2009/12/08

第92号

<コンテンツ>
「!これで、住友銀行の、大きな子分にならずにすんだ」
デフレ対策? 景気2番底?
変わりゆく労働力需給システム、
社会保険料の滞納問題は
時間外60時間以上の割増率1.50%、「労働時間の考え方」


「!これで、住友銀行の、大きな子分にならずにすんだ」
と、今回の「ゆうちょ銀行」の行方に、ほっとした様子の独り言が聞こえて来る。これは、住友銀行の発祥の地、その大阪の中心からの話題である。金融資本の巨大最先端企業に仕立てあげる計画はとん挫、そこには経済学の前提が影響していた。
実は、旧来の経済学は、「人間はカネ勘定さえあれば元気に働くはず」とする前提であった。ところが、昨今の文化経済学と言われるものは、その前提を覆すことをしている。また、関西地方で住友系の信奉者が多いとするのは大間違いで、実に昔から根強い「住友系嫌い」も存在しているのである。住友系は大阪商人ではないので、住友系と聞くだけで、目を△にして一切取り引きしない企業も関西には少なくない。そういった経験や習わしを抱える文化も、ある面で関西経済を支えているのだ。
この住友銀行の大きな子分の話は逆説的ではある。要するに、社会経済の転換期には、由緒ある(地方ごとの)文化が経済を支えているといった視点からも、物事を研究し尽くさなければならないのだ。
「市場経済最優先の新自由主義弊害」とか拝金主義ばかりが経済危機を招いたものではない。古代から日本各地は世界経済・東の最端国であり、ガラパゴス化しているかもしれないけれどもやはり文化の集積地、しかし、「高付加価値やサービスのグローバルな事業展開operation能力」を軽視し続けた(高利回り優先の)企業戦略だったからこそ、現下の経済危機を深刻化させている。(ただ、ガラパゴス化?文化は、今や観光資源だ)。
一方、拝金主義には反対だ!として、むやみに歴史や科学を度外視して、自給自足だとかエコだとかいった理論は、経済学とは別の趣味の世界である。中東やアフガンだけに限らず、古今東西、あらゆる〇〇〇〇原理主義と言われるものは、歴史でいえば13~14世紀の世界に戻そうといった代物で、これも趣味(もしくは宗教)の発想である。
趣味を貫けば経済は豊かにならず、経済が豊かになれば趣味は多種多様化するものである。職場カルト、宗教カルト、共にカルトとなれば経済外的強制が優先される。(フランスは社会集団全般の、カルト・セクト取締強化法=2001年=がある)。いずれにしろ、事業経営は事業環境に合わせなければならないと、「耳にタコ」が出来ていても、マスコミ関係者も官僚も、事業環境の文化経済的な視点が、まだまだ弱いのである。
何故そこまで筆者が断定出来るのか、その根拠は、
「経済学とは、みんなを豊かにする学問」との基礎を前提に研究されてきたからだ。「世の中には、儲かる人と損する人がいる」との説は、これも世間話や趣味の類であって、インテリジェンス情報ではない。この経済学の中途半端な知識を悪用して、「一攫千金一儲け」を目論み、金融工学?そして破たん…。
評論家の言い方を借りれば、次の通りだ。
「高付加価値製品や高水準サービス、この商品提供基盤は文化経済である。日本が世界に活躍する過渡期として、今や、日本経済や個別企業が再編・再構築されている」。


デフレ対策? 景気2番底?
と目まぐるしく世論は変化をする。年末年始に気を付けなければならないことは、個別企業に役立つ情報ならば、色々な角度からのインテリジェンス情報を集めなければならないことである。テレビ受けの良いキャスター、新聞マスコミの文学家(読まれる記事を書くのが上手)による、経済ニュースばかりを鵜呑みにしてはいけないのだ。金融庁の金融検査マニュアル改正とか返済猶予法令の中身詳細などは、ほとんどニュースで流されていない。
そもそも、景気の落ち込みといった表現はあっても、デフレそのものを解説するニュースも少ないのである。「この期に及んでのデフレ宣言」、これ自体が、円高基調の為替相場一旦停止作戦であり、海外向けアピール大成功であった。
ちなみに、デフレと言っても、
借金の多い企業や在庫が多い企業にとっては死神の到来であるが、そうではない財務安定企業とっては、十分やりくりできるから、これといって政府にデフレ対策を迫る必要もないのである。それよりも円高であるから、海外からの原材料価格が安い、…今のうちに仕入れておいて…と考えは、いわゆる素材産業(意外と日本の有力な産業)で広まっているのである。急激では困るが、ソコソコの円高ならば…。そこには、これから巨額の政府系融資(終戦後の傾斜産業)をつぎ込むことも視野に入れるべきとの意見も出始めている。
雇用調整助成金も、
セイフティネットの概念ばかりが強調されるが、「コンクリートから人への投資」というならば、新産業や人材への投資が必要である。戦後政府の雇用政策のうち、昭和30年代後半の石炭産炭地から都市への雇用促進、農村から都市への集団就職そして…来年度は、雇用が流動化している若年層の介護・医療への集団投入就職…これに反対はしないけれど、いまひとつ、国家の計画経済政策には在らず!との証しがほしいところだ。「借金できる」のも財産のうちなのであるから、日本の新産業育成に的(証し)を絞った雇用調整助成金が不可欠である。
今日が政権交替101日目。
経済先行きのセミナーも目白押し、変わったところのインテリジェンス話も仕入れておく必要ありだ。そこで、着想の具体的転換に、『民主党政権で中小企業はこう変わる! 』(著者:八木宏之、サンマーク出版、2009/10/30)とかは、一読して知っておく必要ありである。テレビとかでは、「民主は中小企業対策中心!」と報道されてはいるが、租税特別措置法の恩恵を浴びている大手企業にとっては、財務官僚から「恩恵を返上したいの?」と質問をされたくないから、そろって沈黙・ホッカムリ(…エコ…エコ)をしている状況も要注視だ!
であるから、100あるうちの3つの経済理論体系だけで記事を書こうとする新聞社の記事では、一生懸命読んでいても時間と体力の無駄かもしれないのだ。確かに、セールスマンの営業ネタ新聞、それは筆者も40年来、この目で確認しているが…。


変わりゆく労働力需給システム、
すなわち求職や募集の方法が変わろうとしている。職安は、「時間制限のお茶も出ないネットカフェ」と揶揄されるに至った。今や、需給システム不具合が経済の足を引っ張ることとなり、市場に適合した労働力需給システムが必要である。ところで、これだけの転換期にも関わらず、労働力に関する専門家は極めて少ない。テレビに出てくるコンサルタントともなれば、その多くがバックに人材ビジネスを抱えており、クライアントに対して利益相反の立場にいる者も少なくない。そこで、労働力の専門家のひとりとして、目の前の課題の背景にある歴史的変遷をまとめた。
・「労働者派遣」は、
昭和50年代中ごろに労働力需給で職安が機能不十分だと指摘される中、多数の与野党国会議員や自民党労働部会から労働省に対して、失業者の公的就労事業が突き付けられ、それがきっかけで立案された民間システムである。当時は雇用期間が4ヵ月以下の者を想定していた。すなわち、受皿論とは異なり、常用労働者として経済的に抱えきれない人たちの積極的雇用施策であった。当初、労働省が構想を発表した途端に、日経連から猛烈な反対運動が起こり、それから労働省は内部地下潜行させ、昭和59年の年末土壇場での発表としたのである。テレビ朝日の報道事案も、クレームを出した側が真実だ。グローバル経済など、未だ考えもつかない時代の法案構想が労働者派遣法なのだ。
・昭和60年に法案要綱
としてまとめられ、これまた土壇場に、ビル管理、清掃、受付といった職種を抱える都合から、常用労働者も適用範囲とすることとしたのである。だから、非常用を許可制の一般労働者派遣、常用を届出制の特定労働者派遣としたのだ。平成9年までは、与野党にまたがる抵抗勢力を排して派遣業の育成を図るために、社会保険の適用緩和で業者の利益確保を図るなど、労働省は必死であった。そこから労働省内では、「許可制として禁止事業をやらせてやっているのだから」といったお仕着せがましい発想もあった。
・「業務請負」は、
昭和61年の労働大臣告示を受けて筆者が立案・名付け、人材派遣S社の子会社が大阪北部地域から始めたものである。松下テレビ事業部700人のパート削減と松下掃除機組立会社の200人の募集などが数キロ範囲内で行われていたことに対し、地元の茨木職安では対応できなかった背景があった。業務請負により労働力需給を果たしたのだ。この地域は大阪と京都の間にあり、多くの工場が立ち並ぶ。業務請負が広がった極めつけは各工場の人事課長、資材課長などの妻たちが近隣で働いており、上に述べたような労働力需給で、パート雇用が切れ目なく&比較的高時給&余裕をもってパートを続けることができたことである。まったくもって構内下請とは別概念、当時は偽装請負を次々と駆逐し、業務請負が高い利益率も確保したのだ。
・ところが時代は、
グローバル社会と一緒にやってきた、「利回り優先の金融資本」による予算管理や目標管理に侵されたので、派遣先は外注化(派遣は外注費勘定)による予算消化に、派遣元は売掛金至上主義と銀行融資額増加による派遣会社延命策に走ってしまったのだ。その発端は、1999年派遣法改正ではなく、1997年の職安法改正が始まりである労働市場の規制緩和からである。ここから派遣業界の水ぶくれが始まり、今回経済社会から「お暇」が出て、潰れたまでのことだ。
業務請負も先ほど述べたスタートではあったが、偽装請負業者のダンピングにさらされた。そこに製造業派遣の解禁(みずから要望)で、派遣元自体の利益低下(自業自得)を招き、ここでの無茶が労働力需給システムの破壊と法令違反を招いた。金融資本に踊らされた素人経営者には、利益率低下の法則など知る由もなかったのである。当時は、新自由主義により法令を犯しても取り締まられることが無かったから、資本だけ回ればとの素人考えが、経営者も銀行員にも主流の考え方だったのである。そして、偽装請負と製造業派遣は、この経済危機(お暇)で破たん、転業・廃業・夜逃げの横行する業界となってしまった。
・来年3月からは、
厚生労働省が、一般派遣事業の許可更新に関しても3ヵ月前申請を義務づけ、事務所や書類を徹底的に洗い出すこととしている。毎年の事業報告も社会保険の厳格適用などで厳しくなる。昭和61年の派遣法施行の当時は、許可を下ろすにあたって徹底して現地調査が行われ、超大手のT社など書類不備で解禁日付の許可が危ぶまれたり、(当時筆者の事務所での許可手続きを除けば)M社、S社その他多くが指定業務の許可数を制限されたりしたのである。グッドウィルのような「話題になった系」の派遣業者は、ことごとく当時の安定所窓口は不許可にしていた。さて、現段階の厚生労働省の動きからすれば、人材派遣業は法律改正を待たずに、業者は利益率低下・煩雑さの頻発で採算が合わないようにもって行き、一部の職種を除いて一挙に事業縮小して行かせることに間違はない。
・ところが、経済危機から立ち直ろう
とする個別企業の有能人材ニーズは高く、派遣が駄目となれば、職業紹介のニーズは一挙に高まる。今後の日本経済、ますます、あらゆる業種での業務量繁閑差の大きくなる時代を見越せば、とりわけ「複数事業場への毎日紹介と有能な労働者の流動性」、これは個別企業にとって不可欠となってくるからだ。求人広告・求人媒体誌では費用対効果は薄く空回りするし、ネット求人では上部をなでている程度にしかすぎないからである。そこに、職業紹介会社が、面接・配置、福利厚生その他計算などの事務作業を行えば、毎日紹介システム事業にも資する。
ただし、「日々紹介」の概念は、ほぼ日雇い派遣の脱法行為に過ぎない。だから、既に各地の労働局の取り締まりが始まっている。そういうレッテルは貼られているし、ネットで日々紹介を検索すれば、またぞろ日雇い派遣の2番煎じの理屈ばかりである。
[派遣業はニュービジネス]と思っていた素人や若者たちが、またまた引っかかっているが…今度は銀行からのジャブジャブ融資は無い。


社会保険料の滞納問題は
いよいよ社会保険事務所も強行策に打って出て来た。保険料滞納が続く事業所に対して、何の予告もなく過去に遡り、被保険者資格を切ってしまっているのだ。ある日病院に行って保険カードを提出しても、健康保険が使えなかったとの事例がある。社会保険事務所に問い合わせてみると、過去に遡って内緒で職権喪失手続きを行っていたのだ。仕方なく国民健康保険に加入することとなるが、こういった場合は、過去に遡って、国民健康保険に加入する方法があるとしても、被保険者である従業員はビックリ仰天である。
確かに、この経済危機で、社会保険料を払わないという効果は、事業主が何らの手続きもなく、14.6%の利息でもって借金することに等しい。危機的な個別企業からすれば、銀行のカードローンに比べ、手続き無用の方法に走ることになるのだ。折しも、今年4月に、社会保険料や労働保険料の「延滞金軽減法」が議員立法で成立、来年1月1日以降の納付期限分の保険料から適用されるが、納付日から3ヵ月(労働保険は2ヵ月)が、14.6%→(当面)4.5%となり、現実には滞納に拍車をかけることになりそうだ。
社会保険事務所の徴収課職員が、「払ってくれ」と言ったぐらいでは払わない、「従業員からの控除分だけでも払ってくれ」と言っても払わない。この現象は現行社会保険制度の末期的症状である。保険料を払わなくとも、強制適用という法律の制度からは、「いついつまでが被保険者期間」との社会保険事務所が確認作業を行えば、事業主からの保険料未納が存在しても健康保険は使えるし、年金額が減額されることもない。法解釈的には、納付義務がある事業主が未納しただけであって、社会保険事務所の保険料回収の(ここが肝心)怠慢であったと行政は処分決着するにすぎない。被保険者である労働者からの取り漏れ(事業主の控除権放棄)分は、法律上も事業主負担とされることとなる。
ところが、社会保険庁がからすれば、給料の安い被保険者が増大すれば、健康保険も厚生年金も採算が悪化するから、全労働者が全員加入することを嫌がっている。現に、給料の安い労働者を大量に抱えている事業所には、社会保険に正常加入しているかどうかの調査など行われていないのである。保険料の多い少ないを問わず、注射1本の価格は同額だからだ。
このような事態からすれば、正常な個別企業の社会保険加入維持は、高度成長期やバブル時代の「加入の説得、脱退防止の説得」といった手法では間に合わないことになる。そこで、数年後の歳入庁発足といった話がでてくるわけである。また、中小企業に対する健康保険が協会健保(旧:政管健保)の旧来の加入維持促進制度を社会保険労務士制度が支えてきたが、こういった事情からその役割も終焉しつつある。民間の生保代理店と肩を並べて、社会保険労務士の、「公営生保代理店」は、果たして社会に資することになる制度であろうか?


時間外60時間以上の割増率1.50%
この施行(2010年4月1日)に向けて、「労働時間の考え方」を設置。
弊社サイトのダウンロードのページの、右下から10個目
http://www.soumubu.jp/download/
http://www.soumubu.jp/download/template/template2/jinji/labortime.html
いろいろな労働時間の考え方の疑問が出される傾向は、
たとえば、
年間休日制、年間カレンダーを実施しているが、104日の休日のうち、法定休日とその他休日の区別が混乱。(そもそも、104休日といったことを、昔どこかのキャリア官僚が素人着想するから混同の元となった)。
また、
変形労働、1昼夜交替などのところは、そもそも労働時間の計算方法が複雑。ビルメン・警備などの業界にいても解らない担当者の方が数多く、都市部でも解らない労働基準監督官がいるのだ。
1911年、日本の工場法からの労働基準法約100年の、条文構成論理の変遷を踏まえた知識(労働時間の数え方もそのひとつ)を知っていれば良いのだが、自力で自前で分析するから、先人の知恵についていけない超有能なエリートも少なくないのだ。
労働基準法どおり、まずは素直に真似しておけば、そのカラクリとも言えるほどの仕組みも簡単に理解出来る。その後に初めて、個別企業ごとに上手な方法を考えてみれば良いのである。
労働基準法は規制や取り締まりの最たるものではあるが、
一方では、個別企業の自治や統制権を認めているから、
就業規則その他を工夫して自治権発揮・統治能力向上すれば、
それ次第で、個別企業にとっては極めて柔軟に労働力管理を行なえるようになっている。
要するに、
今時:経営管理能力のない者は取り締まる、といったカラクリなのである。
中小企業の猶予措置もあるし、残業なんか無いし、(正社員に「サービス残業させる?」だけだし…)と、色々あるかもしれないが、役立つよう簡単図表にまとめたつもりだが、
まずはクリック。
http://www.soumubu.jp/download/template/template2/jinji/labortime.html