2003/06/10

第14号

 SARSの流行地域へ出張させるとなると労働法令ではどうなるのか。
 東京や大阪では危機管理セミナーが予定されているが組織管理や労務
 管理からの視点はほとんど無い。業務命令を聞かず出張拒否しても会
 社の懲戒処分は出来ない。使用者には安全配慮義務がある。無理無謀
 をして雇用者を流行地域へ行かせ感染したときは業務遂行性があって
 も労災保険がいったん適用されたとしても、不法行為となり損害賠償
 となる。現地へ行ってもらうには、雇用者の志願の形を取るしかない
 のである。さて社内SARS対策はと言えば「保健所へ電話してから
 病院へ」と聞かされても不安が増すばかりである。理屈よりも、社内
 で風評被害を防ぐには、「つば・鼻汁の体液感染」ルートや一般人が
 取り扱える消毒薬(80%エチルアルコール、イソジン、台所にあるハ
 イターの100倍水溶液の三つ)の使用法を特に会社が文書通知するなど
 して不安を取り去ることである。月額5万円、10万円とかのSARS
 手当だけの問題ではない。

 サービス残業解消に向け、6月と11月に労働基準監督署が重点監督月
 間を設ける。申告や監督歴などを優先して指導を強める。大手企業や
 管内の多人数事業所から着手される。厚生労働省が打ち出すからには
 産業界の内諾は既に取ってあるとのことであり雇用拡大・個人消費拡
 大にプラスになると判断するくらいのことは考えている。ところで、
 紛争調整委員会の労使紛争斡旋制度があるが、法違反を含んだ事案の
 斡旋そのものを拒否すると基準や安定の各署所へ通報が入り即調査に
 入る地方が出てきた。今国会での労働基準法の改正でも経営側の主張
 (解雇権など)は与野党で拒否され成立しようとしている。これが社
 会の流れのようだ。

 りそなショック。旧大和銀行は関西が基盤。マスコミが分からないか
 ら書かないことを一言。大阪地方では…資産がすべて担保に入って取
 られる物のない企業は借金返済額を10分の1とか20分の1に減額する。
 なぜなら、りそな国営銀行になったから。「上方商人」は「お金は物
 資を廻し物作りするための道具」にすぎないとの倫理観を持っている。
 借りたものは返せとのサラ金並みの屁理屈に対してもモラルハザード
 などとは意識していない。これが経済を優先する関西の事実である。
 関西では今年3月決算が税務申告とは裏腹に、前年対比30?40%減の
 会社がザラである。借金返済よりも日銭稼ぎの消耗品投資、「生活安
 定資金?対策」、経営指南役との付合い優先、と腹を決めた経営者ほ
 ど強いものはないのである。

 適格退職年金(要は優遇税制)廃止で401Kなどへの制度移行が保険
 会社や金融機関主導で進んでいる。社員とのトラブル多発である。こ
 の夏から秋は制度移行のセミナーがラッシュ。その業務に必要な人材
 (ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士が対象)の養成講座
 が現在頻繁に行われている。ところが退職金制度の不利益変更は「退
 職金倒産する!」と言っても、従業員に訴訟を起こされると100%会社
 は負ける。規制緩和の「5/30の政省令」でも最低保証額を軸として
 いる。労働債務は一般債務より優先されるので差し押さえも弁護士が
 気軽に行う。松下電産も5月21日に訴えられた。この不利益変更問題
 は誰もが避けて通っている。厚生労働省は国会答弁でも不利益変更は
 駄目と言っている。保険会社のN社やT社は「私どもは御社の就業規
 則又は退職金規程が先ず在りまして、それに見合った金融商品を、お
 選びいただくもの。支払義務、不利益変更、受取額目減りに関与いた
 しません」と口をそろえて言っている。今、個別企業が抱える焦点は
 退職金倒産。401Kは中小企業がほとんどの約300社が現在の導入企業
 数。N生命の当面の契約目標は250社とかで超低低位目標の水準。大手
 企業は財務帳簿作成目的に401Kを導入することが多いと言う。中堅・
 中小企業で、退職金問題を形のうえだけでも解決しようと思えば、あ
 る程度の条件を考えて、必ず裁判や団体交渉の以前の段階で、有能な
 代理人に依頼して「あっせん」(都道府県の紛争調整委員会)に持ち
 込むしかない。

 労務紛争解決機構。この4月に代理人制度を認める法改正がなされた
 ことから実態の上で裁判外の道が開けた。大阪本町で、あっせん代理
 人(都道府県の紛争調整委員会の代理人)の国家資格と教育終了した
 10人が、受付機関を5月7日に設置した。この機構はもっぱら経営側
 の紛争解決に乗り出す。国の機関である紛争調整委員会で、労働条件
 変更などあらゆる労務問題をあっせん解決する。裁判などの対決を避
 け、当初から「あっせん」で円満解決を目指すことで弁護士や裁判か
 らの区別をつけている。必要となれば代理人団を組む。関西文化特有
 の、裁判所の判決は軽視する、怒ったら恐い、話し合い解決が商習慣
 ならではの方法などからして、大阪では依頼も名称も口コミで急拡大。
 「社内と言えども感情問題があり当事者では無理」「代理人を通じ公
 的機関へ非公開で持ち込める」などと好評である。人間関係や業務ト
 ラブルなど法律外に事案も斡旋の対象となる。夏から秋にかけての、
 リストラ、賃金切り下げ、退職金凍結など労務紛争が多発することが
 予想され期待が寄せられている。URLはこの下をクリック。
   http://あっせん代理人.com/