2004/12/07

第32号

 いくつかの経済指標を良い方向に支えてきた要因が崩れてきた。中国
 経済の見通しやデジタル家電の動きである。今までは、少々中途半端
 でも、中国経済やデジタルなどの支えが働き、まだ何とかなっていた
 傾向があった。この支えが機能しなくなって、いよいよ、年末から年
 度末にかけ、大手・中小・零細企業に至るまで、組織主義から機能主
 義への経営管理の転換を余儀なくされる。
 ところで世間は、この秋からは卸小売業をはじめとして、経営管理の
 機能が発揮されない限り、賞与をはじめとして人件費を直接削減せざ
 るを得ない状況である。世界に向けて、高付加価値商品や高水準サー
 ビスを提供していくとしても、国内の個人消費の低迷は、とても痛い。
 それも1400兆円といわれる貯蓄?を狙って、イタリアなどの外資系が
 国内の個人消費支出の中で幅を広げ、有能な外国商売人が日本にやっ
 て来ている始末である。
 大手都市銀行の不良債権処理計画と再編は目標達成をほぼ果たし終了
 段階を迎えた。地方銀行や信用金庫などは最後の仕上げに、これから
 入っていくのである。不良債権処理をしなければ破たんさせられるか
 大手都市銀行の下請銀行にならざるを得ないから、各銀行も必死であ
 る。地銀の中で、「比率」をクリアしている銀行の存在であるが、も
 ちろん首都圏は全滅、全国を見ても関西の三行だけとの情報が流れて
 いる。来年3月末の不良債権処理期限まで、これらの要因が個別企業
 を襲ってきているのである。
 ではあっても、昔とは違って、機能主義の路線を選んだ個別事業には、
 すぐさま豊かさが享受されるようになった。「世の中、損する者が居
 れば、得する者も居る」などとの、非経済学的な迷信は通用しなくな
 りつつある社会である。

 組織主義から機能主義へと、個別企業の経営管理のあり方が再編成さ
 れる時代であるからこそ、個別の労使紛争が急増しているのである。
 確かに、社会秩序と労働市場の再編成の引き金は、税制上の退職金引
 き当て制度の廃止、適格年金の崩壊、公的年金等の不透明な社会保障
 制度が引き金を引いてしまった。個別企業にとっては、経済再生の要
 である高付加価値商品や高水準サービスを提供していく上で、社員の
 労働意欲低下と企業内秩序の崩壊は致命的な障害となる。
 11月10日、2年ほど前の事件で、札幌地方裁判所は「笑顔がない」こ
 とを理由に27歳の女性介護職員を退職させた病院に対して、解雇無効
 と約2年間の賃金及び25万円の慰謝料の支払いを命じた。組織主義で
 あれば病院の主張する「笑顔」も必要だったかもしれない。航空会社
 の客室乗務員の笑顔のように機能重視であれば、まったく別の対応と
 なったであろう。組織主義においては、社員を組織周囲の人間関係に
 はめ込み、はめ込みきれないので排除した途端に訴訟や監督署に走ら
 れてしまって、「切った張った」の対決にならざるを得なかった。だ
 から、社員は労働組合などの組織を通じて対抗したのである。国の機
 関で独立行政法人に移行し民間事業となるや、労働組合員加入者が増
 えているとのことで、いまだにこの傾向は存在しているのだ。
 業務や経営を機能主義へと転換させたならば、トラブルや紛争を人間
 関係の破壊に至らせないようにしなければならない。この場合の人間
 関係とは業務指示系統機能であり、コミュニケーションであり、ボト
 ムアップであり、労働意欲の向上をコントロールすることである。こ
 れが「物事を経済学的に進める」ということである。この指向性は、
 北欧を筆頭に、イギリス、ドイツの経済回復で実証されている。今注
 目されている紛争調整委員会のあっせん制度は、裁判等のような「対
 決的紛争処理」ではないこともあって、機能主義の時代に対応した国
 家の用意した紛争調整の制度なのである。同一事案を労使のいずれか
 らあっせんの申請をしても、その目的や機能を期待できる。旧来は中
 間管理職とか人事担当者が行っていたトラブル調整を「あっせん代理
 人」にアウトソーシングすることもできるのである。

 「労働紛争のあっせんを持ちかけられたら、どうすればいいか」の経
 営者人事担当者向けの記事が、日本実業出版社発行の企業実務誌12月
 号に載りました。著作は弊社代表取締役の村岡利幸です。制度の概要
 ではなく、あっせんをどう活用すればよいのかについてまとめました。
 A4判4ページ建ての記事です。必要な方には、見本の白焼きコピー
 をお送りします。ただし、お送りするについては、電子データになっ
 ていませんから、事務方の手間がかかりますので、次の通りの費用を
 お願いいたします。
 [注文方法]
 見本の白焼きコピーを1枚……返信用封筒と80円切手2枚を送付。
 [送り先]
 540-0022 大阪市中央区糸屋町2?1?6 株式会社総務部コピー係

 定年が国家の強制で引き上げ。
 平成18年4月から62歳、19年4月から63歳、22年4月から64歳、25年
 4月から65歳と段階的に、個別企業の定年が引き上げられることにな
 った。平成19年から団塊の世代が60歳定年を迎える「2007年問題」に
 対して、年金受給開始時期とのズレにあわせての国家的危機の回避策
 そのものである。
 ただし、労使協定でもって合意基準を設定すれば、ある程度社員の中
 で、能力の低いものは定年等の延長から除外することができるように
 なっている。これらは正当かつ合法的な手続きを行った上でのことで
 あり、何も決めなければ全員を定年延長しなければならない。就業規
 則などで定年を定めなければ当該本人が死亡するまで雇用義務が発生
 することと同じ理屈である。
 対象者選定の基準となるわけであるが、恣意的に雇用排除しようとか
 法律や公序良俗に反するものは認められない。(1)意欲、能力等をで
 きる限り具体的に測るものであること(具体性)、(2)必要とされる
 能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができる
 ものであること(客観性)?が必要となった。「社内技能検定レベル
 Aレベル」「営業経験が豊富な者(全国の営業所を3カ所以上経験)」
 「勤務評定が開示されている前提で、過去3年間の評定がC以上(平
 均以上)のもの」などが例示されている。反対に「会社が必要と認め
 た者」「上司の推せん」「男性」などはまったく認められない。
 厚生労働省は、高年齢者雇用確保措置に関して質問の多かった事項に
 ついて見解を示したQ&Aを公表している。
  http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/

 労働組合法が、55年ぶりに改正された。労働組合が無いからといって、
 安心してはいけない。コミュニティユニオンといって、社員個人単位
 で入れる組合が全国各地に存在するので、個別企業で労働組合を結成
 しなくても、一個人が労働組合事務所に寄って加入申込をすれば、そ
 の個別企業に労働組合が存在することになるのである。
 すると、会社側が、労働組合員や労働組合団体に対して、行ってはな
 らない行為がある。組合員だからといって差別をするとか、団体交渉
 を拒否するとか、正当な組合活動妨害するとか、組合をやめさせよう
 とすること等である。これらの行為を「不当労働行為」という。労働
 組合活動には、面会強要罪や不退去罪などでの刑事免責とサボタージ
 ュやストライキ損害賠償での民事免責があり、この範囲での自力救済
 権を持っている。この自力救済行為が正当な労働組合活動に該当する
 ため、これに対抗した会社の行為が不当労働行為かどうかの「審査と
 労働組合救済」が行われるのである。救済内容では原状回復のみなら
 ず、解決金(ペナルティー)や1文字5センチ角の謝罪文を会社門前
 に掲示することも命令される。
 この審査と救済が、今までは、期限も決めずに、ノンベンだらりと行
 われてきた。それが今回の改正で、あらかじめ「テキパキと」審査の
 進行や救済される場合の時期が計画されることとなったのである。審
 査にあたる中心の公益委員を常勤させることができるようになった。
 職権により証人や証拠の提出命令が可能となり、拒否すれば訴訟の際
 の追加や「後出し」証拠は出せなくなった。
 複雑な不当労働行為事案以外は早期審査となるため、労働組合とって
 は非常に有利に働く。会社側の明確な不当労働行為は、次々と即座に
 排除される。おまけに、従来から不当労働行為事件を扱える経営側の
 有能な弁護士は非常に数が少ないので、最低限300万円(三百)の着手
 金を用意しないと、労働側の弁護士に論述で負けてしまう。労働側の
 弁護士は、東大や京大法学部の現役司法試験パス組の宝庫であり、日
 本労働弁護団その他を形成して日常的に切磋琢磨しているから、頭脳
 の有能さでは負けるのである。
 なお、今まで地方労働委員会と言っていたが、改正により、「都道府
 県労働委員会」に名称が変わります。施行は、来年1月1日から。

 来年1月のメルマガ発行は、平成17年1月11日にさせていただきます。
 年の初めの「税務と労務」は掲載しておきました。明るく良い年を迎
 えください。

2004/11/09

第31号

 労働基準法の関係書式の便利なWEBが見つかりました。群馬労働局
 のものです。法定様式は便利です。参考書式は適用できない場合もあ
 りますから、よく検討してからにしてください。今しばらく様子を見
 てから当社のダウンロードページにリンクしたいと思っています。そ
 れまでは、このURLを「お気に入り」にどうぞ。
 http://www.gunmaroudoukyoku.go.jp/youshiki/yousiki01.html

 会社側からの申請が急増している紛争調整委員会への「あっせん制度
 を活用した労使トラブル解決法」の解説論文を私ども株式会社総務部
 の代表村岡利幸が発表しました。日本法令発行のビジネスガイド誌11
 月号。この雑誌のPRの意味も込め「お分け」出来そうですから、ご
 希望の方は気軽に、お申し込みください。
 mail@soumubu.jp

 業務請負と人材派遣、活用する上でどこが違うのか。
 人材派遣とは人材を時間単位でレンタルすること。業務請負は発注し
 た業務の完成を期待して注文すること。これが職業安定法や労働者派
 遣法での区別である。人材派遣を偽装して業務請負している場合があ
 ることから、労働組合からは「請負労働」と暗いイメージを名付けら
 れた。
 ところで、どちらが経済的に有効なのかは、一般的に論じられていな
 い。昭和61年に「業務請負」の形態と名称が開発されたときから、こ
 の重要なノウハウは持っていた。それは、労働力需給は地域ごとに発
 生することが多く、業務請負会社が地域ごとにカバーをすることで、
 製造業者と地元労働者の役に立つとの存在意義である。(大阪で当社
 のメンバーが、このときの企画立案を行った)。すなわち、採用募集
 の経費と手間が不要となり、労働者には解雇や雇用の切れ目の不安が
 無くなるから、業務請負が一挙に地元から支持され急成長と高い利益
 をあげたのである。人材派遣を偽装した場合には募集の無駄なコスト
 がかさむだけでなく労働者の質が低下傾向になる。業務請負で働く労
 働者の形態はフリーターで占められている。からといっても地元に地
 に足が着いているので質は低下しない。たしかに、業務請負で働く人
 材は高熟練技能者とまではいかないが比較的質は高いものである。多
 量のパートタイマー採用の場合には25%ほど増量して雇用しなければ
 ラインを回すことができない実態からすると労働者の質が大切なので
 ある。業務請負は実に「派遣と請負の区分」の当時の労働大臣告示か
 ら生まれたニュービジネスであって、利益の源泉は職業安定所が手を
 つけられない地元企業間の細かい密着の労働力需給システムにあった
 のである。あげくは人材派遣を偽装した業務形態であれば、労働力の
 質が低下しコスト増加傾向を招き、不採算業者ゆえに悪事にも手を染
 めざるを得ないのである。
 この3月の解禁によって製造業の人材派遣が増加したが、それは法律
 違反の危険を回避するために偽装業者が派遣に切り替えたものが大半
 である。人材派遣なので労働者の社会保険加入が必要条件となるが、
 増加する社会保険料を発注会社が負担したケースはほんの一部である。
 派遣法違反の危険がない業務請負の場合、人材派遣と比べて現実に人
 件費コストは安く、それは事実上、社会保険料の労使負担分約22%が
 該当する。社会保険事務所は保険収支の不採算となるフリーター低賃
 金労働者を健康保険や厚生年金に加入させようとしない。業務請負会
 社に対して社会保険事務所の調査はほとんどなく、実施しても「ザル」
 どころではなく「そこの抜けた桶」そのものである。政府の社会保障
 政策の大転換がない限り、この社会保険事務所の取り扱い実態は変わ
 らないから、許されるかどうかは別として、業務請負会社と付き合う
 方が本来の利益システム以上に経済効果が存在するのである。また、
 総務省はパートやフリーターに対する住民税課税を2007年になってか
 ら強化するための地方税法改正の方針を発表したので、所得税と雇用
 保険が関係するだけである。
 結局、急場しのぎやゴマカシの労働力需給管理では、製造業は成り立
 たないのである。

 一部の製造現場では、現場ヒアリングを軽視してまでも、人材派遣や
 業務請負の利用で以って人件費を削減した。それにより「ベテラン労
 働者」を排除してしまった。ために、安全衛生確保に必要な知識や技
 術などのノウハウ(現場力)が組織的に欠落(現場力の低下との指摘)
 し、現場での事故を多発させたとの指摘は、論議すればするほど多く
 の人が認める内容である。どんな仕事においても事故や過失は予想以
 上の損害をもたらすのである。こんな事が分かっていても、「ハゲタ
 カ」ファンドと「ハイエナ」ファンドが関係する個別企業で、このよ
 うな現象がよく見られるのは、単なる気のせいではなさそうだ。

 東京の日本商工会議所の事務所職員に対してのサービス残業が指摘さ
 れた。ご存知の通り、日本商工会議所は厚生労働省の労働政策審議会
 などで政策提言や意見を述べている団体である。監督官は解雇に関す
 る就業規則の変更届や衛生管理者を設置していないことについても指
 摘した。手抜かりではなく姿勢の問題だとして、率先して法律を守ら
 なければならない団体でのサービス残業がゆえに社会の批判も厳しい。
 日本は世界に向けて、高付加価値製品と高水準サービス商品で、経済
 成長を図ろうと政府も財界も機運を盛り上げ、アジア経済戦争に負け
 た分をとり返そうと個別企業で頑張っているさなかの出来事である。
 「地域経済の足を引っ張っている原因は商工会議所だ」と極端な意見
 も出ているさなか、それを裏付ける様な事件である。

 テレビなどで年収300万円時代が来ると話題になっている。確かに、
 正規労働者の年収は減少し続けている。特に若年者は昔に比べて物価
 スライド後の賃金額が極端に少ない構造になってしまった。この6年
 ほどの間に、正規労働者は171万人減り非正規労働者は260万人増えた。
 中小企業に働く人たちの(企業規模29人以下の労働者)は民間労働者
 の46%を占めるが、年収300万円以下が半数を占めている。長期パート
 は年収が150万円前後、契約派遣は年収が200万円前後との報告もある。
 中小企業経営者の所得は年収300万円以下が5割を超えそのうちの60歳
 以上では7割を超えている(03年の「中小企業白書」)。一般の雇用
 統計に出てこない取締役400万人は、そのほとんどが中小企業経営者で、
 正規社員3400万人と比べ約10人に1人が、会社役員という不思議な現
 象となっている。
 失業者の半数は雇用保険の失業手当が切れているとの指摘がある。国
 民年金収入は平均5万円で無年金者も増大。生活保護者は139万人、
 自己破産者24万人、自殺者は3万4千人、ホームレスが2万4千人、
 刑法犯は369万件などと過去になく「貧困化」を現わす数値が高くなっ
 て来ているのである。
 ここまでも個人購買力が低下をしてしまい、経済構造も変わらないの
 で、この傾向が日本経済の打撃となって、この秋を迎えている。
 なげいていても、不満を言っていても仕方がないので、根本的に脱出
 する意味から、日本経済は世界に向けて、高付加価値製品と高水準サ
 ービス商品で進出を計ることが大切だ。地方企業であっても、中小企
 業であっても、これで将来が開けてくる。語学や貿易の知識は必要で
 はない。この道を選んだ者だけが既に享受している豊かさである。い
 つまでも海外ブランドに、日本人の貯金を持っていかれることも無い
 のだ。

2004/10/05

第30号

 来年3月末の不良債権処理計画期限まで、六ヵ月を切った。金融庁は
 地方銀行や信用金庫に手を付けてきたので、その面から中堅中小企業
 のリストラや企業再編が本格的になってきた。事業自体の赤字企業は
 相手にされず、支払い予定額(たとえば退職金債務)や借入金のバラ
 ンス超過にまでチェックが、融資条件に入ってきた。これをキッカケ
 に大手中小を問わず、旧態依然の社会や世間体にあぐらをかいてきた
 個別企業は激烈なリストラか事業廃止を迫られることとなった。
 ここで日本再生に向けての「高付加価値商品」または「高水準サービ
 ス商品」を提供できる事業体制を作り上げるための総務部門の役割は
 きわめて正念場である。営業や製造その他部門の活躍が大切と一般論
 では言われるが、これを現実に各部門の力を発揮させて、足を引っ張
 り合わないよう社内をまとめるのは、総務部門だけが組織的に行なえ
 るのである。

 「退職金が支払えない!」。ほとんどの企業が頭を悩ましている。景
 気の良い時に節税対策だと言われて、退職金規定を作り退職金引当金
 を水増ししたのだからなおさらである。そこへ、金融機関の貸し出し
 条件に、労働債務(とくに退職金規定と支払い資金)の縮小までがチ
 ェック項目に入ってきたから、ここにきて退職金問題に急に火がつい
 た。適格年金などを取り扱う金融機関や生保は「さぁ?。大蔵省が認
 めた?ものだから?大丈夫?なのでは…退職金規定で払うと決めたの
 は、お宅の会社でしょ」と、制度加入の時とは裏腹に200%の逃げの
 姿勢である。「退職金の廃止だ、減額だ」との労働条件不利益変更は
 とても厄介なもので、定年退職(解雇)と重なり、危険は少なくとも、
 法律上の手続きと社員との合意努力がなされていない場合は5年の間
 は訴訟されれば5%の利息付で敗訴する。労働者側の弁護士費用を支
 払えとの判決も珍しくない。秘密のうちに退職金規定を変更しておい
 ても周知した事実がないので、もとより変更は無効となる。社員から
 退職金廃止の同意書を取り付けても全面無効である。労働基準法や判
 例に則っていなければ、紛争調整委員会の「あっせん」を申請しても
 門前払いとなる。退職金を払う一時金がないとのことで、それに見合
 った継続雇用で難局を乗り切る方法があるが、労働意欲を低下させな
 い合意形成が非常に難しいのである。退職金資金が危なくなる2年前
 の対策が必要であるが、今からでも「あっせん代理人」にアドバイス
 を受けるのが良い。あと3年で、団塊の世代の大量の退職者が出るな
 どの2007年問題と言われているが、一件の裁判が個別企業においては
 全員に響き激震を起す。退職金訴訟は部長クラスの退職者に集中して
 いることに注意が必要である

 人事や総務部が、驚き弱ってしまうセクハラ事例。次の事例は、最近、
 紛争調整委員会の「あっせん」に持ち込まれたケース。あっせん代理
 人が付くことで裁判よりも気軽に持ち込まれるのだが、自分の会社で
 こんなことをする社員がいるかと思えば、今までのセクハラ対策は、
 いったい何だったのかと落胆してしまう。そこには、悪質セクハラの
 加害者の多くが高学歴であり有名大手企業などの安定した地位の男性
 であるとの特徴がある。「まさか、あの人に限って」の人物なのであ
 る。
 ・寄ってたかって触り放題の乱チキパーティーを強要し、それを右斜
  め前で見ぬ振りをする上司二人。ソフト開発業。
 ・十数年にわたり職場妻をしつこく迫り、被害者が精神疾患となれば
  自己都合退職を強要。社会福祉法人。
 ・50歳過ぎたおばさんにお恵みをと、みんなの前で1円玉を投げつけ
  る親会社の出向社員。
 ・派遣先の上司に仕事で呼びつけられ、車に軟禁、ラブホ未遂、水を
  飲ませずケーキを詰め込み、駅にポイされて、会社の誰もが知らん
  振り。
 ・セクハラ相談したところ、警察への通報や損害賠償請求は致しませ
  んとの確認書を書くように強要した人事部。大手派遣会社。
 ・セクハラ被害者を無視、加害者男性を昇格させる、会計事務所の所
  長。
 ・普段はエロいやみ、飲めば女の服をはぐ、「そういうキャラなおま
  えが悪いんよ」とうそぶく、フィギア系の強面店長。外食チェーン。
 加害者の責任はもちろんである。人事・総務部門が本当に困ってしま
 うのは、セクハラ発生後に現地の管理責任が果たされていないことだ。
 よって、問題はこじれ、憎悪が募り、自殺未遂が生じ、そのすべてが
 会社の責任になることである。現地の下部組織で中間管理者も含めて
 事件が隠されているため、あっせん開始通知が来た人事総務部門では
 寝耳に水なのである。表面的セクハラ対策だけでは高学歴者のセクハ
 ラは地下に潜ってしまいがちなのである。

 black-humor???
 「こうすれば儲かる!社会保険事務所の営業???」
 ・標準報酬月額の全国平均より給与の高い企業単位では強制適用と法
  律を振りかざして保険に入れる。
 ・平均より給与の低い事業所は、難癖をつけて社会保険に入れない。
  …出費が多くなるから。
 ・保険料が未納になるようなら、数十人以下の事業所は、さっさと社
  会保険をやめさせる。
 ・倒産会社などでの保険料が回収できない遡及加入手続きは、担当社
  保職員の出世にひびかせて遡及加入を阻止。
 ・脅しに弱い大手企業の子会社を重点に、「パート加入」で保険料を
  かき集める。
 ・回収に手間の掛かる企業とか調査に時間の掛かる事業所はこの際、
  手を付けない。
 ・これらを10年ほど続け、社会保険は高給与優良企業ばかりにする。
 ・安月給劣悪企業は保険給付が持ち出しになるので被保険者と事業所
  を国民健康保険と国民年金に移してしまえば空前の利益金が出る。
  そのような法律改正をするだけだ。
 ・年金受給者への資金が無くなれば支給額をカットするだけのことで
  ある。??えっ?そんな!「政府のやることか?」と国民に抗議さ
  れたら、社会保険を民営化して官僚も職員も丸ごと天下るだけ???
 (と倫理観のない営業方針の話。一応パロディのツモリ…2003/9/9当
 メルマガを再掲載)
 もとより昭和36年の現行年金制度創設のときから給付と保険料バラン
 スは「合う分けがない」のだから法律改正などどこ吹く風で、社会保
 険事務所の現場で文句さえ出なければ良いと、官僚は考えているのだ。
 民間に対する現場での合言葉は「保険ですから採算が…」の二枚舌。
 よって、年金改正が今月から実施されても、個別企業の社会保険に関
 する総務部門の方針をめぐる背景や状況はそのままである。来年は健
 康保険の改正である。

 『私ども、株式会社総務部は、新時代を切り開く事業を総務部門から
 支えます。』

2004/09/07

第29号

 労働関係諸法令の時代にあった整備が進められようとしている。現実
 には、法令も行政解釈も今の時代の変化にはついていけない状況であ
 る。だがしかし、労働基準監督官の一部には、時代についていけない
 のではなくて、もとより学習不足のために、民間企業に対して、何を
 言うやら分からない監督官が存在する。
 サービス残業の監督指導については、厚生労働省本省が、マニュアル
 めいたものを作るまでは、労働基準監督官個人の関心の高さ、関心の
 低さ、未熟さや熟練度によって、是正勧告書の内容が大きく違ってい
 たのだ。手練手管に一杯食わされていた若年監督官がとても多かった
 のである。今年、労働基準法第18条の2の解雇条項が施行されたが、
 この法律改正が取りざたされるまでは、「平均賃金の30日分さえ払え
 ば、いつでも解雇できる」(これは間違い)と、口頭説明していた監
 督官が何人もいた。これを信じた民間経営者は、「何人もが煮え湯を
 飲まされた」のである。
 つい先日は、政令都市の中央労働基準監督署が、大きな間違いをした。
 事案概要は、36協定の届出が社長と社員会の間で締結されて届けられ
 た。この社員会は労働組合であるとの証明書が添付されていた。労働
 組合の機能を持つかどうかは届出時に窓口確認されていたにもかかわ
 らず、「協定不適格当事者」と言って、監督署は空論法を繰り返し、
 つき返したのである。会社からの猛烈な抗議に対しても、労働組合法
 条文の読み間違いと間違った解釈を披露するものだから、協定当事者
 問題根本からの大論戦になった。結果は監督署がことごとく間違って
 いたのであって、最後には「労働局が悪いんです」と責任逃れをする
 始末であった。当該監督署挙げて結論に達していたにしても、上級機
 関の労働局の間違った指示に気がつく能力がなかったにしても、監督
 署の組織も監督官も理論水準の低い限りなのである。
 時代にあった法律整備が必要ではあるが、本省としては、それを待つ
 間にも労働基準監督官の、「せめて、正確な法解釈」をする程度の理
 論指導は、当然のことではないだろうか。監督署に聞いて、それを信
 じて実行すれば、裁判に負けて、監督官からは、「裁判のことまで知
 りません」と言われる始末であれば、誰も監督官を信頼しない。

 普通解雇と懲戒解雇の区分けや記載方法での質問が、私どもに相次い
 でいる。次回のメルマガあたりで、手抜かりの出ない作成・運用・実
 務方法を解説する予定でいる。
 今年から、労働基準法第18条の2の解雇条項が施行されたことで、解
 雇法理が判例法理から法廷法理に変更された。これに伴い就業規則の
 大幅変更がされないと解雇無効となるケースが続出する。(規則を変
 更せずに解雇無効となる事態を招くのも事業主の自由との論理に立つ)
 とくに、「客観的に合理的な理由」を就業規則で表現する必要がある。
 客観的とは外部の第三者が確かめられる事実で証明できるかどうかで
 ある。合理的とは理由の事実が真実で、解雇の正当な事由を証明でき
 るかどうかである。よく見受けられた、普通解雇の4?5項目規定で
 は「客観的に合理的な理由」に欠ける。普通・懲戒共にそれぞれで重
 複した解雇条項を挙げておかないと理由に欠けることになる。「悪質
 なときは懲戒解雇」との規定も「悪質」の部分で理由に欠ける。「こ
 れはこういう意味です」と説明しないと判読できないものは客観性に
 欠ける。作成技術の側面に限定すると、想定される普通解雇条項を列
 挙し、その中から、事業社会共同体の秩序維持のための「見せしめ」
 および「ダメージ」の必要な条項を拾い挙げて懲戒解雇条項とするの
 だ。ただし、中間管理職一般に理解してもらうには、これだけでは不
 都合を続発する事になる。規則とは「踏み外せば罰する」ものではな
 い。世に言う証拠と手続きも必要。裁判になってからでは取り返しが
 付かず、判例の合否では社員の納得は得られるはずもなく、働いた経
 験がなければ就業規則を書ききれないなどの課題をクリヤーした解説
 を書きます。

 個別労働紛争の「あっせん」を申請されたときの会社の対応について
 の、原稿依頼があいつぐ。(マニュアル的にまとめますので、少々お
 待ちを)。「あっせん代理人」の書籍(日本法令刊)は1ヵ月半でビ
 ジネス本のベストセラーに突入。あっせん申請への対処の方法やあっ
 せん代理人の選び方が読み取れるとのことで好評らしい。トラブルや
 事件が発生しそうでも、一般的弁護士は裁判所から「訴状が来たら連
 絡ください」と話にも乗ってくれない。こんなことから「あっせん」
 は広がりを見せているのだろう。

 ビジネスマンなら、産業業種そして職業を問わず、誰でも知っておか
 なければならない経済の話。世界経済はどちらを向いて走っているの
 か。アジア経済戦争に負けた(平成14年末)日本はどちらを向いてい
 るのやら。
 中国経済バブル、拡大EUの誕生、インド、ブラジルなどアメリカ中
 心の世界経済は急転換していることは確か。これに対して、小泉はア
 メリカ中心の経済戦略一辺倒。片や経団連などは、「東アジア自由経
 済圏」確立と、異なった方向で走っている。いまの日本は、どっちつ
 かずの状態である。
 来年3月末の不良債権処理計画期限まで、六ヵ月と少し。金融庁は地
 方銀行や信用金庫に手を付けてきたので、その面から中堅中小企業の
 リストラや企業再編が本格的になる。これに加え、アメリカ大統領選
 挙の結果如何にかかわらず、選挙後は景気後退するのは間違いない。
 中国経済バブルもあと4年(北京オリンピック)で終了するが、すで
 に鉄鋼分野の来年予想では「大幅落ち込み」となっている。
 とはいえ、「どっちつかず」の上にマイナス要因ではあるが、「高付
 加価値製品」または「高水準サービス商品」に軸足をおいた事業経営
 を行っていれば、「どっちつかず」には巻き込まれることはない。こ
 れを基本に、大手も中堅も中小零細企業も「多国籍企業展開」を考え
 ているのであれば、アメリカか?東アジアか?とのどっちつかずの論
 戦は、知識として知っている程度で十分である。「どっちつかず」を
 克服すれば、東ヨーロッパやアフリカも視野に入ってくるというもの。
 二つの軸足での事業経営と現有人材のベクトルが一致すれば、マイナ
 ス要因の影響も、そよ風程度に感じるだけである。
 失敗事例の三菱で説明をするとわかりやすい。テレビ東京系列で、三
 菱自動車水島工場の研修風景が放映された。水島工場の幹部らしき男
 が最初に社員に話しかけたのは、「ただでさえ忙しいのに、なぜ、企
 業倫理か」とめんどくさそうな顔であった。もうずれている。テレビ
 東京側には「従業員には話を聞くな」との取材規制があったと報道し
 たが、TVクルーに三菱が辛酸を舐めさせたから報道されたものだ。
 アメリカでも東アジアでも「ブラ下がって経営をしておれば」と考え
 るから「ほっかむり」しようとなる。そこへ、巷の評論の中での、三
 菱系列には「高学歴の人材さえ抱えていれば技術が?というものの、
 チームワークもないので…」では技術発揮も疑わしい。企業の倫理観
 に問題があるというよりも、そもそもが、遠い昔のままの時代錯誤の
 経営戦略。世界経済動向にかけ離れ、「高付加価値とか高水準サービ
 ス」など眼中に無いから、ますます企業倫理など気にもとめない。三
 菱の行為は日本経済の足を引っ張り続けている。財閥系といっても明
 治以降の新興だから気づくKNOW-HOWすらない。

 月100時間を超える時間外労働には、事実上の罰金政策か?
 過労死や過労自殺につながる過重労働による健康障害発生を防ぐため、
 月100時間を超える時間外労働を行った場合、労働者自身が健康に不
 安を感じた場合、周囲が異常を疑った場合などに、医師による面接指
 導の実施を制度化する方策。厚生労働省は18日、「過重労働・メンタ
 ルヘルス対策の在り方に係る検討会」の報告書を発表した。現行の時
 間外を長時間させたときの健康診断も事実上の罰金政策である。
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/08/h0818-1.html

2004/08/10

第28号

 「この世の終わりか?異常気象!」と、一昔前なら大騒ぎである。猛
 暑が来て台風・水害、秋がきてトンボが飛び交い、名月を見たかと思
 えば、二度目の夏でまた猛暑。みなさんくれぐれも、からだを、お大
 事に。

 景気が活性化しているときは、天災や猛暑は経済のプラス材料になる。
 昔から、「災難や大飢饉」は、不況の真っただ中に起こった。江戸時
 代は経済抑制政策で不況の連続であった。なので話題になり歴史に残
 った。一時的災難で人々はめげないのである。景気がよければ、災難
 も経済活性の起爆にもしてしまうのである。
 今年の夏は猛烈に暑い。ところが、猛暑の夏の年のような夏物商戦に
 はなっていない。商品の売れ行きが伸び悩んでいる。答えは簡単。個
 人消費の伸び悩みではなくて、個人消費をする余裕がないのである。
 夏のボーナスといっても、大手の三分の一の企業は好調のようだが、
 残り三分の二、そして中小中堅企業では、まだまだ下回っているのが
 実態である。まして、日本の約5400万人ほどの雇用者数のうちで1900
 万人ほどは、契約社員、派遣社員、パート、そして会社役員なのでボ
 ーナスがない。
 いよいよ、来年の「平成17年3月末が不良債権処理」の金融庁の目標
 期限である。
 おりしも、高度経済成長時代の華やかしき頃、あこがれの的であった
 グループ集団が腐敗と崩壊の危機に立っている。有名なところでは、
 社会保険庁・社会保険事務所で加えて運営組織の機能不全と組織求心
 力崩壊も起こしている。「ウソ印乳業」は近代歴史の地位から転落し
 た。「菱モチ」グループは再生不能どころか、改革方針が実行できな
 いほど組織崩壊の状況で、世界市場や技術の真価においても衝撃は甚
 大である。
 こう見てくると、大きな歴史的大転換を認識せざるを得ない。例年と
 か…、通常は…等の尺度はまったく通用しない。
 ブッシュ大統領は4年前にITバブルを意識的に崩壊させた。今また
 IT産業は回復基調のようであるが、アメリカ大統領選挙は歴史的大
 転換にプラスに働くのであろうか。候補者人物よりも選挙支持応援集
 団と政策に分析の焦点がある。平成14年年末の日本のアジア経済戦争
 敗北以来の、日本の「高付加価値商品と高水準サービス」経済戦略上
 の焦点もある。一方、中国経済ブームに、アメリカ大統領選挙がなけ
 れば2008年北京オリンピックまでの限定期間付きで、浮かれていても
 安心である。中国の反日運動は、従来から存在していて、一般日本国
 民が知らなかったことだけのことだから、殺人事件でも中国側から報
 道されない限りは、中国政府の外交問題化は先送りと見てよい。オリ
 ンピック後の抗日運動、それは中国政府の無関心裏で、工場実力占拠、
 技術詐欺流用、代金不払事件などの多発と予想すればよい。

 個別個人ごとの職場トラブル、労働条件や退職トラブル紛争の解決方
 法に、紛争調整委員会の「あっせん」が一挙に知れ渡ってきた。平成
 13年から制度はあったが、知る人ぞ知るで、個別企業での有効活用は
 あっせん代理人制度が出来てから始まった。
 今までなら、労働組合か示談屋が出てくるか、トラブルにならないと
 しても労働意欲の低下を覚悟しなければならなかった。全てが労使対
 決姿勢であったからだ。コミュニティユニオン(合同労組)で解雇な
 どがトラブった場合、パートで100万円、社員で300万円ほどの解決金
 が必要である。地位保全などの裁判を起こされると70万円持って労働
 専門の弁護士事務所に、会社が、駆け込まなければならない。着手金
 が50万円の弁護士は敗訴の覚悟が要る。労働者側弁護士は、東大や京
 大の学生現役司法試験パス組の宝庫であり、情実による10万円着手金
 で後払いはザラである。解雇を撤回して組合員がひとりでも残ると、
 どんな会社でも団体交渉でプロを相手にすることになる。労働組合は
 刑事免責と民事免責をフルに使った行動が出来るので会社には「無視
 の仕様」が無い。労組に、「たいがいの事」をされても警察はじめ、
 監督署、安定所なども結局は(国家の民事不介入で)手を出さないこ
 とになっている。…これが現実。
 では、「あっせん」とは。都道府県労働局に紛争調整委員会が設置さ
 れている。個別企業が労働局長あてに、職場トラブル発生前にあっせ
 ん申請を行い、紛争調整委員会のもとにあっせん委員があっせん作業
 を行うことで、労使の話し合いの場を提供する公的機関である。今ま
 でだと、個別企業では「事前のリスク対策に落ち度があったと」あき
 らめていた労務トラブル事案についても、今では、あっせん申請をす
 ることによって後からでも取り戻すことがでる。一般のコンサルタン
 トと称する人は、「事前のリスク対策」しか口にしないが、「あっせ
 ん制度」ができたおかげで、この分野では「事案が発生してから後で
 も」対処は可能になった。紛争調整委員会は、司法機関のように法律
 判断をつぎつぎに下していく所ではない。行政機関に属するので、こ
 こは労使の個別的当事者間の主張の食い違いを調整していく所である。
 話し合いを促進させることが目的。うやむやにならざるを得なかった
 事案とかリスクについて、紛争調整委員会という公の場でもって、個
 別企業にとっても権利を主張することができることになったわけだか
 ら、労使トラブル処理の内容と方法は大きく広がったわけだ。あっせ
 んの初動対応で労組や示談屋も排除できる。特に個別企業の権利主張
 などは、初めてできるようになったので注目される。
 では、いったいどんな事例が取り扱われているか。人事総務担当者と
 しての入門書が出版された。民間の立場から書いた書籍の類はまだま
 だ少ない中で、「あっせん代理人の仕事と受注開拓のすべて」(村岡
 利幸著、日本法令出版、2800円)である。あっせん代理人のあるべき
 姿を示す専門的教科書ではあるが、個別企業側からの、「あっせん」
 を依頼するノウハウや、「あっせんをどのように活用すれば有効なの
 か」にわたり知る上で、大いに役に立つ本である。
 「あっせん代理」…でGoogle検索などすると書名の紹介が出る。
 日本の賃金問題研究の第一人者の孫田良平先生(中央労働委員会の斡
 旋の調整課長も務めておられた)から、時代の大きな変化の過程で
 「法律も行政解釈もこの変化に追いつけず、賢者の斡旋・調停でしか
 解決できない。事実と解釈を当事者個人は自己の都合で勝手に判断し
 て紛争を泥沼化する。泥沼を清流にする賢人の業務は責任重大だがや
 り甲斐あり、」と「法文よりも事実尊重、理性より徳性による解決が
 期待されます。」と孫田先生の永年にわたる蓄積からの書評をいただ
 いた本である。とりあえず買ってみる価値は大いにある。
 「あっせん」制度は、職場トラブルのみならず、退職金など大型労働
 債務の労務政策での切り札となり、企業存続・好転のきっかけとなっ
 ている。民事再生や「裁判覚悟」強気方針では無理がある。大手中堅
 企業においては、希望退職を募り3年分の年収を退職金に上乗せして
 10年分の人件費を払わなければ7年分お得なんてな単純発想はもう通
 用しない。今流行の「転籍予定出向制度とコスト抑制型ヘッドハンテ
 ィングを組み合わせ」ても、実は数字合わせの焼石に水で、労働意欲
 減退やトラブル事件発生率は高まるばかりである。事業の柱と会社の
 石垣は築くのには何十年もかかる。話題の「菱モチ」グループは、や
 はり明治以後の典型的な「日本国あっての新参者」集団で、有名有煤@学卒者をかき集めの、時代錯誤の身分的人事管理を行ってきた結末で、
 信用で敬遠される集団に陥ったのも歴史の必然かもしれない。とする
 と「あっせん」制度が、今までの制度の枠組みとは異なり人事総務部
 門の仕事概念が変わる勢いで広まっているのも、納得できる。

 景気経済の先行き、社会の先行きが、本当に見えません。今年の8月
 9月は猛暑の中で、じっと我慢しながら状況分析をしましょう。残暑
 お見舞い申しあげます。

2004/07/06

第27号

 年金問題は、日本の社会経済の将来をよく考えさせられた課題であっ
 た。出生率1.29問題。ところが、2007年問題というのがある。これは、
 人口の多い団塊の世代が60歳定年をむかえ始める年が2007年で、その
 うちの、日本の雇用者数約5000万人のうちの約500万人が3年のうちに
 リタイアする事態のことである。個別企業においては、自然減という
 形でスムーズに人員削減が進み、人件費の大幅な削減で経常利益は増
 加し、資金に余裕ができるとのプラスの見方がある。その半面、この
 年代の雇用による所得額は比較的多く、これが縮小されると、個人消
 費の落ち込み、所得税とか社会保険料の落ち込みとなり、経済をデフ
 レの方向に大きく引っ張る。一例をあげると、従来の年金制度だと、
 団塊の世代が年金を受給しだすと年金財政バランスが崩れ、年金財政
 の破綻が分かっていたから、年金の受給年齢を65歳へ向けて引き上げ
 を行ったのだが、2007年に60歳定年を迎える人は64歳になる2011年ま
 で基礎年金の受給ができないことになっており、退職金などの資金を
 取り崩すにしても4年間の空白は長すぎるのである。2007年問題とい
 うのは、このように一触即発の危機を抱えている。団塊の世代の人達
 に、65歳まで働いて収入を得てもらって、社会保険料も払ってもらっ
 て、子や孫のために多額の消費をしてもらわなければならないな?と、
 短絡的に発想してしまえば、日本経済は沈没していく。「出生率1.29」
 よりも、背筋が寒くなる夏のひとときでした。

 65歳以上の高齢者(現在は60歳)のための「生きがい対策」と、大義
 名分を立てて行われている。シルバー人材センターには、意外な落と
 し穴があった。シルバー人材センターは、旧労働省が肝いりで設立さ
 せた社団法人で、高齢者政策の柱である。
 つい近所の最近の事件は、今年の6月14日、植木の剪定業務を請け負
 った大阪のシルバー人材センターが、いわゆる業界用語で言う「職人
 がケツをまくった」ことに対して、二名二時間分の賃金支払いを発注
 者に請求したものである。シルバー人材センターは請負業務であるの
 で、仕事の完成がなければ代金請求できない。そこで、シルバー人材
 センターは請求根拠がないため、請求姿勢で、いわゆる「すごんだ」
 (すごむとは相手を威嚇すること)のである。シルバー人材センター
 の責任者は道路に刈り込んだ植木の枝葉を散乱させた状態で、時間分
 手数料の「金を払え!」と大声を出し、発注者側のおばあちゃんから、
 「お支払いしますぅ…」の返事を聞くや、後片付けもせず自動車で走
 り去ってしまった。発注者の苦情申し立てに対して、その後、電話を
 かけてきて、「請求はしない」とだけ通告し、暴言を吐いたり大声で
 すごんだりの弱いものイジメについては、「金を請求しないのだから、
 もういいだろう」と、反省などまったくしない。厚生労働省本省の調
 査や大阪労働局から、「職業紹介ではなく請負業務を行いなさい」と
 の指導を受けて、やっと謝罪文書を出した。
 さて、いつもは「身内の親戚」には甘いのかと思いきや、今回は頑張
 った。シルバー人材センターは、生きがい対策といっても労働してい
 ることには間違いない。労災保険の適応をされた事例もある。また社
 団法人であれば無料職業紹介となるが、その場合手数料は(例えば現
 行の7%のように)取ることはできない。秋から労働者派遣事業を行
 おうと許可申請を予定しているシルバー人材センターも少なくない。
 だが、そもそもの原因は、20数年前にシルバー人材センターを全国各
 地に作った時に、「65歳以上は労働政策の対象ではない」だから「生
 きがい対策」と、その当時の、その場しのぎの拙速な大義名分を、未
 だに政治も社会も変化したにもかかわらず、相変わらずそのままにし
 ておいたところに原因があるようだ。なので、シルバー人材センター
 の現場は法的社会的根拠が薄いことから、就業態度が悪くても許され
 てきたし、すごみ、ごまかし、横柄になるのだ。さて、シルバー人材
 センターの民法や厚生労働省法令無視の横柄な態度は、まだしばらく
 続きそうである。周りに迷惑な話。高齢者就業の受け皿にもならない。

 「是正勧告対応マニュアル」(著者森紀男、日本法令)という本が、
 6月10日に発行されたが、書店からの撤収回収となった。是正勧告と
 は、労働基準法違反を起こしたときの労働基準監督官の監督指導であ
 る。折しも、サービス残業や労働時間の管理をめぐって、書類送検や
 逮捕と日本国中が上を下への大騒動をしている時期である。売れ行き
 は好調で、二週間もしないうちに約2500冊が瞬間的に出回ったようだ。
 回収の名目は本文中の引用部分についての著者森紀男氏と、引用部分
 版元(TK社)との争いのようである。ところが、異論を唱えた版元
 (TK社)は、筆者も経験があるが、著作文の法令上のミスを指摘さ
 れても感謝することもないズサン性のある出版社で、今回に限りどう
 したことか?と驚く。この本は撤収回収となったが、著者のセミナー
 はとても好評のようだ。大手企業担当者をはじめとして、全国から約
 400人が詰めかけているそうだ。
  http://www.horei.co.jp/seminar/

 個人情報保護法の全面施行は、平成17年4月1日からである。ところ
 が、情報漏洩対策として、単に「機密と個人情報守秘」とのことで打
 たれている現場の対策だけでは、民間の損害賠償事件には、大きな手
 抜かりを生じる。巷でよく例示・論議されているものは、個人情報保
 護法や情報公開法理からだけの対策(4ポイントなど)ばかりに目が
 向いていて、企業経営に一番大切な損害賠償事件とか基本的人権トラ
 ブルの対策には欠落(瑕疵)がある。所詮、国家または官僚は民間の
 経済活動にとやかく口出しすべきではないのだが、法律に基づく国の
 アドバイスが無いからといって、民間企業では対策を忘れてはいけな
 い。個人情報保護法とプライバシー侵害の不法行為(民法709条)は別
 建てである。
 特に、秘密を取り扱う末端の従事者が、「どれが機密か分からない」、
 あるいは「具体的に個人情報かどうか区別できない」、さらには「情
 報を漏らして良い人と悪い人の区別が分からない」、と主張されてし
 まえば、「知らなかった(法律上は善意となる)」ということで悪意
 が無いことになり、個別企業は末端従事者の責任を問えなくなり、重
 ねて教育をしてこなかった責任も問われることになり、いわば事件が
 起こったときには踏んだり蹴ったりとなるのである。末端従事者に、
 就業規則上の処分が出来ないのはもちろん、「知らなかった(法律上
 は善意となる)」と言われ、民法上の損害賠償も求められない。外注
 や派遣ではさらに複雑になる。法律上の手抜かりで、事業者の過失責
 任ばかりが問われる。
 そこで、決定的ポイントを含めた具体的対策を誓約書の形で作成した。
 このメルマガの巻末に例示掲載。
 誓約書以外の形式でも自由。これを従事者に示すだけでも、法律上の
 効果には、「善意なのか悪意なのか」の大差が出る。ほとんどの「ウ
 ッカリ漏れ」は未然防止できる。ところで、IT関連業務のパスワー
 ド自体は機密事項でパスワードを悪用して個人情報を故意に漏らすこ
 ととなる。医療関係のカルテなどは個人情報かつ病院にとっては機密
 事項であり、病院が守秘項目としてカルテを機密に特定する必要があ
 る。と言う具合である。

2004/06/08

第26号

メイド・イン・ジャパン、商品の売れる基準は、「高付加価値製品と
 高水準サービス提供」の相まったものである。国内市場で認められれ
 ば、世界市場でも認められることになるのである。DVD、液晶テレ
 ビ、デジタルカメラも、この基準である。中国特需で輸出される商品
 もこの基準である。新技術開発一辺倒では成り立たない。世界に肩を
 並べる家電メーカーは、サンヨー、シャープ、キヤノン、ローム、で
 あり、昔から名前を聞く家電メーカーは入っていない。大手企業も中
 小企業も、メイド・イン・ジャパンで未来を切り開くには、個別企業
 の持っている技術や技能をもう一度棚卸ししてみる必要がある。
 今や、この棚卸しが、総務部門や人事部門の重要な仕事の柱となって
 いる。その意味ではつい先日まで使われていた評価基準などは、時代
 の目的にかなっていないので、根本的なところからの修正を必要とさ
 れている。場合によって旧来のものは使わずに、個別企業ごとの棚卸
 しを想定して、自社開発した方が現実には大いに役立つ。
 NHKで「冬のソナタ」という韓国の番組を流している。みなさんも
 見ての通り音声や画像が何か不具合を感じる。これは俳優の手抜きで
 はなくて、音響や映像の技術が、驚くほど未熟だからである。口元と
 セリフが合わないとか、常にエコーがかかっているようなものは、日
 本のプロだったら、絶対に製作することはない。「高付加価値製品と
 高水準サービス提供」とは、例をあげるとこういう事なのである。
 一方、中国特需の内で、新日鉄のバーター目的の合弁、トヨタの自動
 車ローン販売は、「腹に一物、背中に荷物」の観が否めない。中国の
 開放経済以来、よく似た戦略で、多くの海外資本が辛酸を舐めてきた。
 乗せられ浮かれ泣いた日本企業も同じ事をしていた。現代中国の深層
 文化と実態経済を把握してないが故に選択した幼稚な経済進出方針で
 ある。中国は現金取引、代金回収の担保が無いのである。ここでも
 「高付加価値製品と高水準サービス提供」の戦略に尽きる。中国がダ
 メでもアフリカや東欧には市場がある。
 ところが、このようなポイントは分かっていても、なかなか改革でき
 ないのが現実である。と、ここまでは素人の話だが、プロの専門家か
 らすれば、改革にブレーキをかけている原因は次のものである。経済
 的な背景としては「利回り資本」なるものに頼っていること。職場
 (社内)問題としては事実上の「拝金型賃金体系」と拝金主義で物事
 のお茶を濁してしまう横槍横車で判断が歪むところに原因がある。詳
 しくは別の機会にお話しするが、決して日本の教育制度の問題ではな
 い。個別企業においての今日までの総務部門や人事部門の政策的欠陥
 を根本的発想から変えることがホームランとなる。

 景気回復とテレビやマスコミで一斉に宣伝されている。回復している
 のは、自動車産業とデジタル家電ぐらいのもので、それ以外は、「う
 まくいけばこれから何とかなるかな??」程度のものである。三菱の
 リコールは、技術とはまったく無縁で、単なる会社の不道徳な経営方
 針だっただけである。一部には「自動車産業全部がそうだ」と企業の
 不道徳性と技術改善方法を故意に混同させる屁理屈まで持ち出してい
 る。スリーダイアモンドといっても明治維新以降の新参者なので、や
 はり、深いところの理念は未熟である。このような不道徳性がメイド・
 イン・ジャパンのブランドを傷つけるのである。日本のIT部門は今
 年中に韓国に追いぬかれることは間違いなさそうだ。液晶テレビとい
 っても外国企業との技術争奪戦で3年後には負けるかもしれない。ま
 だまだテレビやマスコミの「景気回復」の宣伝に浮かれる状況とは言
 えないのである。

 来年の2005年3月末までに、不良債権を半分にしてしまうという金融
 政策は、数値目標だけは達成しそうだ。竹中担当大臣も地方銀行の不
 良債権については、「数値目標にこだわらない」として、余裕を見せ
 ると同時に地銀各個撃破も辞さない構えである。いわゆるサービサー
 の効果(債権回収会社)も不良債権「棒引き」に一役買っているよう
 だ。ところが、世間一般でほとんど話題にされていない重要な危険事
 項がある。それは国債の大量発行だ。日本銀行と市中銀行と財務省の
 三者で、融通手形を回し合い、をしていることと同様のことを行って
 いる。ハイパーインフレ論が受けなかったので、今度は「融通国債」
 論というところか? テレビで「身近になった国債」などと宣伝を行
 っているが見るたびに恐怖を感じてしまう。来年3月末までの経済指
 標の注目点は金利と国債の価格である。設備投資や物価水準あるいは
 失業率はとりあえず見ておくだけで十分である。個別企業の経営管理
 のポイントは、参議院選挙でもなければ、年金問題でもない。今は自
 社の技術と技能の棚卸しである。

 年金問題は何回も取り上げたのでもうメルマガに書くことがなくなっ
 た。これからの注目点は社会保険庁や社会保険事務所がダブルスタン
 ダード(裏と表の二重の運用基準)をどのように取り扱うかの部分だ。
 今のところは、「こうすれば儲かる社会保険事務所の営業」のパロデ
 ィ(メルマガ03年9月7日17号)に、だんだん似てくるようだ。
 健康保険や年金の手続きを扱う社会保険事務所では、職員などの増員
 をする予定は一切なく、現在でもサービス残業が行われているケース
 があるところへ、今回の改正で業務量が一層増加する、との信頼でき
 る消息筋の話!

 今年の3月1日から労働力需給政策が大きく変化した。労働者派遣法
 などの大幅改正である。申請書の書き方がちょっと変わったとか、法
 律が実情に軌道修正されたとかの認識はとても甘い。請負業のチェッ
 クリスト、派遣労働者のチェックリストなど、次々とパンフレットや
 WEBが流されている。
 この状況の中、人材派遣大手といわれているスタッフサービスは、い
 わゆる「やり玉」に挙げられている様である。5月24日大阪での過労
 自殺に引きつづく賃金不払いでの3箇所の家宅捜索。6月5日派遣先
 富士通での派遣法違反と行政指導の報道。このスタッフサービス(テ
 クノサービス)は昭和61年の派遣法施行から、業務請負での先駆的役
 割、業務確認(面接ではない)、コスト計算での派遣料金明瞭化、複
 合業務(一般業務ではない)の派遣、雇用保険の全面適用でのスタッ
 フ確保、社会保険の適切加入などを業界に先駆けて実施し、派遣業に
 対する風当たりのキツイ中、「市場の良識」の支持を得て急成長を遂
 げた派遣会社であった。反面、パソナやパソナソフトバンクは、労働
 省の政策はどこ吹く風として、札束を握りしめ、札束でスタッフのほ
 っぺたをたたくような行為を行うなどの体質から、当時、いわゆる
 「やり玉」にあげられていた。あえてそれをしり目にし、逆手に取っ
 て成長したのが、このスタッフサービスであった。
 ところが、政府の政策がこの春に転換しても、転換することは数年前
 から情報が流れていたにもかかわらず、スタッフサービスは経営方針
 を切り替えられなかったようである。背景に持っている体質から、暫
 くの間はスタッフサービスが「話題を提供」してくれそうである。今
 回のいわゆる「やり玉」での問題分析において「労働政策の転換では
 仕方ないのか」と分かったような悟りを開くのは間違いで、トラブル
 のきっかけは、単なる「おごる平家は久しからず」なのである。

2004/05/11

第25号

 偽装請負(請負契約と称しながら実のところは労働者派遣)を続ける
 違法業者に対しての行政対応が厳しくなった。いかなる内容が請負で
 はなく、いかに労働者派遣法に違反しているかを、事細かに解説した
 パンフレットを厚生労働省が配布している。今年3月1日の法律改正
 は大々的な制度改正となった。マスコミとか行政が、とりあげていな
 くて大きな影響があるのは「派遣労働者の社会保険適応」である。今
 まで現状は、二カ月の期間を超えての派遣労働者の雇用であっても社
 会保険に加入させていなかった実態が数多く見られたことである。今
 回の改正で、業務請負契約を選択せずに労働者派遣契約を行った場合
 には、一般企業に比べて労働者の厳格な社会保険加入が点検されるこ
 とになった。これは社会的制度化というもので、当然のこととして人
 件費コストに跳ね返ってくる。詳しくは次のURLをどうぞ。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kaisei/dl/ukeoi.pdf

 「 今後の労働契約法制の在り方に関する研究会 」の開催について。
 ?労働契約のルールについて、包括的に検討?。と銘打って、厚生労
 働省は新しい政策を実施するための法律改正に具体的に手をつけた。
 対象となるのは労働基準法を中心とした改正である。今年の1月1日
 の改正は解雇に関するものであった。労働条件の変更、出向、転籍な
 ど、労働契約について包括的な法律を策定するためとしている。要す
 るに、法律本文に明確に記載しないと、裁判所の判決(判例法理)だ
 けでは(専門的な方は除き)弁護士をはじめとして無理解がはなはだ
 しいので、一般国民の間にはっきりさせよう、具体的に記載しなけれ
 ば法律違反をしたという自覚を持たない人が増えて社会秩序が形成で
 きないと、いうことである。事実、国が弁護士を養成するときには労
 働関係法を勉強させないので、個別企業が弁護士に相談した場合、民
 法解釈を取り間違えるなど企業担当者からすれば、お話にならない答
 えが返ってくるのが圧倒的に多いのである。好くて判例法理の棒読み
 返答なのである。労働関係法は数ある法律の中でも独自の類型を設定
 しており、民法第一条第三項にある権利濫用と一致しないなどと、弁
 護士常識と一致しない部分も相当多いのである。解説するときにこれ
 を説明してくれない弁護士は労働問題は専門外なのである。社会保険
 労務士でも、この説明が出来なかったりする者がいるが、これも専門
 外なのである。「あっせん代理人」を引き受ける弁護士や社会保険労
 務士であれば、ほぼ大丈夫だろう。法律改正の成り行きを詳しく知り
 たい方は、次のURLをどうぞ。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kaisei/dl/ukeoi.pdf

 国会などで年金問題がすっきりしない原因は、昭和36年の国民皆年金
 を成立させるときのいまだに明かすことができない全野党ぐるみの無
 責任決着問題と、これを覆い隠すために社会保障年金問題への専門家
 の参加を官僚と全与野党で徹底排除してきたところにある。政治家な
 るものは議員だけではなく官僚内部にも各政党の後援会(事実上の党
 員)が存在しているにもかかわらず。
 官房長官とか党首などの辞任も茶番劇。国会議員の国民年金保険料未
 納問題などは、ほとんどどうでもいいような話でこれを国会に持ち込
 んだ議員たちは与野党と官僚の根本的失態を知る由もない。ところで
 昭和36年までに何をしたのか。今ではほとんど記録も残っていない。
 国民年金が決定的な赤字であることは制度成立前からはっきり分かっ
 ていた。今流に言えば、国民皆年金が発足すれば即刻不良債権に苦し
 むことは自明の理であることを誰もが当時知っていた。ところがその
 反対運動が、ある日突然に終息してしまう。裏でカネが動いたとのウ
 ワサはもらった人がいるから事実だ。反対運動していたある貧乏な団
 体は数階建ての(この当時の2?3階ではなく鉄筋コンクリートの頑
 強な)ビルディングの持ち主にもなった。
 国会議員の未納問題。これは「国民年金に入れない」であったり「国
 民年金に入らなくてもよい」と表現はどちらでも良いのだが、そのよ
 うな行政指導をしたのは間違いがないのである。当時も今も、旧厚生
 省は、「表と裏」の話ばかり。旧厚生省の裏表は専門家は誰もが知る
 ところなのだ。社会保険事務所の裏の話をめぐって、騙されたと裁判
 を起こした国民に対して「過失があっても法律を知らないあなたが悪
 い」と行政官を保護する判決まで存在した。旧厚生省は時代が変わっ
 ても徹底してこの考えである。なので、個別企業としては社会保険事
 務所の裏話は「いつひっくり返されるか分からない」との覚悟がいる。
 これが国会議員大半の未納問題の弁解をめぐる前提の話である。みん
 ながみんな、未加入問題が生じたときに、そもそも市役所や社会保険
 事務所に「法律通りに実行しろ」と問題化しなかった本人が悪人であ
 るとの非現実的不毛論議にハマってしまった。このような屁理屈に人
 をはめた張本人は、「裏と表」の行政指導、いわゆるダブルスタンダ
 ード(裏表の二重基準)を行っていた旧厚生省本省官僚であるにもか
 かわらず、本質をついたマスコミも存在しない。社会保険事務所も社
 会保険庁にも盾突くとほとんど必ず圧力をかけてくるから、マスコミ
 関係者の足がびびってしまっているのはよく分かる。旧態依然として、
 社会保険には表と裏が残っているが、どのような年金制度を法律で決
 めたとしても、旧厚生官僚からすれば、ダブルスタンダードを使えば、
 彼らの思いのままなのである。社会保険事務所の問題対処方法は、首
 をかけても白を切ること、常用の「耳打ち」トークは、「上げたこぶ
 しをどう収めるか」と事業主に不安をあおることの二つである。国会
 議員の例を習って、実務担当者のあなたは「ワナと脅し」に乗せられ
 ないように注意しましょうね。

 さて冷静になって、今後の個別企業対応の話です。年金の崩壊が一挙
 に進む。個別事業主や一般被保険者にこれだけ不満をもたれた年金制
 度は、制度自体を守って育てようというモラルを崩壊させてしまった。
 たとえば、パート労働者は非常に多くの人が社会保険への加入を自覚
 的に拒んでいる状況で、個別企業や人事担当者が説得をしても、いっ
 こうに社会保険加入する希望が増えることはない現状がある。これと
 同じで、一般被保険者が、「そっぽ」を向けば社会保険にそもそも加
 入しないで済む方法を考えるし、保険料を違法減額して加入し続ける
 ことにもなりかねない。社会保険事務所が社会保険労務士を頼りにせ
 ず、場合によっては社会保険事務所が法律を順守しない事のある現状
 では、社会保険の専門家である社会保険労務士の協力は非常に難しい
 状態にある。
 そうなってくると、益々、個別企業では、「一切社会保険は知らない」
 との極端な態度が発生してくることは当たり前のことである。社会保
 険調査官の調査と言っても、個別企業担当者が、4回から5回の日時
 を変更すると、そのほとんどの調査自体が省略されている現状である。
 社会保険事務所の雇用形態アンケート調査に答えなければそれだけの
 ことであり、社会保険に入っていないパートが居るなどと答えて初め
 て調査が入るのが実態である。保険料は滞納でも「保険料で差し押さ
 えられればわが社が倒産する!」と泣きを入れれば、社会保険事務所
 は積極的保険料の徴収をしないので、いまや数千万の保険料滞納は当
 たり前のこととなっている。社会保険の「雇用保険の被保険者が全員
 いなくなれば即日社会保険も脱退」との行政指導は、小零細企業の脱
 社会保険を促進するだけのことになっている。そこへ最近の社会保険
 事務所は、新規設立会社の適用を厳しく排除しているからなおさらで
 ある。
 官僚の中で、国民年金は手がつけようがないから切り捨てて、「厚生
 年金だけを立て直すことが先決?ではないか」なる理屈が浮上してき
 た。社会保険事務所が進めている実態からすると、厚生年金加入を比
 較的高額な保険料を安定して納入できる優良企業に絞って、「安月給
 者と不安会社」は国民年金のごみ溜めに放り込む方針、と言われても
 仕方がない。02年度の厚生年金の加入事業所数は約162万9000事業所、
 加入者数は3168万人(統合された農林共済分を除く)。5年前に比べ
 事業所数で4.4%、加入者数で5.3%減っている。99年度に行われた財
 政再計算では、02年度の加入者を3500万人(同)と見積もっており、
 すでに約330万人の想定ミスを公表までした。今回の法律改正の再計算
 の仮説は、これ以上に現実とはかけ離れている。10年どころか07年ま
 で持たないだろう。

 あっせんの合意形成率約6割を維持?。埼玉労働局(村上文局長)で
 は、個別労働紛争解決制度の効果的な運用に向け、労働相談員らに独
 自の研修を行い成功しているとのニュース。平成15年度に受理したあ
 っせん申請は前年比2.9倍の195件と高い伸びで、57%にあたる111件で
 (あっせんが成立したとまでは言ってないが)合意が成立したとし、
 申請件数の大幅増にもかかわらず高水準の合意形成率と発表している。
 相談員にあっせんを傍聴させたり、過去の判例を丁寧に説明するなど、
 地道な取組みに効果があるとのことである。厚生労働省は、このあっ
 せんの制度を何としても確立させようとしている。この制度にかかわ
 る労働局の国家公務員たちの労働組合(全労働)もあっせん制度には
 賛成の態度を示しており、労使紛争に関する政策について、政府内部
 での労使は一丸となっているのである。この制度は、今までの日本に
 はなかったもので、個別企業の経営者の側からも有意義に使える部分
 があるので、「絶対に従業員がおかしい」と思ったときには、あっせ
 んの手段での解決を考えた方が効果的である。ただし、よほど慣れて
 ない限りは「あっせん代理人」を立てないと、一般行政の癖である件
 数数字の実績向上材料にされるかもしれないので要注意。

 東京都心は臭いにおいが漂っている。下水道とパイプがつながってい
 るトイレ、洗面所、風呂、マンホール、駅など軒並みにおっている。
 地方から東京に行った人は、たいがいの人が感じていたようだが、東
 京に住んでいる人は、どうも慣れっこで感じている人は少ないようで
 ある。一説によると、中小ビルの地下に「汚物槽」の清掃や汲みだし
 が行われておらず、「硫化水素」が発生し東京都内の下水を伝わって
 町からビル内から、においを行き渡らせているとのことである。パリ、
 ロンドン、ニューヨークに続いて、都市衛生とか環境問題の歴史に、
 次は「東京硫化水素」も名前が載りそうである。都市問題というのか
 貧困化現象というのか、いずれにしろ「いびつな経済集中と労働者流
 入」のお粗末さである。…なぜお粗末かというと、これだけ臭いのに、
 名実ともに行政もマスコミも、社会問題化させず「臭いものにふた」
 をしているからである。都民はマンホールにテープを貼ってふたをし
 ている。経済回復?というけれど…豊かな経済とは反対の現象である。
 「シュッシュの消臭剤を買って、さらなる経済効果?」などと冗談を
 言う場合ではなくて…。
 下水道とつながっているところの、穴という穴、口という口にふたを
 して、これに水を溜めておくと効果があるようだ。水溜が不可なら完
 全密閉。ささやかな個別企業防衛策。でも外出したら町は臭い臭い!
 腐った卵と言うよりは強烈なユデ卵のにおい! 要は硫黄なので温泉
 というか「屁(おなら)」のにおいだ。また実際には、この硫化水素
 は「U字管」では防げない。おそらく硫化水素は水に溶けるというの
 で、どうも原因が下水に溶けきれなかった硫化水素がブクブク地上に
 這い上がってきているとのことからすると、少量の水では即飽和して
 しまうようで、洗面所もお風呂場にも「いつも新鮮な水を張って」お
 いてこそ効果があるようだ。職場環境対策の一環として参考に。
 (このURLは硫化水素)
 http://www.city.yokohama.jp/me/cplan/epb/kanshi/worda/h2s.htm

2004/04/06

第24号

 年金国会の真っ最中である。
 視野を広くして考えてみた場合、福祉なるものが次の3つの分野に、
 どのように配分されるか。そしてそのバランスはどうなるのか、と考
 えれば、「保険料と給付バランス」というのはいかに理屈にもならな
 い幼稚な話かが判断できる。
 1.社会、コミュニティー、国家が行う福祉
 2.企業が従業員のために行う福祉
 3.家庭内で行われる福祉
 人口が急増した団塊の世代の人たちは、将来は国の厚生年金が面倒を
 みてくれると思って、せっせと貯金のつもりで保険料を払った。ちょ
 っと裕福な家庭の妻は国民年金もそうだと思って払っていた。その人
 たちにとって福祉の中心は、会社がいろいろと用意をしてくれる企業
 内福祉であったし、男だけが外で一生懸命働いて専業主婦が夫の手足
 となり身体介護を行うかのような福祉を担っていた。完全雇用が前提
 であった企業の福祉が期待出来なくなり、国家に福祉を頼らざるを得
 なくなったときに、いままでためていた厚生年金の資金は官僚たちに
 よって使い果たされていたのである。「お金が無くなってびっくり。
 さあどうしよう」というのが年金問題の本質である。
 平成14年の総務省統計を見てみると、正社員3500万人、パートなどの
 非正規社員1450万人、会社役員400万人、個人事業主と家族1000万人
 である。とくに会社に勤めている人の30%が非正規社員である現状は、
 現在の厚生年金や健康保険の「法律の想定」した状態ではない。平成
 14年の秋からは、日本がアジア経済戦争に負けて、労働力の転換がこ
 れ以上に進んでいるので、法律の想定とは一段と乖離した現状に至っ
 ている。なのに、厚生官僚は「3500万人+400万人の保険料収入と、
 給付のバランス」のことばかり主張し続けるのである。
 昭和36年、国民皆年金制度と称して、当時、専門家の「将来財政破た
 んは免れない」との指摘を無視し、内外の反対を押しきって国民年金
 を開始し、これらをどんぶり勘定にし厚生年金の資金をはじめとして
 年金資金を使い切ってしまった官僚たちの責任を問いただすときにも、
 この3つの分野とバランスの視点はとても重要である。

 労働者派遣法の改正が、全般的には労働力政策の大きな転換を示すと
 の実例が飛び込んできた。製造業に限っての今回の改正はこのメルマ
 ガの1月号で述べたとおり。改正の大きな効果には、正社員を補完す
 る労働市場の形成によって、正社員を取り巻く半専門的半技能的労働
 者層の形成を作り上げることになる。派遣先が労働社会保険や人事管
 理に原則的責任を持つようにしたり安全管理義務を徹底させたりする
 ことは派遣先企業の直接的影響力をもとに派遣労働市場を安定化させ
 ることになる。人材派遣会社の許可単位を変更することで業界の再編
 と新陳代謝を加速することになる。戦後一貫して国家主導で行ってき
 た職業紹介行政の半専門半技能部分での一部民営化である。人材派遣
 業は吹けば飛ぶような業界で、またもや付加価値機能形成やノウハウ
 蓄積基盤が遠のいてしまった。
 さて、その事例とは、4月1日の日経新聞は一面トップ記事に、トヨ
 タが派遣社員を大幅に導入することを報道した。13面には製造業を解
 禁した労働者派遣についても関連記事を載せている。製造現場の派遣
 期間の条件も、2007年3月からは3年になると、まだ正式には決まっ
 ていない内輪話も報道してしまった。派遣会社の営業トークとは別に、
 よく読んでみると、自動車関連の「期間従業員」よりも労務コストが
 安いと言っているだけである。自動車産業のように1本のラインが大
 きい場合には、法律的な請負要件がそろわないので業務請負に仕事を
 発注することが出来ない。トヨタ式生産システムでは合法的に人材派
 遣業を受け入れられなかっただけのことである。ボルボ方式なら問題
 なかった。ところが、自動車産業の多くには偽装請負業者が非合法に
 活用されてきた実態がある。
 社会保険や労働保険を管理する担保を整え、安全衛生について派遣先
 が責任を持つのであれば、製造業の労働者派遣も認めようというのが、
 今年3月1日の製造現場での労働者派遣規制緩和である。非合法派遣
 からすると、労働社会保険料の会社と本人負担のコスト(給与の23%
 ほど)および安全管理費用を、とどのつまりが派遣先で負担するので
 あれば合法化しようというものであった。これらを免れて非合法派遣
 したり、業務請負と称して実態は労働者派遣であったりした場合には、
 強制力を伴った指導をし企業名を公表するとしている。労働局は本年
 度から派遣労働者の労働災害発生動向の把握と防止を行政項目にあげ
 た。旧来から本省職業安定局では内部文書を廻し悪質企業をリストア
 ップして全国の職安に通知をしていた。職安によっては事業所にアン
 ケート調査を行い「□□会社との取引はありますか」と洗い出す方法
 や、「利用している派遣会社を教えてください」と企業名を出させて
 許可業者一覧とすり合わせ派遣先を指導する方法であった。今回、企
 業名が公表されれば「□□会社は違法な労働者派遣ですから使わない
 でください」とはっきり郵便で知らせたり掲示することもできるので
 ある。それを押して違法会社との取引を続ける派遣先は、陰ひなたに
 安定所や監督署の圧力を受けることになるのである。
 派遣業界唯一の業界団体である日本人材派遣協会と、派遣労働者など
 を組織する全国ユニオンらは、3月1日、団体交渉を行った。個別の
 企業との団体交渉よりも業界との団体交渉を優先させるのは、ヨーロ
 ッパでは常識的なことである。日本の春闘方式とはイメージが大きく
 異なっている。この労働組合は悪質業者に対しては徹底して戦ってい
 るようである。

 75年以上にわたって、小売業のイメージを花形リードしてきた百貨店
 が大変容している。4月4日、大阪ナンバの高島屋の74年前に東洋一
 の大食堂とコマーシャルをしてオープンした「百貨店の食堂」が終了
 した。ライスカレーは、これも75年前に大阪梅田の阪急百貨店で客寄
 せのために出されたものだ。今から75年ほど前、今の百貨店のイメー
 ジが出来た。それまで全国で300ほどあった中小規模百貨店が、昭和
 恐慌のときに現代のような大型ビルを建設などして、今のように切り
 替えた。ところが本質は、客引き商品や大型ビルだけではない。それ
 までのイメージはやはり市場や公設市場だったのである。百貨店で働
 くデパートガールやエレベーターガールなどの計画的育成教育で販売
 技能を向上させマーケティングを行ったところに大きな違いがあった。

2004/03/09

第23号

 4月から労働基準監督署に「(仮)就業規則等点検指導員」を配置す
 る。1月施行の改正労働基準法の解雇規定部分の指導に乗り出すこと
 になった。全国の主要労働基準監督署に配置し就業規則などの記載内
 容を精査、違反是正などの「点検・指導・助言」を行うようだ。就業
 規則変更を促進させるなどするのだろう。地域の社会保険労務士、行
 政OB、学識経験者などに委嘱するとのこと。ところで賃金不払とか
 不当解雇などの労働基準監督署への申告は今年になってからも急増し
 ている。厚労省としては労働基準法の空文化傾向は絶対に許さない方
 向のようだ。
 ところで経済構造との絡みで分析すると、国内で唯一、名古屋地方は
 経済が成長しているといわれているが、サービス残業不払の摘発は名
 古屋がとても多い。人数で最大記録の中部電力や最近は売上好調の百
 貨店の松坂屋でも発覚した。名古屋の労働基準監督署が特別ハッスル
 したわけでもないしそんな力もない。名古屋の経済成長に薄っぺらさ
 があると見てよい。

 厚生労働省のサービス残業の取り締まり方は、前回のメルマガでのと
 おり。また、サービス残業で監督官が指摘する内容は労働基準法の次
 の条文を用いる。厚生労働省の発表の文言を借りると、
 「24条は、賃金の支払いについて全額を払わないなどのケース」
 「37条は、時間外休日に深夜の割増賃金を払わないケース」
 「110条は、報告の義務。虚偽報告の疑い」
 「109条は、記録の保存」となる。

 では、現場の個々の労働基準監督官はどのように認識しているのか?
 ほとんど多くの監督官は、次の4つのポイント+オマケでもって、サ
 ービス残業発生のからくりが存在しているのではないかと考えている。
 1.始業時刻や終業時刻の記録がはっきりしていない。記録しなくて
   も罰則はない。通達(平成13年4月6日基発339)が出されていて
   も行き渡っていない。
 2.法律制定の当初からの問題でもあるが、管理職の範囲を定める規
   定が曖昧である。裁量労働者の範囲についても曖昧である。擬似
   管理職等と言って免れようとする。
 3.定額制の時間外手当が支払われている。「計算作業に煩雑さが在
   る」と言って実態を隠そうとしている。定額の根拠となる一定時
   間を超えたかどうかが曖昧である。
 4.自己申告制とっていても「申告しづらい仕組」。自己申告と実際
   の労働時間の記録とは別物。業務体制、業務の指示、その他人事
   管理全般に問題が波及しているがサービス残業の違反理由になら
   ない。
 +オマケ (主要な問題としてないが事実上の注意の勧告)社会保険
   労務士が36協定を数十枚から数百枚一度に提出して、その中身が
   コピーされたような同一内容のものが存在し、法律の主旨に反し
   ている。
 これらは、厚生労働省本省関係の考え方とは異なっているが、全国最
 前線の監督官ほぼ全員にフィードバックされ、直接臨検をする監督官
 は相当影響を受けている。
 労働基準監督官で組織する労働組合(全労働)は、「行政の手続きを
 正確にすることで国民の信頼を得る」との方針を取り、サービス残業
 の監督行政では労使一丸となっている。

 年金制度の大改革がなされたとでも言うのなら、旧厚生官僚の作戦が
 外れて、「赤字補てん目的のパートタイマー保険料が5年先送り」が
 第1で、第2は「国庫負担が、3分の1から2分の1になる見通し」
 の2つである。最近は旧厚生官僚の気持ちを代弁して「景気が良けれ
 ば年金は黒字なっているはずだ」などとうそぶいている者までいる。
 労働生産性が上がらないというのは確かに「持たない」のだが、それ
 は年金ではなくて日本経済の話である。国庫の年間収入は、法人税収
 入が9兆円、所得税収入が19兆円、そこへ「いったん入ったお金は私
 のもの」とのわらをもつかむ錯覚もあって厚生年金保険料収入は44兆
 円は資金ぐりに使いたくて仕方ない資金とでも言いたいのだろう。
 ところが根本は昭和36年の無謀な国民階年金の仕組みが問題なのだ。
 その点の追求が少ないことから、社会保険事務所は社会保険の適用を
 (強制適用であるにもかかわらず)加入を外しているポイントが浮き
 彫りにされていない。35歳未満のフリーターは417万人といわれるが、
 このポイントに社会保険は手つかずである。そのうち百万人ほどは業
 務請負会社に勤めているとのことだが社会保険事務所はここにも手を
 つけることはない。又、いよいよ国民年金だけでなく厚生年金も加入
 者が減少している統計数字がはっきりと現れて来た。社会保険事務所
 は、「こうすればもうかる社会保険の営業」(昨年9月のメルマガの
 記事)のようなことを続けているので、すべての与野党が何を言って
 も実態は反映していない。
 事業維持には保険料未納をしてでも社会保険には加入し続けることが
 必要で、そうしてでも事業経営の石垣である人材を大切にしなければ、
 個人も会社も日本も経済も発展はあり得ない。この経済学、財政学、
 経営学でも立証済みの、基本原則を思い起こそう。

 実質経済成長率7%の記事は波紋を呼んだ。実感のない問題とは別に、
 デフレなので、実質成長率は何もしなくても上がる時代である。昔は
 名目成長率ばかりで実質成長率のことは話題にされなかった。でも見
 る人は見ていた。名目成長率(水増しか?)2.6%とすれば、4.4%は
 何もしなくても伸びた分である。これやあれやの話題でマスコミ情報
 があてにならないとの議論が盛んになってきた。テレビも新聞も本当
 のことを言わないとかの事である。昔と違って、政府の官僚たちもマ
 スコミを使っての世論操作に躍起になっている。「生意気なこと書く
 とニュースを流さないぞ」とマスコミ記者は官僚に言われっぱなしだ。
 三文小説ならぬ「三文記事」を書いて読者を増やせと言っているよう
 なマスコミ三文編集者と言われても仕方がなさそうだ。日本経済新聞
 をはじめ新聞記者は文学部出身が圧倒的に多いから、ツブシも効いて
 三文記者への転職も瞬時に出来るのかもしれない。年度末恒例の3月
 株価操作、中国経済仕掛バブル、ヤフーBB詐欺的商法のDATA流
 出、年金まやかし討論など、経営管理においても「(@_@。ハマりそう」
 な話ばかりである。今の時代は、成長企業を目指そうとすれば、物事
 の本質をつかむキッカケとなる情報と理解判断する弾力的思考方法が
 モノをいう。

 紛争調整委員会の制度が充実してから労働紛争のあっせん制度は件数
 もうなぎのぼり。それとは別の「労働審判制度」が国会に提出された。
 地方裁判所の裁判官である労働審判官1人と労使双方の2人の労働審
 判員の計3人で組織する労働審判委員会で行う。調停でも審判でも
 「和解」の扱いとのこと。今の裁判所は「攻撃と防御」のゲーム世界
 であり、審理は3回以内で、としていることから、今まで「労働紛争
 は複雑なので和解のチャンスが来るまで時間を稼ぐ」との裁判官姿勢
 のうち早期和解可能分だけ「入り口でさばく」様になるだけだ。同じ
 司法改革でも大きな質の差だ。時間的に早くなるので失業手当受給中
 決着の可能性から労働者の利用は多いかも。失業状態の弁護士が多い
 から労働者向けの営業開拓は増えるかも。経済団体は裁判所での解決
 を望んだのだが希望どおりではなさそうだ。対決型紛争処理とすれば
 「ひとつの選択肢」かもしれない程度で各界の本質的意見は入らなか
 ったようだ。国会でどうなるでしょうか?
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/houan/16index.html

2004/02/10

第22号

 サービス残業の摘発が次々と行われている。是正勧告で賃金不払いを
 支給させただけでなく、近年になく、次々と書類送検をおこなってい
 る。刑事訴追をするのでいわゆる見せしめ的な傾向があるが、近年に
 なってこのような連続して摘発はなかったものだ。さらに、マスコミ
 でにぎやかに報道されていることを受けて、内部告発が相次いでいる。
 サービス残業に関する労働基準監督署の着眼点はこのようなものが考
 えられる。(フィクション作品にあらず)
 まず最初に通報とか申告があった場合に、7つのパターンでもって、
 サービス残業の方法を想定する。
 (1)自己申告規制型(自己申告させつつも、陰に陽に圧力)
 (2)上限設定型(一定時間以上は切り捨て)
 (3)定額型(一定時間以上は支給せず)
 (4)下限設定型(定めた時間に達しない場合は切り捨て)
 (5)振替休日消化型(時間外分は休日にと言うが未消化)
 (6)年俸制組み込み型(年俸制で時間外込みと説明)
 (7)法不適合型(管理職範囲を拡げている場合)
 次に、監督官は手間のかからない方法で資料の収集を行う。通報者か
 らのコピーを集めたり、申告者の事例を充分検討したりする。この段
 階で、あまりにも具体性が弱い場合には「労働条件の調査について」
 と称して、事業主の呼出し行う。そこでもって全体的な資料の収集を
 行うのである。いくつかの具体的な証拠が確保できた場合には「臨検
 (りんけん)」と、俗にわれる立ち入り調査を行う。その場で証拠集
 めをする。タイムカードや賃金台帳のコピーなどを提出させる。労働
 基準法違反でもって調査をすることから、申告した者に限らず幅広い
 範囲で証拠集めをする。さまざまな証拠を示し、監督官は管理責任者
 に問い詰める。サービス残業があったかどうかをその場で返答させよ
 うとする。ここまでくると、ほとんどの人は「持ち堪える」ことは出
 来ない。「天下の○○電器」と強気な管理職の例ほど、直面すると、
 非常に弱かったり、事前に分かっていると、その日に欠勤をしてしま
 うと見た方が通例だ(要するに、単なる内弁慶)。あいまいな返答や
 説明を続けていると、深夜の臨検で現場を押さえたり、社内パソコン
 の電源記録、メールの送信記録、ビルの最終退出者記録などを用いて、
 「悪質な対応に対して」は徹底して調査または捜査を行ってくる。セ
 キュリティシステムの万全な職場ほど証拠はすぐあがる。その後も否
 認を続けたり、サービス残業の賃金支払いを拒否し続けると、検察庁
 の書類送検は免れない。残業時間の記録操作とか証拠隠滅をはかった
 りすると逮捕は免れない(労働基準監督署に身柄を拘束される)。賃
 金不払いがその事業所だけで一億円(ひと月に按分すると420万円ほど)
 を超えていると、ほぼ逮捕となる。

 日本には独特のモノづくりの方法がある。日本における「開発風土」
 といってもよい。日本の高学歴、日本での仕事の進め方、職人的技煤@の蓄積の仕方とその職人の生活保障、日本国内での高品質に対する仕
 事の評価、高品質商品の購入動機など。これらが重なり合って生まれ
 ている風土ではないかと思われる。
 世界に向けて、今売れている商品はこのようなものである。昨年来
 「高付加価値と高い質のサービス」と言われてきたものである。この
 ような開発風土はヨーロッパの北の地方と日本にしか見当たらない開
 発気質のようである。問題はこれを支えるための仕事を遂行すること
 である。そのような部品供給だったり、そのようなコンピューターメ@フト開発だったり、ITネットワークだったり、対事業所サービスだ
 ったりなのである。日本で行われている一般消費者向けサービスは外
 国でも通用する。国内で試して、次に標準化をして、人材を育成し、
 その成功事例をもとに多国籍展開をすることは、中堅・中小企業でも
 充分可能なことである。日本経済はいよいよ民間の知恵と自力で再生
 をし始めたようだ。70年前の昭和大恐慌のときは、回復を取り戻した
 途端に政府がいわゆる「ぜいたく禁止令」を出して成長を止めてしま
 った。今の政府の経済政策は止めることはなさそうだが、育成も大き
 なブレーキをかけているのが実態だ。
 そこへ、今まで、属人的といわれてきたKNOW?HOWの蓄積方法
 が科学的に解明されエクセルなどで整理分類されるようになったので、
 KNOW?HOW開発も日本の有効な得意資源となり、個別企業の大
 きな武器となるだろう。

 年金改革の問題はテレビ、マスコミで話題が集中している。今さら話
 しても仕方のないようなことは、ワイドショーに任せるとして…。パ
 ートタイマーの年金加入問題の先送りは官僚としては痛かったようで
 ある。官僚はまさか経営者団体が理論だけで、そこまで反論するとは
 思わなかったようだ。厚生官僚はマスコミ報道のニュースソースに本
 質的な話は流さなかった。政府審議会の委員も年金問題に素人な者に
 限った。これで何とかホオカムリし続けようと事実事務次官は自信を
 持っていたようだ。ところが、経営者団体には本当に本質を見抜かれ
 てしまったようだ。労働団体はそのへん厳しく見抜くことは出来なか
 った。
 しかしながら、「保険料と給付のバランス」の理屈をこねて、被保険
 者がキツネにつままれているうちは、まだまだタカをくくるつもりの
 様子だ。5年先送りになれば給付が減るだけという案ばかり。18.0%
 になったとしても70歳以上の給付を削るだけの考え方も同じ発想パタ
 ーン。官僚としては4百数十兆円の使いこみを、責任追及されるまで
 は、保険料と給付のバランスと言っておけば、なんにも考える必要が
 ないのである。女性の年金、もお茶を濁したようなお粗末な話。「離
 婚をしたとき妻に年金がない」とまことしやかに説明されているが、
 西独で30年ほど前に同じような制度を実施してからというもの夫は離
 婚されないように、家庭サービスを励むようになったことから離婚が
 減少していったとの事例がある。これにしても厚生労働省の議論は枝
 葉の問題ばかりで的を射ていない。厚生年金基金は年金制度と一体の
 制度である。まるで別もののように宣伝し取り扱われているがそうで
 はない。給付カットや解散が続出しているが、そもそも厚生年金基金
 の設立を促してきたのも、今の事態を充分予想出来得る厚生官僚であ
 った。

 65歳までの継続雇用義務化。今通常国会に高年齢者雇用安定法改正案
 を提出。65歳までの継続雇用を企業に義務付ける高年齢者雇用対策報
 告をまとめた。継続雇用の年齢を2006年から段階的に引上げ、2013年
 までに65歳定年などを完全実施する計画。3?5年は暫定措置として
 就業規則での選抜方式でも可能な道も考えた。2007年から団塊の世代
 の定年ラッシュが始まる。全雇用者数の9.3%に当たる500万人が2010
 年までに60歳になる。このままでは年金にしろ個人消費にしろ納めた
 り生産する側から給付を受け消費するだけに変わるのである。経済を
 ストック(蓄積)と考えている人にとっては、背筋の凍りつく話であ
 る。(ベビーブームとは1947年生まれが約267万人、1948年が約268万
 人、1949年は約269万人。ちなみに、2002年の出生数は115万5千人)。

 「派遣」と「請負」の区分が極めて不明確になっているとの調査が、
 今ごろになって発表された。業務請負を利用する企業の3割が請負社
 員の勤怠管理を自社で行っているとのこと(愛知県経営者協会の「非
 正規社員雇用管理調査」)。これは特に小規模企業では顕著。ユーザ
 ー企業が、業務請負社員に対し、業務命令を出している割合も全体で
 4割、小規模企業では8割を超えるとのこと。3月からの都道府県労
 働局の取り締まりの大きな利用資料となりそうだ

2004/01/13

第21号

 2004年、明けましておめでとうございます。
 経済構造大変化の真っ最中です。事業の枠組みの選択で明暗がはっき
 りする時代になりました。新経済状況でのジャパニーズドリームの可
 能性が見えてきた時代でもあり。事業を切り開くのかどうかの時代。
 「世の中こんなもの」と悟ってしまえば先は我慢の連続。暗闇であり
 ドン底です。
 私たち専門家も知恵と工夫の発揮しどころです。幸いにも職業能力は
 持ち合わせがありますチームですので、どうぞ私どもをお役立てくだ
 さい。本年もよろしくお願いいたします。

 この1月1日から労働基準法が改正施行される。実務上の目玉は期間
 雇用契約と解雇事由の2つである。時はグローバル社会。労働力調達
 策や業務遂行体制において、個別企業の事業運営方法が2極分化する。
 「改革と効率」それとも「現状と人目を気にする」の2極だが、企業
 間でも企業内でも2極に分かれる。

 具体的な書式などを公開しました。ダウンロードのページからどうぞ。
 ○期間雇用の雇用契約書(2-02)
 ○解雇規定の例文と説明(雑誌の企業実務1月号誌より内容充実分です)
 まずは見てください。一挙に解決する課題もあるでしょう。労働基準
 法のイメージチェンジもしてください。さらに正社員対象に業績評価
 の出来る業務内容・評価基準契約の労働契約書も開発中です。
   http://www.soumubu.jp/download/

 皆様から寄せていただきましたネットでの質問。総務部門での弊社WEB
 のフリー相談に寄せられた質問。これらの公開承諾分の一部、第一弾
 をnet掲示板にしました。よく似た疑問などを探してみてください。
   http://www.soumubu.jp/contact/

 実は、製造業の派遣解禁とは、偽装請負の摘発抑制の対策。実態が派
 遣である偽装請負を派遣業者・派遣先共々でも解決させようとのこと
 での摘発抑制対策が大きな狙いとしてある。(偽装請負とは、民法で
 言う請負と称して実際には労働関連諸法で言う派遣、出向、労務供給、
 職業紹介、雇用の仲介などを行っている状態)。だから、期間は1年。
 安全衛生上で派遣先が保護。労災事故の管理監督責任は派遣先。
 政府は指導監督業務を公共職業安定所から格上げして労働基準監督署
 の上級機関の都道府県労働局でもって進めようとしている。
 また、狙いが偽装請負対策なので、社会的コスト対策は熟慮しても個
 別契約にコスト軽減の政府配慮はない。派遣先からすれば社員と比べ
 ると人件費減だが、偽装請負会社が派遣許可業者として契約した場合、
 従来の偽装請負に比べコストの増加を見込まなければならない。特に
 製造派遣では労働局の指導監督の厳しいことが予想されるため社員の
 欠勤や休暇の緊急代替程度しか使えない。個別コスト増の要因は、
 1.社会保険料のコスト増。社会保険料は毎月の給与の22.7%もかか
   る。そのコストは、やがて請求として派遣先に回ってくる。
 2.労基法改正で浮上した期間雇用者のコスト増。具体的には、派遣
   会社は雇用契約を結んだ場合その途中で派遣先の都合で契約解除
   したときは残りの賃金を保障しなければないことになった。派遣
   会社が残りの不就労日賃金の損害賠償の責めに応じなければなら
   ない。派遣会社に利益の余裕がないので、その派遣会社が責任逃
   れをしたとき「派遣会社の責任だ」と言っても派遣先が責任を取
   らねばならない。派遣先が共同被告としての訴訟ケースも可能性
   大である。業務請負のように人数の融通が利かない。
 3.派遣先でも解雇事由が問題になり損害賠償の責任が発生。派遣労
   働者に解雇事由があったとしても今般の労働基準法改正で派遣会
   社の就業規則に不備があれば解雇無効。また派遣会社の支払能力
   や倒産などの場合、結果的に解雇を暗示または指示した派遣先の
   派遣契約解除行為が賃金保障等の損害賠償の引き金になっている
   との責任を免れることはできない。その金額は派遣労働者の定年
   (60歳)までの賃金総額。(これからは派遣先でも派遣会社の就
   業規則の点検が必要)。
 業務請負の形態とノウハウを持つ会社は、今回の改正でも、何の問題
 も生じない。実態として経営基盤の弱い業者が将来にわたって不安定
 だからこそ「今こそ、派遣業解禁!」と主張しなければならないのだ。
 水ぶくれした大手派遣会社こそが、投資の割には受注が少なかったり
 膨大な先行投資をかかえているので銀行のツナギ融資のために表面的
 売り上げが必要なのだ。派遣先へはこんな派遣業者のコストの跳ね返
 りは必然的。不安定業者。ダンピング。そして法律違反。派遣業の
 「追い風」とは偽装請負専門業者が自らの営業トークに使っているに
 過ぎない。メーカーが、その片棒をかつがされてはたまらない。だか
 ら製造派遣は自社雇用と変わらないのである。
 ここまで説明しましたように何時までも偽装請負を続けるとか派遣法
 違反を繰り返す製造業関係の違法業者が、政府としては本当に邪魔に
 なってきた。「物の製造」業務への派遣解禁にともない、従来からの
 偽装請負を法改正後に取り締まるために司法警察権が使われる。
 指導監督業務を公共職業安定所から格上げして労働基準監督署の上級
 機関の都道府県労働局でもって進めようとしている。派遣先への指導
 も、従前の例からすると、製造派遣業者の契約企業から順次定期指導
 が行われる。(なお、事件事故があった場合は優先的に即調査が入る)。
 派遣業の「追い風」とは偽装請負専門業者が自らの営業トークに使っ
 ているに過ぎない。もう一つ違う側面から。労働局の労組である全労
 働省労働組合を傘下におさめる全労連は製造業の派遣について、この
 期に何も言っていない。だとすれば監督指導要員の増員要求をしてい
 ることからして労働局の職員の意識実態は取り締まりに賛成であり、
 労働局は労使挙げて、製造業の違法派遣の取り締まりに乗り出すと見
 てよい。

 年金改革。マスコミもすべてが決まってから大々的に報道。テレビで
 元大蔵官僚が年金財政は破綻し粉飾決算と認めたとおり。マスコミは
 この周知の事も報道するのをチュウチョしていた。
 厚生労働省の官僚たちは抜本的改革どころか、マスコミ外では、もと
 より「概ね合意」された改革案の成立に大きく自信を持っていた(事
 務次官発言)。給付は元のとおりの50%。保険料は20%から18.35%減
 だか、これは元より織り込み済みで調整の範囲。今の赤字を作ったの
 は昭和36年の国民皆年金の際の政治判断。そのときから破綻の指摘が
 されていた。今回の年金改革は、そんな事もこんな事も知っている専
 門家を審議会はじめ政府関係に寄せ付けず、素人と赤字の責任を取ら
 されそうな者たちで作戦を練って決めたようなもの。政府はここに来
 て、新制度なら移行経過措置の費用計算が必要と言い出してはいるが、
 本気で思っているなら年金制度の素人である。子供だましなら悪質で
 ある。いずれの立場でも年金の専門家ならば、こう即答する。「この
 給付と保険料だから財源はいくらかかる」。次に「財源を使い込みし
 た? 誰だ!」そして「横領なら弁済させろ。はっきりさせて後、税
 金投入を」責任ある専門家はこう答える。ところが、実は日本の大手
 4政党は「年金泥沼」での浸かり具合の差しかないのでモゴモゴとし
 か言えないのである。善良なる民間事業者は政府と言えどもインチキ
 な輩の言うことばかり聞いてはいられない。