2010/12/07

第104号

<コンテンツ>
10月からの需要の落ち込みは深刻
地道な経済:建て直しの基盤について
   ・建て直し:例えば=1
   ・建て直し:例えば=2
   ・建て直し:例えば=3
この低迷時期、個別企業で蓄積しなければならないもの
その次の段階として、企業発展法則
そこに、民法改正が事実上水面下で
 ……そもそも、債権債務とは、
 ……雇用関係については、
 ……ところが役務提供契約について
 ……そんなことよりも大変な役務提供契約
 ……その労働者供給基準が民法の側からも提起
 ……市場や経済の需要面からだけではなく
 ……実は、職業安定法の行きがかりで、請負事業


10月からの需要の落ち込みは深刻
である。来年春まで、回復する兆しも無いというのが、経済学者の見通しだ。
10月中は、7~9月期の経済指標が発表されていたから、景気の悪化は表面的な議論にならなかった。ところが、肌で感じる末端経済は、早ければ9月末から一挙に低迷しだしたのだ。エコポイントの効果が消えてしまえば、大きな反動がやってくることがないと言われているが、この政策が自動車や家電業界に対する「在庫一掃セール」政策であることの本質が見逃されていることには警戒が必要だ。
失業率も10月は悪化した。この失業率だが、雇用調整助成金の受給者、失業保険が切れた人たちへの職業訓練(基金訓練:3~6ヵ月、月額10万ないし12万円支給)の受講者急増はすさまじいようだ。
ハローワークの求人もピタッと止まった。
衰退産業延命策となっている雇用調整助成金、水準の低い知識訓練で職業能力の取得には縁のない職業訓練、こういった目に見えない失業対策事業を含めると、失業率は欧米並みに10%を超えていることは間違いない。とにかく、10月から企業の職安への求人は一挙に減ってきている。ということは相当の業績落ち込みと見て良い。


地道な経済:建て直しの基盤について
大方の識者の意見はまとまりつつあるようだ。それは、労働力の移動を図って個人消費を引き上げ、ノウハウ技術や観光立国を進めるための安定基盤を形成する方向性である。それは、「政府の空回り雇用掛け声対策」とは大違いである。ひょっとすれば、「戦艦ヤマトの雇用政策」は学識経験者から見放されてしまったのかもしれない。

建て直し:例えば=1
1週間に60時間以上働く労働者は、労働力調査によると、700万人程度の数値が出ている。月にすれば、80数時間の残業ということである。60時間以上の割増率1.5であるとか、高賃金男性正社員の時間外労働といったコストが、個別企業では問題になりつつある。サービス残業として賃金不払いというわけにはいかない時代にもなった。片や、深刻な不安定、非正規労働者は1000万人ほどと言われているが、その中には大卒・短大卒の高学歴女性とか主婦が圧倒的に多いのである。
仕事の標準化、
予見計画性を高くして業務遂行、
能力別業務分担といったものを、
ICT機器を駆使することで、
こういった女性パートタイム労働力を安定提供することで、
個別企業の全体の労働生産性を思い切って引き上げることは可能なのである。これを先駆けて行う個別企業は、自ずと付加価値率も高まる。そして、消費財の需要拡大により経済の良い循環が始まるのである。旧態依然のような金融資本投下政策や国家計画経済政策とは異なり、貴方の個別企業だけが浮かび上がるといった方式なのである。

建て直し:例えば=2
太陽光発電などの省エネ産業にも意外と発想が乏しい。建設業者の受注や雇用増加にもつながるのだが、アイディアよりも、旧態依然の「出来ない言い訳」が目立っている。ところが、
☆太陽熱温水器(エネルギー変換効率50%)を戸建住宅のみならず、マンション、ホテル、病院、福祉施設などの屋根にまで利用する発想は少ない。
☆太陽光発電も、学校・体育館、公共建物、工場、ビル、高速道路の路肩・中央分離帯、鉄道の路肩、海岸線、海面発電とまでの発想である。
☆風力発電も、発電機騒音が問題ならば陸上にこだわることなく、無人島や海洋に設置すれば良い。
☆波力発電とか潮流発電も有望なのである。
☆地中(海中)の地下熱は、地下数メートルでさえ表面温度との差は10度以上あることから、水道管で循環させることにより、冷暖房費を節約出来るといった発想だ。
こういったところまでの発想で考えれば、政府の掛け声政策など待つまでもなく、個別企業でも十分事業化出来るのである。本当に必要なのは、こういった省エネ産業を制度面で育成する方面での具体策ぐらいであり、民間から具体的な省エネ製品システムを持ち込まないと、行政は動くはずがないのだ。

建て直し:例えば=3
仕分け事業といったイベントで、お茶を濁している場合ではなく、生活に密接な公共施設の再活用アイディアがある。これも、その道での個別企業のビジネスチャンスである。小学校の空き教室に保育園ができれば、非常に安い経費で待機保育児問題はなくなり、もっと多くの有能な母親や父親が労働の場に進出することが出来る。マスコミなどが流す「子供手当の活用論議」といった愚策な論議ではない。事業主体として民間NPOが進出すればよく、利益率は民間営利の個別企業よりも十分に見込まれるものだ。民間営利企業だったとしても、役所主導の公共事業を待っているのではなく、街づくり・地元経済・観光リゾートといった視点から見れば、数多くの公共施設がビジネスチャンスを待っていると言えるのである。


この低迷時期、個別企業で蓄積しなければならないもの
それは、個別企業としての組織的能力向上と個々人の職業能力である。
筆者は、各企業の技術を披露するビジネスイベントに出かけて各々担当者にインタビューをするも、世界に通用する技術であっても、それを流通(経済学での交通も同じ)させる取り組みやノウハウが全くないのには驚かされた。高水準技術を持つ各社は、口をそろえて技術は自慢するけれど、
1.取引ルートにはどんな種類があるのかを調べたことがないとか、
2.見ればわかる結果が一目瞭然な製品を扱っていても言葉の壁があると不安が走り、
3.日本まで買いに来てもらえば良い製品にも関わらず現地まで集金に行く不安、
といったような、この三つの共通点があるようだ。
なるほど具体的に動く能力がないから、だから商社や大手企業の「お目にとまり」、召抱えられ、ひいきにされようとする受注活動展開しか知らないのかもしれない。これでは、まるで水商売や風俗の販売方法と同じ水準である。
旧来のように、資本投下を図って人海戦術で売り上げ向上→利益の確保といった時代ではないのである。ICT産業革命の真っただ中、従業員の能力向上を図り、一人当たりの労働生産性を引き上げ、今よりも一歩でいいから、ワンランク上の「高付加価値製品&高水準サービス」の商品提供を図る以外に道はないのだ。個別企業としての組織的能力向上から手始めに進めることが定石であり、経営幹部から個人の能力向上を始めるといった方法が、極めて現実的な定石である。
例えば、人事総務部門の幹部養成とすれば、今必要な教育は次のようなもので、知識の習得ではない。書籍やウェブサイトを見れば見つけられる山のような知識情報から、
リサーチ→発見→応用→定着させる「器」である職業能力が今こそ必要なのである。
《新時代・新経済環境にむけ人事管理者の「素質」育成教育》
http://osakafu-hataraku.org/contents/personal/education.html


その次の段階として、企業発展法則
「競争力のある企業が、若い労働力を集め、新商品・新市場に進出して行く」
といった経済発展の法則が存在するのである。職業能力もなしに、旧態依然の惰性の毎日の中に現場を打開する道など存在するはずがない。
体得された知識がないと創造型経営は難しいと言われる。だから、個別企業の幹部の少なくとも30%は、高卒者にするべきだとの研究も、経済学の視点から進んでいる。日本の大学がサラリーマン養成機関になり下がり、個別企業が「高校生に頼り、経営者は創意工夫出来る人と組むことで活力回復をするのか、それとも既成の大学生に頼って没落するか、あるいは企業経営の自殺の道か」といった選択を迫る経済学者もいる。余談ではあるが、この経済学者に言わせれば、難関の末に伝統的大学に入学し卒業した者は義務教育などの教育機関で吸収すれば丁度良い(民間企業で働く能力に疑問)とまで言い切っている。
とりわけ、
その道のプロであるとか、その道の専門家にといったものに近づいて行くほど、よほどの注意をしていないと、「専門家の勘違い」を起こしやすい。すなわち、その方面の専門的知識でもって、何でも見通しを立て、解決が図れると勘違いしてしまうのだ。まるで、「善い道を探し歩もうとする」思考パターンの人に限って、独善的になり、神がかり的になるのと同じで、一般社会や経済社会では通用しなくなる。そこには、真実や正しさは善に優先するといったような思考パターンこそが個別企業の発展に寄与するのであり、経済発展や社会発展に500年間ほど寄与してきたのである。(ただし、この500年の中で、今が450年ぶりの信用・金融の危機だ)。
もっと平たく言えば、経理事務担当者や資格取得マニアとか典型的サラリーマンには、個別企業発展の牽引力はないということだ。


そこに、民法改正が事実上水面下で
進められているが、これは重要なインテリジェンスである。関係するビジネスモデルや業態で、消えてなくなるものが出て来るのだ。
明治時代の民法制定以来の大改正と言われ、商取引の根底にある債権債務の取り扱いが論議されている。政府は、平成24年の通常国会に改正法案提出を進めているが、そうなると、3~4年後には新しい裁判例や判決が出て来ることとなり、これにより集金出来る業務と代金支払いを拒絶される請負が発生して来るのである。知識ばかりを追い求める似非専門家には、たとえ弁護士資格があったとしても、これが何のことか解説が出来ないのである。
では、何が改正されようとしているのかは、あとで紹介するウェブサイトを見れば、詳しく分かるが、まずは、どんな論議になっているのか大まかな概略説明をする。これが、日本国内のビジネスモデルの在り様を定めるので、難しいも何も、企業経営や商業をするのであれば、認識することは不可欠である。

……そもそも、債権債務とは、
辞書を調べても意味不明である。この場合、歴史と発生源を見れば理解に役立つ。時はアヘン戦争、債権債務の言葉は元来中国語である。アヘンを中国にどれだけ持ち込んだのか分らないイギリスは、相手先からの「給付を実行させることを内容とする権利」を確定させて、売り上げを回収しようとしたのである。ちなみに、どんなアヘンを、どれだけの量で、確かに届けて、相手側も確認したのであれば、債権債務といった「カラクリ?」を考える必要すらなかったのである。すなわち、香港や上海に陸揚げしても、途中で中抜きされ、消えて無くなり、最終末端まで届いた物の内容など判らなかったという事なのだ。だから、現代中国人には、この「カラクリ?」は分からないし、「帝国主義者や資本家の理屈だ」と言って、中国共産党などは論陣を張って来るのだ。(これ以上の話の展開は、中国経済問題にハマってしまうので、ここで中止)。

……雇用関係については、
いわゆる民法の雇用と、労働基準法や労働契約法の条文条項との整合性について話し合われているが、それはそれで、既に裁判例や判例で動かしがたい現実があるので、読めばだいたい理解出来、目新しいものは無い。
労働契約法の解雇条文の、「その権利の濫用」とは、民法1条3項とは異なる解雇権濫用法理であることを明確にして、むしろ、民法にかぶれ気味の弁護士が労働法の通念を身につける効果を期待するものと思われる。

……ところが役務提供契約について
重大な改正案を提起している。現在の請負の中で、何らかの完成を伴わない無形な結果を目的とする場合は請負から外して、「役務提供契約」といったものを新設しようという、改正案の提起だ。
役務提供すなわち、「役務提供契約」というものが新たに設けられた場合、雇用されていないが役務提供をしている労働者という概念が生まれて来るのだ。個人請負…業務個人委託、軽貨便、学習塾講師、WEB製作とかいった人たちが労働者と法定法理とされると、現在の複雑な立証を伴わなくとも労働基準法や労働契約法の定めに従って労働者との法律適用を受けるのである。「個人事業主では?ならば労働者ではない」といった議論は一掃されることになる。

……そんなことよりも大変な役務提供契約
の新設がビジネスモデルに大影響するのである。役務提供=労務提供(労働者供給)といった要素を多分に含んでいるから、先に述べた個人請負か雇用かといった論議とは別に、集団的な役務提供契約として、請負契約から切り離す部分の(現行の)「請負」があることを指摘しているわけである。すなわち業務請負と言われる形態の中で、目的物が存在しないものは請負契約ではないから、労働者供給契約と判断されることになる。完成を目的とする目的物が無いとなれば、それは役務提供契約であり、そして労働者供給契約と見なされることになるのだ。すると、請負代金はもらえない。

……その労働者供給基準が民法の側からも提起
されて来ることになるのだ。職業安定法、労働者派遣法、そして請負と労働者派遣の区分基準(大臣告示)の解釈について、民法の側からも決定的な判断が下されることになる。告示改正や新しい通達が出されることになるのは予見出来る。もちろん、偽装請負なのか業務請負なのかの曖昧さは、民法の判断基準からすれば、そんなものは一掃されることにもなり得る。ビルメンテナンス業や警備業などの旧来からの業務請負、新しいサービス(服務)業態その他も、最初から洗い出されることになる。洗い出された後は、もちろん、個別企業の事業として継続することは不可能となる。

……市場や経済の需要面からだけではなく
ここでは民法の側面からも、「高付加価値&高水準サービス」の商品提供といった完成を目的とする目的物を備えた業務となるように、業務改善を迫られることになるのである。その現われ方は、代金を支払わないとの行動になるのだ。単なる人員供給や人海戦術ではないことが鮮明になっている事業であれば、完成を目的とする目的物を備えているので問題はない。もとより、時代に逆行して価値ある目的物を提供出来ない業務請負やサービス業態であれば、すなわち、単なる人員供給や人海戦術を続けているのであれば、民法改正どころか、今や延命の余地は経済的にもなくなって、それは経済的にも、職業紹介事業と見なされるかもしれないのだ。

……実は、職業安定法の行きがかりで、請負事業
と見なされているが故に、それが税法の成り行きから株式会社を形成、そこで事業代表者が社長となったものだから、本来的に経営者ではない者が社長となったがために、下請け外注構造が歪になっていることも事実なのだ。法律の形にとらわれ、税制の仕組みに惑わされていると、こういったことが見えなくなる。
法務省:民法の債権に関する規定改正を法制審議会に諮問
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900044.html
(雇用契約 準委任契約 役務提供型契約)
さて、その民法改正の実効性といえば、金銭支払の有無が関わって来るので民間主導・生活目線の日常的営利行為となり、その実効力といえば税務署、労働基準監督署、職業安定所などの行政施策力どころではないのだ。