2013/06/04

第134号

<コンテンツ>
アベノミクス、天気予報に曇り?ゲリラ豪雨も
 【日本市場の株安の引き金は】
 【世界の地下金融の動向】
 【論理構成の弱すぎるアベノミクス】
 【マイナンバー制の税収は6兆円?】
 【中小企業の信用不安は夏から】
OECDは、日本に対し提言(事実上の勧告)
サラリーマンから能力を抜いた賃金体系の真実
内閣府:税制調査会 タブーその2 「消費税」


§アベノミクス、天気予報に曇り?ゲリラ豪雨も
この4月から6月の、政府統計による経済数値が良好であれば、政府は10月の閣議決定で、来年度の4月1日からの消費税8%を導入することが出来るとしている。財務官僚=「霞が関党」の言いなりになって、ひたすら延命策を歩み続ける人たちの考えていることである。
そのためのアベノミクスと花火を打ち上げたものの、案の定ここに来て雲行きが怪しい。先月、この5月末の日銀マネタリーベースは約159兆円、この2ヵ月で9%増加させている。ところが、これによる物価高が確認できないのだ。敏感な商品なら動くはずにもかかわらず、物価高原因は円安によるものばかり。

【日本市場の株安の引き金は】
日本政府の国債利率が上昇してしまい、これが日本市場の株安を招いた。そもそも国債の9割は民間銀行が日銀から買わされている。政府と銀行関係者が会合を持ったが、その後に株安である。世界規模のファンドが日本株を売り、それを政府が手引きして買い戻しているのは一目瞭然である。だが、ことは強気の日銀総裁の話には留まらない。もとより意味不明なインフレ・ターゲット(短期政策的にインフレ目標を達成)といった論理が崩れてきているからだ。本日昼も政府期待の株価は1万3千円半ば、円は100円を切る円高である。
そもそも、インフレ政策というものは、経済学(一応、中学までには教えている)においては大衆課税のための手段である。その方法として生まれたインフレ政策は、その国の産業を政府が誘導するためにも使われたものである。すなわち国内のタンス預金(家のタンスに貯金すること)などの現金で自家保有している資産の効力を、物価引き上げによって一挙に目減りさせようという納税政策なのだ。「インフレになれば借金が減る」といった理屈で、今日まで中堅・主要企業が産業政策に誘導されたことは間違いない。
だがそのプラス面は昔話で、今やそれでは誰もが経済成長すらせず、潤いも失ってしまっているのは事実だ。

【世界の地下金融の動向】
どれだけ有頂天になってアベノミクス踊りに参加してみても、次の情報を聞けば、踊りも止まってしまうであろう。
それは、EUが地下金融の金融取引(世界の投機資金の主体)を把握しようとする動きを見せただけでスイスの銀行預金が他国(極東アジア諸国)に移動しているとの情報である。加えて重要なのが…それだけではない。
冷や汗が出るような情報はイギリスから
タックスヘイブン(税金天国)の島国を批判しだしたことである。カリブ海その他に浮かぶタックスヘイブン島国は、元はイギリスの植民地である。この島国の企業?に支払ったとされる金銭のほとんどがアメリカ企業の隠し財産となっていることは誰もが知っている。この資金がタックスヘイブン島国から流出しているとの情報である。発見したのはイギリス陸軍のMI6(映画にもなっている情報機関)のようだ。先ほど述べた日本市場の株安からすると、日本には流れてきていないのは確かである。その投資先は、アメリカ本国でもない…。

【論理構成の弱すぎるアベノミクス】
アベノミクスを擁護する学識者たちは、口をそろえて、「○○が出来さえすれば…」といった条件付きで、アベノミクスによる経済政策の成功を論じているばかりである。出来なければどうするのかとの問いには、論理的に答えることはなく、感情的!に「やらなければどうする?」となる応答ばかりである。また、TVに顔を出すのは金融や証券業界ヒモつきのコメンテーターばかりである。「こういう経済政策を採ろう」といった論議は皆無に近い。何本の矢なのか知らないけれど、所詮は前政権からの官僚の描いた政策である。反対意見のほとんども、政策の不十分さを暴露する程度のもので、抜本的着想すら見受けられない貧弱さである…。彼らには国際的視野やICT産業革命からの視点はない。
筆者の経済対策はこちらだ、たいした財政出動はいらないし、中堅・中小企業は個別でも出来る。
http://netclerk.net/WebShomotsu/archives/30

【マイナンバー制の税収は6兆円?】
いよいよ平成28年1月1日から導入される。高校生のアルバイト、主婦のパート、Wワーク(2ヵ所以上で働く)の収入にまで、所得税5%、住民税10%、社会保険料が掛かって来る制度が出来上がる。個別企業の番号は個人情報ではないから保護されない、すなわち逆算・追跡可能となる。
このマイナンバー制で、社会保険料とは別に年間6兆円の税収を見込んでいると言われる。中堅中小企業の税負担の不公平さを無視して、IT機器による増税は、美辞麗句を並べたてたとしても経済・生活に影響を与える。日本の場合、 600年ほど前からの商品経済、明治以降の自由・平等さに欠ける資本主義経済を概観しながら述べると、紙幣(江戸時代の藩札)が発行されると、「紙幣を受け取る人々は、労働せざるを得なくなる」のである。そして、それを徹底して税収に結びつけようとするために、国民全員に番号をつける、「マイナンバー制」である。ヨーロッパその他とは地域通貨とか生活用品確保手段が日本は異なっている。
その点をよく見ないで、議論をすることはきわめて危険だ。マイナンバー制で利益を得る財務官僚たちの論点に対して、これほどまでに「静寂」な状態は、あまりにも今の日本人はコンビネーション(タテからの組織運営)に慣れきっているのかもしれない。
ヨーロッパ流の論議をするならば、商品市場がコンビネーション運営に傾くと粗悪品の増加を招く、すなわち価値生産の少ない労働の横行を容認しようという社会形成ではないのか?
日本流っぽい例え話、「高校生や主婦の片手間の、お小遣い稼ぎ、そこまでやるのか?」である、それは価値生産とはいえない半人前の仕事に過ぎないから。
……という議論なのである。分かりやすい例え話に変えれば、高級・安全品には「遊び」のメカニズムが含まれている、ということなのだ。

【中小企業の信用不安は夏から】
金融円滑化法により30~40万の中小企業が倒産を回避したと、政府はしている。この3月31日で期限切れになったが、4~6月の経済指標に影響が出ないよう、参院選挙(7月21日?)直後に金融庁通達(貸しはがし?や債権整理可能)が出ることになっている。今は下準備中で、「事業計画書」の作成がポイントと金融機関は言っている。参院選後の金融庁通達の直後に金融機関が一斉に動き出すことも忘れてはならない。
その流れで起る現象は、
  A 現在もそうだが、目立たぬよう休眠する企業が増加
  B 参院選以降に倒産をかける企業が出て信用不安の高まり
  C これにより連鎖倒産や仕入れ・売り上げの相手方企業が消滅
  D 大手企業は利益を逃さぬよう1年間の計画の上に破産をかける
…まだまだ個人消費に関わる中小零細企業の市場は少なくない。
そして、事実上の中堅・中小企業の株主は銀行である(金融庁も認めるところ)の、現実課題なのだ。
とにかく、4~6月の経済指標が重要だとしているのだ。


§OECDは、日本に対し提言(事実上の勧告)
を出している。OECDは、日本政府や「何本かの矢?」よりも、グローバル政策を進める視点であり、4月24日事務総長は経団連と懇談している。主な提言(事実上の勧告)は次の4つである。
1)日本が国を開き対日投資を受け入れること。
…(むらおかコメント)日本の競争力強化につながるのは明らかである。ところが、これをしてしまうと日本政府の官僚たち、財務官僚も経産官僚も権力がなくなるので、彼らは嫌がっている。
2)農業改革。稲作を除く活力分野の野菜、花、果物は高収益であり、競争力強化に向けて農地集約や生産調整制度の廃止。
…(むらおかコメント)非常に有望な海外市場に日本の農業が進出することは、買う側の海外も大勢はほぼ出来上がりつつある。ところが農業系を基盤とする議員たち、農水省官僚が、次世代の利権を創造しようと時間稼ぎをしているのが現状である。この時間稼ぎが日本にとっては致命傷なのである。TPPより先行できるFTAや日EUとの交渉が遅すぎて、この貿易実害は大きい。アメリカの手を借りて官僚が時間稼ぎをしている姿がTPPなのである。
3)研究開発とその閉鎖的な体制の見直し。
…(むらおかコメント)OECDの指摘は、日本の研究開発投資は大きいが、生産性が低く投資に見合っていないとしている。日本企業の閉鎖的体制とは、外国人を雇っても、絶対に日本人の指揮命令下に置いていることである。また海外からの研究開発投資は受け入れない。特に、エネルギーをはじめ重厚長大産業系の大手企業は、官僚と結びついて、国策だの何だかんだ言って徹底拒否をしている。
4)ICTイノベーションの活用。特に人口過疎地が多く高齢化が進む日本の特徴を指摘。
…(むらおかコメント)日本の官僚が進めてきた政策は、人口過疎地を増加させることを覚悟した上での東京:首都集中化であった。また、平成の大合併と言われる地方行政機関の統合整理は人口過疎地増加そのものの覚悟であった。OECDは、ICTを活用して高齢者(65歳以上の年金受給者)、女性、若者の人的資源活用には、過疎地拡大・都市人口の増大がマイナス要因としている。
OECDからすれば、日本の実態経済が回復しないのは目に見えているから、毎度のように提言(事実上の勧告)を行ったのである。OECDに対抗して日本の官僚たちや官僚たちが選んだ学者が何を反論しようと、世界経済はどこ吹く風なのである。そう、読者のあなたは気づいたと思うが、アベノミクスに対してOECDは、事実上の方向転換を勧告しているのだ。日本に外国人投資家が関心を寄せないのは、こういった筋からの納得性も存在する。
ところが、OECDの世界経済情勢や提言にかかわって、本家本元の少なからずの学識者たちは、「グローバル基準による、競争原理とか人物能力評価の物差しだけで、社会の総てが上手く行くわけではない」との意見を、徹底して繰り返している。(哲学者)マイケル・サンデル教授も、そのひとりだ、それはなにを意味するのか?…。


§サラリーマンから能力を抜いた賃金体系の真実
それは、様々な名称や仕組みを持つのかもしれないが、運用原理を「拝金主義」で行った賃金体系=拝金型賃金体系にある。その体系は解説をするよりも、次の図を見た方が早い。
http://netclerk.net/WebShomotsu/archives/252
すなわち、年功序列型、職能資格型、職務給型、成果主義型と、様々に賃金体系の着ている着物は異なっても、サラリーマンの意欲を金銭に向けさせる原理に特徴がある。
では、金銭意欲を否定したサラリーマンはどうなったのか? 大手企業ではリストラの候補者としてリストアップされ、子会社出向、独立起業、中小企業へ再就職の道をたどって行った。
そのあげくが、大手企業の「体たらく」である。この日本経済復活とは無縁となってしまった「体たらく」の大手企業に、安定第一、高額収入第一の新入社員が入社したところで、先輩の能力を超えるわけがない。しかも、東京大学のある研究者によると、通信N社も食品A社も、OJT教育が中心で社外教育軽視のはなはだしいことが発表されている。もとより日本の労働者は職業性が薄く、すなわち職業能力が蓄積されておらず、自認するほどの職業意識の持ち合わせもない。1980年代後半のバブル経済到来とその崩壊以後、職業と職業能力を軽視する「拝金主義」が流行したために、職業能力の欠如は意識されず、当然のこととして中身のある教育を受ける意欲も激減した。はっきり言えることは、本当の意味での教育や教養がなければ、如何なる職業能力も向上するわけがないことだ。
筆者の伯父は、電産型賃金(年功序列の原型)をまとめた。それは、当時の電力会社(日本発送電株式会社)と各地配電会社(北海道~九州)をまとめて、水力発電から火力発電への切り替えをするための職業能力向上を狙っていた。それは、GHQが火力発電を否定し、日本の賃金を職務給で良いとした経済政策に対抗ものであった。この電産型賃金は、後に金融機関各社に導入されることとなり、年功序列型賃金という名前でもって全産業に広まった。さらに、その素地もない中小企業でも年功序列は理想的な賃金とされた。
次に、筆者が人事・賃金関連のコンサルティング手法を享受した恩師は、日本で初めて職能資格制度を導入した人物である。学者ではなく現場のコンサルタント、名前は滝沢算織である。その初めての導入企業は、大阪の国光製鋼だ。導入の要素は若手社員の生活安定と意欲向上を裏付ける若年賃金引き上げの必要性があった。硬直した労働組合幹部(当時:全国金属)に支配されていた労働組合の存在する企業でこそ、職能資格制度とその賃金体系が、若手をはじめとした職業能力向上の意欲を裏付けるものとなった。ある意味、そういった労働組合の無かった企業は、如何なる着物の賃金体系を着ていても、中身が旧態依然であったことから職業能力は高いとは言えず、その産業全般の生産性も高くはなかった。しかしながら要は、それでも米ソ対立のおかげで日本経済は、のんびりと潤っていたのである。
その次に到来したのが、1980年代後半のバブル経済到来とその崩壊以後の、「拝金型賃金体系」なのである。日本人は、それまでの社会教育制度が不十分であったことから、社会人になってから学習することは少なかったのだが、拝金型賃金が日本国中で広がるとともに、学校を出てから学習や勉強をすることが全く無くなった。そして、気がついてみれば、大手企業やその系列の造る日本商品は相手にされず、日本の労働・職業能力は地に落ちる一方となっている。
よって結論、
だからこそ中堅・中小企業は職業能力を向上させれば、日本国内ならば同業他社との競争で浮かび上がれるし、その職業能力が海外販売(決して進出するだけではない)に結びついて行くことになるのだ。有能な者にとって、中堅・中小企業は活躍の場なのである。その最初の教育とは、次の類である、これなら日常で出来る。
http://netclerk.net/WebShomotsu/archives/248


§内閣府:税制調査会 タブーその2 「消費税」
消費税論議は、ヨーロッパが引き合いに出される。今回はドイツ19%の場合を考えてみる。前回のイギリス同様、ドイツの様々な社会制度・経済構造まで見ておく必要があるにも関わらず、マスコミも含め、やはり研究不足である。
消費税に相当する税金は、事実上免税品目、軽減税率7%、標準税率19%となっている。
☆免税品目:
教育費(大学まで学費は無料)郵便料金、住宅賃貸費、金融など。
学校の教科書・教材は無料、学校の共通カバン・制服・靴・体操服は無い。
医療費の自己負担ほぼ無く、医療保険で保障し…保険料は所得の14%弱(日本は10%ほど)、介護保険は1.7%(制度が違い計算不能)、出産も医療費扱+国の出産補助(中絶は少なく、シングルも生活も普通)。医療費の一部自己負担も総収入の2%を超えた額は戻ってくる。日本のように、医者と薬局を比べる必要は無い。
☆軽減税率:7%
食糧品、子供服、靴、公共輸送運賃、電気・水道代、家庭用燃料(石炭は非課税)、省エネ機器、住宅、チャイルドシート、書籍(立ち読み、座り読みが多く、その後に購入)、映画館等。
☆標準税率:19%
その他の品物。だが、外食費のレストランは19%だが立ち食いはテイクアウトとなり7%、DVDは19%だが映画館は7%。
☆ガソリン税:約60%(経済全般の流通・交通や公共輸送政策の違い)
……決定的違いは、ドイツの賃金は、国・地方政府が職種・水準ごとに決めている。(日本のように会社と本人の契約交渉では決めない)。現在の最低賃金は、日本円に換算すると、約1050円/時間である。なので、消費税の一律%では論議できない。
また、ドイツでは、リサイクル(ガラス瓶、ペットボトル、袋、靴、中古品は別売り=何度も使用すること)が庶民生活では定着しており、その分商品購入価格も安い。むしろ、電化製品、衣類、家具、自動車、中古住宅などは長持ちする商品が多く、中古品流通市場が発達している。日本のように多くの商品を新品に頼る社会ではないのだ。
物を大切にするからドイツのような税制になったのか、こういった税制なので物を大切にするのか、何れが先かは不明である。というよりも、そういった社会構造と消費構造をドイツは形成しているのである。すなわち、標準税率19%といっても、日本での商品購入を頭に浮かべての課税とは異なる。すなわち、よくよく考えてみると、一般庶民の生活に、消費税使用目的も含め、それほど消費税が影響を与えているようには考えられない。
……このように一歩踏み込んだ内容は、消費税論議の中では公表されない。内閣府:税制調査会も大手マスコミも、こういった海外の例を紹介することに意味があるにもかかわらず…。今年の4月から6月の政府経済指標で経済成長が確認されれば、10月の閣議決定を経て来年度からの消費税8%導入が図られるわけだが…。
(追加論議)
加えて、ドイツは旧マルク相場に比べユーロ相場によって外国為替が安く換算されるから、これによる利益は計り知れない。(そこで、イタリアやスペインなどの財政危機をドイツが救うのは当然との主張が浮上・存在している)。日本もだから「円安へ誘導…」との話だと、ただただ滑稽としか言いようが無い。為替相場は消費税導入の前提だし、そっちは経済政策だといって消費税導入とは別物の議論だと言い切るのは不自然である。