2007/02/05

第58号

<IntelligenceやKnow-Howの収集>
経営管理において、とりわけ総務部門でのIntelligenceやKnow-Howの有無は、利益の源泉を左右するどころか、経営の基盤や母体、を良い意味でも悪い意味でも揺るがす程の価値がある。Informationといわれるものは、早い話、税理士や社会保険労務士といった専門家に問い合わせれば容易に入手できる。それも今日では、インターネットのWebを検索すれば、入手できるたぐいのものである。したがって、Informationはインターネットを操作できる人であれば、すぐさま収集できる程度のものだから、付加価値は少ないのである。
その道の資格者とか、アウトソーシング業には、それなりに蓄積されているので、Informationは記憶や記録の範囲で安価に提供してもらえる。この前提に基づいて、当社(株式会社総務部)も、100余の総務部門書式を無料でダウンロードできるようにホームページを開設し、施策の羅針盤となるようなInformationやIntelligenceなどをメルマガにして発信しているのである。これらは、あくまでInformation程度の内容であるから、クライアントへの無料サービスというよりは、クライアントからの問い合わせに対して逐一対応する手間と労力を削減するために提供しているといったところが本音なのである。
よくあることだが、Informationのついでに、IntelligenceやKnow-Howの提供を求めても、そこには危険をはらんでいる。
IntelligenceやKnow-Howには、
‐提供内容を信じて経営管理に適用するものであるから、
‐提供するときにはクライアント側の瑕疵を未然予測したうえで提供する義務(提供物責任)があり、
‐所要の労働力や経費と心理的努力・依頼者利益の確保
などが含まれているのである。
こういったこと考える意思も能力もなく、「利用するかどうかは、クライアントの自己責任」だとして、危険なものまでをも、聴き心地の良い話に編集して提供するといった姿勢は、コンサルティング業の職業倫理に反するものなのである。世間話や詐欺話との差異は、ここにある。
よって、漠然と情報?と考えるのではなく、Intelligence、Know-How、Informationのいずれが必要なのかをよく考えて、相手方がその提供元かを見極め、提供を求めて行くことが必要なのだ。外注業者やアウトソーシング業は、IntelligenceやKnow-Howの提供元ではないのである。とりわけ、IntelligenceやKnow-Howは、提供する側の裁量でもって供給してもらわない限り、入手出来ないものであるから、提供してくれることが当然の如くの姿勢では供給してもらえないのである。例えば、学校の教師に対して、「雇っているのだから教えろ!」といった姿勢では、理解できるように教えてもらえない場合と同様である。
IntelligenceやKnow-Howを入手する場合、労働者や外注業者扱いの姿勢では、企業を育てる本物のコンサルタント業者からは、相手にもしてもらえない。
‐「契約の意思もないのに、面談を求める」(社員の採用や業者の選抜程度の需要)とか、
‐「杓子定規に報酬支払いは、翌翌月以降に延ばす」(日頃から、Salary、Wage、Feeといった区別分析力が無い)とか、
‐「報酬から支払い手数料を減額する」(通常、商品代金の内訳重要さを理解出来ない)
といった行為はチェックされており、コンサルティング業者から、貴方は下心を見透かされ、
仮に契約に至ったとしても、赤子の手をひねるように貴方は利用されるだけなのである。
「オレは!大丈夫」
と思う貴方は、サラ金の多重債務者の「今度こそは大丈夫!」といった心理と同様、なので、悪徳コンサルタント業者のターゲットにされるのである。「社員扱い」なら、言われる通りするだけで企画を立てなくても売り上げ計上。「杓子定規」であれば、いくらでも話をごまかす。内訳が理解出来ないなら、Blackboxに引きずり込める。といった具合だ。
この話は、執筆者のこの私がコンサルタントであるから、提供できるIntelligenceなのだ。


<企業機密の漏洩の実状>
「Winny」をはじめとした、ファイル共有ソフトとかファイル交換ソフトの利用がますます流行している。
ファイル共有ソフトには「WinMX」「Gnutella」「Kazaa」「Share」など数多くの物があり、いつでもネット上で無料ダウンロードできる。「Winny」でダウンロードしたファイルに隠れているウイルス(代表的なものはAntinnyアンティニー)がパソコンに感染して情報が流出した事案がマスコミで有名になった。確かに、変わったウイルスでは、個人のパソコンのデスクトップ画面が定期的に2chに投稿されるものもある。
ところが、
「Winny」といってもウイルスに感染しさえしなければ大丈夫と過信して、情報流出を起こしてしまい、ウイルス感染もしていないのに、ウイルスの仕業にしてしまっているケースもなきにしもあらずだ。USBをつないだままネットを行ったために、情報が流れてしまったケースもある。
そして、
ファイル共有ソフトなどは、あまりにも便利なために流行の域を出て、グローバル社会における重要な情報伝達手段となりつつある。たとえば、耐震偽装マンションの問題の際に、Eホームズの藤田社長は、マスコミ関係者の受け狙い的な報道に対抗して、 「YouTube」 で自らの見解を発表するという手段をとった。この 「YouTube」 は動画系のファイル共通ネットなのだ。
だから、新聞記者は文学部出身ばかりとその専門性を不安視される事態であることから、今後は、不十分なマスコミに変わって、それらは情報を得るため&情報発信するための重要な手段となるかもしれないのだ。そんなこともあって、「Winny」などの利用者も増え続けているようだ。

情報漏洩事件の主要な原因と対策は次の通り。
ただ、多くの大手マスコミ論調は、ファイル共有ソフトに関する実態・事実の報道を避けている、というよりも、「口止め」させられているのかもしれない。
第1に、
情報漏洩は、「洩れること」が罪となった社会・経済の背景があるから、漏洩側の責任が問われる。情報を洩らした側は著作権侵害の違法行為を働いていたのであるから、これを被害者としてマスコミが報道しているのは本末転倒な話である。この違法行為を事実上後押しし続けて漏洩を起こした場合に、事業主の損害賠償も当然の義務となる。それでは、事業所内で違法行為を実行した従業員に対して、損害賠償の求償程度の(情報漏洩保険契約の場合、その求償権も損保会社が譲渡を条件とする)罪しか問えないことになるので、情報漏洩防止の具体的手立てが重要となるのだ。
第2に、
現代社会共同体の私的所有原則からすれば、機密にしろ個人情報にしろ、個別企業が従業員に取り扱わせる場合には、個別企業がそのすべての責任を負う必要がある。それは、「どれが機密情報で、どれが個人情報であるか」を定義することから始まる。漏洩の可能性を知れば施設や機器の対策をとることが当たり前のこととなり、従業員が自宅に持ち帰っての情報漏洩であれば、その責任は唯一事業主にある。その従業員が故意または重過失にて情報漏洩対策に従わなかったのでない限り、「あの従業員が悪いのだ」という弁解も通用しない。そもそも情報漏洩対策自体を実施していない個別企業が多いものだから、事業主にすべてが被さってくることとなる。ホリエモンのライブドアのように、自前のパソコンを社業に使わせておれば、情報漏洩は全面的にホリエモンの責任となる。自宅パソコンに持ち帰ってのサービス残業を黙認していたのだから、情報漏洩の損害賠償は事業主がとるしか仕方がない。「洩れること」が罪なのだから、「守秘誓約書」(機密と個人情報を併せたもので、総務部HPの無料ダウンロード版程度で初めて有効)を提出させていないのであれば、漏洩は当たり前、賠償当たり前との社会通念となっているのだ。
第3に、
大々的に報道された事件は、民事法の通用しない公務員(公法が適用)の情報漏れの場合であった。警察官、教師による情報漏れが頻発した背景には、公務を自前のパソコンで行わせていた行政方針に問題があったのだ。送検の供述調書を作成するパソコンまで自分で買わされていた捜査員の刑事さんには同情するとしても、組織的にそれを指示していた官僚が存在しており、このことをマスコミは恐くて書けないのだろう。民間企業と比べて、行政政策として十分な漏洩防止対策がとられているとは思えないような現状では、行政機関に機密や個人情報を近づけないことが、企業防衛の第一歩となる。巷では社会保険事務所に被保険者データをフロッピーで渡すような事務担当者も存在するが、果たして事業経営のことを考えて、データを提供しているのであろうか?
第4に、
ファイル共有ソフトの発見対策は、「Winny」検出削除ツールだけでは「Winny」一種類だけの対策となるので、各種の共通ファイルソフトが存在する状況では、それだけでは無駄と抜け道が多い。視点を変えてみて、「Winny」などの愛好者は、ほぼ動画愛好者に発展するとの実態分析からすれば、その方法ではなく、パソコン内の動画ファイルや動画系ソフトの有無の発見に努め、著作権対策の大網から見通しを立てて行く作戦の方が実務・効率的なのである。いっそのこと、外部の「ファイル共有ソフト愛好者」にチェックしてもらうのも効果的だ。
ただし、個人所有のパソコンは、事業主に所有権や占有権がないので、会社は「他人のパソコンの中身のぞく」ことは出来ないということになる。
第5に、
前向きの漏洩対策として、インターネットカフェなどで、所定労働時間内にファイル共有ソフトに触れる業務をさせるのも、結果的には極めて有効である。この場合は著作権にだけ注意すればよく、最近では「著作権放棄」のファイルも多数出回るようになってきたから、効率的情報収集が可能となる。パソコンに慣れていない者がファイル共有ソフトを使い、操作時間の無駄と、過信による情報漏洩を起こしてしまっては、事業経営としてはたまったものではない。経営の効率化の視点からは、こんな角度からの対策もある。paper‐baseでは記憶出来得ないほどの大量インテリジェンスやインフォメーションを扱わせる業務にこそ初めて便利活用できるパソコン操作との性格を見据えた場合に、そのような担当者にはパソコン用音声入力装置(1個6000円程度・マイク付きで十分)を買い与えて、「他人の著作を盗むよりも自分で喋って入力」させるようにする癖をつけることも現実的な方法(高付加価値作業)ではないだろうか。


中国大陸発の品物を筆頭に、
ビジネス系の海賊版ソフトやデータベースの海外経由物に手を出せば、相手方の国家や競争相手の企業に、注文者の住所が記録され、注文者の興味関心有りとの履歴が、確実に蓄積される。経済戦争の実態はここまで来ている。中国は何千年来の記録の名人。企業の電子メールはもちろんのこと、個人メールアドレスだとしても、安心と思っていると、それは素人の浅知恵でしかない。まして、貴方が既に、どのような事業に携わり、過去にもどのような実績をもっているかが、マークされておれば、貴方の情報は自動蓄積されるのだ。工場の生産能力・出荷台数、発売日、これらの情報こそが欲しがられているのだ。大手企業や研究者でなくとも、ある程度の教養をインターネットのみならず、電子電波系で発信しておれば、エシュロン(アングロサクソン・トライアングルの盗聴機関)に内容が傍受されていることは有名な話。それなりの事業展開の元となる研究者や企画担当者のもとに、知人や取引先を装って「人」が寄って来るのは必然のことなのである。トムクルーズのミッションインポッシブルはアメリカのCIA(central intelligence agency)を、007はイギリスのMI6(military intelligence division 6 )を想定しているが、いずれもが経済取引がらみのテーマなのである。

職業安定所の雇用保険
で取り扱う、フリガナと生年月日は個人動向調査の重要なデータベース。警察の逮捕令状執行の際には利用されている。そこで一言、人事労務系職域団体である、全国社会保険労務士会連合会での個々の社会保険労務士のデータ管理も、「情報管理規定を定めた」だけで、施設、機器並びにネットワーク環境等については無防備状態(昨年4月の対策の問い合わせに対して何ら返事が現在までないとのこと)のようだ。これでは、社会保険労務士に人事データや保険の手続、給与計算業務などを依頼するのに、不安が残って仕方がないのである。だから、大量の手続を取扱う事務所ほど、インターネットや電子申請を拒絶しているとの観測もあるくらいだ。弊社においても、個人情報などは外部との通信が未接続の機器のみを使用し、自宅へのデータ持出持帰リ厳禁、まして危険な電子申請に手をつける予定もさせていない。

データ守秘の重要さは、盗聴や漏洩の実態を理解することからはじまり、慣れているからといって過信したところに、情報漏れが起こっているようだ。古今東西、情報漏洩防止(手紙やpaperの時代の対策、IT時代の対策)に関心のない取引先とは、契約を打ち切る!のが、一般的な商習慣である。


<タレントの菊川怜を起用し>
社会保険労務士会がラジオCMで、全国一斉に20秒のスポットを流す。2月は1日1回、3月になれば1日4回を月曜日から金曜日の午後に流すことになっている。そのナレーションは、
「こんにちは。菊川怜です。リストラ、労働条件、セクハラなど職場でのお悩みは、社会保険労務士にご相談ください。貴方の身近に、頼れる存在。社会保険労務士で検索してね」
を2月から3月の中旬まで。その後3月30日までは、
「こんにちは。菊川怜です。4月から特定社会保険労務士制度がスタートします。これからも職場でのお悩みは、社会保険労務士にご相談ください。貴方の身近に、頼れる存在。社会保険労務士で検索してね」
といった内容だ。このラジオを聞くのは、ほとんどが労働者であり、これを聞いた場合の社会保険労務士に対するイメージは、自明の理である。今まで多くの人たちが、社会保険労務士に対しては、「経営者の側」との印象を持っていたのだが、そのイメージを転換するようなCMになりそうだ。
ところで、当の社会保険労務士の一般では、自らを労働者の側と自覚して仕事をしている人たちが極めて少ないのだ。社会保険労務士の業務範囲だけで生計を立てている人は、5%も居ないかも知れないと言われており、そのほとんどが事業主からの報酬に頼る人たちである。そのような状況では、このラジオCMに対し、多くの社会保険労務士は賛同を寄せることなどありえない。一般の社会保険労務士には、ラジオCM開始の10日ほど前に告知されるなど電撃的な会員通知であった。菊川怜との契約は2月1日から4月30日までだが、3月には週刊文春や週刊新潮への1ページカラー広告、全国的に投入するリーフレット35万部やクリアファイル40万部も社会保険労務士会としてはダントツの数量なのだ。このような菊川怜のラジオCMに踏み切った事情は、さまざま説明が行われるかもしれないが、結果的に、
「水面下の労使紛争を表面化させるための厚生労働省の政策の宣伝に、社会保険労務士を利用したのではないか!」
と指摘する意見が出ても仕方がないのである。
さて、このCM、少なからず、労務管理に不備を抱える個別企業には影響が出るかもしれない。
舞台は紛争調整委員会でのあっせん申請に持ち込まれることになるが、拒否すれば訴訟では不利となる。有能な労働者側のあっせん代理人(特定社会保険労務士)は少数であるから、会社側が有能な会社側あっせん代理人を投入すれば、さほど問題がこじれることは考えられない。あっせん代理人を熟知・手慣れた弁護士は極めて少ない。
しかしながら、物事には、「量から質への変化(量が増えれば質が変化する法則)」が存在するのであるから、それが厚生労働省の狙いかもしれない。