2012/03/06

第119号

<コンテンツ>
一挙に空洞化のおこる危険
 ・例えば半導体、なぜ日本から脱出
 ・だからといって、原子力発電で低価格?
 ・日本経済の外貨、もうけ頭
 ・ある人事労務担当者の悩み調査によると、
 ・だから起死回生=商品に固有価値を!
 ・商品形態の歴史的発生もそうであった。

労働市場に激震=税と社会保険料の一体化

解雇事件の判例・裁判例=動向(2012/02/21)
  http://www.soumubu.jp/documents/kaikokenkyu.doc
  ・整理解雇事件の判決傾向(企業側敗訴率82%)
  ・整理解雇の4要件の政治的翻弄時期
  ・整理解雇4要件の、「人選の合理性基準」への疑義
  ・特定人物のプライバシーを調査することは
  ・解決金による自由解雇制度の行方
  ・解雇事件の判決直後の職場復帰
  ・整理解雇を避けるための配置転換の有効性
  ・専門職・専任職と言われる人たちの整理解雇
  ・社会制度や判例の将来展開


§一挙に空洞化のおこる危険
目先の空洞化対策が必要だ。日本経済は、うかうかしているどころではない。今や官僚の支配下となった日本政府の無策を話題にしていても仕方がない。
本省官僚は、マスコミ操作に躍起となっている。マスコミは肝心の、各省庁の経済や社会政策に及ぼすニュースを流さない。むしろ、記者クラブを通じての省庁記者会見や報道資料を流すだけ、これで世論誘導の協力者になっている。特ダネ、スクープは官僚から情報をもらえなくなるから(省庁からのリーク以外)扱わない。そこでマスコミの延命策なのか、コミックのような政策ネタに飛びついている。
「議論と問題提起」ばかり、あとの実行は無さそうなので、芸能ニュースより質が悪い。たとえば、大阪府は、財源借り入れ限度を引き上げて借金を増やし、府の帳簿を黒字化させた。マスコミは、「大阪府は赤字解消!」との、一貫性に欠ける事実を報道し、真実報道からは逃げた。官僚たちは、こういったマスコミが自社経営を優先する姿勢を見透かしている。
官僚は、「国破れても、官僚たちは残る」との経済体制転換に必死である。得意な計画経済を、いまだ法律と権力行使で続けたいようだ。OBや省庁から飛び出した官僚も同じ穴のムジナ、こぞって地方自治体に首を突っ込んでいる。


例えば半導体、なぜ日本から脱出
しているのかの原因である。根本的には半導体企業の電気コストが高いからである。撤退している半導体工場の経費の30~40%は電気料金と言われている。日本からアルミ精錬がなくなったのも電気料金であった。もとより人件費は高いのであるが、韓国の電気代は日本の半分だ(韓国からの電気輸入も検討されている)。だから、円高も原因のひとつだが、それは眼目の近因にすぎない。そこで、国内の半導体事業は長期展望でもって、工場を持たない研究・開発を進める方向である。だから、工場生産をイメージする経営哲学からは、空洞化の道しか残っていないとしか見えないのだ。そういう意味での空洞化ではあるが、うっかりすれば本当に経済全体が空洞化する。


だからといって、原子力発電で低価格?
の電気が製造できるわけでもない。それどころか、日本の電気料金が高いのは送電距離が長いために送電コストがかかるからだ。何も電力会社が独占価格で高値販売しているだけではない。そもそもヨーロッパでは、多くが電力発電は地域地場産業であり、原子力発電や大型発電は輸出用の電力商品である。ここに日本の電力価格の根本問題がある。終戦直後、日本の電力会社労使はGHQと対決して水力発電から火力発電へと発電方法を転換した。この段階では、発電所が地域分散していたから送電コストの割合は低かった。それが、原子力発電に移行するとともに送電費用が嵩んだことは否めない。だから電力産業は、原子力発電の代替発電が焦点ではなく、如何に日本の電力価格を引き下げるかなのである。このままでは、電力産業は空洞化するのである。ここが電力問題のポイント、下世話なマスコミの報道と異なるのだ。


日本経済の外貨、もうけ頭
であった自動車、家電、半導体はおろか、国内基幹産業の電源電力、通信、物流までもが空洞化しているはずである。なぜそれが見えないのか、なぜマスコミが取り上げないのかといえば、その経営哲学的理由は簡単である。それは、計画経済の着想で経営をするから、現実を調査分析して発想するわけにはいかないからだ。「イノベーションさえ出来れば!」と叫んでみても、所詮は計画経済の枠の中である。=よく考えてみよう、まるで昔のソ連や中国がやっていたことと、彼ら国営ニュースで流していた内容と、何ら変わり無いといった本質が今の日本である。それぞれの産業分析は省略。
こういった事情から、ニッチ産業とかサービス業といったすき間を狙う産業、これがもてはやされているのだから、たったそれだけのことにすぎない。日本経済全体の価値創造からすれば、どうみたところで経済効果が上がっているわけではない。所詮は、価値の奪い合いにしかすぎない現状だ。確かに、それは目前の会社経営では不可欠なポイントではあるが、
 1.確実に社員の能力を低下させ、
 2.組織として創造する価値は減少し、
 3.顧客に価値を提供できないから値下げや契約解除を招来する。
すなわち、経営がジリ貧になっているのは、ここに問題の本質があるからなのだ。


ある人事労務担当者の悩み調査によると、
現在の大手企業における担当者の悩みは、「採用と育成」だとしている。その中身は求める人材が集まらないことと、教育訓練の効果が上がらないということだそうだ。この調査は、どのように考えてみてもアンケートの回答者の、表面意見を集計しただけで、物事の本質を調査するに至っていない。ただし、所詮は表面的な語句を並べて、調査結果を発表した方が調査機関としては無難であるから、本質を突くような結論を出すわけにはいかないのだが…。加えて、論議を沸騰させるような調査結果を出そうものなら、人事・経営労務の基礎を学んだことのない人事部門社員からは、無知が故の批判が調査結果に対して集中するからだ。そうなると、調査を行った会社の売り上げが落ちることになるから、老舗の調査機関であっても、やはり無難な線を歩むことになっている。(もとより、調査側の労働者も無知な社員の方が、無難商品を問題意識なく作るのだから)。


だから起死回生=商品に固有価値を!
固有価値とは、使用価値に付加される価値なのである。計画経済の下で使用価値(効用価値)ばかりの論理で会社経営をするから、顧客の商品に対する価値増殖ができないから、商品価格を買いたたかれる道しか残らない。
まして根本思想は、「よい財を、より安く」である。
商品だけでなく、人間までがそうなってくるから、労働集約型産業にあっては、「良く仕事をできる人間を、より安く」となるのである。だから、営業部門が値下げ攻勢に後ずさりするのも、売る側としての大義は、安く売るとの哲学だから、次々と発注単価が引き下げられるだけのことなのだ。
そこへ最低賃金とか社会保険料などと念仏を唱えるように、計画経済の官僚が持ち込むものだから、経営も破綻する。官僚も最近はグループに分かれ、地方行政に首を突っ込むグループもあるが、もとより官僚は計画経済のことしか考えないから、どのみち計画のスピードにしか差異がない。
だから民間経営管理では、商品価値を単に使用価値(効用価値)だけと決めつけるのではなく、固有価値という論理明解な付加価値を加えて、世界約1億人の富裕層に売り込むことが重要なのである。労働の固有価値をビジネスプランに組み込まない限り、価格戦略・販売戦略も成り立ち得ない。特に、中堅・中小企業は小回りが利くのだから、能のないコスト・カットはやめて、「固有価値:付加商品」を売りだせばよいのである。
 1.最終輸出先(最終消費者の逆)は、世界約1億人富裕層である。
 2.その市場は日本国内が拠点となる。海外拠点ではない!
 3.個別企業に、語学もバイヤーも人材も不要である。
これをマスコミの素人に耳打ちされて、経営側が間違えてはいけないのである。
(研究報告を参照)http://www.soumubu.jp/new.html


商品形態の歴史的発生もそうであった。
そもそも、現在のような商品の概念ができたのは16世紀の半ばである。いみじくも450年ぶりの金融危機と言われる現代と一致しているのだ。商品についての経済学研究はもっぱらヨーロッパであり、日本での歴史的研究はやっと始まった(二宮尊徳ほか)ばかりだ。
中世は商品経済でなく、道具といえば農民が自家用に作った物、一部を除いては流通売買されるような代物ではなかった。それが16世紀になると交易品として商品が現れる。その時代、ニコラス・バーボン(1640~1698、貿易商、世界初の火災保険会社を設立)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%B3
が、「本来具わっている、光り輝くもの」(当時の英語ではintrinsick virtue)を提唱。これを名誉革命後に、ジョン・ロック(1632~1704、当時の政治経済社会の政策家)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF
とともに、封建的経済をつぶして、近代的経済政策を導入したのだ。今は当たり前になっている事柄ではあるが、その政策は次の3本柱だ。
 1.市場での価格こそを公平正義ととらえることにする。
 2.王様や貴族主導の貪欲的溜込経済政策を止める。
 3.労働が組織され分配されることによる価値の創造。
……この経済哲学と経済政策でもって商品生産が支配的となり、制度充実とともに流通が発達したのである。
さて、これは昔話ではない。
固有価値という論理明解な付加価値は、まだ世界約1億人富裕層と、グローバルでは局所的ではあるが、現代はこれが実行出来るのである。その道具はICT産業革命であり、その主体と実行力は気の利いた若者なのである。
話を人事担当者の悩みに戻したとすれば、
果たして「採用と育成」に悩んでいるとした調査結果は、果たして何なのだろうか? 一部の大手企業のように、「日本育ちの学生は使い物にならない」との斬新的な話?は、まるっきり滑稽なのである。


§労働市場に激震=税と社会保険料の一体化
納税と社会保険料を個人番号(マイナンバー法)で国が徴収一本化をすることになると、労働集約産業の労働市場は大混乱となる。これを順次説明すると、
 国税(所得税)+地方税(住民税)=賃金総額の約15%
 社会保険料は、労使合わせて、賃金の27.5%
     (労使折半!といえども、賃金削減に転嫁される)
【次のようなパターン】
1.税金を払わない労働者の例(非正規、学生バイト、専業主婦)
   80,000円/月収(週20時間余の労働)=12,000円/月額税
2.最近多いダブルワークの例(非正規、学生バイト、共働主婦)
  複数職場あわせ、150,000円/月収(週40時間弱の労働)
  =22,500円/月額税&労使の社会保険料40,500円
  ※事業主に支払い義務があるから、当然、賃金は切り下がる。
  ※切り下がらなければ、その労働者は解雇される方向。
  ※社会保険料の複数箇所報酬の合算制度、既に法律に規定。
★家計収入マイナス63,000円/月額=家計収入は87,000円に激減。
★働かない方がまし!となると、また生活保護者が増える。
  (ちなみに、現行都市部生活保護:ひとり125,700円/月)
さて、この直撃を受ける人達、
現在は個別事業所の源泉徴収とか、社会保険加入の対象者とはなっていない。だから間違いなく、労働関係の統計資料の上でも、非正規労働者にカウントされてもいない。日本全体の約5000万人の労働者に向けて、混乱が直撃することは間違いない。とりわけ、いわゆる中間層への打撃は、社会不安となって現れる。これはアメリカ政府が、中間層からの増税を進めたために社会不安が生じたことで実証されている。
 パターン1 … 中間層家庭の専業主婦や親元生活若年層に集中
   推計500万人~12,000円×12月×500万人=7200億円=増税額
 パターン2 … 底辺層家庭の共働、生活保護寸前の低所得者
   推計500万人~63,000円×12月×500万人=3兆7800億円
それぞれの推計人口を500万人としたが、この1000万人は、地下経済の労働者であるから、本当のところは分からない。現在は統計調査ができない部分だ。個人番号制である「マイナンバー」制度を導入すれば、確かに何万人ぐらいかの数字は、統計上で出て来る。そして徴収方法は、
扶養家族申告書、確定申告書、源泉徴収票、社会保険算定基礎届、賃金計算明細書その他、ありとあらゆる箇所に「マイナンバー」を記入させる方法だ。制度が出来ると、総務・人事・経理などの事務員に堅物優等生が活躍し、何でもパソコンに入力したがる単純頭脳者が蔓延している中、「税法の正義?」を振りかざされて、この直撃を受ける人達は「マイナンバー」を書かされるのである。そして、書いたが最後、突然収入が激減する世界に陥るのだ。
これでは、個別企業の労働者統制は混乱を来たしてしまう。
働いても収入増加につながらないから、労働意欲減退となり、そのツケは事業主に回って来る。もちろん、個人の購買力が低下することで益々売り上げが激減する。社会の治安は益々悪くなり、危険に遭遇する頻度が高くなる。
「国破れても、官僚たちは残る」そのものである。
この税額たるや、マスコミが話題にしている消費税の増税どころではない。
実は、税と社会保障の一体化の閣議決定書類(注目DATA)を流し読めば、ドサクサまぎれに累進課税強化など取れる税は何でも取ることがうかがえる。消費税増税案が国会で流れても、水面下で地下経済:労働者からかき集めようという意図が見えている。おそらく官僚たちは、「ボーっとしている女子供には文句は言えまい」と、タカをくくっているのは間違いなさそうだ。
けだし、仕事を受注し、労働者を雇い、労働の指揮と分配で価値創造を統制し、収益から納付義務(所得税&社会保険料)を負うのは、事業主である!


§解雇事件の判例・裁判例=動向(2012/02/21)
新年度から、ビジネスプランを転換しなければならないほどの経済環境がやってくることは否めない。リストラや経営改革どころではない。その場合、一挙に転換するビジネスプランに併せて整理解雇で切り抜ける時代である。そうでなければ借入金急増はおろか、労働集約型事業であれば売り上げ不振と人件費割合増で経営破綻を招くことが自然である。
この場合の整理解雇は、論理的には裁判所で認められているのである。ところが、それを理解しない法律家・専門家が多い。素人は「整理解雇」と名付けさえすれば、普通解雇も懲戒解雇も裁判では隠せると思い、敗訴しないと錯覚しているから恐ろしい。
先ほど来、筆者が提起している商品価値への固有価値の付加で経営を切り開くにしろ、何がしかの労働者の入れ替えは不可欠なのである。そういった場合、論理的には裁判所は認めることになるだろう。まして労働紛争に至ること自体を減少させることが可能なのである。だが、仮面だけ「整理解雇」としないためには、いったいどうすればよいのか。この論文は、銀行や経理部門などのコストカッターから、経営と仕事と商品を守る方策である。もとより単なる裁判敗訴を回避するためではない。
顧客需要の存在するビジネスプランを着想するイメージから、この研究論文を読んでいただければ、数限りないヒントが出て来ることは間違いないと思われる。
http://www.soumubu.jp/documents/kaikokenkyu.doc
この論文の目次は次の通り。
・整理解雇事件の判決傾向(企業側敗訴率82%)
・整理解雇の4要件の政治的翻弄時期
・整理解雇4要件の、「人選の合理性基準」への疑義
・特定人物のプライバシーを調査することは
・解決金による自由解雇制度の行方
・解雇事件の判決直後の職場復帰
・整理解雇を避けるための配置転換の有効性
・専門職・専任職と言われる人たちの整理解雇
・社会制度や判例の将来展開
こちらのWEB(当社の書式無料ダウンロードページ)の左下にも収録
http://www.soumubu.jp/download/