2003/11/11

第19号

 選挙結果によって経済政策が大きく変わることはなくなった。日本は
 昨年のアジア経済戦争に負けた。バブリー中国、英会話のインドと2
 国に経済の地位を奪われている。これに対抗しての日本は国家として
 事を成そうとのこともなくなった。アメリカに経済進出や貿易の邪魔
 をされても、じっと我慢するだけになった。これも国民の選択なのだ。
 それではこれから事業を伸ばす方法は何かである。企業規模の大小に
 関係なく、国際経済に進出するか、それとも国内風土特化事業に限る
 かなど、いずれかの中途半端では成り立たない。商品や事業内容は、
  a.世界中を相手に付加価値の高い商品とか
  b.世界相手の高サービスに的を絞ることである。
 景気で思い悩むことはない。2005年3月末までは銀行への経済政策で
 民間企業への資金繰りは締め付けられるので経済は下降するばかりで
 ある。2006年までは不況は続けると総理大臣すら言い出した。この前
 提で企業経営の見通しを立てるしかない。やはり、ここ3年は世界の
 現実と事業の現場をよくよく見て、個別企業の組織的な運営に徹する
 ことである。

 IT化は組織運営の道具になるので、今のきびしい時代に、ホント、
 いろいろな分野で助かる。パソコンやITは40?50年前の自動車とよ
 く似ている。エンジンやメカに強くなければ途中で止まるような代物
 だったから運転できなかった。パソコンも便利な動かし方をしている
 と70%ぐらいしか動かない。ある弁理士さんが言うには「パソコンは、
 まだ機械じゃない」と。ところが、自動車でもパソコンでも、これで
 物や情報を運べば、他人より先に取引ができることには間違いないの
 である。顧客は見つけに行ったほうが簡単で、どんどん見つけにいけ
 る。仲間内の連絡も早いので、段取り良く意思の統一が図れ、内部管
 理費用がかからない。運送業界・情報産業業界、仕事がら観察できる
 が、扱う道具は異なっても、驚くことに、働いている人の気質は本当
 によく似ている。パソコンは自動車。使い道がわかれば「歩いて」行
 ってばかりでは居れないのは確か。そして昔も今も、機械好きはいて、
 商売(経営管理)よりも「メカの趣味」第一との「士」(さむらい)
 も居るものである。

 紛争調整委員会の「あっせん制度」は現実対応として、あっせん申請
 に至るまでもなく、納得性のある制度として社会に歓迎されている。
 都市部での紛争調整委員会への「あっせん申請」急増との各地の地方
 労働局からの発表が相次いでいる。
 斡旋や和解の解決方法は、実態では事業主や労働者の切なる願いで現
 実対応である。その証拠に今までは制度がなかったから労使双方が議
 員・暴力団・事件屋・示談屋の類に頼らざるを得なかった。…ところ
 が期待はずれも少しある。
 あっせん委員の法律や制度の趣旨に沿った養成が出来上がっていない。
 労働紛争調整官は受付や事情聴取段階での事務処理優先思考が強く、
 思い込み、決め付け、法体系処理の未熟さからの個人的判断、調整官
 と相談員ともに法律体系の無知、無自覚の職権濫用など、他の類似あ
 っせん機関と比べると未熟・頑固さが目立つ。
 「一度あっせんに応じたら譲歩しろ」と恫喝をかけるケースもある。
 問題は、これらを本省担当課では把握し切れていないところにある。
 そもそも、労働者・事業主の双方とも意見や気持ちは、専門家でもな
 いことから十分に表現できないのである。あっせん委員は期日の半日
 だけの聴取で、能力では非常に個人差が激しい。陳述書の提出を促す
 ことは少なく、調整官レベルでは事情の取り違えも多い。調整官は口
 頭で事情を聞くことに終始し、十分な背景まで聞き取れる訓練がなさ
 れていない。来年度から、企業に出かけて行って紛争実態把握の専門
 調査員を全国に配置する方針とか。だがサービスなのかな? 圧力な
 のかな? ちょっと怖そうな雰囲気である。制度と云うものは人の心
 に訴えなければ何事も長続きしない。
 そこで、加えて、制度の運用上の改善アイデアとしては、社会保険労
 務士とか弁護士の代理人制度を積極活用し、「あっせん」であるから
 といって端から問題をあいまいにするのではなく、双方が選択した主
 張は文書での陳述を促すなど内容面での合理性を工夫することで、納
 得性は増し当事者双方に資するのではないだろうか。

 労働基準法、解雇や期間の改正(1月1日施行)は甘く見てはならな
 い。就業規則の未整備は会社側の権利放棄と見なされ、全て提訴労働
 者に有利に働くことになる。10月10日、「就業規則が拘束力を生ずる
 ためには、内容を周知させる手続きがとられていることが必要」とす
 る最高裁としての初判断を示した。(ただし判例としては既に定着し
 ている。最高裁で判断されると、ほぼ行政指導通達が出されることに
 なる) 期間雇用が4年目に突入していれば提訴労働者は終身雇用
 (これも判例定着)となる。判例が定着すると以後の裁判では異なる
 判決が出ることはないので、法律が出来たのと同じ効果が出るのであ
 る。よって、労働基準法は読んだだけでは何の役にも立たないのであ
 るが…。
 先日の監督官の労働組合の調査発表によると30%強の監督官は司法警
 察員の警察権に強い興味があるようである。本省や地方労働局の官僚
 が甘いことを言っても現場の監督官は強気のようだ。また「基準法違
 反の書類送検」の件数で業務成果の判断がなされていては、経営にと
 って話は甘くない。国会議員で圧力を掛けようものなら現場の監督官
 の感情を逆なでし、洗いざらい徹底して捜査される。経営側は権力が
 無いので監督官以上の知恵で対抗するのが得策である。これもコンプ
 ライアンスだ。激動時代の社会の知識と知恵を身につけましょう。
 ※客観的合理的解雇理由についての記事は、メールマガジン第18号
  (2003/10/7発行)を。書式集の無料ダウンロードのページ、サン
  プル就業規則に解雇規程例を掲載しました。
     http://www.soumubu.jp/download/index.html

 年金問題。選挙が終わって国会議員の考え方は落ち着いた。「年金支
 給額は当面は現役月額収入の50%で、保険料負担は月額の20%を労使
 で折半。」(今の保険料は13.58%)
 厚生労働省がダンマリを決めて資料を出さないものだから、国会議員
 の素人たちは納得? してしまったようである。…たぶん、これで国
 民年金に続き、厚生年金も空洞化すると見た方が妥当。日本商工会議
 所の緊急アンケートでは厚生年金の保険料を引き上げられた場合は半
 数以上が賃下げの実施を示唆したとのこと。国会議員や官僚が決めて
 も民間企業は言うこと聞かない。厚生労働大臣が「年金を変わると言
 いそびれた人が18万人もいる。もう一度、届け出忘れをした人にチャ
 ンスをつくりたい」と届け出を忘れた人が申し出ればいつでも過去に
 さかのぼり記録を変更減額しない措置を検討していると、女性のパー
 トからも保険料を取るための懐柔策を発表したのは、この夏に流され
 たウワサ(メルマガ16号)のとおりになった。
 ※社会保険の本質に迫る記事は、メールマガジン第16号(2003/8/5
  発行)、第17号(2003/9/7発行)を見てください。

 夏から全国で爆発・火災災害が続発していることで関係省庁、地方労
 働局、労働基準監督署、経済団体、災防団体が動き出した。労働災害
 防止の要請が中心だが要請文では配置人員減少、熟練作業者退職など
 の「雇用問題」が生産性重視で安全管理水準低下を災害の要因とする
 内容が多い。厚生労働省は500人以上の製造業に安全管理に関する自主
 点検を要請。その実態も調査する。12月半ばに点検結果を回収し悪質
 事業所は監督指導をするとのこと。