2004/05/11

第25号

 偽装請負(請負契約と称しながら実のところは労働者派遣)を続ける
 違法業者に対しての行政対応が厳しくなった。いかなる内容が請負で
 はなく、いかに労働者派遣法に違反しているかを、事細かに解説した
 パンフレットを厚生労働省が配布している。今年3月1日の法律改正
 は大々的な制度改正となった。マスコミとか行政が、とりあげていな
 くて大きな影響があるのは「派遣労働者の社会保険適応」である。今
 まで現状は、二カ月の期間を超えての派遣労働者の雇用であっても社
 会保険に加入させていなかった実態が数多く見られたことである。今
 回の改正で、業務請負契約を選択せずに労働者派遣契約を行った場合
 には、一般企業に比べて労働者の厳格な社会保険加入が点検されるこ
 とになった。これは社会的制度化というもので、当然のこととして人
 件費コストに跳ね返ってくる。詳しくは次のURLをどうぞ。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kaisei/dl/ukeoi.pdf

 「 今後の労働契約法制の在り方に関する研究会 」の開催について。
 ?労働契約のルールについて、包括的に検討?。と銘打って、厚生労
 働省は新しい政策を実施するための法律改正に具体的に手をつけた。
 対象となるのは労働基準法を中心とした改正である。今年の1月1日
 の改正は解雇に関するものであった。労働条件の変更、出向、転籍な
 ど、労働契約について包括的な法律を策定するためとしている。要す
 るに、法律本文に明確に記載しないと、裁判所の判決(判例法理)だ
 けでは(専門的な方は除き)弁護士をはじめとして無理解がはなはだ
 しいので、一般国民の間にはっきりさせよう、具体的に記載しなけれ
 ば法律違反をしたという自覚を持たない人が増えて社会秩序が形成で
 きないと、いうことである。事実、国が弁護士を養成するときには労
 働関係法を勉強させないので、個別企業が弁護士に相談した場合、民
 法解釈を取り間違えるなど企業担当者からすれば、お話にならない答
 えが返ってくるのが圧倒的に多いのである。好くて判例法理の棒読み
 返答なのである。労働関係法は数ある法律の中でも独自の類型を設定
 しており、民法第一条第三項にある権利濫用と一致しないなどと、弁
 護士常識と一致しない部分も相当多いのである。解説するときにこれ
 を説明してくれない弁護士は労働問題は専門外なのである。社会保険
 労務士でも、この説明が出来なかったりする者がいるが、これも専門
 外なのである。「あっせん代理人」を引き受ける弁護士や社会保険労
 務士であれば、ほぼ大丈夫だろう。法律改正の成り行きを詳しく知り
 たい方は、次のURLをどうぞ。
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kaisei/dl/ukeoi.pdf

 国会などで年金問題がすっきりしない原因は、昭和36年の国民皆年金
 を成立させるときのいまだに明かすことができない全野党ぐるみの無
 責任決着問題と、これを覆い隠すために社会保障年金問題への専門家
 の参加を官僚と全与野党で徹底排除してきたところにある。政治家な
 るものは議員だけではなく官僚内部にも各政党の後援会(事実上の党
 員)が存在しているにもかかわらず。
 官房長官とか党首などの辞任も茶番劇。国会議員の国民年金保険料未
 納問題などは、ほとんどどうでもいいような話でこれを国会に持ち込
 んだ議員たちは与野党と官僚の根本的失態を知る由もない。ところで
 昭和36年までに何をしたのか。今ではほとんど記録も残っていない。
 国民年金が決定的な赤字であることは制度成立前からはっきり分かっ
 ていた。今流に言えば、国民皆年金が発足すれば即刻不良債権に苦し
 むことは自明の理であることを誰もが当時知っていた。ところがその
 反対運動が、ある日突然に終息してしまう。裏でカネが動いたとのウ
 ワサはもらった人がいるから事実だ。反対運動していたある貧乏な団
 体は数階建ての(この当時の2?3階ではなく鉄筋コンクリートの頑
 強な)ビルディングの持ち主にもなった。
 国会議員の未納問題。これは「国民年金に入れない」であったり「国
 民年金に入らなくてもよい」と表現はどちらでも良いのだが、そのよ
 うな行政指導をしたのは間違いがないのである。当時も今も、旧厚生
 省は、「表と裏」の話ばかり。旧厚生省の裏表は専門家は誰もが知る
 ところなのだ。社会保険事務所の裏の話をめぐって、騙されたと裁判
 を起こした国民に対して「過失があっても法律を知らないあなたが悪
 い」と行政官を保護する判決まで存在した。旧厚生省は時代が変わっ
 ても徹底してこの考えである。なので、個別企業としては社会保険事
 務所の裏話は「いつひっくり返されるか分からない」との覚悟がいる。
 これが国会議員大半の未納問題の弁解をめぐる前提の話である。みん
 ながみんな、未加入問題が生じたときに、そもそも市役所や社会保険
 事務所に「法律通りに実行しろ」と問題化しなかった本人が悪人であ
 るとの非現実的不毛論議にハマってしまった。このような屁理屈に人
 をはめた張本人は、「裏と表」の行政指導、いわゆるダブルスタンダ
 ード(裏表の二重基準)を行っていた旧厚生省本省官僚であるにもか
 かわらず、本質をついたマスコミも存在しない。社会保険事務所も社
 会保険庁にも盾突くとほとんど必ず圧力をかけてくるから、マスコミ
 関係者の足がびびってしまっているのはよく分かる。旧態依然として、
 社会保険には表と裏が残っているが、どのような年金制度を法律で決
 めたとしても、旧厚生官僚からすれば、ダブルスタンダードを使えば、
 彼らの思いのままなのである。社会保険事務所の問題対処方法は、首
 をかけても白を切ること、常用の「耳打ち」トークは、「上げたこぶ
 しをどう収めるか」と事業主に不安をあおることの二つである。国会
 議員の例を習って、実務担当者のあなたは「ワナと脅し」に乗せられ
 ないように注意しましょうね。

 さて冷静になって、今後の個別企業対応の話です。年金の崩壊が一挙
 に進む。個別事業主や一般被保険者にこれだけ不満をもたれた年金制
 度は、制度自体を守って育てようというモラルを崩壊させてしまった。
 たとえば、パート労働者は非常に多くの人が社会保険への加入を自覚
 的に拒んでいる状況で、個別企業や人事担当者が説得をしても、いっ
 こうに社会保険加入する希望が増えることはない現状がある。これと
 同じで、一般被保険者が、「そっぽ」を向けば社会保険にそもそも加
 入しないで済む方法を考えるし、保険料を違法減額して加入し続ける
 ことにもなりかねない。社会保険事務所が社会保険労務士を頼りにせ
 ず、場合によっては社会保険事務所が法律を順守しない事のある現状
 では、社会保険の専門家である社会保険労務士の協力は非常に難しい
 状態にある。
 そうなってくると、益々、個別企業では、「一切社会保険は知らない」
 との極端な態度が発生してくることは当たり前のことである。社会保
 険調査官の調査と言っても、個別企業担当者が、4回から5回の日時
 を変更すると、そのほとんどの調査自体が省略されている現状である。
 社会保険事務所の雇用形態アンケート調査に答えなければそれだけの
 ことであり、社会保険に入っていないパートが居るなどと答えて初め
 て調査が入るのが実態である。保険料は滞納でも「保険料で差し押さ
 えられればわが社が倒産する!」と泣きを入れれば、社会保険事務所
 は積極的保険料の徴収をしないので、いまや数千万の保険料滞納は当
 たり前のこととなっている。社会保険の「雇用保険の被保険者が全員
 いなくなれば即日社会保険も脱退」との行政指導は、小零細企業の脱
 社会保険を促進するだけのことになっている。そこへ最近の社会保険
 事務所は、新規設立会社の適用を厳しく排除しているからなおさらで
 ある。
 官僚の中で、国民年金は手がつけようがないから切り捨てて、「厚生
 年金だけを立て直すことが先決?ではないか」なる理屈が浮上してき
 た。社会保険事務所が進めている実態からすると、厚生年金加入を比
 較的高額な保険料を安定して納入できる優良企業に絞って、「安月給
 者と不安会社」は国民年金のごみ溜めに放り込む方針、と言われても
 仕方がない。02年度の厚生年金の加入事業所数は約162万9000事業所、
 加入者数は3168万人(統合された農林共済分を除く)。5年前に比べ
 事業所数で4.4%、加入者数で5.3%減っている。99年度に行われた財
 政再計算では、02年度の加入者を3500万人(同)と見積もっており、
 すでに約330万人の想定ミスを公表までした。今回の法律改正の再計算
 の仮説は、これ以上に現実とはかけ離れている。10年どころか07年ま
 で持たないだろう。

 あっせんの合意形成率約6割を維持?。埼玉労働局(村上文局長)で
 は、個別労働紛争解決制度の効果的な運用に向け、労働相談員らに独
 自の研修を行い成功しているとのニュース。平成15年度に受理したあ
 っせん申請は前年比2.9倍の195件と高い伸びで、57%にあたる111件で
 (あっせんが成立したとまでは言ってないが)合意が成立したとし、
 申請件数の大幅増にもかかわらず高水準の合意形成率と発表している。
 相談員にあっせんを傍聴させたり、過去の判例を丁寧に説明するなど、
 地道な取組みに効果があるとのことである。厚生労働省は、このあっ
 せんの制度を何としても確立させようとしている。この制度にかかわ
 る労働局の国家公務員たちの労働組合(全労働)もあっせん制度には
 賛成の態度を示しており、労使紛争に関する政策について、政府内部
 での労使は一丸となっているのである。この制度は、今までの日本に
 はなかったもので、個別企業の経営者の側からも有意義に使える部分
 があるので、「絶対に従業員がおかしい」と思ったときには、あっせ
 んの手段での解決を考えた方が効果的である。ただし、よほど慣れて
 ない限りは「あっせん代理人」を立てないと、一般行政の癖である件
 数数字の実績向上材料にされるかもしれないので要注意。

 東京都心は臭いにおいが漂っている。下水道とパイプがつながってい
 るトイレ、洗面所、風呂、マンホール、駅など軒並みにおっている。
 地方から東京に行った人は、たいがいの人が感じていたようだが、東
 京に住んでいる人は、どうも慣れっこで感じている人は少ないようで
 ある。一説によると、中小ビルの地下に「汚物槽」の清掃や汲みだし
 が行われておらず、「硫化水素」が発生し東京都内の下水を伝わって
 町からビル内から、においを行き渡らせているとのことである。パリ、
 ロンドン、ニューヨークに続いて、都市衛生とか環境問題の歴史に、
 次は「東京硫化水素」も名前が載りそうである。都市問題というのか
 貧困化現象というのか、いずれにしろ「いびつな経済集中と労働者流
 入」のお粗末さである。…なぜお粗末かというと、これだけ臭いのに、
 名実ともに行政もマスコミも、社会問題化させず「臭いものにふた」
 をしているからである。都民はマンホールにテープを貼ってふたをし
 ている。経済回復?というけれど…豊かな経済とは反対の現象である。
 「シュッシュの消臭剤を買って、さらなる経済効果?」などと冗談を
 言う場合ではなくて…。
 下水道とつながっているところの、穴という穴、口という口にふたを
 して、これに水を溜めておくと効果があるようだ。水溜が不可なら完
 全密閉。ささやかな個別企業防衛策。でも外出したら町は臭い臭い!
 腐った卵と言うよりは強烈なユデ卵のにおい! 要は硫黄なので温泉
 というか「屁(おなら)」のにおいだ。また実際には、この硫化水素
 は「U字管」では防げない。おそらく硫化水素は水に溶けるというの
 で、どうも原因が下水に溶けきれなかった硫化水素がブクブク地上に
 這い上がってきているとのことからすると、少量の水では即飽和して
 しまうようで、洗面所もお風呂場にも「いつも新鮮な水を張って」お
 いてこそ効果があるようだ。職場環境対策の一環として参考に。
 (このURLは硫化水素)
 http://www.city.yokohama.jp/me/cplan/epb/kanshi/worda/h2s.htm