2005/01/11

第33号

 新年あけましておめでとうございます。

 この年末年始は、事件と災害のニュースで明け暮れたように思います。
 表現に問題があるかと思いますが、景気の悪い時ほど、事件や災害が
 取り沙汰される。マスコミは、ウケねらいなのか人目を気にしてなの
 か? 好景気であれば災害などは経済発展のバネにすらなってきたの
 が人類の歴史である。ものの本によると、人心不安の大きいときほど、
 「天災や凶悪事件が来るぞー。」と不安をかき立てる人たちが現れ取
 り沙汰されるのとのことである。

 ところで、今年末年始は、私達が本当に知りたい経済動向については、
 はっきりした論評が出て来ない。平成14年年末に日本がアジア経済戦
 争に負けて、これからの日本は、「高付加価値商品生産と高水準サー
 ビス商品」の2本柱であることは、ほぼ日本国中で異論のないところ
 になった。だがそれ以降は、経済動向について、諸説氾濫・正反対の
 意見が出てくる始末で、どの説が本質を突いているのか判断出来ない
 状況にある。
 それは、景気の拡大と後退が同時進行しているからである。景気指標
 と景況感のズレ。産業間で景気回復にズレ。企業規模により大手のプ
 ラス方向と中小のマイナス方向でのズレ。同じ産業でも企業間に、増
 収増益、増収減益、減収増益、減収減益の4タイプにズレ。地域間に
 景気のズレ。地価の格差は地価下落率が地方都市での20%以上の下落
 と三大都市圏とで大きな格差が生まれ、東京銀座五丁目や大阪御堂筋
 では上昇する現象すら現れてきた。資産の格差が急拡大し、若年層の
 無貯金世帯は急増している。旧来の経済指標と経済の動きに関する定
 石がコトゴトく外れているのである。これは旧来の調査方法が全面通
 用しないことを物語っている。
 そもそも、経済構造が急激に変化しているときに於いて、「旧式」の
 経済指標でもって景気動向を語ろうとするところに無理がある。状況
 を数字でもって表現すれば、具体性があり一般的にもよく理解もして
 もらえるが、経済統計や経済指標の前提が崩れているとか尺度が異な
 っているにもかかわらず数字数値を用いれば、それはマヤカシにもな
 りうる。諸説の共通点をあげつらっても安心材料にもならない。江戸
 時代から明治時代の経済制度が大転換したときには石高などの指標は
 すでに無意味であった。昭和大恐慌の立ち直り時期に、科学的管理法
 を製造業や商業に導入をしたのだが、それまでの職人的作業方法との
 指標比較をすることはしなかった。今回のバブル崩壊以降の経済状況
 は、人類の英知である国家の金融や信用維持政策によって、それなり
 に「打撃ショック」は緩和されたので平成恐慌(実は当時昭和恐慌と
 も言わず、長引く不景気と言った)とは多くの人が言わないものの、
 昭和大恐慌をはるかに上回る経済変動である。
 加えて、世界経済において日本がアジア経済戦争に負けてしまったの
 である。この経済戦争敗北とて、人間の数、資源、資金力のどれをと
 ってみても日本が優位なものは何一つないにもかかわらず、「人・物
 ・カネ」の三経営要素のみに関心を絞り込み、ノウハウや、情報の残
 る二つの経営要素を軽視したための誤算でもある。今や時代は組織主
 義から機能主義の転換の真っ最中なのである。19世紀以来のピラミッ
 ド型もしくは類似型の組織に頼った経営管理によって、減益となった
 個別事業が続出しているのである。
 要するに、大きな歴史の変化の中で、混とんとしている状況において
 は、「旧式」の経済指標でもって状況判断をすること自体が、事業経
 営転落への道なのである。現実的なひとつの側面から言えば、「高付
 加価値商品の生産と高水準サービス商品」を提供することによって、
 個別企業が「増益」となり「周辺に豊かさ」を享受できたかどうかを
 「指標や試金石」としていれば間違いはない。日本国全体の経済活動
 の結果である経済指標などは、弁解や責任回避の材料に使えこそすれ、
 今年については経営方針の本質からは度外視しておくほうが正解なの
 である。個別企業は、決して世俗的経済評論家の「いまや経済は踊り
 場?」論のようなマヤカシに振り回されている訳にはいかないのであ
 る。
 また、この1月、2月、3月は、不良債権の最終処理期間である。こ
 れに遭遇してしまったときには、冷静に考えるとして、「味方本隊か
 らはぐれ、敵に取り囲まれてしまった場合」と同じであるから、前方
 に突き進み正面突破する以外に、誰もが生存の道は無いのである。

 いよいよ今年の4月1日から、個人情報保護法が施行される。ところ
 が、話題の割にはどのような対策をとったらよいのかが知られていな
 い。多くの書籍には「個人情報管理体制の整備」とか「就業規則に禁
 止項目を記載する」と書いている程度で、対策としては「ざる」のよ
 うなものである。とくに、個人情報保護法とプライバシー侵害の不法
 行為(民法709条)は別建てであるとの認識が弱く、プライバシー侵害
 の不法行為については、未然防止対策(たとえばこのメルマガ巻末に
 示すような誓約書など)を取っていない個別企業がまだまだ多い。こ
 れでは訴訟となれば、個別企業は「踏んだり蹴ったり」の事態を招く
 ことになる。また、政令上の「個人情報データベースの件数が5,000人
 以内の場合」などに該当しないからといって、プライバシー侵害の不
 法行為は起こらないものと錯覚している人も多い。さらには、個人情
 報と個別企業の機密事項を混同し区別できないでいる人も多い。機密
 事項とは個別企業ごとで具体的に特定しない限り、「業務上知り得た
 機密は漏らしてはならない」などとの曖昧な表現では「機密事項」に
 は該当しない。

 (以下、メールマガジン2004年7月号再録)
 個人情報保護法の全面施行は、平成17年4月1日からである。ところ
 が、情報漏洩対策として、単に「機密と個人情報守秘」とのことで打
 たれている現場の対策だけでは、民間の損害賠償事件には、大きな手
 抜かりを生じる。巷でよく例示・論議されているものは、個人情報保
 護法や情報公開法理からだけの対策(4ポイントなど)ばかりに目が
 向いていて、企業経営に一番大切な損害賠償事件とか基本的人権トラ
 ブルの対策には欠落(瑕疵)がある。所詮、国家または官僚は民間の
 経済活動にとやかく口出しすべきではないのだが、法律に基づく国の
 アドバイスが無いからといって、民間企業では対策を忘れてはいけな
 い。個人情報保護法とプライバシー侵害の不法行為(民法709条)は別
 建てである。
 特に、秘密を取り扱う末端の従事者が、「どれが機密か分からない」、
 あるいは「具体的に個人情報かどうか区別できない」、さらには「情
 報を漏らして良い人と悪い人の区別が分からない」、と主張されてし
 まえば、「知らなかった(法律上は善意となる)」ということで悪意
 が無いことになり、個別企業は末端従事者の責任を問えなくなり、重
 ねて教育をしてこなかった責任も問われることになり、いわば事件が
 起こったときには踏んだり蹴ったりとなるのである。末端従事者に、
 就業規則上の処分が出来ないのはもちろん、「知らなかった(法律上
 は善意となる)」と言われ、民法上の損害賠償も求められない。外注
 や派遣ではさらに複雑になる。法律上の手抜かりで、事業者の過失責
 任ばかりが問われる。
 そこで、決定的ポイントを含めた具体的対策を誓約書の形で作成した。
 このメルマガの巻末に例示掲載。
 誓約書以外の形式でも自由。これを従事者に示すだけでも、法律上の
 効果には、「善意なのか悪意なのか」の大差が出る。ほとんどの「ウ
 ッカリ漏れ」は未然防止できる。ところで、IT関連業務のパスワー
 ド自体は機密事項でパスワードを悪用して個人情報を故意に漏らすこ
 ととなる。医療関係のカルテなどは個人情報かつ病院にとっては機密
 事項であり、病院が守秘項目としてカルテを機密に特定する必要があ
 る。と言う具合である。
 (再録ここまで)

 厚生労働省は、規制改革・民間開放推進会議の第1次答申に対する考
 え方を公表。市場化テスト(官民競争入札制度)と「主要官製市場等
 の改革の推進」などの意見を整理し、徹底して民間開放推進会議の答
 申を批判している。
  http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1228-4.html
 議論のテクニックにおいて、推進会議はお粗末にも劣勢に立っており、
 厚生労働省は非常に優位である。しかし民間個別企業の立場からする
 と、議論が空中戦になっており、民間開放推進会議の提案は、腑に落
 ちないし、現実味も湧いてこない。
 民間開放と言うのであれば現実身近なところで、たとえば、雇用保険、
 社会保険、労災保険などの保険手続きである、被保険者の加入脱退や
 給付について、官民双方の無駄・非効率そして個別企業総務部門から
 アウトソーシングするのに「ネック」となっているポイントは、代理
 した書類に「事業主等の記名押印が必要」なことである。弁護士や弁
 理士(特許、商標登録、サービスマーク)の業務は代理人の記名押印
 で済ませられる。安定所や社会保険の届出書類は全国共通で作成に個
 別企業の特色は無い。一般社員の問い合わせに対する担当社員の回答
 も(本来は)全国共通。非効率にも、これらの事務作業を個別企業の
 社員が行う必要はない。アウトソーシング会社などの社会保険労務士
 が行った方が品質・期間・コストは適切である。電子申請の普及が進
 まないのは添付書類が多いからだけではない。事業主の電子署名を省
 略し代理人の電子署名のみにすれば良い。現行法令で保険手続きなど
 のアウトソーシングには外部社会保険労務士の国家資格者を必要とす
 るが、その外部資格者のもとで事業主等の記名押印を省略するだけで、
 すぐさま多大な事務が効率化されるのである。この外部社会保険労務
 士活用範囲においての規制改革こそ、即、個別企業に役立つものであ
 り、厚生労働省の「権利義務を具体的に確定するための業務」にも有
 益なのである。特に社会保険関係事務の無駄には効果があると思われ
 る。もちろん、詐欺・横領、瑕疵などへの特別対策と供託をさせるこ
 とにより犯罪や事件での損害金の担保も必要である。これらは法令の
 大した改正もせずに実施できる。EUなどでは個別企業の経理事務を
 行政機関が代行して、個別企業の経営支援を行っている動きさえある。
 これからの小規模事業所の増加が予想されることも考えると、これだ
 けでも個別企業の間接部門の生産性は向上するのである。
 豊かな日本に向けての制度的インフラについて、主義・主張、文化・
 価値観を語っている事態ではない。民間からすれば、官僚組織は「自
 らの保身と権力を増やそうとしているのでは?」と疑っており、公か
 らすれば、民間は「営利目的だから不採算業務の切り捨てによる品質
 低下とか、劣悪不良な業務をするのでは?」との疑いが、互いにある
 様である。「疑い」があるのだから、そこは、この際、具体的な方策
 を考えて、規制改革や経済発展を目指す必要がある。数千年の昔から、
 イデオロギー対立の議論の末に有効な対策が行われた例はないのであ
 る。