2018/03/06

第191号:正社員賃金削ぎ落としに頼る、経済政策の愚策

<コンテンツ>
裁量労働の拡大部分、全面削除の真相〈マスコミの報じない背景〉
  ★これは、「働き方改革」とされる賃金政策の柱であった。
  ★裁量労働拡大の風向きが変わったのは保守層から
  ★それは集計ミスなのか、もしや捏造データ
  ★__加藤厚生労働大臣の発言の録音編集__
     日本労働ペンクラブのインタビュー2017年12月22日
     …村岡なりに、簡単にコメント

〈ICT産業革命時代〉その転職と守秘義務、そして競業禁止
  【~まずは経済性や社会性の視点→その箇条書きが不能な概念】
  【こういった経済背景から考える、守秘義務そして競業禁止】
     ☆1.守秘義務の効果とは何か
     ☆2.競業禁止の効果とは何か
     ☆3.ましてイノベーション次元の世界となれば
  【本当の商品価値である固有価値は、歴史的に権力や世間体から非難される】
  【日本の司法判断はいかなるものか】
     ☆営業秘密としての守秘義務対象、判例によると、それは次の通りだ。
     ☆安全情報、個人情報、国家機密の扱いは
     ☆転職や競業の行為で問題になる行為者とは
     ☆ここに来て、公取委員会は副業や兼業を萎縮させる行為を禁止
     ☆Art域労働と、労働力だけの労働、その場合の異なること
  【具体的な場合の、退職・転職・採用に係る「守秘義務」概念とは?】
     ・転職やヘッドハンティングでの注意点は


§裁量労働の拡大部分、全面削除の真相〈マスコミの報じない背景)
これは、「働き方改革」とされる賃金政策の柱であった。
70年ぶりの改革と言われるものは、「賃金水準全体を下位に迎合させていく同一労働同一賃金」であることが判明した。それは後で述べる通り、2017年12月22日に労働大臣が、日本労働ペンクラブのインタビューに答えている。“同一労働同一賃金制度”を採用するとの名目で、その実は年功給や職能給の評価を厳格にして、社員の賃金を削ぎ落とそうとの政策表明だった。(後のコメントに録音文言掲載)
したがって、「裁量労働拡大の本当の目的」は、ドタバタの中
当面の正社員やホワイトカラーなど非正規労働には代替えできない労働者の、早急な賃金削減を進めるための柱であったと言わざるを得ない。どこをどう符合させてみても、そういった労働者の生産性とか効率性の向上につながる制度とはなっていなかった。
そしてその生産性向上の施策部分といえば、AI人工知能とか物理工学系技術革新(ことに経産省はこの部分だけをイノベーションと言っている)で、何とか成し遂げようとの話だ。労働の管理や労働の組み合わせとして能力開発、これとは別枠の話でしか聞こえないのである。今や日本は技術立国でも技術立国でもない。中国や韓国に抜かれてしまった国である。ただし、そういった国で活躍する労働者の中核や技能指導者は、日本の大手企業をリストラされた日本人である。

裁量労働拡大の風向きが変わったのは保守層から
次のような内容で詰め寄られたことによる。
『社会的な希望ビジョンと、悪用の法規制が必要ではないか。裁量労働は、夕刻5時までに仕事を止めさせる、事業場を退社させる。これだけのことを、裁量労働制に盛り込むことによって誰もが理想とする、働き方が実現することになる。これに賛同する労働者を募る、職業能力かなければ、自らを律することができない労働者には裁量はさせない。「裁量はさせない、裁量をしない」との、労働経済政策規制の法条文が、生産性の高い労働を醸成することとなる。この話の方が筋が通っている。
~この具体策は、裁量労働の生産性を劇的に引き上げ、夕食を家で家族と一緒に食べられて家庭が安定する。欧米は、大概の国がこの理想に向かって法律を整備している。有能人材が職場でリードすれば、一日の労働生産性は一挙に跳ね上がる。現場の実務をよく知っている人は、誰でもこんなことはすぐわかる。こんな事は、もう既に、小回りの利く中堅・中小企業では、行われていることなのだから。』
というものだ。
2月の下旬ごろからSNSで、こういった内容のものが発信され、マスコミの発信するSNSにも投稿されるようになった。一方で、野党とか反対運動を推し進める労働組合等からは、こういった着想の反論は示されることがなかった。非常に多くの若年中間層ホワイトカラーにとっては、夕刻5時までの退社は、理想ビジョンであった事は間違いない。
保守層からの詰めよりには、政府答弁を反論できない。
ところが、
裁量労働拡大の本当の目的」は公言するわけにはいかず、
その本音たるや、中堅・中小企業の経営者からすれば、心情的に受け入れられないものであった。それは、日本の中堅中小企業の圧倒的経営者は、大手企業からのスピンアウトをすることによって、経営者の報酬や労働条件そして積極的な事業経営を切望して、現在に至る人たちだからである。
加えて、
大手の裁量労働拡大によって、「大手よりも中小の社員が優遇されるのか!」といった優越的地位の濫用で、一気に発注価格の激安を狙っているとの不安が流れた。
ここに今回の___
“人気取りだけが本音の人たちによる「働き方改革」の瑕疵と弱点”が存在したわけである。
長年培われた経済学や労働経済などの学問的論理構成とは、今般の「働き方改革」は当初から無縁な実態でもあった。そのことは、学問的な結論が既に出てしまっている物事だから、いわゆる学者とか教授と言われる人たちが、無関心であったことにも表れている、実現性があるならば議論の先頭に立つのが常だから。
それは集計ミスなのか、もしや捏造データ
それに近いデータ の追求を追っていくと、
当初は、審議会に積み上げられた、「何らかの資料」として出された物だから、裏付け証拠にもならない代物だから、通例の審議会と労働政策起案には関係のないデータである。当初はそのように捉えられていた。もちろんそれは、英米流の客観的合理的思考であり、日本の教育体系で大量生産されている科学思想でもある。
(だからといってそれが正解とは限らない、客観的合理的といってもフランス流の科学思想もあるの家けれど)

ところがこれに反して、突然これを、重要な根拠として、官邸側が国会で突っ張ったものだから、行政機関における内紛が始まった。
【結局は、】
全体主義者は差配する者であったし、官僚は一枚岩ではなかった。権利や利害を守ろうとする頑強な社会層の抵抗に全体主義者は弱い。ちょっとした現実的物事や世論の反対にあうと、官僚業務の技術的基準が、全体主義者の政治的基準と衝突する。
……といった30年前に、哲学者クロード・ルフォール(フランス)が実証研究を行い、旧ソ連のスターリン主義を研究した全体主義の特徴と法則的理論的解明を行った通りの事態になっただけのことである。
http://dokushojin.com/article.html?i=1291

現に、厚労省が行った裁量労働に関する調査は、
ある日突然電話インタビューするような代物だった。それは急ぎ、数値調査専門の部隊ではなく、片手間に労働基準監督が行った様相のものだった。申告に基づく裁量労働の事業所調査で、ついでに極めて曖昧な行政監督指導がてらの話をつまみ食いしたものも存在する。
それは、「職員の反発を押し切って実行したきらい」の存在した調査だから、でっち上げとか誤字脱字は覚悟の上で実施それた。すなわち捏造は“未必の故意”と言われても当然の結末を自ら招来している調査方法だったのである。そもそも、こういった恣意的かつ杜撰な手法の調査を労働統計では戒めているし、こんなものを厚労省官僚主導で実施する訳がないのである。一般素人やマスコミ関係者には、突っ込まれる間隙はないだろうけれど、その道の専門家といわれる人たちにとっては、 一発で見透かせる代物だし、また相手にもされない調査なのである。
だから、
国会論戦では、ことさらデータミスの事例が、政変に使われただけである。そして、先にも述べたように、このデータミスが裁量勢労働拡大の「全文削除」につながったわけでは無い。主要な風向きは保守層の反発であった。くどいようだけれども、学問的には
【権利や利害を守ろうとする頑強な社会層の抵抗に全体主義者は弱い。ちょっとした現実的物事や世論の反対にあうと、官僚業務の技術的基準が、全体主義者の政治的基準と衝突する。】
といった部分を、
保守層から詰め寄られたことによる、番狂わせと見れば、すべてが妥当なのである。
__加藤厚生労働大臣の発言の録音編集__
日本労働ペンクラブのインタビュー2017年12月22日
(日本労働ペンクラブ会報No.194の引用)
───引用ここから───
非正規雇用で働く人の割合は全雇用者の40%弱だが、そのうちいわゆる不本意非正規は16%くらい。正規として働きたい人はそれが叶うように、例えば研修の場を設けるなど、正規で働ける道筋をしっかりと作っていく必要がある。他方、様々な制約条件があることから非正規での働き方を選んでいる人も多くいる。正規と非正規の待遇の格差は欧州に比べて大きいこともあり、不合理な格差を是正し、働く人が納得した中で多様な働き方を選択できるようにしていきたい。
元々、日本は職能給で欧州のような職務給ではないので同一労働同一賃金は難しいとの声があり、実は私たちもそう認識していたのだが、独、仏の実情を調べたところ必ずしも同じ仕事をしているから同じ賃金ということではなく、労働の質、勤続年数など様々なことを勘案して合理的かどうかの判断をしていることが分かってきた。
そうであれば、日本の雇用慣行の下でも同一労働同一賃金の考え方を取り入れることができると考えた。そういう考え方に立って①パートや派遺、有期雇用労働者にかかわりなく不合理な待遇差の是正を図ること、②待遇差に関する企業の説明義務、③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(ADR)を整備して労使紛争を解決することなどを内容とした法案要綱をまとめた。
───引用ここまで───

…村岡なりに、簡単にコメント
独、仏、いずれも今どき、戦前のような画一張った職務給を実施なんかしていない。またその概念は“同一価値労働同一賃金”であって、“価値”という2文字の熟語を抜いた概念では無い。そして、日本の職能給とか年功給に加味されている能力向上費用とその期待値は要素として欧州でも考慮されている。
欧州の賃金決定方法は個人対企業ではなく、その基本ルールは“労働組合:>対:<企業団体との交渉”による、行政区単位の細かい職種ごとの地域決定方式である。加えて、今般の「働き方改革」における雇用対策法の改正要綱では、日本の正社員給与に加味されてきた能力向上費用とその期待値の要素を賃金決定から削り取ろうということになっている。
すなわち、戦前のような画一張った職務給に復古しようという内容となっており、そのイメージは非正規社員の時間給なのである。それに、時間給が数千円にも及ぶ正規社員の存在と言うものは、ほぼ想定していないないようである。さらに、物事を混同させている部分は、大臣の言う①から③は、賃金の構成内容を解説しているものではなく(学問的分析解説の足跡もない)、国家が行政機関の官僚を使って、民間企業に対して如何に政府方針を定着させるかとの、運営方法に過ぎないことである。
戦後に先進国が進めてきた、「労働者を管理して教育することで経済成長を進める」。
といった考え方は、今般の「働き方改革」では一切口には出されていない。すなわち、この労働経済政策の転換が「70年ぶり」という話のポイントなのである。むしろ、「正規で働けるように研修の場を設ける」と言ってみたり、「さまざまな制約条件であることから非正規での働き方を選んでいる人も多くいる」としてみたりで、根本的な経済発展の基礎となる=「個々人の職業能力とその成長を身につけることで自由をその人が得れるようにすること」とは言っていない。そういった自由への道ではなくて、非正規なのか正規なのかの選択をすることに留まり、その人の納得(我慢や満足)を得るだけのことしか言っていないのだ。ここにその道筋の曖昧さがあり、経済発展の足かせとなる低生産性を規制する政策を見出していない。むしろ、合法的であるならば「低生産性企業と低賃金」を野放しにする=ダンピングは蔓延し放題というわけである。
要するに、歴史的な経済発展政策の土台の上に構想した考え方とは程遠い。むしろ、過去や現代にも行われている全体主義者らの、a.ナチスドイツがユダヤ人を捕まえて、収容所に送り込み、大手企業で無給で働かせた。b.ソ連が、政治犯の囚人を無給で働かせ公共インフラを建設、ノルマ未達者の食事は粗末な物しか与えなかった。c.北朝鮮が、刑務所や教育施設で、囚人などに海外輸出産品を作らせている。そのような歴史実態が存在しているが、
~結局は、こんなような物事を、ふと思い出してしまう全体主義者の経済構想なのだ。


〈ICT産業革命時代〉その転職と守秘義務、そして競業禁止
そして賃金切下げ、その次の段階は、「転職・競業」に関わる、事業のコア(核)となる人材の取り合いである。 中堅・中小の個別企業の大手企業からの人材引き抜き=ヘッドハンティングが将来を決めることとなる。その少し幸いなことには、厚労省と経産省の2019年度にも「転職サイト」立ち上げ連携、公正取引委員会は“過剰な秘密保持義務や競業避止義務”の濫用規制構想がこの2月15日に発表され、各省庁官僚の業務技術的基準で始まることとなった。そこでも、有能人材確保や転職に当たって過剰な「守秘義務」が、その障害になっている。
ちなみに、現状は、リストラの場合実は不合理さが現存する。
すなわち、整理解雇などの人員削減においては、「競業禁止」とか営業秘密の守秘義務は、リストラを行う企業側が問うことはない。もっぱら、中途退社の場合とか競合競業会社への転職の際に、守秘義務・競業禁止を必ず問い詰め誓約させる等に至っている。
それは経済や経営の側面からすれば何故なのか、
果たしてそれは、どの程度の積極的経済活動の足を引っ張っているのか。社会の経済発展を阻害していないか。オールジャパンと言われる日本企業連携の阻害していないのか。
これらを、 “転職と守秘義務そして協業競合禁止” を契機に検討してみる。
【~まずは経済性や社会性の視点.→その箇条書きが不能な概念】
事業の新規開拓とか新商品の事業化には、
まず最初に最初に、「コアの有能労働の力量確保」が必要である事は、2月の総務部メルマガ190号で述べたとおりである。
http://soumubu1.blogspot.jp/#190-02

───事業主自身あるいは現有人材が、直ちにその「コアの労働の力量」に転身する=ここに育つには膨大な時間と労力が掛かる。まして、それは周囲の経済環境と競合他社との関係で、その是非を判断しなければならない。
それは、市場経済と価値増殖の二面に渡っている。
①他社との市場確保の競争=市場経済である。
  従来の市場に→旧来の商品を隈なく提供
  従来の市場に→新しい商品を提供
  新しい市場に→旧来の商品を提供
  新しい市場に→新しい商品を提供 この4段階が成功要因順であり
 ……といった原則のもとに、 ICTとかAIを使って効率を上げる方法である。
②Art域労働を、質と量の両面で確保してクリエイティブな創造的芸術域に迫る「商品の価値増殖」、すなわち固有価値商品の開発・提供である。この部分が弱すぎるから、経済成長停滞や個別企業の頭打ち、ならびに“豊かさの喪失”といった現象がはびこるのである。
すなわちそれは、経済学者シューペンターを示したイノベーション何のである。その真髄は、次の論文の最終14ページに示した、「アート(技術)の有形無形の完成品」である。
http://www.soumubu.jp/koyukachi.pdf

ここに挙げた2つの方向を追求する上で、有能人材の確保が必要となるのである。
シビアな言い方をすれば、
(A)人材確保とは個別の事業の中で固有事業のために育てる場合と、
(B)外部で育った人材を、個別事業の固有事業のために、ヘッドハントとか採用募集をかける、
との、何れかの方法であり、(B)のヘッドハントとか採用募集の際に、転職前の他社の「守秘義務」が問題となるのである。

───ところで、ここで振り返って考えなければならない問題がある。それは、先程の
①の場合は、市場経済=「市場と分配」ばかりに重点を置いて展開をし、もっぱら、金融政策を進めた上での、その後の具体的な市場確保は、各々の個別企業間の競争に任せるばかりであった。それが国内需要への市場確保(国内企業間競争)から、次は海外市場への市場確保(国家間の競争)へと移っていったのである。
②の場合は、「商品価値の増殖」といった、労働力を超える労働能力全般を効果的に投入する手法を、“調達→製造→販売”に対して、各々の固有事業が独自展開をするものである。その特徴は、「労働力を内在する労働能力全般」を用いる。それのみならず、受給者側による価値増殖が行われるといった特徴がある。すなわち、「意欲・感動・希望」といった共感作用が、供給側と受給側の双方に生じることでの新たな展開となっている、個々に固有価値が生み出される。だからそこに「経済の豊かさ」といったものを感じ取る、=すなわち一方的物資の供給による→受動的満足感による福利とか厚生といった類の商品価値では無いこととなる。これが経済学商品論の城跡である、地域経済で生まれ(いわゆる内需の萌芽)→地域外に供給される商品展開(マーケティング)がなされ→その国内外の他地域に供給されることで事業展開が図られる、といった具合に表されている。
要するに、付加価値といった曖昧な表現をすることで、
①市場経済=「市場と分配」の面から見た経済の仕組みの、それとは異なった。
②「商品の価値増殖」といった個々の商品経済の仕組みとが、混同されてしまって、
といった具体的な企画立案が疎かにされてきた=盲目にされてきたという訳である。
1-それは、行動経済学に言う、厚生による満足に対する、幸福を求める不合理行動と重なり、
2-またそれは、まるで物理学の、古典的力学と量子力学(2012年に確立)が並行して語られるといったイメージである。まして時代はカオス理論(2008年に確立)といった、イメージ的には「東風が吹けば桶屋が儲かる」といった、=“ランダムな初期値さえわかれば古典的法則性での決定論的結末が判る”といった展開イメージである。
3-加えてそれは、それにたどり着く論理構成は、そこに至るプロセスの認識が必要で、とにかく、「売れている=固有価値商品」かどうかの判断と理解をすることができる職業能力を身に付けることが必要不可欠だということなのである。

───したがって、「継続は力なり」と言われる、長期の職業能力向上の必要性が出てくるわけだ。それは、経営者、労働者、委任契約者の何れの形態かは問わない。もっぱらそれは民法などの規定による社会制度によって、法律を道具にして、実態の八割方未満が枠組みされるっているに過ぎない。
とりわけ固有企業が、新しい時代に向けて固有価値商品を創出する場合には、民法などの規定から業務プランを形成するわけがない。むしろ、過去の亡霊的な業務に執着する場合にあって、過去に固執するために民法などの規定を武器としてしまうことになる。そこでの経済発展解決には、無法地帯を形成するといった新自由主義ではなく、新しい価値商品を形成する労働能力全般を保護する目的の規制、新しい自由を保護する規制こそが必要となるのだ。「口先では新しい価値商品、実のところは無法地帯」であっては、価値商品経済は後退ないしは破壊される。

───加えて、労働能力全般育成の基盤となる、労働者の教育育成に関しては、商品生誕地は全体をまとめた労働者教育を実施しないことには、個々単独の個別企業の内部事情から、どうしても教育内容が細分的知識へと収斂してしまう。それは個別企業の経営労力の割には合わないものだったり、長期にわたる有用性が認められないとか、不有用な秘密が多かったりするからである。
そういった弊害を、具体的に防止してきたものは、それは商品価値が地域的に醸成されるといった性格から→
a.労働が行われている地域での職業教育であったり、
b.様々な学術団体の活動による研究・職業教育による国などを単位とするものなどであった。
すなわち、少なくとも「労働力の取引において、その労働力の所有権を、使用者に譲渡する契約」を行っている労働者の職業能力に関する忠誠心も、そういった地域教育や学術団体に指向している。
それが、Art域労働から始まるクリエイティブ性ともなれば、その地域の数百年来の文化・地域や家庭での生い立ち・それを具体化するための学術教育といった要素などが増加わる。→そのイメージこそが、出身地などの出自とか宗教観(宗教団体では無い)といった、現状では曖昧かつ法則性のよく解らない帝王学そのものでもある。
【こういった経済背景から考える、守秘義務そして競業禁止】
☆1.守秘義務の効果とは何か
企業間競争が激烈な時代に、およそ同一の商品を供給するにあたっては、他企業との守秘義務が重要になるわけである。新しい市場に進出するとの積極的情熱であったとしても、(市場経済論に念頭を集中している場合は)その実、個別企業内の業務姿勢は受動的で非積極的である。ことに、企画立案計画と作業実行を分離して大規模に製造を行う場合は、労働者の労働力のみを必要としているだけで、個々人の労働力全般の発揮を不要としていることから=積極的・能動的といった労働姿勢での組織運営ではないのである。せいぜいエイイオーの精神論だ。
したがって、そういった企業は競合相手といっても、所詮は=同一産業や同一業者の間柄にあっても、互いの個別企業は、“同業他社と同じやり方”での競争を事実している。ただ単に、より低い労働力コストを優先させて競争する程度である。とにかく(経営者は自社の弱点にコンプレックスを持つ事はあっても)、似たり寄ったりなのである。だから所詮は、そういった企業秘密?と言われるものの「守秘義務」が重要な課題となってきたのだ。

☆2.競業禁止の効果とは何か
さらに、経済成長時期における企業乱立にあっては、似たり寄ったりの仕事を、より低い労働コストで行うとして、競合競業他社を設立してもらったら困るという訳である。だがそれは、親会社の重層下請け系列とか支配下にとどまる場合には、「競業禁止」は許されている。現在日本に進出してきている海外家電メーカーの技術者は、日本の家電メーカーをリストラされた人が多い。リストラを行って人員削減をしたい場合、「競業禁止」といったことは問わない。したがって、「競業禁止」を取り沙汰する場合は、中途退社の場合か、若しくはイジメ嫌がらせの対象者に限られているのが実情なのだ。だからここでも、他社との市場確保の競合=市場経済ばかりに囚われた、過去の亡霊ルールとなっているに過ぎない。

☆3.ましてイノベーション次元の世界となれば
よく社会を観察してみると、飲食とか商品加工、日常消費財小売には、元より守秘義務とか競合禁止といった概念すらない。家電や自動車とか住居などの耐久商品などは、守秘義務とか競合禁止がなくなりつつある。それは、ICT産業革命によるものであり、昔の“業界集団形成と統制そしてカルテル(価格協定)”といった行為は、刑事処分の対象となる時代である。むしろ、そういった守秘義務とか競合禁止の概念が崩れ去った状態で、その場合に具現化された物理的商品に限られた範囲は無料提供されつつあり、その代替として「意欲・感動・希望」の3つが一体となった文化システム(思考習慣)の固有価値に付随した物理的商品部材といった形(=こういう価値を媒体する部材)としての役割になっている。すなわち商品価値の主要な部分は文化システム(思考習慣)固有価値であり、商品を構成する各部材の価格でもなければ原材料とリンクした価格決定方式では無い。

【本当の商品価値である固有価値は、歴史的に権力や世間体から非難される】
ここでも、これを「付加価値は?」もどきと曖昧に表現するものだから、窃盗・詐欺・脅迫と消費者に混同されて揶揄されることになるのだ。
・メリハリをつけて固有価値商品を創造しないから、ただ働きさせられた、泥棒だと非難され
・メリハリをつけて固有価値商品を販売しないから、詐欺だ、脅迫だと決め付けられる。
江戸中期に近江商人は、上方の最先端文化商品を江戸日本橋では売れなかった反物を、上方への戻りに、今の埼玉あたりの庄屋に立ち寄り、そこの娘に試着させ、「お代は今度、来年でいいよ」と言って反物を提供した。→翌年集金に行くと、庄屋の娘のオヤジが出てきて、「あの反物はもらったもので買ったのではない」と言い張る始末だった。なんとかキチット話をして集金はできたが、長い間「近江商人は泥棒だ」と言われ続けている。滋賀・京都・大阪以外ではいまだ老人からそういった声が聞こえる。そもそも、そういった異なる文化を乗り越えて商品流通が行われるのである。もちろん近代法の司法判断は、近江商人の主張が認められているのである。
はてさて、そこで振り返ってみると、近江商人と庄屋の娘との間では、「一体となった意欲・感動・希望」である固有価値が反物を媒体として交換され、通貨交換の部分が翌年に延期されただけの事であったのだ。新しい時代を切り開く固有価値商品は通貨との同時決済が成されているわけでは無い。むしろ、一旦決済を先延ばしにしてでも、「売り手よし、買い手よし、世間よし」といったマニュアルの真髄(ここが資料や古文書からは読み取れない)が、経済機能として発揮されているのである、これは近江商人に限らず、5000年の歴史を持つベイルートなど世界の格段に優れた商業文化系統にあって口伝で地域教育がなされているようだ。
よって、その守秘義務もしくは競業禁止の社会経済的な合意が成り立っている論理構成とは、
①他社と代わり映えの無い労働力を集めた受け身的姿勢の商品を扱う企業と、
②積極的志向企業の、共に地域経済を通じ共有して・アクセスを取れるようにすることで個人や企業の成長とか資源や機会を得られると考える企業とでは、
守秘義務もしくは競業禁止に対する認識と対応措置が、あからさまに異なるのである。
【日本の司法判断はいかなるものか】
それは、多くの人たちの通念と異なり、とても枠が狭く厳格なものとなっている。
そればかりか、様々な裁判例が存在しており、極めて判然とした雲をつかむような概念だ。
裁判所が判決に用いる、「社会通念として」とは、=およそ「裁判官が思うところには…」と同じ意味なのである。また、判例とか裁判例は、法律条文だけでは判断できないから、ケースバイケースでの裁定をしたものにすぎない。だから判例などで重要な事柄は“判旨”であって結論では無い。こういった事は、一般人のほとんどが誤解をしているし、就業規則作成の専門家である社会保険労務士の養成にかかる、試験の資格や判断基準とは異なるから注意が必要だ。

営業秘密としての守秘義務対象、判例によると、それは次の通りだ。
 (昭和55年2月18日:最高裁:古河鉱業足尾事件)
①管理をされている秘密であること。
それは無造作であったり規則性がなかったり秘密だと特定されていない場合は守秘義務の対象にならないということである。すなわち、「会社で知り得た秘密を守ります」といったような誓約書だけなら、これでは秘密というもの自体が存在しない実情になるのである。会社のノウハウだとしても、管理されたドキュメントであるとか、“ノウハウbook”といったような形態が秘密たるものには必要である。もちろんその秘密保持の保管状況も問題となる。したがって、考えられるほとんどは、窃取・詐欺・強迫といった犯罪でも伴わない限り、厳格な管理が伴わないものは守秘義務の対象にならないのである。むしろ、守秘義務というよりもデータとか顧客名簿の持ち出し=窃盗と考えた方が妥当となる。ところが、この窃盗などの刑事事件は立証が厳格であることから、秘密の守秘対策としては使えるものでは無い。守秘義務と窃盗は、法律上全く意味が異なる。
②秘密の重要性、価値のあること。
ある企業内で、重要性とか価値があるといっても、それが社会通念として認められるかどうかは判らない。最も重要な“秘密の管理”と併せて、一般的には管理されたドキュメントであるとか“ノウハウbook”として重要性とかの価値が示されることが必要となる。すなわち、生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報として確立していることを要するのだ。
封建時代の師匠から弟子へと、仕草や口頭によってなされる秘儀といったものは、守秘に値する秘密かどうかは判断できない。現代社会では、また、その多くの職人的秘儀は秘密とされていないからである。また、面談とか電話で意思疎通をする、「ここだけの内緒の話」といったものも、客観的合理的に秘密の重要性や価値性が立証できるかどうか不明である。また“公序良俗”に反する事柄は、秘密として保護されるべき正当な利益があるとは言えないから、秘密の価値があることにはならない。
③公然のものでは無いこと。
インターネットやチラシに掲載されているものは公然のものである。会社が用意した従業員用の名刺は公然のものであって個人情報保護法の対象でもない。イメージとしては、公表もしくは公然となっている事柄は特許の対象では無いとされているイメージに類似している。したがって、転職にあたって、営業担当社員などが会社として収集した他社担当者などの名刺の紙自体は、会社の占有物(但し適切な管理を行っている場合のみ)ではあるが、その名刺に記載してあった内容については“公然のもの”だから守秘義務の対象では無い。例外としては、極めて隠密の行動で以って面談した際の名刺などが考えられるが、通常そんな場合に名刺交換などしない。
……加えてこれらは、公序良俗(近年は経済発展の阻害要因は対象とされているが)の観点からして、企業側の恣意的・やたらめったらの濫用といった根拠や行為は容認されない。

安全情報、個人情報、国家機密の扱いは
こういったものは、各々の法律で持って、企業活動にかかわりなく施行されるから、企業にかかる守秘義務とか企業が関与する対象とはならない。典型的なものは、マイナンバー制度であるが、企業には法的な権利義務は一切ないし、個人にとっては任意の制度である。企業などが個人番号収集すれば、その時点で初めて個人情報保護法が適用されるに至り、独自の安全措置が課せられ罰則を適用されるだけのことである。マイナンバーは個人情報の典型例であるが、その他の“人権や生活・生存権に関わる重要個人情報”と同じく、個人情報保護法による措置が取られるだけである。もちろん、安全・個人・国家といった用語を用いて、企業が恣意的な意図でもって守秘義務を課したとしても、法律判断としては無効として扱われる。
公益通報者保護法によって、内部告発者に対する解雇や減給その他不利益な取り扱いを無効とする行為、これは労働法のひとつとして位置づけられ、保護の対象は当該企業に従業する労働者のみである。これに基づいて、a.事業者内部、b.監督官庁や警察・検察等の取締り当局、c.その他外部(マスコミ・消費者団体等)に限って通報した事を保護対象としているが、その他対象の行為自体は全く守秘義務違反にはならない。その定める通報対象法律は、 法律にして464本(平成30年1月1日現在)及び法律及び政令に定めがある約400の法律違反行為が対象である。それは端的に言えば、保護法対象は自由・平等・基本的人権を擁護するための項目なのである。
〔通報対象となる法律一覧(464本)〕
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/subject/pdf/overview_subject_180104_0001.pdf

転職や競業の行為で問題になる行為者とは
営業秘密について先に説明したが、これを利用するための立場・能力・機会が重要となる。
すなわち
1.営業秘密の中枢に関わる者であること
2.それが保護に値する内容もう知っていた者であること
3.転職や競合行為について、規則で明示されていた者であること
……といった具合になる。
端的に言えば、営業秘密の中枢に関わっていなければ関係がない、またそれが営業秘密としての重要性や価値がないとなれば、競合会社への転職には何の差し障りもない。そして、競合行為の生ずる副業とか転職についての制限規定が、就業規則として周知されていなければ、秘密を持ち出したとしても、ノーカウントである。
ただし、その秘密を受け取った企業が活用する場合には、不正競争防止法の適応が、初めて、秘密を使用しようとする企業などに適用されるだけである。
〔なお、経済産業省の公表している考え方の内容は次の通り〕
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g91225a06j.pdf#search=%27%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E7%AB%B6%E4%BA%89%E9%98%B2%E6%AD%A2%E6%B3%95+%E5%96%B6%E6%A5%AD%E7%A7%98%E5%AF%86%27


ここに来て、公取委員会は副業や兼業を萎縮させる行為を禁止
平成30年2月15日に、公正取引委員会の有識者会議は、「フリーランス(労働契約法適用)」の形態を用いて、過剰な秘密保持義務や競業避止義務を濫用して、副業や兼業を萎縮させる事は経済活動や市場競争に悪影響を与えるものとした報告書を発表した。公取委は、従来から内々には運用していたタグ‘労働分野にも独禁法が適用される’ことを、今回初めて明確にしている。公正取引委員会は、行政機関ではあるが、行政裁判所の機能も併せ持ち合わせている。
〔人材と競争政策に関する検討会p.44〕
http://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index.files/180215jinzai01.pdf


Art域労働と、労働力だけの労働、その場合の異なること
Art域労働をはじめとしたクリエイティブ性、a.一般にいう芸術の範囲域を超えたプロデュースであるとか、b.様々な工夫と言われるクリエイティブ性の強い労働に対して、c.少し創意や工夫をした程度かもしれないけどArt域労働を発揮した労働では、その営業秘密あるいは競合先転職について、現在の法律は何ら労働者の制限も使用者の保護もしていない。
世界的に著作権法などといった法体系があるが、それは報酬や賃金決定要素でもなければ、営業秘密にかかわるものではない。
飲食店のシェフ、デザイナー、pop宣伝広告、などはその典型である。そして、コピーによって創造性が活性化する場合があることを、ファッション,レストラン,アメフト,コメディアン,マジシャン,フォント,データベース産業などでの、アメリカにおける、コピーが合法とされている産業の豊富なケーススタディを紹介した研究も発表されている。世界的に著作権法などといった法体系があるが、それは報酬や賃金決定要素でもなければ、営業秘密にかかわるものではない。
https://www.msz.co.jp/book/detail/07940.html

そういったArt域労働をはじめとしたクリエイティブ性は、
a.時間を蓄積して創りあげたとしても市場に組み込まなければ価値は実現しない。
b.さらに、その商品価値を「使って初めて活きる」ことで、
c.事業者や消費者が自律性を伴って活用・改善使用しなければ陳腐化するからである。
すなわち固有(商品)価値であり固有企業であるから細、その高度なクリエイティブ性の営業秘密とか競合相手といった概念とかその必要性はは発見できない、むしろ、少なくとも法令で規制することが経済発展にとっては障害になると認識されているのである。
したがって、もっぱら営業秘密とか競合先転職といった、その大概の要素は、
a.「労働力(労働全般能力では無い) 」の取引において、
b.「その労働力の所有権を、使用者に譲渡する契約」を行っている労働者に限定されて、
c.議論もしくは司法判断が出されている。
d.さらに労働に携わるとしても、法人の取締役といった経営者については、不正競争防止法での議論は多いものの、守秘義務とか競合先転職といった議論は極めて少ないのである。
【具体的な場合の、退職・転職・採用に係る「守秘義務」概念とは?】
それは、積極的成長を図るための、まず最初にコアの労働の力量確保する場合のことである。
その他一般の人手不足対策と言われるものには、実態として守秘義務とか競合先転職といった事は無縁である。およそ、退職した後に、同業他社への面接採用を申し込んでも、その多くの場合は敬遠されるだけである。ことに将来が有望な企業は積極的成長を図っているから、その保有企業たるべき、“調達→製造→販売”といった独自に考案している事業システムを、その人材たるべき人物の採用についても行っているのである。
次に掲げるような、誓約書などを実施していない企業であれば、それはほとんど企業秘密に関して無防備というものである。
〔機密および個人情報の守秘に関する誓約書=例示・著作権放棄ドキュメント〕
http://www.soumubu.jp/download/template/template2/sonota/shuhi-mynum.html

「業務上知り得た秘密」といったものでは、守秘義務や競合競業先転職にはなんらの効果もない。機密や秘密の具体性がなければ、全般的な誓約書規則は意味を持たない。ほとんどの弁護士事務所では、具体的な情報システムに沿った内容は、作成能力の持ち合わせがないことから、“ざる規則案”となっていることも否めない。

転職やヘッドハンティングでの注意点は
a.何事も合法的に行なうことであり、
b.経済性についての自由・平等、または司法判断=公序良俗に反しないことである。
~近視眼的になれば、司法判断での合法性さえあれば大丈夫と思いがちだが、そんな浅い思考習慣では、守秘義務や競業にまつわる、あまりにも判然とした司法判断の底流さえもつかむことはできない。
合法性だけを優先するから、対抗勢力や社会から非難されるのである。前述した、近江商人のマニュアル「……世間よし」がここに内在しているのである。
また、近視眼的・浅い思考習慣にとどまっている間は、そんな人物では、いわゆるヘッドハンティングの対象にもなり得ない。ヘッドハンティング対象者は、現に努める企業が手放す事は無いだろうし、その合間をくぐってヘッドハント会社のエージェントが活躍するのである。
したがって、このメルマガで前述したところの
①転職と守秘義務そして競業禁止につき、延々とした文章の底流をつかむこと
②自ら保持する“Art域労働と労働力商品”をそれぞれ具体的に分析すること
③それによって、転職元と転職先の比較検討、そして転職にあたっての能力付加
……といったものである。
本田技研を創業した、本田宗一郎は、町工場の時代から
「ここで勉強して、もっと良い会社に行くんだよ」といった趣旨のことを社員に話していた。
すなわち、積極的かつ成長企業というものは、日本においても
☆まず最初に、コアの労働の力量確保
→1‥その成果品のスピード取引
→2‥高度専門的な労働者をプール
→3‥商品のスムーズな流れ
→4‥能率的で営利的な生産過程
……といった労働能力や業務方針が徹底されていたということである。
☆積極的な企業は、価値を生み出す人材を地域から補給する戦略を取っているのである。
http://soumubu1.blogspot.jp/#190-08

そして、ここまで読んでいただいたあなたにも、
更なる職業能力の、資質と能力を身につけてもらいたいのである。