2006/07/03

第51号

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今や日本の「大手企業+多国籍企業」といわれる人たちを除けば、経営者も労働者も、自らの利益や権利を守るためには、誰もが国家に頼らざるを得ない時代になっている。
この理屈を盾に、日本政府の官僚は力を蓄えつつあるようだ。しかしながら、国家公務員については、行政機関深部に影響力を持つ国公労
連(省庁別労働組合の連合体)が存在しており、この労働組合が人員削減どころか、先進国水準並みの公務員増員を掲げており、旧来の行政改革とは趣に大差のあることに注意が必要だ。政策課題が一致をすれば、高級官僚と国公労連は、労使協調どころか労使一丸となって進めている。高級官僚と国公労連幹部には、自民党後援会もあれば共産党後援会もあり、大学の同窓生も多い。現在の高級官僚が退いたとしても、場合によっては今以上に優秀な人材を国公労連幹部から補充することもできるのだ。この特殊事情が国鉄労働組合、全電通労働組合、全逓信労働組合などとは根本的に異なる。ちなみに、旧社会党・民主党後援会も存在するようだが、市民権はほぼなさそうだ。
「官僚の力が増している」とか、「国家公務員削減問題」のマスコミや識者論評の奥底にある、このような事情を見落とすと大きな勘違いとなるのだ。毎日のようにマスコミから流される社会不安の話題に同情してばかりはいられない。「大手企業+多国籍企業」などは、ニューヨークやシンガポールなどと日本を脱出した方が、極端に考えれば、利益や権利を守ることができる。
それにもまして、グローバル社会では、「ジャップ」が一番、信用されない。


日本経済、はてさて、果たして安心できるのだろうか。
いわゆる踊り場は過ぎたようだが、良い話ばかりでもなく、何処に危険があるのかとの話もない。経済成長との実感は未だ薄く、「豊かさ」まで行きつけるかとの見通しもない。そこで、ほとんどのマスコミ記者は飛び付かないが、実績には定評のある人たちで交わされているインテリジェンスをまとめてみた。

(1)日本国内の浮遊マネーからすれば、「高付加価値製品」とか「高水準サービス提供」の商品は、世界的に売れることは分かっている。ところが投資先がない。だから、村上ファンド然り、マネーゲームや株式に回らざるを得ない。だとしても、2008年まで、新経済への設備投資は続くこととなり、その意味では好景気との見方が強い。

(2)例えば、スウェーデンは高品質の武器輸出国。日本製機関銃のように打てばビスが緩んでくるようなことはない。日本としては、日本文化に根ざした「高付加価値製品」とか「高水準サービス提供」の商品生産を経済活動の主力としたい。しかしながら、その新経済を支える良質労働力が不足なのだ。その意味から、国を挙げての2007年問題であり、必死のフリーターやニート解消施策なのである。新経済を支える労働力が余っていれば、高齢者とフリーターといっても、ほったらかしにしておくのが経済の常識。「年寄りと役立たずは不要」との政策は完全にはずれた。皮肉にも橋本元総理は静かに逝った(7月1日)。

(3)「大手企業+多国籍企業」は日本を脱出した方が利益や権利が拡大する。かといって、made in japan を売り物にするしかないので、日本文化に根ざした優秀な労働力でもって、世界に通用する商品をつくらざるを得ない。だから、その効率を考えて日本に拠点をおくのだ。適当に売れる商品であれば、中国、インド、その後はアフリカ諸国が販売するからだ。中国や海外進出だ!と踊らされた個別企業は、やっぱり馬鹿を見た。

(4)製造・サービス・流通などの実物経済への投資と、「高付加価値製品」とか「高水準サービス提供」の商品を、世界各地へ販売したいところだ。だが、これが低迷すれば、国内マネーはマネーゲームや株式に回る。現在、世界的には経済低迷傾向だから、オイルマネーもマネーゲームや株式に回る。そこで要注意は、アメリカ経済がクラッシュ(現在が危険状態)、加えて、北京オリンピック特需後の中国経済縮小は、一挙に日本へのマネー流入となる。その時期は2008年がポイントとなる。

(5)マネー流入のひとつの形は、大型ファンドによる、日本の有能な労働力を企業ごとM&Aする方法。一挙に escalation する。

(6)もうひとつの形だが、実物経済の上向きが期待出来ないと判断すれば、意外にも再びバブルの発生。その判断はオイルマネーが行ない、バブルの引き金を引く。今度ばかりは日本政府にコントロール出来ないかもしれない。それには宮沢元総理もびっくりとか。もちろんその後に、不良債権が山積みされる。

これらのインテリジェンスは意外なようだが、良くみれば現実味がある。事実、国際的な市場の厳しさとは、こういうものだ。ある意味、日本政府やマスコミに登場する人たちが、これらをハッキリと言わないことも、納得ができる。
だから、個別企業では2008年をメドに、新経済に向けた資産(特に企業としての、ヒト・情報・ノウハウ・モノ)蓄積を図ることと、次に、その後の異変を迎える準備が必要となるのである。新経済で重要な位置をしめる情報やノウハウの蓄積対策においては、「高学歴(判断力・分析力)者さえ雇えれば…」と考えていては、よほどの素人発想で、投資先は有能な人材を育成する「具体的人事管理の手立て」である。それも、北欧の能力開発先進国を大いに見習うことが急務である。とりわけ、海外投資や不良債権は、個別企業が新経済のもとで安定するまでは、極めて危険である。