2012/07/10

第123号

<コンテンツ>
大幅リストラと&人員削減の段階がきた!
マスコミ&官僚たちが隠す、EU各国の経営
官僚の経済政策で個別企業は日本もろとも沈没
海外進出は、企業も人も身売り状態
固有価値論での、商品価値増量の広がり
これからの面接技法 (商品価値の増量と販売には)
固有価値重視からの、「ものづくり」手法
固有価値重視からの、「サービス」手法
労働者派遣法:政省令骨格(10月1日施行)
=書評=『職場学習の探求-企業人の成長を考える実証研究』


§大幅リストラと&人員削減の段階がきた!
外貨が日本に入ってこない状況、そして個人消費の落ち込みは、いよいよ国内消費の低迷に拍車を掛けている。そこに消費税増税であるから、個別企業で自己防衛に入らない企業はない。
その最も初歩的な自己防衛は、
イ)「銀行を経由する決済はしないこと」及び、
ロ)「如何なる借金も返さないこと。」である。
乱暴な表現ではあるが、「とても意味深い」内容ではあるが、なかなか出来ない個別企業も多いのである。がんばってこの2項目に取り組んだ上で、経営計画を策定するしか残る道はない。とはいえ、下請けに甘んじてきた個別企業では、これ自体もきわめて難しい。海外市場の需要に幻想を抱いて海外進出した下請け企業も然りである。(経済学者の多くが語るように、円高不況が原因で海外に進出した事実はない、あくまでも海外での需要の期待の幻想である)。
だとすると、本当に残念なことだが、
本当の意味でのリストラと、人員削減(主に正社員)の準備を開始すべき時期になってしまった。安定的な経営を目指すならば、早ければこの秋、遅くとも来年の春が、その時期である。とりわけ人件費については、
(ア)不採算部門の人件費分はカット
(イ)その後に、常用社員を整理解雇して採算を合わせるか
(ウ)それとも早いうちから非正規社員を大量導入して採算を合わせるか
の選択となる。(例えば、欧州は正規社員の解雇、米国は非正規への切り替えと、それぞれの社会状況に応じて人員削減が行われている)。
リストラと人員削減は
次の順序で行われなければ、法的にも問題がある。それは訴訟が提起されて敗訴すれば、財産差し押さえのリスクを招くということである。
1.まずは中長期の経営計画である。単なる赤字だけで整理解雇は出来ない。
2.従業員との話し合いが最も大切で、誠実説明義務がある。(誠実説明義務=簡単にいえば、聞かれた質問にはすべて答えること)。
3.人員削減を避けるため臨時従業員の解雇である。(この場合長期パートなどは法的には含まれない)。
4.整理解雇者の合理的人選。(そのための客観的人事評価が必要である)。
すなわち、
早くも消費税が引き上げられる増税方針で需要の落ち込みが、現在の落ち込み状況からさらに進むのである。不採算・不安定部門整理と売れ筋商品の商品価値増量(あとで述べる固有価値論=要するに他に無い取り得のこと)を、早速、まずは経営計画に取り込み合わせて取り組む必要があるのだ。
一部には消費税の課税されない方法(海外経由)による流通ルートも始まっている。売り上げパーセントからすれば重要であるが、もっと抜本的なところが必要となるのだ。最終消費者相手の場合、日本銀行券を使わない売り上げを考えることも必要だ。給与の現物支給も、課税対象とならない方法はいくらでもある。しかしながら、企業の固有価値、商品の固有価値、人材の固有価値を得る以外に抜本的な道はない。それも外貨が日本に入るような仕組みの上での話である。


§マスコミ&官僚たちが隠す、EU各国の経営
彼らは、「EU財政危機」という常套句を連呼して危機感をあおるだけである。EU各国の財政立て直しや個別企業の、本当の具体的な動きを取り上げようとしない。それを取り上げたならば、財務官僚たちが行おうとしている政策が頓挫することは、まず間違いないのである。
EU加盟国は軒並み財政再建を具体的に
行っている。年金の年齢繰上げ支給、公務員大幅削減など、それはギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガルのみならずドイツもフランスも各国が行っている。加えて財政立て直しはイギリスにもアメリカにも波及している。要するに具体的重大論議となっているのである。そのうえで、これに対する労働組合や社会運動、あるいはネットのSNSによる自然発生的な運動は激烈となっている。ゼネストが何回も繰り返されている状況だ。これが各国の政権交代を起こしている原因なのだ。マスコミも官僚も、そういったことを言わないのは、もしも言ってしまって具体的大論議になれば、いかに無策であるかがはっきりしてくるからだ。
EU各国の個別企業の人員削減も激しい
のが今の動きである。解雇規制緩和や雇用保障制度縮小といった動きとともに、次々と人員削減が打ち出されている。これに対して(毎度のことではあるが、生半可な反対運動ではなく)、ロックアウトや暴動といった流血事件が相次いでいる。ドイツでさえGIメタル、オペル、エアバスでも大争議が発生し、労使の一進一退の激突である。すなわち経済主体である民間企業での譲歩と和解が繰り返され、その結果を政府が秩序立てているという方式である。
だが、日本のマスコミは、
まるでこの厳しい激突が無いかのように報道して、静かな財政再建が行われているかのような印象を与えている。だが、こういった激突を外務省や官僚たちが知らないはずはない。すなわち、日本で報道されれば政権交代も必至、富裕層増税や大手企業優遇税制廃止なども必至になるということだ。もちろん、今年度から始まった増税、消費税10%引き上げなど、根底から飛んでしまうのである。その状況はアメリカでも同じことである。すなわち、グローバル経済全体が厳しい激突の中から新しい経済秩序が形成されようとしているのである。問題はその新しい経済秩序の貧乏クジを日本が引いてしまうことである。


§官僚の経済政策で個別企業は日本もろとも沈没
要は、官僚たちの経済政策で日本も、個別企業も成長し豊かになればいいのであるが、それは望めない。今や世界中が労使激突している中、確かに日本が静かなのはよいことである。ところが、「静かさ」を求めた挙げ句が、(官僚の狙いは、「静かさ」を口実に、常套句にして、日本経済を操ることだ)この十数年の動きは、
・個別企業の技術技能低下 →
・商品競争力の低下 →
・日本製品を日本に買いに来てくれない →
・仕方がないから海外に出稼ぎにくしかない →
・出稼ぎに行ってもGDPは海外現地国のもの →
・海外が日本に頼る用事はなくなった →3
・日本は外貨を稼げない、次々と日本の地位は下がっていく。
……となってしまったのである。古今東西歴史の中で、戦争や殺人は論外として、論争や激突の無くなった静かな国は衰退するしかなかった。天災や戦争で国がつぶれた例はなく、その時点で回復力がなく国が潰れたのであった。とにかく、「本命の論議」をすれば横槍を入れてごまかそうとする、そのキーパーソンは官僚なのだ。(欧米&中東では、歴史的に公務員は奴隷の仕事であったから、経済に口出しはさせない)。
結局は、「国破れて官僚は残る」
といった基本戦略の上に、官僚はあれこれと政策誘導しているに過ぎないし、その作戦に多くの国会議員や政治家はのせられてしまい抜け出せないでいるのだ、はじめは「官僚を利用する!」と息巻いていた政治家ほど…。おまけに、大阪市のように大量の官僚ブレーン(経済界無視)が送り込まれ官僚グループ同士の代理戦争にまで政治が利用されるに至っている。太平洋戦争中のように、陸軍と海軍が主導権を争って国益を考えなかった様相にも似ている。すなわち、経済政策などの後に、どこのどの官僚が付いているかを見る必要がある。
だから、もちろん肝心の経済政策は
ことごとく消滅して行き、新エネルギー政策も消滅して行き、残りは介護や保健といった高齢者の貯蓄を食いつぶすような政策とか、国内の空工場や土地を中国資本へ販売促進をする政策、後進国水準の観光政策ばかりが目立っている。経済規模や経過は異なるが、これではまるでギリシャ政府の政策の柱の二の舞なのだ。
「外貨を稼ぐ以外にない」にも関わらず、官僚はこれを放棄する政策に転じた。(3月30日、経団連:定時総会)


§海外進出は、企業も人も身売り状態
海外進出の悲劇を裏付ける企業の意識調査(帝国データバンク)が出た
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/keiki_w1205.html
そもそも、日本人の海外進出は、
欧米や華僑のように現地に骨をうずめる意思も無いし、出稼ぎに行ったが帰るに帰れず丸裸になるケースが多い。まして、日本の企業や労働者の培ってきた固有価値を否定して、海外でどの様な価値を生み出そうというのかの中身がない。「新たな海外需要展開」に幻想抱き、努力もせず「国内市場の縮小」を受け入れる、これではまさに、前門の虎、後門の狼である。KEIRETSU型の海外進出時代は、もう終わっているのだ。自動車も家電も、いわゆる技術水準が落ちたために日本に買いに来てくれることがないから、現地に行ってニーズをつかみ生産しなければ相手にされない…といった事態なのである。他の輸出産業もほぼ同様であり、技術水準の高い企業の中には海外から日本に帰ってきているところもある。近ごろは官僚を見習って、行き先で分かったようなことを説明するのが流行している、これが海外進出の本質だ。中小企業庁も海外進出を中小企業に呼びかけているが、中小企業の安楽死を進めているようなものである。
そもそも、海外に出ていった産業とは
大まかには、(1)ゴム、(2)ガラス、(3)ダイカスト、(4)プラスチックの順である。アルミ精錬(13工場)は日本の電気料金が高いから相当昔に無くなっている。ところが、品質は低下していても、実際に需要のある商品の固有価値を形成するには問題がないのだ。日本の企業が、いくら機能や品質向上に励み、そこに労働・労働力をつぎ込んでも商品交換されない(売れない)から、莫大な無駄を抱え込んでいただけなのであった。中小企業庁が、この無駄となった労働・労働力に手をつけて経済政策を行っていたら、日本の様相も変わっていた。EUはこういった経済政策に手をつけていたから日本ほどの窮地に陥ってはいない。ちなみに、見た目だけの中国のプラスチック部品の特徴は、不純物が多いことに原因があって透明または白色の部品はない。
それでも海外進出したいと考えるのであれば、
原材料を加工して様々な素材を生産する=素材産業であれば有望である。とりわけ、それなりの技術を持つ大手企業であれば、それは数十年間なら有効であろう。だがこれも進出国のGDP増加に役立つだけである。中小企業は資本も技術もないから、せいぜい数年のうちに資産を吸い取られてしまっておしまいである。ではどうすればいのか…。
[地方の自然産業、衣食住関連が国内経済の支え]
となることは間違いない。個別企業が海外向けに、生活・感性文化の永続性のある高価格高級品の輸出をするのである。自社の技術で作る商品は別産業かもしれないし、なによりも確実な固有価値による商品を提供することができる。そこでの高級品(高固有価値や高水準サービス)は、自動化一辺倒をするより、ICTで支えた手作りが安いコストで作れる。安易に機械化できるということは新興国が真似をすることであり、高度な機械化は投資に見合った売り上げが確保出来ない。また、そうでなければ経済循環しない。(経済循環しないから、今の景気のように、だぶつく資金が金融に回ることになる)。
……冒頭の話に戻るが、
だから、国内に踏みとどまるならば、大幅リストラや人員整理が(法的にも)許されるのである。ここで日本の戦時中の話が思い出される。“終戦の約半年前から始まった大空襲、米軍機は400万枚以上の空襲日程を書いた宣伝ビラを投下し、予定通りに大空襲が行われた”(ジャーナリスト保坂正康) アメリカ軍の情報を知りながらも、そこで避難せずに被災地に留まった大勢の人たちは、何をどう判断したのであろうか? 学童疎開対象外でも疎開していた人が存在したことも事実だ。


§固有価値論での、商品価値増量の広がり
(経営者たちの経験哲学
や信念から、経済の法則に)
この6月に京都で開催された、国際文化経済学会に筆者は研究レポートを出した。
http://www.soumubu.jp/new.html
固有価値と、その価格決定に関する研究レポート。国際的な学術団体は学者でなくても気軽に受け入れてもらえる。日本の学術界は極めて閉鎖的、民間一般からすれば、あきれた経済学論争や何が目的の研究か意味不明な論述、とりわけ総務人事採用問題を大学の先生は知らない。そんな非実務的な研究ばかりしているので、一石を投じる効果を期待したものである。聞くところによると、日本人学者は英語の国際論文だと、それが気になって読むそうだ。(私の指導教授の皆さんが言っていました)。筆者の私がいい格好したいのではない。英語の専門用語で質問がくれば、筆者には分からないし。
その注目をされているポイントは、
商品の固有価値についての、固有価値の源泉、商品価格決定に及ぶ要素として、
(ア)地域文化に醸成された幼少からの熟練された労働能力。
(イ)その職業に関わって鍛錬された労働力としての職業能力。
   …前項の労働能力と相まって具現化・商品化を成し遂げる。
(ウ)地域や地場産業で有機的ネットワーク化されたイノベーション能力&体制。
   …需要者の企業への頼りがい、ブランド性、地場産業性といった現象である。
この3つが、どうも世界で初めての学説らしい。各国からも注目されているようだ。
どういうことかと言うと、
「商品に付加価値をつける」といった付加価値論では、抽象的で曖昧で、驚くべきは経済的商品価値とは言い難いものまでが想定されていることである。賭博の要素、投機の要素、詐欺まがいの要素その他、事業として市場流通として、それでは欠陥理論である。そこで、固有価値として、正当な商品流通を構成する価値の源泉と評価を出来る限り可能にしたということだ。
で、今までの使用価値論による原価積み上げ方式の見積もりではない。それだと(イ)の部分の70%しか評価されず、創造的価値を生み出す職業であれば20%にも至らないかもしれない。自由市場での相場決定方式で、買手に信用してもらえる見積書が用意できることになるのである。商品製造や業務遂行で、どこにどんな労力を投入すれば、価格の向上、と言っても実際に売れる仕組みが出来るのである。
なので、固有価値による経済復興が、この論理と見積もりと流通でもって、個別企業ごとに計画できるようになるのである。学問の効用である不毛な努力・労力が減るのである。


§これからの面接技法 (商品価値の増量と販売には)
真に残念ながら、みんなが幸せになる時代は遠くなった。個別企業を、イノベーションの風土、良い人材の塊りにするしかない。良い人材とは、…それは、企業目的や取扱商品によって判断基準が異なる。現代の経済危機を乗り越えるとは、個別企業の固有価値を前面に出した「高固有価値製品&高水準サービス」の商品提供で活路を開くということだ。個別企業の経営の安定、それを支える労働者、人材の能力開発育成と確保、その事業目的や経営方針に資するのが良い人材なのだ。イエスマンは、雇う側の気分はよいかもしれないが、半人前でも腹の中では待遇要求して来る。既に日本経済は、親方日の丸の時代は過ぎたのでイエスマンは要らない。この経済危機の最中でも、人手が無いといった企業もあり、面接に来てくれないとして、あせった挙句、次のような避けたい人材を雇い、後日、お荷物になり、トラブルを抱え、多額の解決金を要するケースは絶えない。そこで、
【採用面接で避けるべき人材のチェックポイント】
(まず、採用通知を送る前に、もう一度チェック)
1.服装が雑であり、おしゃれ感がない。
2.履歴書に空白期間がある、経歴を宙で説明できない。
3.表情が暗い、劣等感が強く顕著に現れている。
4.業務の突っ込んだ説明をしても質問がない。返事もしない。
(次は、採用後、14日以内の試用期間にチェック)
5.OJT教育(やって見せ、言って聞かせて、させてみて、ほめても)
  を行なっても、教えている内容を聞いていない。
6.1週間ほど経っても、仕事のことで自分の意見を表わさない。
7.勝手に世間話をする、好きなことにしか興味を示さない。
8.会社の商品やサービスについて、興味を示さない。
9.労働契約書面(社員、無期、有期)に表示されたこと以上のことは即時拒否する。
10. 遅刻、欠勤、借金など、いっさいの事情を口にしない。
採用通知後の注意:
大まかにでも客観的合理的理由と裏づけ証拠をそろえないと、訴訟で示談金を払わされることがあるから、感情的に解雇することは避けること。


§固有価値重視からの、「ものづくり」手法
使用価値や効用価値を重視したから、日本経済も大手企業も経営破綻した。
固有価値重視から、「ものづくり(消費財の固有価値)のイノベーション手法」を検討した。固有価値とは、いわゆる他にない取り得のこと、個別企業の固有価値、商品の固有価値、人材の固有価値といった具合である。
個別企業の売り上げは、ひとえに売れる商品を作ること。
それを使用価値(機能とか数量)ばかりに目を向けて、商品の価値・固有価値を疎かにしたから売れない。発明や新開発をしても売れないのは、それが使用価値の範囲でしかなく、使用価値さえ優れていれば売れると錯覚していたからです。「よいものをより安く」これは資源欠乏時代の話であり、日本人の能力や文化をものづくりに反映させ、高固有価値商品を供給するには、この「よいものをより安く」のイメージはマイナス効果となる。
(1)製品の1ヵ所だけを変えて、非凡にする。
   (木製自動車の例その他)
(2)重要な改善のツボは、
   「他社と違う、他地域と違う」ところにある。
(3)固有価値の新鮮さをアピールするイベントを行う。
   (店先の実演販売、半製品を店先で完成する)
(4)商品の容器や容量を変える。
   (土地柄、一人暮しや核家族用の量、保存法)
(5)製品(家電、衣料、水、木製自動車、食品、住居)
   原材料の成分を変える。その地方特産品を商品の成分に使うことでの固有価値は生まれない。
(6)顧客の「その商品を買うに至る旅」をよく見る。
   顧客が前に何を買い、途中で何を買い、考え直して買った物は? といった、顧客の過去の不満足を調べる。(長持ち製品、使い捨て商品のメリハリ)
(7)真実を現す色にする。
   「独自の色彩:それとも:ぼんやり灰色か?」のような色決め
(8)経験を集めたい、体験を集めたい=に応える製品。
   そしてメソッドバッジ(技能章)機能の用意も忘れずに。
(9)常に非凡な商品・製品を設計してみる。


§固有価値重視からの、「サービス」手法
固有価値重視の「人をケアcareするサービス業のイノベーションと教育要点」を検討した。これは、現場で如実に売り上げに関わる課題である。
原則は、=[スタッフに教育をするから、スタッフの仕事に笑顔が生まれる]。
これは、素人であったり中途半端な教育しか受けていない場合、お客様に対して笑顔が出ないということである。
イ) 相手の悩み解決手助けならば、スタッフが選択を非常にうまく導いていくシステム化
ロ) ワインを楽しむことを阻んで来たあらゆる障害を、スタッフが取り除くシステム化
ハ) 顧客一般の恐れる要因を、スタッフが排除・軽くするためのシステム化
ニ) 医療ならば治療するのではなく、病気を直す方向に変えていくシステム化
ホ) お客は自分の好みを知っている、スタッフはワインを知っていると割切るシステム化
ヘ) お客は、「常に沢山を学びたいが、教えられるのは嫌いだ」と割切るシステム化
ト) 知識は押し付けるのではなく、顧客と重要ポイントを一緒に発見するシステム化
チ) お客の技能習得の焦りには、「ゆっくり出ても大丈夫です、手元は遅くで」のシステム化
……サービス職種により、イ)~チ)を選択・具体化して行き、時おり、イ)~チ)を循環させて内省(ないせい:深く自己を省みる)を繰り返す。
☆最終消費者に買っていただくには、
商品価値を増量、それは生活文化型商品の固有価値を高め、その(人をケアcareする)サービスをシステム化することによって、安価に供給する方向である。方向をそちらへ仕事のやり方を変えることが肝要。変化に、たいした経費はかからない。工業文化型の商品では、技術や機能を付加しても、売れない → そして末路は値引き合戦に至る。


§労働者派遣法:政省令骨格(10月1日施行)
改正された労働者派遣法の、施行の詳細基準が政省令として固まった。概ね予想通りの内容ではあるが、「法的性格に派遣労働者の保護」が加えられたため、トラブルの未然防止に力が入れられている。検討された資料は次の通りで、これが官僚たちによって厚生労働省の文書として出回ることになるのだ。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002eolv-att/2r9852000002eou9.pdf
実際の準備は、10月1日の施行を前に出される正式文書を見てから、具体的な対策を立てれば差支えがない。今の段階で言えることは、労働者派遣という方法は歴史的に役割を終えたとの認識と、労働者派遣という人海戦術に頼った企業では技術水準を落としてしまい回復不能になったとの認識、その上で次の経営計画・事業方針を考えなければ不良債権が積み増しされるばかりということである。労働者派遣会社が、アウトソーシング事業や業務請負事業に事業転換することは、まず不可能である。


§=書評=『職場学習の探求-企業人の成長を考える実証研究』
 (生産性出版:2012年3月発行)
ベンチャー企業や中堅企業、大手企業で成功した事業部では、学術的研究がなされなかったものの、経験的に認識されている結論がいくつかある。これは、東京大学経営学の大学院生たちがリクルート会社の大手企業の採用調査データをもとに分析を図ったもので、主に学卒新入社員を対象としたものだ。学者の研究であるから、研究根拠をインフォメーション情報に頼っていることもあり、この書籍からだけでは、実際に活用するのは難しい、というよりも経営管理に携わる者からすれば、思考パターンが違うから読みづらいのである。
筆者の経験や認識から合わせてみると、次の定石の学問的裏付けができたことになる。
(1)チームの組織効率の向上を念頭に、チーム内の知識流通サイクルを早めて、それをメンバーが内省(ないせい:深く自己を省みる)を行うことが、職場学習の向上に役立つ。
(2)OJTは、担当の課長や係長もしくは先輩同僚が単独で行うのではなく、別途にOJT指導員を選任して複数で行えば、訓練成果が高くなる。
(3)商品や業務のイノベーションを行おうとする風土は、それに巻き込まれた人材の育成を促すことになる。
(4)個別企業における協調性や規律性の水準が高い人物は、意外にも、「将来の独立起業志向」及び「他人への信頼感・信頼関係づくり」の2つを併せもっている。すなわち、将来目的がある人間は、その実現の成否は別として、現在所属する組織に積極的にまとまる傾向があるとのこと。
これら4項目は、
確かにベンチャー企業家や中堅企業経営者の、情熱的名言と同義である。ところが、こういった人たちが倒産やスキャンダルに巻き込まれてしまうと、この立派な情熱的名言は消え去るかもしくは揶揄されるのが常であった。やはり、それなりの学問的裏付けがないために、世間一般の人には真価がつかめてないのである。ここでも、経営者たちの経験哲学や信念が、経済の法則になった。
-(ここからは、書評から1歩踏み出して…)
イノベーションや新規事業を展開する際に、運良く「真価をつかめる人材」が集まればよいのだが、ほぼ間違いなく至難の業である。世の中に何人ぐらいそんな人がいるかとの研究は、古今東西にあるにはあるが、おおむね数万人にひとりの人材と指摘している。ましてそれが企業経営ばかりに向かうのではなく、芸術家、主婦、街の研究家、趣味、公務員その他に分散されるのだから、ほぼ集めることは不可能である。だからこそ確実に行うとすれば、教育訓練が必要なのである。
ちなみに、「真価をつかめる人材」とは、10代後半でも粗削りながらも、先ほどの4項目は理解するし、今までにいくつかを既に実行しているような人物である。
経済学でノーベル賞候補となった唯一の日本人、故:森嶋通夫ロンドン大学教授の説に、「大学入試問題は、『人間には神が必要か?』の1問だけでよい。外国語や数学はどうでもよい。こういう人たちが大学教育の対象だ」という趣旨のものがあるが、「真価をつかめる人材」とはそういうことなのである。したがって、この4項目は、この時代の変わり目のときには実行してみる価値があるのだ。
ところが、組織効率向上よりも組織の温存、知識流通サイクルよりも情報制限、内省よりも責任転嫁、部下は教育よりも有能者なら排除、イノベーションよりも既得権益、表面的忠誠を誓う社員への安堵感、横の人間関係よりも同僚競争システムといった具合に、日本の個別企業の教育訓練は水準の低下の一途をたどり、国際比較で次々と墜落していくありさまなのである。「真価をつかめる人材」と連絡をつける方法は存在し、その人たちは時間単位でも案件単位でも協力してくれるにもかかわらず…。