2009/05/07

第85号

<コンテンツ>
経済悪化を示すデータが次々と出て来る。
連休明けから事件の多発!の兆候が出ている。
極めて厳しい?個別企業に共通する2点
大規模な貸し渋りの波が、5年以内にやってくる。
今の景気対策を専門的視点から見れば、
売れる現実・売れない現実
労働契約法の解説 就業規則違反の労働契約(第12条)
何が?いったい?基準に達しない?労働条件?


経済悪化を示すデータが次々と出て来る。
右肩上がりの統計資料に慣れているから、あまりにも急降下する実態が読み切れない。もとより、右肩上がり向けに作った統計資料であるから、額面通りに見てはいけない。医療・福祉関連、情報サービス、宿泊業・飲食サービスが、堅調といっても中身が中身だ。要するに、業種別にみるということ自体が、大変な誤りを引き起こすのである。右肩上がり向けの統計資料の Information では判断できない。
業界ごとに現場で起こっている Intelligence情報が重要だ。


連休明けから事件の多発!の兆候が出ている。
3月末の整理解雇などが事件化。個別企業の決算が進むにつれリストラを迫られる。この動きに銀行融資は促進圧力を掛ける。旧態依然の個別企業にリストラが必要で、整理解雇対象も旧態依然の人物に集中するのが当然だ。4月からの期待も、毎年5月には裏目に出ることも確か。
食い合いの様相は広がりつつあり、「チャンスがあれば貰っておこう!」との考えは浸透している。
事件やトラブルは、早期解決の道しか今はない。未然防止の資金が個別企業にない。裁判所とか公的機関への訴えは、事件から60日前後に集中、3ヵ月を過ぎることは無い。
ほとんどの専門家が旧態依然の現状、この人たちに対策は打てない。


極めて厳しい?個別企業に共通する2点
初歩的ミスが多く、これによる出費が多い。
打合せ・判断に時間がかかりすぎて、コストもかかればチャンスも失う。
さっさと手慣れた人たちに任せ、判らなければコンサルタントに聞けば良いが、そうしないから、体力消耗もしくは、致命傷を受けるケース(業態で異なる)が共通しているのだ。
不採算部門撤退、事業縮小、整理解雇など、早くしなければならない。
ズルズルと遅れてしまっては元も子もなくなる。所詮、ズルズルと波風を立てずに経営を行う能力は過去・旧態依然経営者の必須素質であった。右肩上がり成長時代の成功体験の「塊」だから、一挙に切り替えようというのは無理かもしれない。無理ならば、期限を決めれば割り切りもつくのだが、無期限延命の(成功体験)白昼夢を見るものだから、やがて、彼は行き倒れとなるのだ。
「早くする!」ことを活躍の柱と見て、現場のインテリジェンス情報を収集、それで以って個別企業の経営管理を行うことが重要である。だから、「解決に至るインテリジェンス情報」を収集できる人事総務部門が重要な役割を果たすのである。


大規模な貸し渋りの波が、5年以内にやってくる。
金融庁もその方向で動いている。メガバンクのみならず、地銀や信金までもが貸付資金を海外投資に回すからだ。その理由は、海外の運用利息なら5%以上を稼げるからだ。中堅中小企業に足がついていないメガバンクからすれば、銀行営業マンを回らせるなど、特に非効率・無駄と考えている。たとえ、メガバンク同士で貸し出し競争をするとなると、国内で5%の貸し付け利息など回収できるわけがない。加えて、大手銀行統合メガバンク誕生時代とは状況が激変をしていて、メガバンク3行とも世界における地位は急落した。三菱東京UFJでも第10位程度、何と同行の実質貸付可能額自体が15兆円ぐらいしかないという話も流れている。
「低利貸付金融資金がない+もとより貸付資金がない=大規模貸し渋り」
である。そうだからこそ、時代にあった事業内容への転換を進めるには、
「元金棚上げ:利息だけ払うといった覚悟」の資金繰り発想が不可欠となるのだ。
生きて事業継続!をするには、こうせざるを得ない経済状態を大恐慌と言わずに、一体?何と言うのか! 人々の気持ちの問題ではない!
経済を活発にするための貨幣マネーは、今や金融自己保身のために個別企業をつぶす。だから、心をこめて、精神をこめて、
「資金確保に万策を尽くすこと+(資金使用料の)利息のみ支払!」
をセットで進めることが重要なのだ。


今の景気対策を専門的視点から見れば、
まるで、“サラ金から金を無理矢理借りて、ビフテキを無理矢理食べる”ようなものだ。無理矢理食べるから後からツケが回る。あまりヘルシーでもないビフテキを食べれば、体力のないメタボになる可能性は高い。長くて成人病、早ければ突然死と、→ 死んでしまう可能性が高くなるのだ。日本国の事といっても他人事ではないが、マスコミの「景気対策話」に引きずられ、メタボになる個別企業も出るだろう。一説には、景気対策の真水は、半分程度といわれている。本来、景気対策は景気刺激策であって、真水を当てにするものではない。だが、選挙運動と絡んで、真水で生き返るのではないか??との錯覚を、マスコミが言い振らすものだから、昔から旧態依然の人たちは乗せられるのだ。
(一説によると)実態経済の3.7倍に膨らんだ信用経済。
これで成り立っていた信用経済が一挙に収縮しているのだ。風船は膨らませていないと経済発展は無いが、割れる前にシボませて、シボミすぎるとシワが出来るから、ちょっと(景気対策)空気を、またを入れて、また、シボませてである。
この金融危機は450年ぶりのシボミ様なのだ。


売れる現実・売れない現実
同じ業種でも、違いが出ると言われて久しいが、どうすれば良いかの答えは出てこない。筆者は、その分野の専門家ではないから断定は避けるが、大阪の街中飲食店ではこんな現象がある。売れる店は、値段は高いが本物を売って繁盛している。ここまでは昔の話。
もう一つは、若者向けに、安くてボリュームがあって、味がイマイチ?なのだが、ポイントは店で働く人が親切!であることで、大繁盛しているのだ。
すなわち、料理のプロ指向に徹する店と、飲食物販売指向に徹している店なのである。
ここでは、メリハリが大切で、それを支える労働力とその配置の問題である。
もう少し掘り下げた場合、経済活動や事業目的そのものを3つの側面から、整理し直すことが重要となる。

 ビジネス : 利益追求目的の事業 (粗利益率は30%以上)
 コミュニティ : 人間関係・生活関係重視事業 (NPO等利益目的が無)
 パブリック : おもに公共機関の事業 (事業採算は赤字を想定)

◇ビジネスは、
利益追求目的の事業であるのに、20%以下の粗利益しか出ない。それは、元来の事業計画が中途半端であるからビジネスとして行えないのである。この原因は、会社は利益追求!とか、ビジネスマン!などと、外形や形式だけで指向してしまうから失敗するのである。もちろんメリハリの利いた労働力とその配置はない。確かに、高度経済成長政策が終わるまで、日本政府が行って来たことは社会主義計画経済であった。だから、中途半端な事業でも抱えることができたのだ。

◇コミュニティは、
ビジネスとは異なる。問題は、利益率の低いビジネスとコミュニティの見分けがつかないことである。ビジネスにおいても環境問題、日本流社会的責任、日本流コンプライアンスを掲げるものだから間違うのだ。その見分け方法は、うたい文句を外して、運営制度の実態が人間関係や生活関係重視になっているか?である。ここは思い切って、病院、学校、街の衣・食・住関連商店は、NPOと考えた方が妥当である。共済保険事業の全労済は財源が豊からしいが、NPOに変わりは無い。
NPO=Non Profit Organization そのものである。

◇パブリックは、
税金などの徴収権と徴収システムとの抱き合わせが不可欠であるから民間企業にはできない。民間が行えば慈善事業等といわれる小規模なもの。過去に、公共事業にあって利益追求を行おうとしたものが企業局とか、利益追求型第三セクターと言われるものであった。社会主義計画経済では、これも便利な行政機関として抱え込めたが、今や経済体制が変われば、赤字の山が表面化するのは当たり前なのである。
時代の変化は、経営環境の変化である。

◇原理・原則ともいえる現代事業の3つの側面
から会社分析をはじめれば、大恐慌・大混乱の時代にあっても、物事も整理しやすく割り切りも早くできるのだ。メリハリの利いた労働力とその配置の社風が定着しないのも、ここに原因があったと思われる。
経済活動や事業目的がはっきりしていなかったから、→
「メリハリの利いた労働力が正直に発揮されない」ことになる。その中途半端な実態であるところに、→
金融と物資の動きのブレーキがかかるから、→
なおさら事業の原動力である労働力の扱いが極めて重要になる。
来年は、経済全体が今より落ちるのは間違いない。
そこで、あなたの活躍企業が今年で決まる。
早速、日本の個別企業に見切りをつけて、有能な若い労働力は我先にと、競争のやりがいのある海外へ流出している。



労働契約法の解説 就業規則違反の労働契約(第12条)
第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

労働基準法93条の就業規則の最低基準無効規定を移行させたものである。
従前の労働基準法第93条は、この条文とまったく同じものが定められていた。労働契約法の成立(平成19年11月28日)とともに、労働基準法第93条は、(労働契約との関係)「労働契約と就業規則との関係については、労働契約法(平成19年法律第128号)第12条の定めるところによる。」と改められたのである。
成果主義賃金、複線型個人別人事、労働時間の個別的管理、企業間異動(出向、事業譲渡、会社分割)、転職者の職業能力キャリア評価、労務提供義務内容の個別的合意、年俸制社員、執行役員制度、期間契約、派遣労働者契約、請負労働その他様々な方式・形式の個別的労働契約が増加していることから、就業規則を下回ることに気がつかないうちに労働契約を結んでしまっていることも多い。

★「基準に達しない労働条件を定める労働契約」とは、
就業規則に定める労働時間よりも長い労働時間とか、就業規則に定められた賃金より低い賃金、就業規則に定める労働時間と異なる特約労働時間が定められていない、就業規則に定める時間外手当を支払わない賃金制度(疑似:年俸制)などがこれに該当する。よく外資企業に見られるアンフェアー・トリートメントもそうだ。もちろん、就業規則は労動基準法をクリアしていなければならない。

★「その部分について無効とする。」とは、
その部分外は有効とするもので、その部分が無効だからといって、労働契約全体の効力を消滅などさせるものではない。すべて解除ではない。

★「無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」とは、
無効となった部分を就業規則の規定に従って、労使の権利義務関係を改めて定めることを意味する。すぐさま労動基準法を適用するのではない。(大星ビル管理事件:最高裁平成14年2月28日)賃金の時効は2年、退職金は5年だ。


何が?いったい?基準に達しない?労働条件?
なのか。これを事例知識だけでバラバラに考えれば考えるほど、分からなくなってしまうのは自然だ。その場合の決め手は、
「私的自治の原則及び労働条件対等決定の原則」
である。この決め手(チェックポイント)が備わっていなければ、必ずと言っていいほど基準に達しないのである。そうでない場合も、民法上効力のない契約となっているとか、外形上は整っているが別目的の形骸契約であるのだ。

◇私的自治とは、
「契約の自由」とともに「自らに統治義務」あることを合わせ持つと考えればよく分かる。すなわち、契約当事者は自由に契約すると同時に契約を守らなければならず、部下にも守らせなければならないとなるのである。例えば、派遣先が事前面接・採用決定・指名解雇を行ない、何かトラブルが発生すると派遣労働者であるとして取り合わないというケースは、本質は労働者供給、外形は労働者派遣といった別目的の形骸契約であるが、労働契約の実態は派遣先にあるが雇用責任はとらないというように私的自治の原則に反するのである。たとえ、パナソニック系列、トヨタ系列、三菱電機名古屋でもやっていたとしても、ただの人事総務部門の初歩的ミスなのである。

◇労働条件対等決定とは、
労働者の生活や権利義務の情報量の少なさを考慮せずに、実態として会社の言いなりで契約を結んでしまうことが対等決定ではないと言っているのだ。この対等の概念は時代によって異なる。今の時代、苦痛や精神的圧迫を伴って就業規則を下回る労働契約が結ばれることはない。楽しい美味しい話に乗せられて労働契約をしてしまったときで、錯誤であったり・公序良俗に反している場合には、契約は無効とされるが、もちろん対等決定の原則から外れていたのである。最初に労働契約を結ぶ時点が過ぎてから精神的圧迫をかけられ、労働契約変更が対等決定できない場合も原則から外れる。例えば、生活サイクルに合った短時間とうたっていても、週の労働時間に特約はなく、店長が一方的に決め、店長に嫌われると労働時間が減らされるケースなどは原則から外れる典型である。ここで登場するのが第12条である。労働時間の定めがなければ基本的には週40労働時間、その下回った時間数についても時間給の支払義務が生ずることになるわけで、「それはトンでもない!」といっても、労働契約を破棄はできなくなっている。
現代は、労使双方いずれも、「私的自治の原則及び労働条件対等決定の原則」を守らなかった側が損をする仕組みになっている。自由平等の社会共同体を維持することに、現在の法は目的をおいているから、これが、
「法を知らないあなたが悪い!」と、
あっさり冷たく言われてしまう由縁なのである。確かに法令違反を、していないかもしれないが、この二原則(コンプライアンス)に反していては、元(管理)も子(利益)もないのである。