に80数時間の残業を行っている労働者は、700万人程度とのことである。片や深刻な不安定・非正規労働者は1,000万人ほどである。日本経済復活の基本である、「高付加価値製品&高水準サービス」の商品提供から見れば、いびつな労働力需給バランスどころではないのだ。
今後将来性のある産業・業種、個別企業に対して、労働力の重点配置換えが行われていない失策・不作為である。実態は、職業安定行政も、求人広告会社も、職業紹介や労働者派遣事業も、てんでバラバラ烏合の労働力需給状態なのである。
これは個別企業にあって、大なり小なり各社はこれと同じ実態を抱えており、国家の問題・国の政策とか国家統制に何とか頼る問題ではない。加えて、その非正規1,000万人の中に、大卒女性や高学歴主婦が多くを占めていることから、日本経済回復のポイントとして女性地位の向上・進出が狙い目であり、アメリカのハーバード大学の経済学教授からも、アメリカ経済のパートナー必須要件として指摘されてもいるのである。


固意地を張って「霞」を食べ続けるのか、
それとも、豊かな経済を創り、飯を食うのかの選択でもある。
しかしながら、権謀術策は世の常である。経済活動の主力となる人は古来の世から、あくまで政治とは一線を画して個別企業の経営にも励んでいるが(例えば日本周辺での近江商人系が然り)、各方面の情報収集と動きには敏感である。筆者の専門外であるから紹介は止めるが、今の政治状況を、「民主党内部での、悪者8人組によるクーデターが起こった」として、現政治経済の状況を定義づける学者も存在している。クーデターに負けた複数議員や有力シンパの学者たちは検察に追跡されているという訳である!と言うものだ。
突然の話ではあるが→____官僚組織自己増殖の例
今、厚生労働省系の出先機関である年金事務所と労働基準監督署には、数多くの社会保険労務士が臨時採用されて、この人たちが職員の補助を行っている。ところが、「相談員」などとの名称で呼ばれているこの人たちに、国民への間違った法律説明事案が多発しているのである。一般の事業主や労働者からすれば、「相談員」なのか正規職員なのかの区別はつかない。だから、その人たちの電話対応とか窓口説明は、「行政の正しい見解」としか受け止めざるを得ない。
にも関わらず、「相談員」である社会保険労務士が、社会保険料の算定基礎届の算出方法を間違って労働者に説明をしている。これに抗して事業主が問い合わせても、「間違った説明をしたのは相談員で、職員の間違いではない」として、年金事務所職員が責任をとらないケースが多発している。30年以上も前から、社会保険事務所の時代から、「法律を知らない者が悪い」とするのが厚生省の姿勢ではあった。
ほかにも、「労働局の者だ」と強圧的口調で会社に電話をかけてきて、社会保険労務士が労働基準法や均等法の間違った解釈を押し付けで来る事例も多い。一所懸命に調べて、労働局の者に反論を繰り広げれば、挙げ句には「多くの企業が居るから、何とか頼む!」と、根も葉もない世間体で民間企業人事課長に覆いかぶさるのである。昔から監督官の多くは、まず相談者に、事業主が労働者かいずれかを聞いた上で、足元を見て監督行政を行うとか、強い者の味方をするケースが多かった。ところが、今や、「労働局の者」は、根も葉もない世間体で労働基準法の解説をして来る事案が多発しているのだ。
国民が労働基準監督署に電話をすれば、大概最初に電話対応するのは、この「相談員」である。「相談員」となっている社会保険労務士は現場実務から遊離している者が多い。だから、より正確な法律解説を聞くには、監督官に電話口に出てもらった上で、聞かざるを得ないのが現状である。
個別企業の総務人事担当者は、こういった社会保険労務士の世間話なんか聞きたくもないのである。事実、このような目に余る「相談員」に限っての実質解雇を、厚労省側が実施している事例が多発しているが、それが不都合・不具合の証なのである。
こうやって行政機構は肥大化をしている。
この「相談員」の採用について、これを劣悪な労働条件(日額8,000円程度から)として官制ワーキングプアーとして批判もされているが、就労条件が安定した「相談員」が実現したとすれば、やはり行政機関は肥大化である。…国民は「霞」を食べることになるのだ。
さらに、社会保険労務士の団体の会長の弁によると、政府や地方公共団体の発注する公共事業における労働者の労働条件確保等の労務監査を行ない、そのために社会保険労務士を採用する働きかけをしようとの構想もあるとのことだ。社会保険労務士会の全国組織と都道府県組織のほとんどは、厚生労働省職員の天下り先である。さてさて「霞」を食べたいが為の目的としか考えられず、社会保険労務士は一般国民である依頼人の味方なのか、それとも官僚たちの犬となっていこうとするのか、専門家としての倫理感が問われることになる。
厚生労働官僚機構の増殖に寄与しても、公私共に豊かに、経済繁栄するわけがない。
郵政事業の非正規労働者を正社員化
するといった一昨年に話題の国会答弁ではあったが、今ではほんの一部の正社員化にとどまっている。
労働者派遣法も、
日雇い派遣は行政弾圧で潰したが、法改正であるとか製造業派遣の規制などは次々と遠のいている。
自己増殖のためなら
誰の味方でもする官僚組織なのであるから、本質は世の中の浮き草の如く漂い増殖するだけである。官僚組織は、経済発展や政策などに関係なく税金を食い荒らして自己増殖する。その主要構成員は自己保身にもとづく権益に群がる傾向が強い。かつて戦前の陸軍官僚たちが満州のPR(陸軍佐官の全国2万ヵ所演説会)→昭和6年の満州事変、昭和12年盧溝橋事件へと、とことん政治を無視して独自行動を進めた傾向と同様なのである。昭和4年の大恐慌から立ち直りつつあった日本経済再建を、戦争拡大の自己保身にもとづく権益に群がった陸軍官僚たちに阻止されてしまった歴史教訓でもあるのだ。自己増殖のためなら、何でもありの官僚組織なのである。だから、日本国憲法では、公務員の横暴阻止、公務員の権利の抑圧を定めているのは、日本では必要性があるからなのだ。


景気低迷にあって、繰り返すが、経済の発展とは
1.競争力のある企業が
2.若い労働力を集め
3.新商品・新市場に進出することなのである。
多くの中高年の偏向した習慣________________
・善を述べても善人ぶってみても、正しさがない生活態度
・目的のために手段を選ばず+片や身近な者への愛着といった非道徳
・集団目的や経験則で、若者の人生の目的や目標を不自由にする抑圧
といったような行動パターンの繰り返しでは、若い労働力を確保出来るはずがないのである。
ところで、「これからの正義の話をしよう」との、マイケル・サンデルというハーバード大学の法哲学教授の書いた本が、異常に売れている。白熱教室といったNHKの番組で取り上げられ、何度も最放送されているから本が売れている、という訳でもなさそうだ。どうも、今述べた中高年偏向習慣に対決・克服する知恵を求めて、そういうニーズもとに、若者の間で本が売れているのであれば納得(既に電子出版)なのである。
また、日本の法曹は法哲学を学ばないとの指摘が、法曹関係者から指摘されている。「なぜ人を殺してはいけないのか」とか「なぜ盗みはいけないのか」といった根本問題を、法曹(裁判官、検事、弁護士など)は、この分野の教育を受けてはいないし、ほぼ学んでいない実状との指摘なのだ。
すなわち、若者からは_____________
「裏切り者+ガンコ者」の中高年は相手にされず、
→若い労働力が確保出来ないから、
→そういった個別企業であれば早晩崩壊するという予見が必要なのだ。
ガンコ者ならまだしも裏切り者と映れば、実の子供でも親の言うことを聞かない時代だ。子供や若者は、理屈ではなく姿勢を見て信頼感を寄せる。(ニートや引きこもり)。
半面、団塊世代より上の老人が口にする、「所詮、金は汚いもの、それで飯を食っているのだ」程度の口車、これに乗って働く程度の若者は、それこそ所詮は使いものにならない。とにかく、多くの若者を集めてこそ、初めて個別企業の成長条件なのである。
こういった傾向を、若者がグローバル基準に影響されたとする識者もテレビではトレンドだが、事実はグローバルという言葉が流行する以前から、そういった萌芽はあった。「正当な手続きが正義の前提にはある」とする法手続きパラダイムが1980年代から若者に定着していったように。
若者を確保出来ない負け惜しみとして、
「アメリカ文化批判」を繰り返す課題と、
「ドル経済崩壊→TPP新経済体制形成」の課題を、
混同・混乱させているような意識水準や論理展開では、まずもって現経済の苦境を乗り切ることは出来ないのである、…その意味では、地に足がついた気力(気概)と冷静な分析が重要ではある。
中高年の曖昧な発言こそが、若者からの信頼感減滅の根本なのだ。


経済事件が表面化しない「経済恐慌」の中で
当面、個別企業が生き残るためには「守りを固める」ことが最優先である。
総務人事部門はその視点でこそ、仕事する意味がある。
例えば、米国ボストン・コンサルタント系は、「BCC流競争戦略」(朝日新聞出版)を出版して、近年の調査結果と将来を論じている。
A.現金を守る具体策を優先…在庫編成、負債圧縮などの財務基盤
 とにかく常日頃から現金を確保すること、在庫調整ではなく在庫そのもののあり方を、現代的に組み合わせること、そして負債額の借り換えや削減などとのことだ。売掛金は現金を貸していることであり、買掛金は借金をしていること、これを再認識すべきだ。
B.設備廃棄&アウトソーシングなどで長期コスト削減での事業基盤
 本社であろうが主力工場であろうが、大胆に設備廃棄も行ない、アウトソーシング(米国では人材派遣は含まない)の活用で非効率な社内業務の削減を長期視野で図るとのことだ。今後の事業基盤で、本社現所在地にある必要はない。外注を社内処理することは、固定費を増やし、損益分岐点を引き上げることになるから、本来のアウトソーシングが必要とされる。
C.見せかけの「低価格イメージ」で売り上げを確保する収益基盤
 もちろん、アメリカのコンサルタントであるから、社会合理性との整合性、すなわち、嘘は言わない、正しさや道徳が優先、効能と価格バランスの取れた自由取引(ペテン排除)…を前提にした低価格イメージ商品であり、業務改善による売り上げで構成される収益とのことだ。(日本では未熟な基盤である)。言い方を変えれば、商品の供給の中身を市場ニーズに変えることではあるが、日本流の小手先の発想ではなく、この本の全趣旨・文脈からいえば、長期的には社会合理性が勝負を決めると読み取れるのだ。
D.その後に、この三分野の基盤を固めた上で先鋭部隊を形成し、個別企業は攻めに転じることが重要だと、
ボストン・コンサルタント系は主張しているのだ。


「お猿」でも、収入が減った途端に
在庫削減、設備削減、人員削減などのリストラを実行している。長年の(社会主義)計画経済を基本とした官僚主導の経済成長と、同じく官僚主導の「失われた10年」×2=20年に浸ってきた、経営者が多いものだから、日本人も何人かは「お猿」程度に退化してしまったようだ。
今までは、計画経済主導の右肩上がりの経済政策だから、経営者も無難かつ円満にこやかな人物がもてはやされた。その名を受けて、総務人事部門は、当時裏方の尻拭いをした。
しかしながら、好業績企業の成功要因は、
「断固たる手が打てる強いリーダーを持ち、いち早く決断と対策に乗り出し、競争相手と戦う勇気と覚悟を持ち、ビジネスモデル全体をすっかり見通すことをいとわない(聖域を設けない)。そして、変革実現に向けて組織を動かす能力がある」との調査結果を、ボストンコンサルティング系は指摘している。
そして、その縁の下の支えの仕事(情報収集、企画立案、実施定着対策など)を、総務人事部門が担うことを求められているのだ。
たとえ未熟練労働者であっても、
(高学歴主婦や女性などで)基礎能力をもっていれば、
☆業務改善を通しての仕事の標準化(マニュアルだけでは形骸化する)
☆予見計画性を高くして業務遂行し効率化を図る
☆労働者の個別性を分析し能力別業務分担を図る
などといった方式を、ICT機器が利用可能なこともあり、身近に工夫して導入すれば、
・勤務時間短縮(例えばオランダ式ワークシェアリング)
・長期休暇制度(リフレッシュとか育児)
・短時間労働力の個別性を活かした効率的投入
・育児の男女労働力の活用 などで
個別企業全体の労働生産性を思い切って引き上げることも可能なのである。労働者を正社員化すれば、技術水準が向上するとか、労働生産性が向上すると思うのは、「お猿」程度(経験主義)でしかないのだ。
労働力の個別性(人物ごとに得意分野が異なる)を活かした効率的投入は、商品提供における高水準サービス(顧客からの信頼感と親近感の増加)を保障するのである。
信頼感のある販売とは、
その商品分野の良いことや悪いことのディスカッションを顧客と行えば良いのである。
顧客にとって感じのいい雰囲気が、
販売には決定的な要素を持つのであるが、例えば「客が世間話をすれば、世間話をすること」を徹底した接客に努めれば効果が上がる(親近感)のだ。
ズバリこれと同じ意味を、量販店のヨドバシカメラ(後で述べる22年度顧客満足度業界1位)が、さきほどもテレビCMで流していた。
その反対が、ガンコ者とペテン師が、「サービス」を論じている姿である。
この高水準(信頼感&親近感を生み出す余裕をもって)の効率的労働力投入と、例えば、「日本版顧客満足度指数」が有機結合すれば、
http://www.service-js.jp/cms/news_attach/20110125_jcsi_news7.pdf
高学歴女性労働力の進出にはめざましいものが予想される。不毛な「筋肉と脳みその肉体労働」から解放されてこそ、高水準サービスの量的提供も可能なのだ。
心身共に疲れ果ててサービス労働など出来るはずもない。
将来日本の個別企業の利益の源泉がここにあることを、再認識して、行動を選択し施策を企画立案することが重要な時代である。