2005/11/07

第43号

来年4月からの、62歳までの高年齢者雇用に向けて、労働協約の具体的中身の決め方が議論となっている。「高年齢者雇用セミナー」などで、法律の概要が分かったとして、やってはいけない事の判断はつくが、具体的に実施しても良い事の判断は、セミナーで話してくれないのが常である。これには、厚生労働省は、個別企業の自由ですから…と言わんばかりである。無力無知で何もできない個別企業は「62歳定年」となるので、そこには支援措置(社会進歩やグローバルに対応しない企業の保護ではない)が必要なのだが、自由の女神の光は輝いているだけである。いくら旧厚生省の年金政策失敗のツケを回された対策だからとして乗り気にはならない。だとして、「思想及び良心の自由」の流行語を持ち出したとすれば、それは「不作為」の無責任行政となる。
これに対し経営トップの判断パターンは単純明解で、「定年を62歳に引き上げるか、継続雇用対象者の具体的基準の策定の何れか?」を判断するのである。とりわけ、「高付加価値製品や高水準サービス」の商品提供戦略を持つ個別企業にとっては、労働意欲に関わることなので、社会や他企業の動きも考え、メリハリをつけておく必要があるのだ。したがって、人事・総務部門の創意と工夫が必要なのは、労使協定による個別企業独自の運営基準の内容となる。
・相対的人事評価は無効に等しいと分かっても、今まで絶対的人事評価をしてこなかった。
・「健康な者」とした場合、高血圧・糖尿病対策などしたこともなく、具体的線引きの見通しがつかない。
・業務に必要な人材の判断基準として、資格試験や研修終了を、今から持ちこめるのか。
・高齢者の「意欲と能力」は、労働時間や賃金総額によっても変動するのはどうすれば良いか。
・60歳定年の者は当分出ないが、社員の将来ビジョンとの関連をどうつければよいか。
・労働力需給&人件費総額を、業務請負・派遣あるいは高年齢継続雇用の何れで対応するのか、の評価判断基準は何か。
・労使納得性に沿うような水準を持った「憎まれ役も含むコンサルタント会社」へ依頼するとして、どう探せば良いか。
などなど、個別企業ごとにオーダーメイドが必要なのである。


「中国製品は、果たしてよくなったのか?」、よく話題になるである。ところが、クレームは減ったが、中身はいまだ危険である。外側は完璧に近く、よく見えるが中身は悪い。なので、返品続出。また故障したときはどうしようもない。これらは、身の回りすべての中国製品にいえる。裏表を見ればすぐ分かるような服飾においても同様。「安かろう悪かろう」を超越した不良である。
そもそも、元から粗悪なので、日本から担当者が現地へ飛んで、「注意して注意して」、注意して「外側が普通」に見えるようになっただけなのだ。銀行の話につられて投資をしてしまった個別企業の悲しい宿命でもある。
中国製食品は、子供への障害、生命への不安は拭われてはおらず、安ければ警戒、パックの裏を見て中国製と判れば買わない人は多い。中国製の自動車(江陵汽車の陸風)がドイツ自動車連盟安全基準をまったくクリアできなかったニュースを聞いて、中国製自動車を買うことに罪悪感を覚えるのは社会安定のための倫理観である。
文化の違いといえば一言であるが、それでは問題が解決しない。もう少し突っ込んで見た場合、それは、教育訓練が成り立っていないところに原因があるのだ。中国では、製品を完璧に作りあげるよりも、人間関係が邪魔をするが、教育訓練においても同様なのである。まして反日の「世間体」人間関係である。
さらに、ここに来て人民元の為替レート切り上げ問題。人民元での支払決済の場合には人民元切り上げで目減りするのは日本円。日本製商品の出荷時点代金と集金時点代金の時間差での切り上げは人民元が少なくて済む。反対に中国製品への代金支払いは日本円が多く必要となる。ドル建て決済だとしても、中国の外貨準備高不足は事実上の人民元決済である。ということなので、人民元切り上げ=支払時点での代金値切りを意味するのである。支払い不履行には「この手があったのか!」…。
元来、粗悪品を売りつけても反省することなく、契約通り支払いするものは馬鹿だと思っているのが中国文化なのである。日本人の商業における成功体験は、中国文化ではなく、騎馬民族文化に起源を発するからとはいっても、ひっかかる日本人が多いのには、驚いてしまう。「銭金の悪知恵とマージャンは中国に勝てない」のである。


(仮称)労働契約法の制定をめぐって、キャンペーンや大議論が始まった。経団連、商工会議所、連合、全労連、日本労働弁護団など相次いでいる。労使の議論の的になっているのは、労使委員会、解雇の金銭解決制度、雇用継続型契約変更制度、ホワイトカラー・イグゼンプションである。厚生労働省は、法律の履行について、あっせん制度や労働審判とセットで進めようとしている。よかれと思っての提案に対しても、当の労使は迷惑だと言わんばかりである。裁量労働などは、自民党の国会議員までが現役時代の経験からクレームをつけた。グローバル基準の「権利を主張する者は浮かばれ、黙っていると沈没する」トレンドに乗ってであろう、労働判例法理の法律制定(法定法理)については、労使の異論のないところであるので、労働契約法制を急ぐ意見が強いのであれば、この部分について早期制定すればよいとの意見も出ている。「権利主張社会」の弊害として見落としてはならない、アンフェアトリートメント(不公正な取り扱い)、例えば、退職金や福利厚生の社内規定があっても労働者から請求がなければ無視するとか、故意に就業規則を労働基準法の水準にとどめ、個別労働契約の個別交渉で事業合理性を崩壊させるなどである。これは労使委員ともに取り上げてもよさそうな課題であるにもかかわらず、旧来の固定観念が強いのか、自由平等の社会共同体意識が弱いのか、誰も採り上げていない。


11月を「賃金不払残業解消キャンペーン月間」と定め、厚生労働省は労使の主体的な取り組みを促すためのキャンペーン活動を実施するとしている。また、電話相談も行う予定である。とはいっても、優しく・おとなしく、業界団体に呼びかけるわけではない。過去の実績からすると、今まで蓄積していた情報に基づいて、一挙に摘発する行動に出ることは、当然予想される。最近の賃金不払残業事件に対して、労働局は数十人の捜査員を投入して、広域に摘発することが多い。これにより、戸惑い・あわてる経営者も多いのである。捜査ポイントは、以前メルマガで掲載した通りであるが、そのまま通用するぐらい横柄な人事労務管理を行っている企業もあるのである。合法的人事労務管理も行う企業からすれば、残業不払い企業は、不公正競争業者であり、ダンピング業者であるから、労働局・労働基準監督署での取り締まり強化要望も強くなっている。日本の経済性から、個人消費経済を強めるためには、現時点では賃金の引き上げが必要となることにより、これも摘発の追い風となっている。

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