2003/07/08

第15号

 株価上昇? 昨年夏に予想されていた3月危機・6月危機の反発のよ
 うな「波打ち現象」。日本経済は凸凹しながらも谷底向けてゴロンゴ
 ロンと落ちていっている。マスコミの一喜一憂をしり目に、これまで
 好調だった企業でも、4月から軒並み売り上げが低下している。
 そこで中小では一挙に、人員削減・リストラに手を付け始めようとし
 ている。ところが、全員解雇して再雇用と考えたものの退職金が払え
 ない。そもそも退職金原資が無くなっている。バブル期に節税のため
 に退職金引き上げの措置を行った会社はなおさらである。こんなこと
 から、決死の退職金問題が急浮上してきている。決死になるのは当て
 にしていた資産売却価格が予想以上に悪化している現実に遭遇してい
 るからだ。
 このような時、経営側に事業の将来ビジョンが無ければ、いくら代替
 措置を社員に提供しても、「どうせ辞めるのだから」と社員は退職条
 件闘争に入り、会社の資産の食い合いになってしまう。「将来がない
 場合」は、対話を求めれば感情問題を起こし、妥協案は値切りと受け
 止められ、按排(バランスを配慮)する措置は強行的と受け止められ
 る。
 反対に、将来ビジョンには若者は夢を抱き、中高年はそれを見て一肌
 脱ぐ。元より仕事意欲のないものは、日ごろと違って多くの者がこの
 際の退職を選ぶ。企業再生と言うと資金・債務整理に対策が傾きがち
 だが、社員への事業ビジョンの具体策の浸透如何では、成長分野進出
 で士気向上し、デフレ型業務遂行で収益改善も出来ている。
 特に労働債務の縮小は複雑なので、手遅れになる前に、その道の「外
 部専門家」に依頼するしか無さそうである。巷では目先の売上げのた
 めに好都合な経済分析を素人ながら吹聴しているが、実は2005年3月
 末までは経済を落とし込む仕掛けになっている。「店を縮めるときは
 表座敷から取り壊す」との江戸時代のことわざが生きてくるのである。

 役所へ提出する書類の、電子申請の準備が民間企業の中でもはじまっ
 ている。事業をやっていて一般的によく通う役所は、職業安定所、社
 会保険事務所である。雇用保険、社会保険の事務はどうなるのか?
 10月開始を前に、パートをたくさん雇用している事業所、労働集約型
 の会社、これらは理由があって、電子申請開始やワンストップサービ
 スをとても嫌がっている。事務を取り扱っている中小企業団体の中に
 も「パソコンが出来ない?」との口実で頑強にいやがっている団体が
 ある。これらのところは社内の事務管理を、労働者名簿、賃金台帳、
 雇用保険被保険者名簿、社会保険被保険者名簿など、あえてバラバラ
 別立てで作っている。事実パソコンは速度が遅いかつ瑕疵点検に余分
 な手間が掛かるのではあるが。さらには社会保険事務所の職員の代り
 に民間企業が給与・設備費を負担しての入力作業をなぜしなければな
 らないのかとの苦情もある。点検時間・出力時間まで余分に掛かる上、
 紙代印刷費まで民間負担だ。
 ところが、本質は事務手数ではないのである。年金制度・政府機関や
 官僚を信用していないのに民間企業は協力する理由がない。理由の解
 からない年金保険料負担増。年金加入基準が週20時間働くパートか年
 収65万円の雇用者か、いずれにしても前もってそんな個人情報を政府
 の使いやすいようにデジタル化して、不本意な増税(保険料は税と同
 じ)に協力するほど、民間企業はおめでたくない。今の社会保険行政
 では「正直者が馬鹿を見る」との不信の目で民間は見ているのである。
 役所は実態を非公開・民間も非公開。まるで役所はキツネ民間はタヌ
 キの状況である。そうさせてしまった官僚の責任は大きい。
 これ以上のことは読者の皆さんで察してください。ご質問はフリー相
 談に。

 労働基準法改正。全般的には解雇制限の強化がされたこともあり労働
 団体側の勝利となった。連合、全労連ともに「成果を得た」としてい
 る。(6月27日成立)。年内施行の予定。
 主な変更の内容は、労働契約期間の上限を1年から3年に原則延長。
 就業規則に解雇事由の記載義務化。裁量労働など。特に、解雇につい
 てはどういう場合に解雇されるのかを、読んでわかるように具体的に
 記載されなければならなくなった。社会通念として合理的理由も必要
 とされた。違反するとどうなるのかと言うと、毎月の給与と賞与を払
 い続けなければならず、5%の利息とともに差し押さえまで至る事に
 もなる。「解雇ルールの法制化」とは、裁判判決を待たずに、監督署
 の段階でも、職権濫用解雇無効の判断が次々と行われるとの意味。ま
 た政府が整理解雇4要件の使用者側への周知を付帯決議した。整理解
 雇の4要件とは、(1)経営上の必要性がある、(2)解雇回避の努力を行
 った、(3)解雇者の選定が合理的、(4)労働組合や労働者との協議を行
 った、というもの。